第10章 出血


原典: Bleeding
URL:http://www.collmed.psu.edu/pedsonco/Chapter10.OL.html
訳者 : MIKE@大手町
email :[email protected]

[この家庭でのケアに関する情報はほとんどの状況に当てはまると思われますが、そうではない場合もあります。医師や看護婦がここに書かれていないことを勧めるときは、その指示に従って下さい。緊急事態だと思われる場合は、「専門家の助力を求めるのはいつか」の項に直接進んでください。問題をうまく解決するには、冷静沈着で、積極的な態度が必要です。ひどく狼狽していたり、自信を失ったりしていたら、この情報とともに、友達、隣人、家族などの協力を得て下さい。]

問題を理解する


出血するととても気が動転するものです。出血はさまざまな状況で起こりますが、特にガンの治療をしている時に起こることがあります。化学治療によって血を凝固させる血小板の数が減ります。こういう場合、患者は、特に口、鼻、長い消化器官で出血する高いリスクを負います。家族内でケアを担当している人は、警告を発するタイミングを知り、早い段階で出血をキャッチしなければなりません。

あなたの目標は


専門家の助力を求めるときはいつか


第一の問題としてあなたが確かめるべきことは、出血しているあなたの子どもに関して医療専門家の助力が必要かどうかということです。
次のようなことが当てはまれば、ただちに医師や看護婦に連絡して下さい。


電話をかける時には、医師や看護婦の質問に答えるために次のような事実をチェックしましょう。

  1. 今回の出血はいつ始まりましたか?
  2. 出血はどれくらい続きましたか?
  3. どのくらいの量、出血しましたか?
  4. 何が原因だろうと思いますか?
  5. 患者は咳をして血をもどしましたか?
  6. 生理中の女性へ:膣からの出血がありますか?出血量はどのくらいですか?
  7. 最近、どのような薬をのみましたか?
    ・アスピリン
    ・イブプロフィン−モトリン、アドヴィル
    ・鉄分
    ・坐薬類
    ・化学治療(いつ?)
  8. 患者は放射線治療を受けていますか? (はいの場合、)どこの部分ですか?


電話をかける時は次の例のように言うとよいでしょう。ご参考までにどうぞ。

「私はジョン・スミスの母親で、ジェーン・スミスといいます。息子は神経芽細胞腫で、ジョーンズ先生のガン内科で診て頂いております。家庭看護の出血のページには、子どもが歯ぐきから出血した場合、医師に連絡をするようにとありました。あの子はコーンフレークをいくらか食べただけで、前歯のあたりから出血し始めました。2週間前から化学治療を始めましたが、これが出血の原因のように思えます。」

あなたにできることは何か


今回、出血が急を要するものでなければ、自分自身で出血を抑えるためにできることが2つあります。

◎出血を抑える

血小板は、血の中にあって血を凝固させる成分です。この値が低い時、血は凝固せず、出血は自然には止まりません。


血小板の数が少ないのは、通常より出血が起こりやすく、長く続くことを意味しています。化学治療のあるものは、血小板数を減らす原因となります。したがって、化学治療を受ける時は、出血や打ち身等に気をつけなければなりません。可能であれば止血し、医師や看護婦に急いで知らせて下さい。

出血が起こるときは、鼻や歯ぐきなど、体表面に近い細い毛細管からしばしば始まります。こういった毛細管は簡単に傷がつきますが、傷をふさぐのも簡単です。

出血している部位を押さえてください。
そうすることで、細い血管内の血が凝固しやすくなります。患部を5分ぐらい力を入れて圧迫してください。氷を詰めたタオルや冷たい布が入手できるならそれを利用してもいいですが、圧迫は止めないで下さい。氷は出血を止めやすくします。出血がまったく止まらないようでしたら、もう一度10分間同じことを続けて下さい。
冷たい布かアイスパックを出血している部位に当ててください。
繰り返しになりますが、圧迫は出血をとめるのに役立ちます。鼻血の場合は、ハンカチでつまむか、柔らかい布に氷を包んで鼻の上に置き、数分間つまんでください。

◎鼻からの出血の場合
冷たい布を鼻の上において、つまんでください。

横たわらないこと。
横たわると、血が頭に流れやすくなります。子どもが座っているか、立った状態なら、血流はそれほど早くなく、出血は止まりやすくなります。
頭を前方に傾けること
こうすると、のどを詰まらせ、とても不快なのどの内部からの出血が抑えられます。吐き気や不快感のもとになるような血液が喉に流れるのを防ぐことができます。

◎さらなる出血を防ぐ
血小板が減っている時に出血や打ち身を防ぐ方法はいろいろあります。

抗炎症薬(イブプロフェン)は使用しないください。
MotrinやAdvil、Nuprin(風邪薬の名前)といった名前で知られているイブプロフェン入りの薬を使わないでください。イブプロフェンは、血液の凝固作用を抑制します。これらの薬は絶対に服用を避けて下さい。この薬品は、モトリンあるいはアドビルやヌプリンなどの薬品と同じで使用しないことです。抗炎症の薬剤は血液が凝固する能力を減少させるからです。この種の薬品は全期間にわたって使わないことです。
アスピリンあるいはアスピリンを含有する製品は服用しないでください。
アスピリン、アスピリン入り製品を使用しないでください。薬局(ドラッグストア)では、鎮痛薬のラベルの細かい字を読んでください。ラベルに成分としてアスピリンや「アセチルサルチル酸」が挙げられていれば、その薬品にはアスピリンが含まれています。アスピリンによって、特に血小板が少ない時には、出血しやすくなります。
歯ブラシは非常に柔らかいものか、スポンジタイプのものを使って下さい。
歯ぐきは刺激したり、こすると簡単に出血します。柔らかい歯ブラシで歯ぐきをやさしく扱うと、出血しにくくなります。
歯ぐきから出血するようでしたら、デンタルフロス(楊枝)を使わないで下さい。
これは歯ぐきを傷つけ、出血が止まりにくいことがあります。血小板値が再び上がって、医者や看護婦が出血の予防措置をやめていいと言ったら、楊枝を使うようにしましょう。
食後にはうがいと歯磨きをしてください。
うがいは、溜まってくると不潔で痛みのもととなり、歯ぐきからの出血を引き起こす食べかすを、取り除く効果があります。
口腔が痛むときは、スープ、マッシュポテト、カスタード、ジェロー(デザートゼリーの名前)、プリンといった柔らかい食べ物をとりましょう。
辛いもの、バリバリしたもの、熱いもの、ピリピリするもの、酸っぱいものを摂らないようにしてください。柔らかい食べ物は、口の中に切り傷や擦り傷を作りにくいものです。スパイシーではない食べ物も、出血を起こしにくいのです。ピザやグリルしたチーズ・サンドイッチで口をやけどしたときのことを思い出してみてください。傷ができたでしょう。血小板の数が少ないときは、やけどによって傷ができても、出血しやすくなります。
勢いよく鼻をかまないでください。
鼻くそをほじったり、勢いよく鼻をチンとやらないようにするのです。鼻の中や周辺には、細い毛細血管がたくさんあって、勢いよく鼻をかむと出血することがあります。
ワセリンやリップクリームをこまめに塗ります。
トイレでいきんだり、便秘にならないようにしてください。
便通が安定し、トイレに行きやすいように、便は柔らかい状態を保たなければなりません。いきむと肛門のまわりの粘膜が傷ついて、出血することがあります。便秘は水や飲料を飲んだり、コーラックやセノコットなどの便秘薬を服用すると、緩和します。便秘になったら、医師や看護婦に確認して、弱い通じ薬を服用します。
ひげを剃る場合は剃刀ではなく電気シェーバーを利用します。
ナイフ、はさみ、工具など尖った道具を使うときには、よく注意します。
接触スポーツはやめましょう。
たとえば、サッカー、アメリカンフットボール、バスケット、レスリング、綱引きなどです。危険なプレーのあるスポーツも、避けましょう。
重い物を持ち上げたり、激しい運動はやめましょう。
家具から落ちたり、階段から落ちるなどして、子どもがケガをしないよう守って下さい。
ベッドレールを使用し、柔らかい布でくるみます。ベッドレールがいやなら、ベッドを壁にぴったり付け、空いている側にはイスを並べるか、柔らかい枕をベッドの回りに置きます。ベッドを枠から外し、マットレスを床に直接敷くというアイデアもあります。家具や木に上らせないようにしましょう。

落下、ケガなどをしないよう、戸外での遊びにはよく気をつけましょう。

肛門用体温計、坐薬、浣腸は使わないこと
肛門に何かを入れると、非常にデリケートな粘膜が傷つき、簡単に出血することがあります。
血小板値に留意してください。
医療スタッフに、何が血小板の値を上げたり下げたりするのか、値が変化するとガン患者に何が起こるのかといったことの説明をしてもらってください。そうすれば、血小板値が必要なとき、質問することができるでしょう。


考えられる問題点


出血を防ぎ、コントロールしようというあなたの計画通りにことを運ばせる際、何が妨げとなるか、考えてみましょう。
これまでに他の人が直面した障害は以下のようなものです。

1.“子どもが熱があると、ペディアプロフェン(風邪薬)を飲ませている。よく効くのよ。”
回答:子どもがガン治療中で、化学治療を受けているなら、解熱作用があるといっても、アスピリンやイブプロフェン入りの薬を服用しないことはとても大事です。これらの薬を飲むことによる出血の危険性は非常に重大です。また、医師や看護婦から指示がある前に、薬を飲ませて熱を下げることによって、熱を「マスク」してはなりません。「マスク」というのは、短時間平熱に下げることで、本当に何か悪いものがあるとは考えなくなるでしょう。医師や看護婦は、本当は熱が何度かを知りたいので、連絡をとって報告するようにしましょう。
2.“うちの子はいつでも上ったり落ちたりしてるのに、そんなことさせないなんて不可能だわ”
回答:幼児に関するキーポイントは、激しい落下(階段、家具等から)を予防し、頭部のケガから守るかです。



計画の実行と調整


結果の点検
この家庭でのケアに関する計画の目標を確認して、今の状況と始めたときとを比べてください。どんな場合でも出血したら、自分で止血できますか?皮膚や口は、十分に手入れ、予防されていますか?出血を防ぐための予防は行われていますか?

これらの質問の答えがハイなら、目標に達し、出血や打ち身に関する問題の防止、解決ができるでしょう。状況の変化があれば、よく観察してください。いずれかの質問への答えがイイエのときは、出血に関する問題への取り組みを続け、計画を修正する必要があります。

計画が機能しない
出血に伴う問題が悪くなるようでしたら、介護計画の「専門家の助力を求めるのはいつか」の節を見直して、医師や看護婦にどういう処置をしたか知らせ、他に何をしたらよいか相談してください。医師や看護婦に相談する必要はないと思われたら、打ち身、切り傷などから皮膚を守ることをすべてやったか自問し、口腔を清潔にするように心がけます。

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