原典: Successful Caregiving
URL: http://www.collmed.psu.edu/pedsonco/Homeguide.html
訳者: Grandpa Tony@Dinosaur
email: [email protected]
介護が上手な人は問題解決も上手である
介護には問題の解決が欠かせません。これまでの人生でもいくつもの問題を解決してきたことでしょう。今回の問題解決の違う点は、ガンに伴って生じる問題の多くがあなたにとって経験のないものであるということだけです。この家庭看護計画ガイドはこれら新しい問題を解決するための手助けとなるものです。これにより、問題解決する際に順を追って進められるよう、まとめられた情報や指導が得られます。
このガイドはあなたのお手伝いをするためのものです。どのような行動をとるかを決め、自身の必要に合わせて計画の内容を調整するのはあなたです。作った計画を実行し、期待通りに機能するかを調べ、必要があれば変更をするのもあなたです。また、このガイドに書かれていないようなあなた独自の問題があれば、新たな計画を加えなければいけません。
あなたとお子さんは問題に対処する責任者なのです。あなたは単にこのガイドの内容に従うのではなく、決断を下し行動を起こす立場にあるのです。
成功する介護者は、他の人たちと一緒に問題解決する
成功をおさめる介護者はチームでことを運ぶのが上手です。 家族、友人や医療スタッフと一緒に協力して問題を解決し、さらにガンを患っているお子さん自身とも、できる限り力をあわせます。
ガンのお子さんがチームの中心なのです。在宅介護の成功にはガンのお子さんの協力が不可欠なのです。お子さんに影響のあるすべての問題解決のための話し合いを、できるだけ多く理解させ、またそれに参加させるべきです。
医療専門家も同時にチームのカギとなるメンバーなのです。介護者にとっては、これら医療専門家と一緒に行動を進めることで、自宅で実施している介護内容が最善の医療処置と一貫性があることの確認にもなります。もちろん、このガイドブックは医療の専門家が重要な役割を務めて作成されていますから、この計画に沿って看護している以上は、あなたはできる限りの最善の看護をしていると自信を持って言えるのです。また医療の専門家は、病気に伴っておきる、医療とは無関係の問題を処理する上でも、有益な情報やアドバイスを提供できます。
家族の人たちや看護の体験を共有している友人もまた大切なチームメンバーです。実際的な介護支援のみではなく、精神的な面での励ましをくれ、気持ちの上でもささえとなります。そして彼らの人生において同様な問題を体験したときのことやその時の対策について知識を分け合うこともできます。
成功する介護者は介護に対して肯定的な態度をとる
成功する介護者は介護の前向きな部分を強調しています。たとえば、上手な介護を行なっている人は、自分の仕事は「自分が心から深く愛し気にかけている人を助けている」と考えます。また、介護を行なうことを宗教的、精神的にとらえる人もあります。「これは神様が定められた私のための計画の一部だ」と考えるのです。また、「介護を行なうことは自分たちの人生を豊かにする」と感じる人もいます。あるいは、「やりがいのある仕事であり、できるだけの最高の介護をしたい」と考える人もいます。
介護を行なうことで大切な利点を得ることもできるのです。誰かを介護することで満足感と自信を得ることもできます。介護をしている家族は互いにきずなが深まり病気のお子さんともより固いきずなで結ばれます。同じような経験をしている他の親御さんとの価値ある新たな友情が芽生えることもあります。同時に、自分でも今まで気づかなかったような内に秘められた芯の強さに気づくでしょう。
また、この不運なはずの病気が、新たな友人や交わりの関係を創りだします。こうした友情は同じような問題に直面した見知らぬ人々と話をしたり、ボランティアの人が介護を手伝って下さったり、すっかり縁遠くなっていた親戚や友人たちと、病気がきっかけで再開したりすることから生じてきます。
上手な介護者は自分自身への注意を怠らない
ガンの治療を受けている人の介護は大変難しく、ストレスが増えます。自分自身の休養、食事、娯楽、くつろぎと運動に気を配り、それらを十分にとるほど、より良い介護をお子さんにしてあげることができることでしょう。
上手な介護者となるためのあなたの目標
専門家の助力を求めるのはいつか
下記に述べるような状況が一つでもあれば、主治医、看護婦、ソーシャル・ワーカー、子どもの生活相談員、聖職者あるいはその他の専門家の支援を受けましょう。
上手な介護者になるために、あなたはなにができるのか。
⇒お子さんが診断内容を受け止めるときの心のささえとなり、できるだけ普通に生活をすることに手助けをする。
⇒共感しやすい雰囲気、こどもが感情を分かち合おうとするのを促す雰囲気を作る。
あなたとガンのお子さんとの間で、重要な問題について意見が食い違うとき
あなた自身のニーズや感情について気を配る
介護で最善をつくすには、あなた自身が最高の状態に保たれている必要があります。そのため、お子さんの世話と同じようにご自身のことについても十分な注意を払うべきです。自分自身に無理なく望める行動の限界を設定しましょう。介護から少し抜けて自分と自分のニーズのための時間を取ることです。そしてストレスがたまる前に、誰かの手伝いを頼むべきです。
重い病気のお子さんの世話をしていて激しい感情を持つことは当然のことです。以下は介護者が共通して持つ感情であり、そのような問題がひどくなった時の対策です。
ショック(衝撃)
介護者やガンを患うお子さんが最初にガンの診断をうけたり病気が治療に反応しなかったり病状が進行していると聞かされた時には打ちのめされ、混乱した気分になるものです。ここに他の介護者が衝撃を受けたり打ちのめされたような状態になったときに行なったことを紹介してみましょう。
⇒ものごとを選ぶのに時間をかける
怒り
お子さんを介護している期間中に怒りを感じる理由は沢山あるでしょう。たとえば、時にはお子さんがわがままになったりイライラしていることもあります。友人、家族あるいは医療の専門家は希望通りの協力をしてくれず、理解をしてくれないかもしれません。信仰が何の助けにもならないことに腹が立つという人もなかにはおります。人生がひっくり返るようなでき事に、怒りが起きるのは当然のことで、それがガンのような重病では良くあることです。
このような感情は当然のことです。ときにはそのような感情に襲われても仕方がないことです。それに対してあなたがどのように反応するするかが大切なことなのです。怒りに対処する一番の策は、その怒りを認め、受け入れ、それを適切に表現する方法を見つけることです。もし、怒りに対して対処しないと、あなたが以後行なう全てのことに差し障りを生じることがあります。
下は他の介護者が彼らの怒りに対処した例です。
⇒状況を第三者の見地から見るように努める。なぜその人がそんな行動をしたのか理解します。
⇒あなたの怒りが極度にひどくなる前に適切な方法で表明することです。
⇒しばらく今の状況から離れ、それに戻る前に冷静になるように試み、あなたを怒らせたものに対処します。
⇒怒りを表現するのに安全な方法を見出してみることです。
⇒誰かになぜ自分は怒りを感ずるかを話してみる。
恐怖
心から愛しているお子さんの病気が重い時は恐怖を覚えることがあります。お子さんや自分にどのような問題が待ち構えているのかがはっきりせず、ことが起きても対処できないのではと恐怖感をもつこともあるでしょう。他の介護者たちが彼らの恐怖心に対処したときの方法を紹介します。
⇒何が起きているのか、将来何が起こるかについて、できる限り多く学ぶこと。
⇒この家庭看護計画の"親の抱える不安"の項を読んでください。
⇒あなたの抱いている恐怖について誰かに話してみてください。
喪失と悲しみ
重く、生命を脅かすような病気では喪失感や悲しみを多いにもたらす場合もあります。あなたが将来を見据えて整えた人生設計を完遂することができないかもしれないことは大変悲しいものです。このような病気が発症する以前にはあった普通の子ども、普通のことをしていた状態にはもう戻れないと喪失感を感じることもあるでしょう。元気だったころのお子さんがどんなだったかという思い出は寂しさをもたらします。介護をしている他の親御さんがそのような感情に対処された方法の一部を紹介します。
⇒同じような経験をされた方々と自分の喪失感について話をする。
罪悪感
ときに、重病のお子さんの介護をしていて罪悪感を覚える人がたくさんいます。病気を患う原因になることを自分がしたのではないか、もっと早くガンに気づいてやるべきだったなどと思うからです。ガンを発症したお子さんの養育が良くなかったのではなどとも考えます。あるいはガンのお子さんに腹立たしく思うことへの罪悪感などもあります。自分が何ともなくて、深く愛している者が病気であることにも罪悪感を感じます。こういう人は、何かが思うように行かないとき罪悪感をもつことを幼少期に身につけてしまっているのです。
罪悪感をもつことは理解できますが、そのような感情を持っていては最善の介護を行なう上での障害となります。罪悪感はあなたの過ちだけを考えさせます。ほとんどの問題にはたくさんの原因があり、あなたがしたことはその理由の一つに過ぎないのです。これに対処するには、問題の原因を客観的に見つめ、問題全体に対して計画を創ることです。たとえば、介護しているお子さんに対して腹立たしさ感じている場合は、子どもがしたことだけでなく、あなたがしたことが原因かも知れません。怒りの原因に対処するには子どもと心を開いて、お互いのしたことについて話し合わなくてはなりません。自分のしたことや怒りを感じたことにただ罪悪感を感じることのないようにしましょう。同じ様に罪悪感で悩んでいた介護者の対処例を書いてみます。
忘れていけないことは、自分がベストの状態でこそガンのお子さんの介護に最善をつくすことができるということです。罪悪感などを感じ、気持ちが乱れるようでは、最善の介護者であるために妨げとなります。
考えられる問題
あなたの介護計画による介護で、成功を脅かすものはないか考えてみることです。
介護上手になるための計画を実行するのに何が妨げになっているか考えてみましょう。
以下は他の人が介護上手になろうとしたときに障害になったものです。
計画の実行を妨げる障害は、他にどんなものがあるか考える
他にはどのような障害が介護上手になるのを妨げているでしょうか?
たとえば、
これらの障害を迂回するための計画を立てる必要があります。四文字で示したCOPE(コープと読みます)のアイデアである創造性、楽観性、計画性とエキスパート(専門家)の情報を得ることを念頭におき、あなたの計画を作るのに利用することです。本ガイドを利用して問題に対処する項に「あなたの障害を克服するためのCOPE(コープ)のアイデアの活用法」を説明しておりますので参照してください。
計画の実行と調整
・どのようにして計画を実行するか?
早速このガイドブックに説明しているアイデアを今から使うことです。あなたが精神的な圧迫をうけるようになるまで待ってはいけません。問題が手におえなくなる前の早い段階で良い介護手段の習慣と行動を決めるほうが簡単なのです。
特に大切なことは、親御さんの不安と親御さんの憂鬱(ゆううつ)の項で述べている介護方法を早い時機に始めることです。これらの計画を実行することで、ストレスの多い状況に対処するだけの強さと手段を得ることができます。それらを早くに活用し、力と必要なときに得ることのできる支援を整えます。
・結果の点検
毎週か、それぐらいの間隔で、時間を取って、介護者としてどうであったかを省みてください。このガイド全体を見て、良い介護者にどれくらい当てはまるかを自問自答してみてください。このことはこのガイドブックの冒頭で述べております。
・もし計画がうまくいかない場合
自分に期待したことについて現実的に考えることです。完璧であることを期待するべきではありません。誰でも失敗はするものです。ガン患者の介護者たるべく学び、慣れるまでには時間がかかります。介護で特に難しい部分があれば、誰かに手助けをお願いしましょう。
基本的なことでできないことがあるなら、主治医、看護婦、あるいはソーシャル・ワーカーと話しをし、必要な手助けを得ることについて相談をしましょう。あるいは、あなたが大変動揺して、すべきことを処理する能力が妨げられたり、ひどい憂うつや不安の症状があるなら、力を借りるよう主治医、看護婦かソーシャル・ワーカーに相談するべきです。