第9章 皮膚のトラブル


原典: Skin Problems
URL: http://www.collmed.psu.edu/pedsonco/Chapter09.OL.html
訳者 : MIKE@大手町
email :[email protected]
問題を理解する


ガンの治療中、肌の変化を経験することは多いものです。化学治療が肌の変化の原因となることもあります。乾燥肌、かゆみ、発疹、痛み、発汗、肌や血管、爪の黒ずみなどの症状が起こります。また、化学治療によって、ガン患者は日焼けしやすくなるかもしれません。

放射線治療によって、施療後数週間に渡って、肌のトラブルが起こることがあります。放射線が体に入ったり出たりした部位の周辺に乾燥、かゆみ、赤みを帯びる等の症状が出ます。こういった反応のほとんどは治療が終わってから2〜3週間後にはなくなります。

専門家の助力を求めるのはいつか?


もし、次のような症状が起こったら、医師や看護婦に診てもらってください。

肌がひどく荒れたり、赤くなったり、痛みがひどい時。
これは新しい化学治療薬に対する(アレルギー反応の可能性もある)反応かもしれません。医師は別の薬を処方できるかもしれません。
傷口が赤くなったり、痛んだり、腫れたり、あるいは治癒しない時。
肌の感染症を防ぐために素早く対応してください。
発疹、麻疹が出た時。
これは食物、飲料、新しい薬剤への反応を示すものかもしれません。
ひどいかゆみが3日以上続く時。
これは薬剤への反応かもしれませんし、肉体が過剰な物質を毛穴を通じて押し出すことにより、処理しようとしているのかもしれません。
ひっかいたあとが開いて赤くなった時。
赤く開いた皮膚は感染しているかもしれません。
ひっかき傷や切り傷から膿が出る時。
これは、通常、肌が感染症にかかっていることを示します。
肌が黄色になった時。
これは肝臓等の大事な臓器がきちんと機能していないことを意味しています。
尿が紅茶のような色になった時。
これも、重要な臓器がきちんと働いていなかったり、泌尿器の中で出血が起こっていることを示すサインです。

便が土色(オレンジ色より白味がかっている)の時。

打ち身が一週間経っても良くならない時
目に見えないような出血が起こっているかもしれません。

医師や看護婦の次のような質問に対して、答える準備をしましょう。

  1. いつその問題が起こりましたか? 何が原因だと思われますか?
  2. どのくらいひどい、あるいは困っていますか? 何か症状を緩和するものがありますか?
  3. 患者の体温は何度ですか?
  4. 傷や発疹の原因は何ですか? 何かによって良くなりましたか?
  5. 治りにくい傷がありますか? かゆみがあるなら、どこがかゆいですか? 何かかゆみを緩和するものがありますか?
  6. 前回化学治療を行ったのはいつですか? 何か別の薬を服用していますか?

あなたにできることは何か


肌のトラブルが急を要するものでなければ、以下を参考に対処してください。

  1. かゆみをやわらげる
  2. 乾燥やかゆみを防ぐ
  3. 黒ずんだ肌、血管、変色した爪を目立たなくする
  4. アクネ(ジクジクした部分)の手入れ
  5. 発汗を抑える
  6. 日光への感受性を抑える
  7. 放射線治療中、治療後の肌の手入れ
  8. おむつ部の手入れ


かゆみを和らげる

冷水浴とマイルドな石鹸を使って下さい。
オートミール石鹸やオイル石鹸などがよいでしょう。お風呂の水にアルファ・ケリを入れると、肌をなめらかにして、石鹸の必要もありません。

重曹をお風呂に入れます。敏感な肌をなめらかにし、かゆみを鎮めます。
よくすすいで、ポンポン叩くようにして乾かすことを患者に徹底させてください。
冷シップをかゆみがあるところに貼ります。
爪を短く、清潔に保ちます。荒れた肌をひっかく恐れがへります。
患者がひっかくようなら、清潔な白手袋をはめさせます。
毎日シーツを取り替えます。これによって、かゆみのもととなるフケやバクテリアを取り除きます。
シーツやタオルを"Dreft"や"Ivory Snow"のようなマイルドな洗剤で洗います。
油分や汚れに作用する化学物質を含んだ強い洗剤の使用を避けます。
部屋を摂氏20度〜25度に涼しく保ちます。汗をかくとかゆみがひどくなります。
休息をとらせます。運動しすぎると汗をかき、かゆみや炎症をひどくします。
涼しすぎたり暑すぎたりしないようにします。
直射日光を浴びないようにします。SPF値15以上の日焼け止めを使用します。


◎乾燥やかゆみを防ぐ
ミネラルオイルやベビーオイルをお風呂に入れます。油分は浸透して、肌の乾燥を防ぎます。
ぬらしたタオルやスポンジで体を拭くようにすると、さらによいでしょう。
たっぷりした入浴やシャワーは、肌を長時間熱にさらすことになるので、避けます。
熱いお湯ではなく、ぬるま湯を使用します。
肌をごしごしこすってはいけません。こするとデリケートな組織を痛め、大事なうるおいがなくなります。
ポンポンたたくようにして乾かします。これはこするより肌にやさしく、必要なうるおいを定着させてくれます。
マイルドな水性の保湿クリームを、入浴後すぐに塗ります。
入浴は一日一回以下にします。
最低約2リットルの水分を毎日摂取します。(他の指示が出ていれば、それに従います)
肌を傷めるので、極端な暑さ、寒さ、風を避けます。
コロン、アフターシェーブ、ローション等アルコール分を含むものの使用を避けます。これらは肌を乾燥させます。
患者には剃刀や安全剃刀ではなく、電気剃刀を使わせるようにします。
傷口等開いたところがあれば、清潔な乾燥したガーゼをあてます。

◎黒ずんだ肌、血管、変色した爪を目立たなくする
黒ずんだ血管を隠し、傷を負わないようにするため、長袖の服を着ます。
女性の場合、マニキュアや薄いファンデーションは構いません。
爪を清潔に、短く保ち、なめらかになるようヤスリをかけます。
◎アクネ(ジクジクした部分=にきび)の手入れ
マイルドな石鹸とぬるま湯を使って肌を清潔に保ちます。強い石鹸は傷を刺激します。
ポンポンたたくようにして肌を乾かします。穏やかに乾燥させることによって、新しい肌が治ってきます。
収斂剤(アストリンゼン)使用を避けます。これらは傷を乾かしますが、顔全体を乾燥させ、うるおいを取り除きすぎます。肌を清潔に保つのが、化学治療によるアクネ(ジクジクした部分)の最良の手入れです。

◎発汗を抑える
2枚軽い衣料をはおります。肌に接する側は綿製品にします。その上には、空気が出入りしやすいような軽いものを着ます。
濡れた着物はできるだけ早く取り替えます。濡れると冷えたり、不快になります。

肌の重なる部分(くびれの部分)に汗を吸収するコーンスターチを薄く塗ります。
ただし、白血球値が低い時(化学治療後よくありますが)には、肌に菌類等が感染する恐れがありますので、しないでください。

◎日光への感受性を抑える

足や腕を長袖の服やパンツを着用して覆ってください。
化学治療によって、肌の組織がの、日光に対する感受性がとても強くなり、日焼けが急に起こります。

軽い着物を着てください。空気が肌まで通り、乾いた状態を保ちます。
つばの広い帽子とサングラスを着用してください。
SPF値15以上の日焼け止めローションを使用してください。
頭皮が露出する場合は、日除けを使してください。
日なたにとどまるのは短時間にしてください。
11:00〜3:00の間は陽の下にいないようにしてください。この時間帯は最も暑く、危険です。

戸外では、全ての肌をうまく覆って下さい。
暑くて汗ばむ時には、日焼け止めを最低1時間おきに塗り直して下さい。わずか15分ほど直射日光を浴びるだけで、日焼けが起こることがあります。紫外線は雲を通過するので、これらのコツは、曇りの日でも実施してください。


◎放射線治療中、治療後の肌の手入れ
ぬるま湯とマイルドな石鹸で洗って下さい。ごしごし洗いは避けて下さい。
患部は清潔、乾燥状態を保って下さい。毎日スポンジ洗いをするか、ぬるま湯のシャワーを浴びて下さい。
香りがついている、あるいは薬用のローション、清拭用アルコール、クリーム、ボディオイル、化粧用パウダー、香水、発汗抑制剤は使わないで下さい。これらは全て、肌を荒らします。
発汗、湿気を帯びたり濡れた部位を制御するためにコーンスターチを使うのはやめましょう。肌のある部分の乾燥を保つのが難しければ、医療スタッフに相談してください。
氷パックを使わないでください。氷は肌を荒らし、血管を収縮させて治癒を妨げます。
湯たんぽや保温パッドは使わないでください。熱によって、肌が荒れ、さらに乾燥が進むこともあります。
患部への直射日光は、少なくとも放射線治療後1年間は避けて下さい。
ゆったりした衣服を着ましょう。
患部をひっかくのはやめましょう。感染、肌荒れ、痛み等の原因になります。


◎おむつ部の手入れ

肌の調子が悪いときには、おむつをこまめに、2〜3時間おきに取り替えましょう。
毎朝一番におむつを替えましょう。



考えられる問題点


1.「単に肌のことで体全体のことではない」
回答:肌のトラブルは、感染を防ぎ、不快感を減らすため早期に治療が必要です。トラブルに気づいたら、看護婦や医師と相談しましょう。感染したり、非常な不快感が起こるまで待ってはいけません。
2.「かゆみをどうしたらいいか、知っている人なんていない。我慢して生きて行かなくてはならないと思うよ」
回答:かゆみというのはとても治療が難しいものです。絶え間ないかゆみを緩和するために、戦略を組み合わせてみなさい。試行を続け、必要なら皮膚科医を訪ねなさい。

3.「放射線治療によって焼かれるんじゃないかって恐れているのよ」
回答:放射線治療は肌の変化を引き起こしますが、皮膚を焼こうとしているわけではありません。赤くなったり、敏感になったりしますが、肌は治ります。特に、皮膚がジクジクしたり、濡れたり、痛くなったりしたら、かならず助けを求めて下さい。病院のスタッフは肌に注意を向けており、放射線治療医は治療をストップして、肌を休めさせることができます。



あなたの計画を実行し、調整する


◎計画を実行する
必要な時に、専門家の助けを求めたことがありますか? かゆみを和らげ、乾燥を防ぎ、黒ずんだ肌や血管、爪を隠せたことはありますか? アクネ(ジクジクした部分)ができて手入れをしたり、大量の汗を抑えたり、日光への感受性を減らしたことはありますか?

◎あなたの思い通りにことが運ばないとき
あなたの計画が思ったとおりにいかない、あるいは肌のトラブルがさらに悪くなるようだったら、「専門家の助力を求めるときはいつか?」を見直して下さい。どれかの質問への答えが「はい」なら、直ちに医師や看護婦の助けを求めて下さい。何はやったか、どういう結果だったかを書きなさい。

肌のトラブルが緊急のものでなければ、もっとも重要な症状を選び、この家庭でのケアに関する情報を利用して新しい解決法を作り出して下さい。

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