アメリカ内科医師会−末期ガン患者の家庭看護の手引き6章
生活の質が看護の第一目標である時に
ガンの疼痛
原題:Cancer Pain
URL:http://www.acponline.org/public/h_care/3-pain.htm
訳者:撫子なんちゃん
訳者注−以下の第一節「考えられる問題点」は原典では末尾の方にもありますが、患者さんのご心配な点を先に挙げた方がいいと判断し、初めにも持ってきました。ご了承ください。
考えられる問題点
色々な介護者が経験してきた、一般的に良くある問題点です。
- 「習慣性、耽溺性がでないかと鎮痛剤を使うのが不安です。」
回答: 痛み止めとして麻薬を使う人が習慣(麻薬中毒)になることは滅多にありません。現実には、痛みが効果的に処置されれば、習慣(麻薬中毒)になる危険性も減るのです。
麻薬中毒になる人は気分を高揚させるために飲んだり、精神興奮状態になりたくて飲むのです。ガンの疼痛緩和のために麻薬を使うのは、肉体的苦痛から解放されるために飲むのです。ガンの疼痛緩和のために麻薬を飲みはじめる前に常習者でなかった人は、後にも、常習者にはなりません。薬が痛みをコントロールするために使われているのであって、精神的な気分の高揚を求めて使っているのではないこと、そして、鎮痛剤は中止して影響がなければ、使用を中止できるということを忘れないでください。(訳注−耐性ができることや身体的薬物依存と、精神的薬物依存症、麻薬常習者になるのは意味が違います)
あなたが世話している人が麻薬中毒にはならないとわかっても、他の人たちは分からないかもしれません。しかし、そうした人たちに考えを改めてもらおうとして、多くの時間を費やすのは止めましょう。ただ、この薬は一連の薬物治療の一部で、患者の生活の質と患者にとって、とても大切なことを成すために絶対になくてはならないものであることだけを伝えましょう。
- 「痛みがもっとひどくなるまで薬は控えておきたい。」
回答: 現在の穏やかな不快感に対して鎮痛剤を使うことが、将来あるいは痛みがもっとひどくなった時に、よく効くかどうかに影響することはありません。今日飲むべき薬を、単に「後からもっと沢山必要になるから」といって「貯えておく」ために鎮痛剤を隠しておくようなことはしないでください。実は、最初に痛みが出てきた時にそれが増強するのを防ぐために用いる薬の量よりも、疼痛管理されず強くなった痛みに対処するのに用いる薬の量の方が、沢山必要なのです。
中には薬の量を増やす必要のある患者さんも時にいますが、これはそうした人が薬に「免疫性」?(耐性)ができたり、同じ程度の痛みを抑えるためにどんどん薬を増量しないといけないなどということを意味しているのではありません。この人たちはその痛みそのものが変わったために薬を増量する必要があるのです。このような薬のほとんどについて、患者さんが飲んでもいいという実質的な上限値はありませんが、患者が万一そうした限界値に達したとしたら、医師は他の薬に変えることができます。今現在、痛みがコントロールできているのなら、あなたも患者も後にコントロールできるかについて心配する必要は余りありません。というのは、あなたは薬が有効であることを知っているからです。さらに、今十分に薬を服用していることは、痛みのある患者の緊張をほぐし、体力を維持するのに役立つからです。
- 「誰も私の痛みのことなど聞いてくれないのです。」
回答: 痛みを感じている人は、家族やともだちが、どうしていいのか判らないために、痛みに無関心であるかのように見えるということを理解するべきです。(麻酔科)疼痛クリニックやホスピスにいる医師や看護婦のように痛みを扱うのが専門の人はわかります。こうしたことで孤独を感じるなら、彼らに話しましょう。
- 「死んで行く人だけがモルヒネを飲むのでしょう?」
回答: モルヒネは 死に行く人たちだけに使うものではありません。それは色々な種類のガンの痛みに有効な薬で、
それを飲んでいるということはその人がやがて死ぬ人であるということではありません。モルヒネは病気のすべての段階において、慢性の痛みをコントロールするために使われます。モルヒネがとても良く効いて無痛の生活に戻れたために、仕事に復帰して以前と全く同じく日々の活動を営んでいる人もあります。
- 「 もしこの薬を飲ませたために彼が死んだら、彼を死なせたのはその薬ということなのですか?」
回答: 鎮痛剤は安堵に通じます。死が訪れた時は、それは病気のせいで、薬のせいではありません。薬を飲み過ぎたら、患者さんは通常とても深く眠るだけです。医師は、身体の中の麻薬を解毒する薬(拮抗剤)を出し、その人を起こすこともできます。鎮痛剤をのませるかのませないかは安堵の程度を変えるだけで、病気の影響まで変えることはありません。
- あなたの考えを実行するのに妨げとなるものを考えてみましょう。
あなたの計画を進めていく際に、他にどんな障害があるでしょうか?たとえば、末期ガンの人が協力的でいてくれるでしょうか?
他の人は助けてくれるでしょうか? あなたが求めていることを他の人にどう説明しますか?
それを実現させるだけの時間と体力はありますか?
こうした障害を乗り越えていくには計画を発展させる必要があります。COPE(対処)(URL:
)思考= (Creativity創造性、 Optimism楽天主義、 Planning計画性、 Expert
information専門家の情報)を活かしましょう。そして、「ガイドを参考に問題点を解決する」のところを見て(URL:?リンク未)あなたが問題を乗り越えるためにこうした考えがどう活かせるか
を話し合いましょう。
- ★訳者コメント―COPE思考を私は「くじけない」と置き換えてみました。
「く−クリエイティブに工夫を凝らし、じ−情報豊かに、け−計画だてていけば、な−なんとかなるさ・・を、い−活かしましょう」―です。さあ、COPE思考でいきましょう。
概論
- 問題点を理解する
- ガンの痛みはコントロールできます。
末期ガンの患者さんは十分に疼痛緩和される権利があります。
介護者としての務めの一つに疼痛管理を確実に行うことがあげられます。
適切な疼痛緩和を達成するには時間がかかりますから根気よく取り組むことが必須です。
疼痛のある人にしか、その痛みがどんなものか、わかりません。
疼痛があることがガンが広がっていることを意味するなどとは決して思わないでください。
医師は疼痛管理するのに鎮痛剤の段階をどう使いわけるのでしょうか。
- 専門家の助力を求めるときはいつか
緊急事態を意味する徴候
助力を求める時のために整えておく情報
電話で伝えるべきこと
鎮痛剤の副作用で、すぐに専門家の助力を求めるべきときは
緊急で助けを求めるべき時はどんなときか。
緊急事態ではなくても、医師に伝えるべき徴候
助力を求める時のために整えておく情報
あなたにできるこは何か
鎮痛剤の最善の使用法を守る。効果を最大にする。
薬の投与計画を理解しておく。
薬の変更、投与時間、投与量について尋ねる。
鎮痛剤の一般的な副作用に気を配る。
鎮痛剤を使いこなす。
薬物以外の方法でも痛みを予防し、抑える。
考えられる問題点
「常用して習慣性、耽溺性がでないかと不安である。(麻薬中毒のように)」
「痛みがひどくなるまで薬は控えておきたい。」
「誰も私の痛みのことなど聞いてくれない。」
「死んで行く人だけがモルヒネを飲むのだろう。」
「もしこの薬を飲ませたために彼が死んだら、彼を死なせたのはその薬なのか?」
あなたの考えを実行、調整するために
痛みの強さを記録に残しておきましょう。
患者の訴える痛みの度合いを、介護者はそのまま認める。―ということを患者が理解するべきです。
最良の疼痛緩和以外の何も(妥協して)受け入れないことです。
必要なら、ガン疼痛緩和専門家に紹介を頼みましょう。
頭に矢印⇒のついているトピックはあなたにできる行動、またはあなたが気づくことができる徴候です。 |
この家庭でのケアに関する情報はほとんどの状況に当てはまると思いますが、あなたの場合は違うかもしれません。
医師や看護婦がここに書かれていないことを勧めるときは、その指示に従ってください。緊急事態がおきそうなときは、専門家の助力を求めるのはいつかを参照してください。 |
- 問題を理解する
- 末期ガンの患者さんは皆、十分な疼痛緩和を得る権利があります。疼痛管理ができることを確信することが、自宅療養の介護者としてのあなたの務めです。
- 十分な疼痛コントロールを得るまでには時間がかかりますから、辛抱強くなってください。適切な疼痛管理が達成されるまであきらめないでください。
- ガンのことを考える時、多くの人は痛みのことを思います。しかし、今日では、ガンによる痛みの大半は緩和でき、消してしまうことさえできるようになりました。たとえば、末期ガンでも、90〜99%の症例で痛みをコントロールできます。十中八九、医師は錠剤の投与だけで痛みをコントロールできるのです。すなわち、注射、手術、その他の方法をする必要はないのです。まれにガンの疼痛が完全に消えない場合でも、痛みを和らげることはでき、それによって末期ガンの患者さんもその痛みを抱えたまま日々を過ごしながらも、自分にとって大切なことを成し遂げていくことができるのです。
- 末期ガンの患者さんも自宅療養の介護者も、毎日の活動に、痛みがどの程度障害になっているのかを医師や看護婦に伝えるべきです(自由に動き回れるか、着替えはできるかなど)。こうした情報は、医師が、患者の痛みの程度を評価し効果的な治療をしていくのに役立つものです。
- 皆が心を開いて協力しあうことも大切です。家族や友人は患者さんを信じていることをはっきりと言うべきです。自分の感じる痛みがどんなに強いものかを本当に解るのはその痛みを体験している本人だけなのです。患者以外の誰も、本人ほどに解る人はいないのです。
痛みに苦しんでいる人がまわりの人は誰も自分を信じてくれないと感じてしまったら、腹が立って自分の痛みを正確に伝えることさえやめてしまうかも知れません。それは痛みのコントロールをより困難なものにするだけなのに。。。
- 鎮痛剤の濃度が血流にのって安定するには時間がかかりますから、痛みを管理下に置くのも同様に時間がかかります。医師は薬の種類や投薬量を変えたりして、一番効く方法を探す必要があります。痛みをコントロールするために自分にできることを学ぶにもまた時間がかかります。しかし、完全なコントロールは早急に成し遂げられるものではないのですからあきらめないでください。ガンに伴う疼痛はほとんどが管理で
- きるものだと言うことを覚えておいてください。
- 痛みのある人が今までと違う痛みを感じた時、多くの人はそれをガンが進行している印だと思い込むのです。しかし、痛みはガンから生じてくるものとは全く違うかもしれません。例えば、治療が組織に変化をもたらし、萎縮したり腫脹したりして、それで痛むことがあります。体重が減少したり増加したりしても組織や筋肉に変化が起こり、これもまた、痛みをもたらすことがあります。ガンの進行そのものに加えて、色々なことがこうした経験したことのない痛みや不快感を生むのです。
医師はどのように疼痛を管理するか
ガンの疼痛を治療する医師は、世界保健機構WHOによって取り決められた「ガン疼痛管理のための鎮痛剤3段階使用法」を利用します。それを以下の図に示します。通常、医師はできるだけ低いステップから治療を開始し、疼痛のコントロールが達成されるまで徐々に強いものに変えていきます。
- STEP 4: ガン疼痛からの解放
- STEP 3:強力オピオイド系鎮痛剤 ±非オピオイド系鎮痛剤 ±補助薬剤
- ↑なお持続性の疼痛あるいは増強する疼痛がある時
STEP 2: 弱オピオイド系鎮痛剤 ±非オピオイド系鎮痛剤 ±補助薬剤
- ↑なお持続性の疼痛あるいは増強する疼痛がある時
- STEP 1: 非オピオイド系鎮痛剤 ±補助薬剤
- ↑痛み
- (訳注)オピオイド=麻薬およびその類似物質のこと。±は適宜併用を意味する。
★Step 1 穏やかな痛み: 非麻薬性鎮痛剤
こうした薬は次のようにも呼ばれています。
(訳注)大文字で始まる英単語はアメリカでのOTC薬(薬局で買える薬)を含む薬の商品名です。小文字で始まるのは成分名です。カタカナは日本での商品名などの一例です。
1. 鎮痛剤: (例) アセトアミノフェン(acetaminophen)= Tylenol
2. 非ステロイド系抗炎症剤: (例)アスピリン(aspirin)、イブプロフェン
(ibuprofen)=Motrin 、Advilなど
3. 補助薬剤: この分類の薬剤は特殊な痛みや、他の症状を抑える薬です。例えば、抗うつ剤
Elavil(amitriptylineトリプタノール)、抗てんかん剤 Tegretol(carbemazepinテグレトール)、
Dilantin(phenytoin アレビアチン)、制吐剤、抗不安剤Xanax (alprazolam ソラナックス)、Valium
(diazepam セルシン)、 Ativan (lorazepam ワイパックス)、 Atarax(hydroxyzineアタラックス)、Vistaril
(hydroxyzine)などです。
★Step 2 中等度の痛み: 弱い麻薬性鎮痛剤とその他の鎮痛剤の併用
ステップ1の薬で効果がないか、痛みが中等度と見られる時、次のステップを用います。弱い麻薬性鎮痛剤は、より効果の強い鎮痛剤で、ステップ1に挙げたようなその他の薬剤と一緒に処方されることが多いです。弱い麻薬性鎮痛剤の例としては、コデイン、Darvon
(dextropropoxyphene)、Darvocet(propoxyphene and acetaminophen mixture)、
Empracet、 Wygesicなどです。ただし、Darvon、 Darvocet、 Wygesic は長期に渡って用いると副作用が出ますから、一般的に長期間の連用はされません。この分類の中で、更に強力な薬にはオキシコドン配合剤(Tylox、
Percocet、Percodan)があります。
★Step 3 強い痛み: 強力な麻薬性鎮痛剤とその他の鎮痛剤の併用
ステップの最終段階が示すものは、ひどい疼痛のコントロールに使われるべき薬剤類です。強力な麻薬性鎮痛剤には短時間作用型と長時間作用型があります。モルヒネ、ハイドロモルフォン(Dilaudid)、
オキシモルフォン(Numorphan)は強力な麻薬性鎮痛剤の例ですが、作用の持続時間は3〜4時間です。
メサドン(Methadone)も強力な麻薬性鎮痛剤で、これは4〜6時間鎮痛効果が得られます。こうした薬剤には12時間持続放出型の錠剤もあります。
あなたの到達目標
次のような緊急事態時には専門家の力を求める。
1) 強烈な痛み、 2) 鎮痛剤の反応
緊急事態でなくても専門家の力を求める。
鎮痛剤の使用法を最良のものにする。
薬の投与計画を理解しておく。
必要なら、鎮痛剤の処方変更を頼む。
鎮痛剤の一般的な副作用に気を配る。
薬物以外の方法でも痛みを防ぎ、抑える。
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専門家の助力を求めるとき
- 緊急を要する事態の徴候
次のような状態が一つでもあれば医師、看護婦に電話をしてください。
⇒ ブレークスルーペインをおさえる作用が有効でなく、長時間作用型の鎮痛剤(6〜12時間の鎮痛効果が期待される)の服用の合間に痛みが依然としてある。
・ブレークスルーペインとは規則正しく計画され持続的に服用した投薬で得られた「痛みからの解放」をなお突破して起こる痛みです。この種の痛みは指定された服薬時間の合間に起こってきます。
⇒ 痛くて起きたり歩いたりできない。
・腫瘍が神経を圧迫し強い痛みを(特に身体の動作に付随して)おこします。腫瘍の周囲の腫脹や炎症も軟組織や神経を圧迫します。この場合は、ガン患者はひどい痛みを感じ、通常はその痛みを訴え、寝ている患者では起き上がることはできず、支えなしには歩けないこともあります。
⇒ 痛くて眠れない。
・不快感、うずき、痛みなどで眠れないという症状があれば、患者の安楽感を増すために確実に何らかの対処をしなければなりません。
⇒ 痛くて泣いたり気を取り乱したりする。
・痛みに対する身体の反応を良く見てください。涙がでる、目を閉じる、まゆをしかめる、額にしわを寄せる、しかめっ面をする、こぶしを強く握る、胴体をこわばらせ(胸、背中)動作もゆっくりしている―などの様子が見られたり、患者が強い痛みを訴える時には医師または看護婦にすぐに知らせてください。
⇒ 動いたり、動作時に筋肉が緊張し過ぎて力を入れるのをいやがる。
・患者が何も訴えなかったり、何も変わったことはないかのように振る舞おうとしていても、患者さんの動作がどれくらいスムーズか見てください。痛みがある人は動作に困難を伴っていたり、なるべく動かさないようにしたり、着替えやベッドから出るなどの普通の日常のことをしなかったりします。
⇒ 骨が尋常でなく突き出てみえる。
・人は加齢するにつれて骨が折れやすくなり、骨のガンでは余計にそのリスクが高くなります。もし骨が今までとは違って、目立って突きでて見えたら痛みがすぐに伴わなくても連絡してください。
医師や看護婦に電話をかける時は、以下のような問いに答えを用意しておきましょう。
- いつごろから痛みに悩まされているか?
- どこが痛むのか?それは一ヵ所以上か?
- その痛みはどれくらいひどいものか? 0〜10の数字を用いてその痛みの強度を表わすよう患者に聞いてください。0=何ともない、
5=中等度、10=今までで最悪。
- その痛みは刺すように鋭い痛みか、鈍くうずく痛みか?
- その痛みは焼けるような痛みか、電気ショックのような痛みか?
- しびれた感じや、ひりひりした感じがあるか?
- その痛みにより正常な活動がどの程度さえぎられているか?
- 現在痛みに対して出されている処方は?
- 薬の名前(全部)
- 薬と薬の間に何度くらいひどく痛むか?
- 一度に何錠のめるか?
- 過去二日間にどれだけ薬を飲んだか?
- 薬が効くまでにどれくらいの時間がかかるか?
- 痛みはどれくらい抑えられているか?
- 鎮痛効果は何時間ぐらい続くか?
- 患者さんはまだ、錠剤を飲むことができるか?
- 他にどんな薬を飲んでいるか、また、痛みを抑えるために薬のほかにどんなことをしたか?
そしてその効き目はどうだったか?
- 専門家の助けを呼ぶ時は、例えば次のように連絡を取ってください。
「私はメアリースミスです。ジョンスミスの妻です。夫の主治医はハーヴェイ先生です。今朝、夫は脚がお尻までひどく痛んでベッドから起きるのを拒みました。その痛みは夫がベッドの中でちょっと動こうとするだけでも痛むらしいのです。夫は10段階表示で8で、とても鋭い痛みだといいます。午前6時にPercocetを2錠のみましたが少しも楽になりませんでした。次の痛み止めの服薬はお昼までありません。温熱パッドも試しましたが効果がありませんでした。」
鎮痛剤の副作用ですぐに専門家の助けを求めるべき時は
- 薬物への反応や麻薬性鎮痛剤の過量投与は疼痛緩和に絡む別タイプの緊急事態です。末期ガンの患者さんが鎮痛剤に対してアレルギーがあったり、鎮痛剤が強すぎたりした時には専門家の助力が必要です。
以下の「すぐに連絡」すべき症状一覧の多くは薬物反応で中枢神経系、消化器官、尿路、皮膚に問題をおこしていることや、身体の正常な機能がひどく損なわれていることを示しています。薬が強すぎるか、特異なアレルギー反応が起きているのです。
この一覧にあるような副作用はすぐに対応を必要とします。医師や看護婦に連絡してこのような症状を伝えると、彼らは一番に患者をすぐに診せるように言うでしょう。あるいは誰かをあなたのところへ来させるはずです。現状を評価した後、身体に残っている薬の作用を消すために拮抗する別の薬を出すこともあります。他に、中枢神経系を落ち着かせ、アレルギー反応を抑えるために作用系統の違う薬を処方することもあります。
薬物反応による問題は余りよく起きることではありません。しかしもし起きた時には、ただちに助力を得ることが大切です。以下のような徴候が一つでも出れば、すぐに医師または看護婦に連絡してください。
⇒ 幻覚、幻聴に悩まされる (現実にはないものが聞こえたり見えたりする).
⇒ 耳鳴りがする。
⇒ 突然錯乱状態になったり、意識が瞬間的になくなりボーッとする??
⇒ 重度の震せん、抑制のきかない(不随意の?)筋肉の動き、けいれん、発作。
⇒ 足、下腿のしびれ感、ひりひり感。
⇒ 以前にはなかった症状としての、排泄コントロール不能(尿便の失禁)
⇒ 尿意があるのに排尿できない。
⇒2〜3日排便ができない。
⇒ おさまらない吐気、嘔吐。
⇒ 蕁麻疹、かゆみ、発疹、顔のむくみ。
- 医師や看護婦に電話をかける時は、以下のような問いに答えを用意しておきましょう。
1. ここ数日間に、何の鎮痛剤を飲みましたか?
2. 量はどれだけ飲みましたか?
3. この薬を何回飲みましたか?
緊急事態ではないが報告しておくべき症状。
以下のような⇒状態が一つでもあれば、医師や看護婦に伝えること。
⇒ 処方どおり、鎮痛剤を3回飲んでも痛みが良くならない時。
・医師または看護婦に電話をして、問題点や続いている痛みについて話し合いましょう。
⇒ 薬を飲み出してから、あるいは薬の投与法や投与量が変わって新しい指示の通りに薬を飲み出してから1〜2日経って、痛みはいくらかは良くなったが、まだ相当に痛みが残っている時。
・医師または看護婦が、今処方されている鎮痛剤の量や薬の種類を再評価する必要があります。
⇒ 今までとは違った痛み方、新たな部位の痛み、動いたり座ったりする時の新たな痛みがある時。
・新たな部位に痛みが出たら、どんな痛みでも報告することです。予定通りの次回の定期的診察を待たずに、その痛みを評価する必要があるでしょう。
⇒今までにない、しびれ感、ひりひり感、灼熱感がある時。
・これは、神経系や今飲んでいる薬の総量に問題が起きていることの早期のサインかもしれません。すぐに医師か看護婦に知らせ、原因を特定して、今の治療計画に必要な改善を施せるようにしてください。この種の痛みは一般的に処方される麻薬や鎮痛剤とは別の薬で治療される必要があります。こうした感覚があると報告をされることで、今回の痛みがこれまでに報告されている痛みとはちがうことが分かるのです。腫瘍が神経を侵し始めると、しびれ感、ひりひり感、灼熱感、瞬時の電気ショックの様な感覚が起きてくるかもしれません。こうした問題を解消し、患者に睡眠をとらせるには少量の抗うつ剤が効果的で、これは脊髄中(神経シナプス)の神経伝達物質を再調整(活性増加につながる)するため、これらすべてが痛みを良くコントロールできる結果につながります。
⇒ 定期的投与の鎮痛剤に加えて一日に3度以上、ブレークスルーペインのための薬を飲んでしまった時。
・計画どおりの鎮痛剤投薬、例えば4時間ごとの薬では痛みがおさまらなかったのかどうか報告してください。医師は投薬計画を変更するか、急なブレークスルーペインが襲ってきた時に、「必要に応じて」として、追加処方をするかもしれません。
⇒ 起きている時か睡眠時かを問わず、震えや、不随意的けいれんが起きる時。
・こうした震え、けいれんは、医師が鎮痛剤を調節する必要があることを意味していることがあります。
⇒ 動きに伴って、さらに痛みがある時。身体を持ち上げられたりベッドの上で寝返りをさせられた時など。
・付随性の痛みはベッドからおきあがるなどの特定の動作の間、あるいは動作後に起きてきたり、または治療の際にカテーテル洗浄、ガーゼ交換,包帯交換などの処置した時などに起こります。少量の決められた薬を飲むことでおさまるでしょう。例えば、ホスピスでは、モルヒネ液剤を2時間おきに必要に応じて(頓服で)、あるいは痛みを呼びおこすような事柄をする20分以上前には飲むようにアドバイスするでしょう。このようにすれば、痛みを起こすような動きをする頃には、薬が既に効き目をあらわしているというわけです。
あなたにできることは何か
ガンによる疼痛をおさめるのに役立つ5つの方法
- 鎮痛剤の効果を最大限に生かす。最善の使用法をする。
- 鎮痛剤の処方(薬剤、服薬回数、使用量)変更を頼む。
- 同じ薬物でも投与方法を変えることを頼む
他の薬を増やしてくれるよう頼む
- 鎮痛剤の一般的な副作用に気を配る。
- 鎮痛剤を管理する
- 薬物以外の方法でも痛みを防ぎ、抑える。
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- <鎮痛剤の効果を最大限に生かす>
痛みが急を要するものではなくても、患者が規則正しく定期的な痛み止めを必要とする時、患者に薬を正確に飲ませ、痛みがひどくならない内に防いでいるかということを確認してください。
⇒ 鎮痛剤は医師による処方どおり、規則正しく飲ませる。
・痛みが定期的に襲って来て、それが一日に一度や二度でない時、鎮痛剤を一貫性のあるスケジュールにしたがって、あげてください。こうすることが痛みをコントロールするために十分な血中濃度を保ちます。
さらに、患者さんが薬を飲むのを我慢しすぎて後に延ばさない様に、服用を勧めてあげてください。たとえば、鎮痛剤が「4〜6時間おきに必要に応じて」と処方されているなら、あなたは鎮痛剤を4時間ごとに飲ませてあげて良いのです。でも、6時間以上待たないでください。なぜなら、そうすることで痛みがひどくなり、処方された量では十分におさえられないかもしれないからです。
⇒ 薬は痛みがひどくならないうちに飲ませる。
・痛みが定期的に襲って来て、それが一日に一度や二度でない場合、痛みを管理するのはなかなか大変です。痛みの程度が相当に強くなってしまうとコントロールするのにもより長く時間がかかるようになります。糖尿病患者が「血糖の危機的状態」を予防するためにインシュリンが必要なように、鎮痛剤は、「痛みの危機的状態」を予防するために必要なのです。
薬の投与間隔を一定の時間をあけて飲むことは、薬の濃度に山や谷の状態ができるのを防ぎ、身体に安定した量を保つことができます。さらに、薬の総投与量を減らすことさえできていることに気づくでしょう。というのも、痛みを感じている人は、その痛みが管理できるものだとわかることで自信がつくからです。
⇒夜中でも、鎮痛剤は飲ませ続ける。
・患者がMS Contin(=エムエスコンチン=硫酸モルヒネの徐放性カプセルで、12時間おきに飲むよう処方される)のような薬や、Duragesic
、フェンタニルFentylのように72時間効果が続くものを使っているのでなければ、深夜でも、薬の服用を4時間以上空けることのない様にします。短時間作用型の錠剤で、服用時間を空け過ぎると、体の中の薬の濃度が下がり、痛みの度合いは増え続けることになります。こうなると、次の服用までに長時間待ち過ぎたために、患者が元の適切な鎮痛剤の量までたどり着くには、さらに沢山の薬が必要になります。
例え深夜でも、きちんとした計画どおりに錠剤を飲ませることは、ブレークスルーペインが起きるのを防ぎます。投薬スケジュールを厳密に固守することで、次の望ましい量に落ち着くまでの長い間を待たなくても良いのです。
時々、「眠前服用量」が指示されます。これは、患者の眠りを妨げない様に、寝る前に多めの投与量で鎮痛剤が与えられるものですが、それでもなお、夜を通して、決められた通りの服用をさせなければならないでしょう。
⇒ 数週間飲んできた鎮痛剤は、急激にやめないこと。
・鎮痛剤が急に止められると、身体はほとんど「ショック」を経験するようなものです。身体は、こうした薬が血流にのって一定の流れで入ってくることを予期しています(に慣れています?)から、まるで突然、禁煙したりコーヒーを飲むのを止めたりしたかのように、退薬症状がおきてきます。薬の投与間隔をあけて、用量を少なくすると、薬を次第に弱めていくことができます。中止したことによる不快感―例えば震えや頭痛など―は数日かけて医師の指示のもとに徐々に薬を止めれば、起こりにくく、問題になりにくいのです。
⇒ 鎮痛剤を正確に飲ませることが、痛みを増強させるその他の問題―例えば筋肉の緊張、睡眠不足、感情的苦痛など―をも解消するのに役立つと思うこと。
・鎮痛剤の服用により、もはや痛みと闘わなくて良いのですから、患者には安堵と休息がもたらされ、不安を軽減させることができます。それは、痛みを増強するような、筋肉の緊張や睡眠不足、感情的な苦痛といった問題を解決するのにも効果があるのです。
⇒ 次のような時には、どうするべきかを医師や看護婦に聞く。
1. 薬の効き目が切れて来て、痛みが戻ってきた(または処方どおりに薬を飲んだが痛みがきえない)けれど、次の服薬時間までまだ時間があるとき。
2. 痛みのせいで患者が夜中に目覚めてしまうとき。
3. 薬を飲むのをうっかり忘れて飛ばしてしまったとき。
⇒処方された薬を患者が飲み込みやすい様に、薬剤師につぶしてもらったり、液体に混ぜて飲ませたりしても良いか調べる。
・MSコンチンのようなある種のくすりは、つぶしてはいけません。そのようなことをしたら、薬成分は全部一度に吸収されてしまうからです。薬の成分が徐々に出され作用部位に到達するように作られている場合には、これは危険です。患者が嚥下障害(飲み込みにくい)がある時には、ホスピス職員は他の投与方法を示してくれるでしょう。
<薬の投与計画を理解しておく。>
医師、看護婦がいつ、どのように患者に鎮痛剤を飲ませてほしいかを理解することが痛みをうまく管理し予防する秘訣です。守ってほしい3つの基本的計画を書きます。あなたの看護している人がどれに当てはまるか尋ねましょう。
Plan 1: 必要に応じて薬を使う。
⇒ 「必要に応じて飲ませること」と処方された薬を、いつのませるべきか知っておくこと。(or
"give prn "処方どおり投薬の意味?).
・鎮痛剤が「必要に応じて」と処方されることがあります。例をあげると、薬の容器のラベルには「必要に応じて3〜4時間置に飲んでください」とか、「症状にあわせて6時間置に飲んでください」と表示されていることがあります。これは末期ガンの患者さんが薬を飲む時間を自分で決められるということですが、また、その服薬指導に表示されている数字の小さい方の時間より短時間の間隔で、頻回に飲んではいけないことも意味しています。この最短間隔よりも早く薬が必要な様なら、医師、看護婦とそのことを話し合ってください。投与量が十分でないか、他の薬―タイレノール(商品名)やアスピリンのような鎮痛剤―と併用する必要があるなどのことがあります。
たとえば、処方には「3〜4時間置に適宜飲んでください」とあれば、痛みのある患者は3時間毎にのみ、最後に薬を飲んだ時から3時間後に痛みがまた感じ始められるような場合は特に、そのままずっと続ければ良いのです。患者が鎮痛剤を飲んだ時間を書き留めておくと、医師や看護婦が状態を把握するのに便利です。それをみれば、薬を3時間毎―朝、昼、夕方、夜―に飲んだことがわかり、次の薬までに我慢して4時間空けてはいないことなどが判ります。こうした情報が大切なのです。
「適宜薬を飲む」ということは患者が薬を飲んでから、再度痛みがなんとなく感じられ始めるか、痛みを呼び起こすような活動をはじめる時まで次の薬を待つという意味でもあります。例えば人によっては、かがむとか、入浴のために寝返りをうつなど、何をどうすると痛みが始まるかが明確に判るようになる人があります。そうした動きをする前に、薬をのみ、その3時間後にまた飲むようにすれば、動きに伴って起きる痛みを防ぐことができます。
痛みが3、4、5または6時間して復活し、薬には「適宜飲むこと」指示があるなら、最低2日間は痛みの戻る時間と同じ一定の間隔を空けて飲むことを試みるべきです。もし痛みが4時間して戻ってくるなら、患者さんは4時間置に薬をのみ、6時間も8時間も過ぎるまで待ってしまって、痛みを手におえないものにしてしまわないでください。
Plan 2: 投与間隔を一定時間にして薬をのむこと。
⇒ 一日に指示された回数分だけ薬をのませるには、いつあげれば良いかを理解しておくこと。
・一日に飲む回数だけが指示されていて(何時間置かは、書かれていない時)は、患者の起床時間から始めて、24時間を均等に分けます。たとえば、薬に「一日2回」とあって、患者が朝9時に起床なら、薬は午前9時と午後9時に飲ませます。時間はきっちりでなくても良いですが、一日を均等に分けるのは努力してください。
「一日に4回」とあって、起床が朝9時なら、薬は確実に、午前9時、午後3時、午後9時、午前3時(または深夜のどこかで)に飲ませること。
「一日に6回」とあって、起床が朝9時なら、薬は確実に、午前9時、午後1時、午後5時、午後9時そして夜間は午前1時と午前5時に飲ませること。
Plan 3: 次の投与時間が来るまでに、突発的な痛みが起きた時は別途処方の薬を飲む。
⇒ ブレークスルーペインが再度起こらない様にする。
・通常は、その痛みが起きた時だけのための処方があり、一番主要な効果の強い痛み止めを飲む時間の前に痛みが出てくれば、(頓服の)鎮痛剤を飲むように医師は言うでしょう。
もし ブレークスルーペインが初めて起きた時は、患者が指示どおり薬を飲んでいるかどうかを確かめます。時に、薬を一貫して(規則正しく)飲み続けたり(同じ時間間隔で)、もっと頻繁に飲む(例えば、4〜6時間置に飲むと指示があれば、4時間置にする)ことがブレークスルーペインを予防するのに有効なことがあります。
⇒ 痛みが起きるとわかっていても、動いたり、治療に行ったりしないといけない時に、それに付随する痛みを抑えるには。
・動作に付随性の痛みに対する鎮痛剤が処方され、正規の服薬予定時の間に必要に応じてのみます。この薬は通常とても少量です。例えば患者が家と医療機関を往復する時に、2時間に一度、硫酸モルヒネを2ミリグラム飲むというような感じです。
<鎮痛剤の処方変更(薬の種類、服薬回数、使用量)を頼む。>
患者が処方された通りに薬を飲んでいても、まだ相当量の痛みがあったり、現在の薬の副作用で悩まされている時は、他の薬を考慮してもらったり、投与方法を変えるなどがより効果的であることがあります。
⇒ 薬の総量を増やすように頼む。
・時に、痛みを抑えるための薬が少量過ぎることがあります。その時は、適量が見つかるまで、医師が少しずつ増量してゆくでしょう。
⇒ 薬の投与間隔を短くするように頼む。
・服薬回数が十分でないために薬の血中濃度が適切でないのでしょう。その時は医師が薬の投与間隔を短くし、体内の薬の濃度を高くするようにすることもあります。しかし、間隔を短くするする前には医師に相談し、薬を飲んだのはいつで、その後何時間して痛みが戻って来てしまったかを必ず伝えてください。
⇒ 短時間作用型か即効性の麻薬を長時間作用型(持続放出性)の麻薬の間に飲むことについて聞いてみる。(例えば、即効性のモルヒネをブレークスルーペインに用いる)
・徐放性の麻薬を服用していても突発的なブレークスルーペインが起こることがあります。痛みのコントロールについて最新の情報を知っている医師、看護婦はそうした痛みを止めるには速効性の麻薬を処方することの有効性も知っていますが、2回以上ブレークスルーペインが起こる場合には、長時間作用型の麻薬の増量をするべきです。ブレークスルーペインが再度起こらない様にするために、長時間作用型の錠剤を約2倍量必要な人も中にはおられます。
<同じ薬物でも投与方法を変えることを頼む。>
ほとんどの鎮痛剤は錠剤の形で出されます。しかし、錠剤を飲むのが困難であったり不可能である時には、他の剤型で出すことができます。
⇒ 液剤の鎮痛剤
・末期ガンの患者さんで固形食を摂取できない場合は、錠剤を飲むのは困難でしょう。鎮痛剤の中には液体の形で利用できるものがあります。薬剤師が、一種類以上の鎮痛剤を含んだ液剤シロップを調合することもでき、計量スプーンや(針なしの)注射シリンジ、点眼容器などに入れて、(正確な量を)患者に飲ますことができます。
⇒皮膚貼付(パッチ)型
・近年開発されたもので、皮膚に貼り付ける、経皮吸収型の鎮痛剤もあります。胸や背中に貼っておくと、皮膚を通して薬が吸収され最高72時間まで効果が維持できます。また、錠剤でも、モルヒネの徐放性カプセル(持続性放出型)のように、12時間という長時間にわたって、鎮痛効果が得られるものもあります。
⇒ 坐薬
・鎮痛剤は肛門(直腸)坐薬のものもあります。挿入すると、融けて、身体に吸収されます。
⇒ 筋肉注射
・鎮痛剤には、筋肉注射や皮下注射で投与できるものがあります。しかし、あなたが看護している人が注射針が恐いと思うようなら、とても短い注射針もあります。家族や友人に注射をしてあげられるよう、仕方を学ぶ人さえたくさんおられます。
⇒3日間皮下につけたままにしておく皮下針
・医療ワーカーによって、小さな針が皮下にさされ、家族の手で数時間ごとにそこから薬が入れられます。この管も一定の時間に薬が入るようにポンプや電池式装置に取り付けることができます。針は看護婦の手で、数日毎に交換され部位も変えられます。
⇒ 鼻腔スプレー
・鼻の内側がとても乾燥して痛む時は、鼻腔スプレーを使えば、痛みもおさまり湿り気を与えられます。家庭の暖房の側に加湿器や水を張った容器を置いておくと、空気に湿度を与えられ、鼻の中の乾燥による痛みを鎮めるのに効果的です。
⇒ 中心静脈につながる点滴チューブ
・ヒックマン、ブロビアック、カテーテル、時にはPICC lines− Peripheral(末梢
)Inserted(挿入)Central(中心) Catheters(カテーテル)という名を耳にしたことがあるでしょう。こうした管は中心静脈に入れられます。管は皮膚から外に数インチだけでており、そこから薬がいれられます。PICC
line dressings(カテーテルの洗浄処置、ガーゼ交換など) は、看護婦がクリニックや自宅でしてくれます。
⇒ 脊髄近辺の硬膜外カテーテル
・麻酔科医が薬を入れるために脊髄付近に硬膜外カテーテルを入れます。家族がそこから薬を入れてあげます。
⇒ 皮下に埋め込んだポート
・胸部の中心静脈に薬を入れるための他の方法に埋め込み式ポートがあります。このポートは円形で、金属製で、1インチ幅、深さも1インチぐらいのものです。それは通常、外科手術で胸の上部の皮下に埋め込まれ、看護婦が皮膚の上からそっと触ってみて小さな丸い円盤状のものが正しい位置におさまっているかどうかをチェックします。看護婦はベサジン(米)=イソジン(茶色い消毒液)で皮膚の殺菌をし、そこから血液を採取したり、薬を入れたりします。薬はそこから静脈に流れて行きます。
⇒ 埋め込みポートに取り付けたポンプでの点滴注入
・小さな、携帯式の点滴チューブがついたポンプはベルトに取り付けられます。電池で動き、昼夜を問わず均等に薬を到達させることができます。在宅看護の看護婦や在宅点滴担当看護婦はこれで薬を投薬し、介護者にもポンプやチューブのメンテナンスを指導します。中には患者自身が自分でこのチューブから薬を入れる方法を身につける人もあります。
<他の薬を増やしてくれるよう頼む。>
医師は、鎮痛効果の作用機序が違う数種類の薬を組み合わせて、痛みを抑えることがあります。例えば、抗不安剤や抗うつ剤を感情的緊張を軽減するために加えることで、痛みのコントロールを改善します。
⇒ 鎮痛剤を変えてくれるよう頼む。
・ここに提案されているようなことを色々試みてもまだ痛みがしつこく続くなら、患者、介護者、医療チーム皆が、他の投薬治療計画を検討するべきです。最終目的として痛みを取り去ることをあきらめないでください。
⇒ 痛みの緩和に、放射線照射療法の導入を依頼する。
・痛みを起こしている腫瘍を縮小させるために放射線照射が時に用いられます。加療は毎日され、数日から4〜5週間にわたって続けられます。
⇒ 疼痛外来(麻酔科ペインクリニック)や疼痛管理の専門家に紹介してくれるよう頼む。
・大学病院や大病院には、慢性の痛みを判定、治療する特殊外来を設けていることが良くあります。ほとんどの疼痛外来(麻酔科ペインクリニック)では主治医からの紹介と、カルテの送付を求めます。
疼痛外来(麻酔科ペインクリニック)の医師、看護婦、カウンセラー、薬剤師は痛みに関する特別な問題点を理解しており、あなたの力になってくれます。例えば、麻酔科医は他の治療法が処方されるまでの短期間、痛みを止めるために、神経ブロックをほどこしてくれますし、長期的に効果の持続する神経ブロックを施す場合もあります。疼痛外来(麻酔科ペインクリニック)のスタッフはタイプのちがう痛みが混在している時、2〜3種の薬を併用して処方することもあります。
あなたのかかっている地方の病院に疼痛外来(麻酔科ペインクリニック)がない場合は、そこの医師に他のクリニックに紹介してくれる様、頼んでみましょう。自分で疼痛外来(麻酔科ペインクリニック)に電話をして、見てもらえるかどうか聞いてみても良いです。
⇒ 疼痛コントロールにホスピス職員の力を借りる。
・ホスピスのチームには疼痛緩和の専門家である看護婦や薬剤師が含まれています。様々なタイプのガンの疼痛に関する経験と知識があると、痛みをコントロールし、その状態を維持していく上で、大きな差を生みます。
<鎮痛剤の一般的な副作用に気を配る。>
皆が皆、薬に同じように反応する訳ではありませんが、とても一般的な副作用もあります。これに気をつけ、早期に対処しましょう。
⇒ 便軟化剤や下剤を使って便秘を防ぐ。
・麻薬は脱水作用があります。つまり便中の水分が除かれ、その結果、便秘になります。便軟化剤は便の水分を元の状態に戻し、便をやわらかくして通りを良くする錠剤です。人によっては一種または二種の便軟化剤を午前に服用し、寝る前にも同様に服用して、便秘を防いでいます。
便軟化剤などの緩下剤が効かず、患者さんが2〜3日間便通がない時は、マグネシウムミルク(白くミルクのような液剤)のように純粋な下剤??を与えてください。
便軟化剤や刺激剤の毎日の服用錠数を増やす必要もあります。Dulcolax 坐薬(bisacodylテレミンソフト坐薬)を毎日一つ使うのがとても効果的です。便秘があって困っているということはホスピス職員の助けを必要としているということです。あなたの家族がホスピスから援助が得られなければ、疼痛クリニックか病院に紹介してくれる様、頼んでください。これらのスタッフは便秘や痛みの問題解決方法を知っていますから、末期ガンにかかっている人の在宅看護に多様な面から力になってくれるでしょう。(訳注−下剤といっても、便を軟化させる塩類下剤など機械的な作用を現す非刺激性のものや、小・大腸粘膜を刺激する刺激性のもの、下剤ではないが腸のぜん動運動をうながすものなどなど、いろいろあります。体力や、臓器の機能が低下している患者などでは、特に医師の指示に従ってください。)
⇒ 口内の乾燥には、細かく砕いた氷、硬いキャンデー、頻回に水やアルコール含有のない口腔洗浄剤でうがいをすることなどで、抑える。
⇒ 鼻の気道が乾燥して痛む場合は、空気を加湿したり、温かいお湯を張ったシンクの湯気の中で呼吸をするなどで痛みを和らげる。
⇒ 別途指示がない限り、薬を食べ物や制酸剤と一緒に服用して胃の不調を防ぐ。
⇒ 鎮痛剤が開始されたり増量された時には、数日間、眠気がおそってくることを予期しておく。
・鎮痛剤を飲み始めたり、増量された後に、眠気が増すようなら、3日ほど様子を見てください。患者さんがようやく痛みから解放されて、これまでの睡眠不足を解消するために、また単に新しい薬や薬用量に身体がなじむまでに時間を要するために、眠気がおこることが時々あります。
<鎮痛剤を管理する>
⇒ 服薬時間を忘れない様にタイマーアラームを設置する。
・アラームが鎮痛剤を飲ませる時間を知らせてくれます。患者が飲むのを忘れない様にも、使います。
⇒ 薬を回数分だけ置いておく、服薬トレーを用いる。
・これは、曜日ごとに細かく四角に区切られているプラスチック製の箱で、一段は投薬回数分の溝に別れています。一週間分、箱に詰めている人は沢山います。薬のラベルを読んだり、投薬を覚えておいたり、予定通りに薬を飲ませるのが困難な場合は、どなたかに服薬トレーに入れてくれる様、頼みましょう。たまごのケースを利用して、溝に曜日と薬の時間を書いておくのもよいでしょう。
⇒処方せんをもって薬を作ってもらいに行く時は事前に薬局に電話をかける。
・すべての鎮痛剤を置いてない薬局もあります。特別に注文したり、他の薬局へ紹介したりすることもあります。前もって、少なくとも2日前には電話をしておくと良いでしょう。
⇒できるだけ、かかりつけの薬局を利用する。
・いつも同じ薬局を利用すれば、薬剤師も、治療計画がどうで、効果はどうであるかを知ることができますし、副作用に対処する提案もできます。また、どんな鎮痛剤を在庫しておけば良いのかもわかり、そうした薬についてあなたから質問をされても、大抵答えられます。
⇒ 最低3日分の鎮痛剤はいつも残していること。
・鎮痛剤を全部のませてしまわないうちに次の処方箋を出してくれる様、医師に電話をしましょう。もし、週末なら、少なくとも5日分は手元にある必要があります。郊外にでかけるのなら、帰宅予定まで十分なだけの薬を必ず持って出るようにしてください。
天気予報にも注意しましょう。熱帯低気圧が来ると予報されていて、フロリダに住んでいたり、吹雪になると予報があって、ウィスコンシンに住んでいたりする場合、交通が遮断され、数日間薬局に行くことができないでしょう。状況に応じて薬を貯えておきましょう。(訳者雑談−国土も大きいけれど自然現象、気象変化も激しいのがアメリカですね。日本では雪国の人などと、盆と正月、ゴールデンウィークあたりでは参考になるでしょうか。。)
⇒ 鎮痛剤の服薬時間、量の一覧表を作るか、あるいは錠剤の外装に書き込んでおく。
・最後に薬を飲ませたのはいつだったか、どれだけ飲ませたのかを忘れてしまう介護者は沢山います。こうした情報を書き留めておくのに便利な一覧表をつけましょう。この章の終わりに形式のサンプルを挙げておきます。
<薬以外の方法でも、痛みを防いだり、抑えたりする。>
⇒ 温かいシャワー、お風呂、熱いお湯の入った容器(湯たんぽ)、温めたタオルなどを使う。
・温めるられると筋肉がほぐれ、患者は安堵感を覚えます。しかし、高温に設定した温熱パッドを使わないでください。患者さんがやけどするといけないからです。温熱パッドはタオルにくるみ、処置後でも暖房が置かれている付近には置かないでください。
⇒ 冷やしたタオルや、氷のう・氷まくらを使う。
・皮膚や筋肉を冷やすことも痛みを鎮めます。特にその痛みが炎症や腫脹から来ている時には効果的です。例えば、頭痛がする時には、タオルを冷やして、額に置く人はたくさんおられます。
⇒ 枕ややわらかいクッションを使って身体を楽な体勢にする。
⇒ 痛いところをマッサージする。
⇒身体を持ち上げたり、引っ張ったりしない様に。
⇒ 深呼吸運動を進んで取り入れさせる。
・深くゆっくりと静かに呼吸をすることで心も身体もリラックスし、痛みが抑えられます。テープレコーダーを使ったり、リラクゼーションに関する本から簡単な方法を学んでください。こうしたテクニックについては医療チームに聞いてください。
⇒ 患者を楽しい活動に参加させて気分を紛らわせる。
・楽しい活動に参加することは患者に痛みを忘れさせます。しかし、人が違えば、気をそらす活動も百人百様、また別のものです。テレビを見たりカタログを見たりすることで気が紛れる人もいます。音楽を聴いたりともだちと話をしたりするのが良い人もあります。
⇒ 楽しい、くつろいだイメージ、空想、絵を心に描いて、筋肉をときほぐす方法を思い起こさせる。
・末期ガンの患者に筋肉をほぐれるイメージを利用することを思い起こさせてください。患者は寝ていても座っていてもよく、静かで落ち着いた場所で心地よくします。目を閉じさせて、静かな温かい浜辺や色とりどりの花いっぱいの野原など、素敵な背景を心に描きます。それからその背景の中に自分がいることをイメージし幸せな気分で楽しむように言います。こうした楽しい背景を歩いていかせるイメージの録音テープも有効です。心の中で休暇を取り、くつろぐことが痛みのコントロールにも効果的です。
⇒筋肉の弛緩のために生体自己制御法の利用を聞いてみる。
・あらゆるタイプの痛み、特に背中の痛みには、生体自己制御法が有効です。専門の指導者が患者の筋肉を制御し、さらにほぐれた状態にする方法を教えます。あなたの周りで、この方法が利用できるかどうか調べてみましょう。
⇒ 独特の足摩擦療法を試す。つぼ指圧療法??
("reflexology").
・古来の「癒し」では、足の裏や足首に指圧する方法を取っていました。これらの部位を親指や手指を使って、こすったり押したり指圧したりするのはとても気持ちのいいもので、特定のつぼに加えた圧力によって、身体のほかの部位もほぐれていることに気がつくでしょう。試してみてください。どうなるか様子をみてください。どのつぼを押すとどこがほぐれるかを書いた本があります。
⇒ 作業に援助を求める。
・あなたにとっても患者さんにとっても、今は過労を避けるべき時です。他の人の助けを求めましょう。助けを求めるのに恥ずかしかってはいけません。必要に応じてさらに助けを求めることは、介護者としての務めの一部です。
⇒ 患者が気分が良い時には活動させる。
・患者が気分が良く一番目覚めている時に活動をする様、計画を練りましょう。新しい鎮痛剤を飲み始めたり薬用量が増量された時は、その数日後あたりでしょう。
⇒ 日記をつけ、痛みの程度を評価し、何をすると悪くなるのか、良くなるのか記録をつける。
・日記をつけると、痛みの治療がどのくらいうまく効いているかを医師や看護婦につたえやすくなり、家でどんな経過をたどっているかがあなたにもわかりやすくなります。何をすると悪くなるか良くなるかを書き留めておくと、あなたも末期ガンの患者も、痛みを解消し予防するための計画を明確に考えることができることでしょう。さらに、鎮痛剤を飲んだ時間、量、薬の名前をつけておきましょう。この記録を医師の診察の時に持参すれば、あなたがどういう介護をしているのかが医療スタッフに良く分かり、そうすることでより良い治療法を勧めることもできるでしょう。
⇒ できることならストレスのたまることを避ける。
・感情的なストレスや不安は痛みを増すので、自分でストレスがたまりそうだと判ることは、中止できるなら避けましょう。気分の悪い雰囲気というものは、あなたの看護している患者さんが、今この時期に苦労して体験しないといけないようなものではありません。
⇒ 在宅看護支援団体や教育的集会に参加することを考慮する。
・地方の支援団体がいつ、どこで集まりがあるのかを知るためには、電話帳を調べると、それには普通"Guide
to Human Services."という大きな部分があります。ガンの支援団体は「ガン」の項目のところに一覧になっており、慢性の病気を抱えた患者を支える家族や友人のための団体は「介護者」の項目のところに一覧になっています。
医療スタッフに地方の支援団体のことを聞いてもいいです。米国ガン協会の地方事務局には支援団体のリストをきっと用意しているでしょう。米国ガン協会の事務所の番号は電話帳のホワイトページに載っています。さらに、ホスピスの職員に聞くのも良いでしょう。介護者の団体をうまく見つけられない時は、米国立がん研究所(NCI)のガン情報直通電話にかけましょう。(1-800-4-CANCER)
考えられる問題点
- 色々な介護者が経験してきた、一般的に良くある問題点です。
- 1. 「習慣性、耽溺性がでないかと鎮痛剤を使うのが不安です。」
- 回答: 痛み止めとして麻薬を使う人が習慣(麻薬中毒)になることは滅多にありません。現実には、痛みが効果的に処置されれば、習慣(麻薬中毒)になる危険性も減るのです。
麻薬中毒になる人は気分を高揚させるために飲んだり、精神興奮状態になりたくて飲むのです。ガンの疼痛緩和のために麻薬を使うのは、肉体的苦痛から解放されるために飲むのです。ガンの疼痛緩和のために麻薬を飲みはじめる前に常習者でなかった人は、後にも、常習者にはなりません。薬が痛みをコントロールするために使われているのであって、精神的な気分の高揚を求めて使っているのではないこと、そして、鎮痛剤は中止して影響がなければ、使用を中止できるということを忘れないでください。(訳注−耐性ができることや身体的薬物依存と、精神的薬物依存症、麻薬常習者になるのは意味が違います)
あなたが世話している人が麻薬中毒にはならないとわかっても、他の人たちは分からないかもしれません。しかし、そうした人たちに考えを改めてもらおうとして、多くの時間を費やすのは止めましょう。ただ、この薬は一連の薬物治療の一部で、患者の生活の質と患者にとって、とても大切なことを成すために絶対になくてはならないものであることだけを伝えましょう。
2. 「痛みがもっとひどくなるまで薬は控えておきたい。」
- 回答: 現在の穏やかな不快感に対して鎮痛剤を使うことが、将来あるいは痛みがもっとひどくなった時に、よく効くかどうかに影響することはありません。今日飲むべき薬を、単に「後からもっと沢山必要になるから」といって「貯えておく」ために鎮痛剤を隠しておくようなことはしないでください。実は、最初に痛みが出てきた時にそれが増強するのを防ぐために用いる薬の量よりも、疼痛管理されず強くなった痛みに対処するのに用いる薬の量の方が、沢山必要なのです。
中には薬の量を増やす必要のある患者さんも時にいますが、これはそうした人が薬に「免疫性」?(耐性)ができたり、同じ程度の痛みを抑えるためにどんどん薬を増量しないといけないなどということを意味しているのではありません。この人たちはその痛みそのものが変わったために薬を増量する必要があるのです。このような薬のほとんどについて、患者さんが飲んでもいいという実質的な上限値はありませんが、患者が万一そうした限界値に達したとしたら、医師は他の薬に変えることができます。
今現在、痛みがコントロールできているのなら、あなたも患者も後にコントロールできるかについて心配する必要は余りありません。というのは、あなたは薬が有効であることを知っているからです。さらに、今十分に薬を服用していることは、痛みのある患者の緊張をほぐし、体力を維持するのに役立つからです。
- 3. 「誰も私の痛みのことなど聞いてくれないのです。」
- 回答: 痛みを感じている人は、家族やともだちが、どうしていいのか判らないために、痛みに無関心であるかのように見えるということを理解するべきです。(麻酔科)疼痛クリニックやホスピスにいる医師や看護婦のように痛みを扱うのが専門の人はわかります。こうしたことで孤独を感じるなら、彼らに話しましょう。
- 4. 「死んで行く人だけがモルヒネを飲むのでしょう?」
- 回答: モルヒネは 死に行く人たちだけに使うものではありません。それは色々な種類のガンの痛みに有効な薬で、
それを飲んでいるということはその人がやがて死ぬ人であるということではありません。モルヒネは病気のすべての段階において、慢性の痛みをコントロールするために使われます。モルヒネがとても良く効いて無痛の生活に戻れたために、仕事に復帰して以前と全く同じく日々の活動を営んでいる人もあります。
- 5. 「 もしこの薬を飲ませたために彼が死んだら、彼を死なせたのはその薬ということなのですか?」
- 回答: 鎮痛剤は安堵に通じます。死が訪れた時は、それは病気のせいで、薬のせいではありません。薬を飲み過ぎたら、患者さんは通常とても深く眠るだけです。医師は、身体の中の麻薬を解毒する薬(拮抗剤)を出し、その人を起こすこともできます。鎮痛剤をのませるかのませないかは安堵の程度を変えるだけで、病気の影響まで変えることはありません。
あなたの考えを実行するのに妨げとなるものを考えてみましょう。
あなたの計画を進めていく際に、他にどんな障害があるでしょうか?たとえば、末期ガンの人が協力的でいてくれるでしょうか?
他の人は助けてくれるでしょうか? あなたが求めていることを他の人にどう説明しますか?
それを実現させるだけの時間と体力はありますか?
こうした障害を乗り越えていくには計画を発展させる必要があります。COPE(対処)(リンク張る★
)思考= (Creativity創造性、 Optimism楽天主義、 Planning計画性、 Expert
information専門家の情報)を活かしましょう。そして、「ガイドを参考に問題点を解決する」のところを見て(★リンク)あなたが問題を乗り越えるためにこうした考えがどう活かせるか
を話し合いましょう。
あなたの考えを実行、調整するために
- あなたの考えを実行する
痛みを和らげ、あなたが介護している患者に心地よくしてもらうことはなかなか大変です。ここに書かれている提案に従い、ホスピスや在宅看護スタッフと力を合わせて行くなら、あなたにできることは全部しているのです。自信をもって無痛状態を目指して頑張り通してください。
結果をチェックする
痛みの度合いを記録しておきましょう。患者にどの程度ひどく痛むのかを聞くのですが、これを行う時は毎回統一した用語を使いましょう。そうすれば、その時その時の比較ができ、変化に気がつくことはもちろんのこと、あなたの疼痛管理計画がどの程度効果が上がっているかを評価するのにも役立ちます。たとえば、「今までより悪い」「ひどい」「悪い」「
中くらい」「強くない」「全く痛まない」などの言葉を使おうと思ったとします。そうすると患者は、一番ぴったりくる言葉を選んだり、「その中間ぐらい」(例えば「その痛みはひどいと悪いの中間ぐらい」というように)とさえ言う事もあるでしょう。他の方法としては10インチ(cmでも可)定規を思い浮かべ、10の目盛りは今までで最悪の痛み、5は中等度の痛み、0は全然痛まないとして、自分の痛みに合うと思う数字を言ってもらうのです。
こうしたランク付けを意味のあるものにするには、患者はあなたが患者の訴える痛みのランクを完全に受け入れることを理解しなければなりません。痛みはそれを感じている患者自身にしか判断できません。「痛みについて患者の訴えることを、介護者は信じ、受け入れてくれるのだ」ということを、末期ガンの患者自身が感じるべきであり、そうでなければ、患者は協力的になってくれなかったり、いい加減な情報を言ったりするでしょう。
計画がうまく行かない時は
ここに書いてある方法に従ってみたのに患者の痛みがひどくなっている場合は、医師や看護婦と話してみましょう。問題解決のために何をしてきたのかを話し、どうしたらいいか尋ねましょう。ただちに専門家の助力が必要なことを示す徴候はないか気を配り続けます。あきらめないで!
ガンの痛みのほとんどが和らげられ、あなたが介護している人も快適になれるはずです。
- 医療スタッフがあなたの悩みに耳を傾けてくれないと感じたり、適切な疼痛コントロール手段を提供してくれないと感じるなら、ガン疼痛専門家に紹介してくれるよう頼みましょう。その人たちはこうした痛みを専門に扱う医師で、通常はがんセンターにいるか、またはホスピス介護に関与している地方の医師です。
訳注−(ある臨床医からコメントをいただきました。−私は痛みのスケールとして睡眠できるかどうかを聞きます。痛くて眠れないのは鎮痛剤不足です。痛みは極めて主観的。痛み止めは十分量を使う。鎮痛剤による弊害は末期癌の患者さんではゼロと言ってよいです。)
下に示したのは自宅で飲ませた鎮痛剤の記録をつける時の様式サンプルです。こうした一覧により、医療スタッフは、投与した薬の量や頻度がわかります。何を飲ませたかは忘れがちです。特に痛みの薬の種類や量が頻繁に変わる時は簡単に忘れてしまいます。
鎮痛剤の記録
日付
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服用時間
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薬用量
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痛みの等級
(0〜10表示で)
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アメリカ内科医師会はこのガイドが改変されたり営利目的で使われない限り、転載したり、コピーを配布したりしても構いません。翻訳やsubsidiary?
、営利目的の利用については、デイビッド・マイヤーにご連絡ください。電話:
215-351-2642、 ファクス: 215-351-2644、E-メール: [email protected].まで
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