第11章 倦怠と疲労


原典: Tiredness and Fatigue

URL: http://www.collmed.psu.edu/pedsonco/Chapter11.OL.html

[この家庭でのケアに関する情報はほとんどの状況に当てはまると思われますが、そうではない場合もあります。医師や看護婦がここに書かれていないことを勧めるときは、その指示に従って下さい。緊急事態だと思われる場合は、「専門家の助力を求めるのはいつか」の項に直接進んでください]


問題を理解する


子どもさんや思春期にある人たちがガンを患っていると、病気そのものあるいはその治療によって疲労や倦怠感を感じます。その原因としては酸素を体内に運ぶ赤血球がすくない貧血症が考えられます。また、食欲が進まないために起こる栄養不足や放射線治療や化学療法によって攻撃されてガン細胞が破壊されたために老廃物が一時的に増えることも原因になります。

人によっては治療が一つ終わるたびに倦怠感を感ずることがあります。患者の訴えとしては、身体に十分な力がない、あるいは動きたくないというようなことです。

倦怠感は、時には正常な休養や睡眠が阻害されて起こることもあります。ガンを患っている人は精神的に落ち込むためにそうなることがあります。

このような時にお子さんが無理なくできると思う以上に何かをさせるような無理じいは控えるべきです。反対に、お子さんがどの程度であればできるのかは子どもに主導権をもたせましょう。お子さんの活動を過度に制限しないでください。もし、疲れ方が増しただけでなくほかにも症状があれば、医師や看護婦に話すことが大切です。

あなたのお子さんに対しての目標は

いつ専門家の支援を受けるか


最初の質問として自問すべきことは、倦怠感で医療的専門家の支援を受ける必要があるのか。緊急の支援が必要となるのは、予期しない身体的な問題を示した場合です。

次に述べるような事柄があてはまる場合には、速やかに診療所、医師あるいは看護婦に連絡を取ってください

眩彙感(げんうんかん)
眩彙感(めまい、もうろう、失神)や均衡を失うような感覚は、歩行しているときやベッドから離れる場合、あるいは立っている状態から座るときなどに起こるものです。眩彙(めまい)は動いたり身体の向きを変えることがない場合でも起こるものです。このような徴候は誰にでも時折みられるものですが、もしこのような状態の程度がひどかったり、またしばしば起こるようであれば医療の力を借りる必要があります。
転倒して傷を負ったり、出血したり、また精神的な混乱や意識の混濁がある。
このようなひどい転倒が起きたら必ず、医師や看護婦に連絡を行ない、転倒原因の診断を仰ぎ、どのような対策が必要かを聞く必要があります。ときには、医師や看護婦は予防策を提言することがあります。
起床することができない
これは意識や敏捷性に関する突然の予期しない変化です。お子さんを起こすことができない場合には速やかに連絡を行なうべきです。恐らくお子さんを医療施設に連れて行き、原因究明のために検査を受ける必要があるでしょう。
呼吸が止まりそうな感じがする、休息中に呼吸が早くなる、あるいは休息中に心臓の鼓動が早くなる、あるいは急に極度の頭痛を訴える
呼吸がとまるという現象は、貧血(赤血球値が低い)のために、身体が十分な空気と酸素を摂り入れていない場合に一般的に起こるものです。希な場合ですが、肺や呼吸器系に問題があるときにも起こることがあります。


次に述べるような事柄があてはまる場合は、通常の診療時間内に診療所、医師あるいは看護婦に連絡を取ってください

いつも耳鳴りがある
これは薬品に反応して、脳への血流の変化、その他の体調の変化があるために起こることがあります。普通は原因を知るために、医学的な検査が必要となります。
くりかえし頭痛がある
くりかえし頭痛があるのも貧血や感染がおきていることを示していることがあります。
眠ってばかりいる
お子さんや思春期にある患者が、食べたり遊んだりというような普通の子どもがとる行動よりも寝ることに興味を示すのは、貧血あるいは精神的なうつ状態による活動力の低下を示す徴候です。
顔色が特に青白い
貧血を示すものです。

医師や看護婦に電話をすると次のような質問をされるでしょう。

  1. お子さんの意識はどの程度はっきりしていますか?
  2. 疲労感が増してから混乱の状態が出ていますか、あるいは増えていますか?
  3. お子さんは元気がなく気が滅入っているようですか?
  4. 例えば鎮痛薬か睡眠薬など、何か新しい薬の服用を始めましたか?
  5. お子さんの日々の活動程度は?お子さんは子どもが普通日中にするような活動に参加するより寝たがりますか?
  6. 就寝時あるいは昼寝などの時に何かの変化に気が付いたことはありますか?
  7. 熱はありますか?
  8. お子さんの顔色はどうですか?

電話をするときに参考となる例を紹介しましょう。
"私はカレン アンダーソンで、クリストファー アンダーソンの母親です。息子はバート先生の患者で、ALLの診断を受けました。在宅介護ガイドで疲労の項に、食事や遊ぶことをせずに寝たがるような時には電話をするようにと書いてありますので電話をいたしました。"

あなたにできることは何か


あなたが倦怠について緊急事態ではないと判断したら、次に述べる方策を問題解決のために試してみましょう。

  1. 一日を活かすために支援をする
  2. 休憩と睡眠を促す

☆一日を活かすために支援をする

お子さんが一番気分が良く身体が目覚めているときに、人との交わりやお出かけをするように計画を立てる。
日中でも夜でも、お子さんの調子が一番いいときに、活動できることを計画立てます。間には休む時間を取り、スケジュールにゆとりを持たせ、余りたくさんの活動や多くの人と会って疲れないようにします。
入浴、着替えや散歩の間などには休憩を取る

これらを行なう時間を短くし、体力の消耗を避けることです。

楽しみや気を紛らすようなことを計画するのであれば、事前に休養をとるようにうながしましょう。
最も大切なやりたいことを認める。
何をすれば一番の楽しいか、あるいはどうしてもやりたいのは何かを話しあってみましょう。計画のなかで一番位置づけの高いことを実行するように促します。
ゆっくり起き上がったり動作を遅くすることで、めまいや転倒を防ぐ
めまいは疲労から起きたりします。お子さんが横になった状態から置きあがる時、(ベッドであれば)一度足をベッドサイドからぶら下げた状態で座り、数分休んでから立ち上がるようにさせてください。めまいや立ち眩みがしばしば起こるようであれば、安全器具を使うことを考えてください。(頭を保護するものがあります)"出血"の項の安全対策についてを参照してください。
疲労を軽減するための規則正しい運動を取り入れてみる
疲れていても、毎日行う活動を計画しましょう。それがたとえ、着替える、歩いてベランダまで出るというような、ささやかな運動でも良いのです。軽いお散歩などもとても効果的です。
バランスの良いスナックや食事を与える
食事は四つのグループからバランスよい割合で与えることです。肉類、酪農製品からは必要な蛋白質が摂取できます。もし、財政上の心配があるのでしたら、高蛋白食が摂れるよう支援する栄養プログラムWICなどについて栄養士かソーシャルワーカーに相談してみてください。次に大切な栄養素である炭水化物はエネルギーの基となるものです。米飯、麺類、パン、果物やポテトも与えることです。

☆休憩と睡眠を促す

日中はできる限り活動的に動き、適度の疲労が夜にでるように心掛けること
お子さんが日中通して活動すれば、夜は容易に眠りに就くことができます。
できるだけ昼寝や睡眠をパターン化する。
昼寝や就寝を規則正しく取ると、身体がそのリズムを覚えるので、お子さんは眠りやすくなります。規則正しい習慣こそ睡眠を助けることになります。
神経質になったり、不安があったりして眠れないようなら、親御さんの不安を読んでみてください。
不安は休息や睡眠を妨害します。不安に対処するためのよいアイデアがいくつか18章に書かれています。お子さんと話しをしたり、身体に触れたり、話しを聞いてあげることも安堵感をもたせます。
疲れているときには早めにベッドに入り、早起きせずゆっくりと眠り、昼寝するように勧めてください。
もし、昼寝をすることが習慣であれば、長く休むことで疲れを減らすことに役立ちます。
心が安らぐ音楽を就寝前に流す。
以前よく眠るために効果があったことはなんでもやってみます。音楽は心が安らぎます。テレビの音声や、本の読み聞かせの声なども、同様です。
寝る前に暖かい牛乳もよい
牛乳にはアミノ酸(トリプトファン)が含まれており、眠気を誘うものです。
寝る前にぬるめのお風呂や眠りにつくときに背中をさすることも眠りを誘う


考えられる問題点


お子さんの疲労に対処するのに妨げとなる思考や態度について考えてみましょう。

"疲労は治療が原因なので、親としては何もできない"
アドバイス:確かにガン治療は疲労を招くことが多いですが、疲れがお子さんの生活に影響を及ぼす程度については、あなたがコントロールできます。この計画を他の人に見せることで、休息や睡眠が大切であることを分からせられます。お子さんの疲労感を減らすためにできる限りの方策を試すことです。

"心配なことがたくさんあるのだもの、眠れないのも無理ないね"
アドバイス:このようなことは、子どもでは、大人ほどは見受けられませんが、睡眠を良くとることが結局は不安をいくらか解消してくれるものです。というのも、身体的疲労があれば不安やびくびくした気持ちが一層強くなるからです。お子さんの最優先事項の一つとして、よりよく休めるよう目指しましょう。
計画の実行と調整


結果の点検
お子さんが一日の内どれだけをベッドで過ごしたかを記録する。お子さんに活動の優先順位を決め、重要で、やりがいのあるものを選ぶよう話しましょう。現在の睡眠や休息のパターンが発病以前と同様であるかを調べてみる。

計画が機能しない場合
計画が思ったように機能していないか、あるいは疲労の状態が悪化しているなら、できることはいくつかあります。変化を性急に期待しているのではないか自問してみてください。疲労を取り去るには時間が掛かるのが普通です。新たな計画あるいは対策を本書に示している諸ステップを考えて策定してください。

疲労感が増し、お子さんにとって重大問題のようであれば、医師や看護婦に相談することです。また、彼らに今まであなたはどのようにし、またどのような結果であったかを説明してください。

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