第15章学校


原典: School
URL: http://www.collmed.psu.edu/pedsonco/Chapter15.OL.html
訳者: Grandpa Tony@Dinosaur
email: [email protected]

[この家庭でのケアに関する情報はほとんどの状況に当てはまると思われますが、そうではない場合もあります。医師や看護婦がここに書かれていないことを勧めるときは、その指示に従ってください。

問題を理解する


学校は子どもの生活と幸せにかかせないものです。 教育の形は違っても、教育を継続して受けることは重要となります。 正常性を向上するためには、親として、教育ができる限り円滑に継続されるよう注意を払うべきで、それは学習のためであり、友情を維持していくというような社会性を培うためでもあります。

ガンの治療はほとんどの場合、学校教育にとって障害となるものです。病気の程度と治療の日程によっては、教室から一週間あるいは数ヶ月間、離れなければならないこともあるでしょう。その後学校に戻っても、治療の継続のためにしばしば欠席する必要もあるでしょう。あるいは、お子さんの体調や体力はアップダウンがあり、学校に行くことが断続的になることもあるでしょう。

お子さんが登校するには余りにも虚弱だったり、特にウイルス感染やその他の感染症にかかりやすい場合には、訪問教育が必要となります。お子さんが再入院しなければならないときにはお子さんの勉強を続けるために病院で教育を受けるための教師もおります。

お子さんの状態が分かり次第、学校の教員や管理者が宿題の準備や家庭教師の準備を早急にはじめられるよう、主治医から診断についての説明と学校に出ることができない理由を説明した書面を受け取り学校に出さなければなりません

最も良いのはお子さんが元いたクラスに戻れることで、主治医から医学的には学校に戻っても良いという言葉がきかれれば、すぐにその実現に向けて動くべきです。

子どもがガンになった結果、体験してきた変化の全てがマイナス要素ばかりというわけではありません。
親御さん、教師や級友の支援を受け、障害に立ち向かい、また克服し、悪い知らせを受け入れ、それを処理し、多くの問題を学ぶことで、多くの子どもたちは実年齢以上に遥かに成長し、社会的や精神的にも成熟して行くものです。時にはガンの治療を受けたことがきっかけで医療分野での職業を選ぶ子どももいます。

あなたの目標


専門家の助力を求めるのはいつか


次に述べるような何れかの問題が当てはまるならば、病院のソーシャル・ワーカーかカウンセラーの支援を受けるべきでしょう。

お子さんが学校を行くことを拒む。
もし主治医が学校へ戻ることを了承しているにもかかわらずお子さんが学校に行くことを拒み、そのことを話したがらない時はその基をなす理由を知る必要があります。そのような時、病院のソーシャル・ワーカーがお子さんと話し合いをして、感じが何か異なることや、外見が異なること、学校から長く離れていたために友人が少なくなったことなどの理由から混乱しているのかどうかをみたり、あるいは別の理由があるのかどうかを知ることができます。
お子さんが学校で問題がある場合
病気になる前は問題がなかったが、今は学校で問題がある場合、親御さんは問題を解決するためにもっとよく知る必要があります。お子さんは学校に長く行けなかったことで動揺があり、また授業に追いつけそうにもないと感じているのかもしれません。あるいは外見上の身体変化に対する学校の仲間の反応に悩まされているのかもしれません。病院のソーシャル・ワーカー、学校の看護婦か指導カウンセラーか、あるいはこれらの人々数人のチームによって、家庭教師の手配であれ個人的な問題であれ、問題解決できることもあります。たとえば ソーシャル・ワーカーはお子さんの外見の変化をからかう子に対しての適切な対応のしかたを提案できます。 "お子さんが学校へ戻る心の準備"の項を参照してください。
学校が官僚的であり、お子さんのニーズに何ら応えてくれそうな兆しが見えないとき
学校の官僚主義が障害になっているならば、医療従事者が、健康管理専門家として、お子さんが何かを成し遂げるために最善の提携者です。多くの教育者たちはあなたのお子さんに必要な教育を教室あるいは家庭教師から受けることに真剣に取り組んでいるからです。多くの子どもは正規の教室において、再び教育を受けることができるのですが、連邦法の公法94-142により子どもは代替え教育を受ける権利を保護されていることは心に留めておいて下さい。この法律は基本的には身体に障害のある人々について取り決められたものですが、それは個人別教育計画(特別教育)を義務付けたもので、健康上障害のある学生、すなわちガンを患ったような人も対象となるものです。もしあなたが学校側の対応などで困難にぶつかった場合はどなたか支援してくださる方を見つけるまではあくまでやり抜くことです。他に手段がない場合は、極端な最後の手段として、(ご自分の判断あるいは医療専門家の手助けを受け)、行政機関ではなく学校の選任されている理事会メンバーに支援を求めることを考えることです。理事会のメンバーからの調査は時には親や納税者にはない力をもつことがあります


あなたにできることは何か


学校との手配を行なう

学校生活を続けることがお子さんの人生にとって重要なる部分であることを定かにする。
もしお子さんが病気のために入院期間を伸ばすことになったり、しばしば学校を休む必要がある場合に、「他のクラスメートに遅れないよう授業についていくのは不可能だ」として諦めてしまうことは、親にとっては簡単です。またマイナス志向の考え方に陥りがちです。「私の子どもはガンを患っているのだし、彼女には将来がない、それなのになぜ学校の問題に悩まないといけないの?」というように思ったりもします。 しかし、教育上そして社会性の向上を考えると、お子さんが学校、教師や友人との接触を保つことは極めて重要なのです。また、日課があれば、子どもの人生観が正常な状態に促され、こうした状況下であってもできる限り正常になるという点からも重要です。学校は子どもにとって、大人でいうところの仕事と同等なものです。 それがなければ多くの子どもは自分を見失ったり、社会に適合できないとか、自分を学問的や社会的に劣るものと感じることになります。お子さんの心の不安を防ぐための一つの道は、できる限り早く詳細がわかり次第、お子さんに必ず学校へ戻れるのだということをさらりと告げることです。もし、入院している病院内に子どもたちを支援するための教師がついているのであれば、必ずそのことをお子さんに知らせ、それがどんなものかを話してあげてください。

学校の管理責任者との間で早い時機に話し合いを行なう関係を整えること

学校側にお子さんの出欠はどんな状況になりそうか、総合的な健康状態についてはどうかを知らせ、早めに教師や管理者と協力関係を築くことが重要です。お子さんに、教育面や社会性の点で、学校に対する不適応が見られるときは特に大切です。
学校関係者に適確な態度を築いてもらえるようにあなたが踏み出せる一歩としては、子どもさんのことを言うときに患者ではなく、生徒という表現をするように努めることです。このような些細な言葉の変化で「その子は何ができないか」ではなく、「何ができるか」に重点をおけるようになります。そして、教師には、パートタイムの看護婦のような振る舞いをする教師ではなく、本来の教育者としての務めが明確になります。

お子さんが学校を懐かしがるようなときは、病院のソーシャル・ワーカーから学校に連絡を取って、勉強やクラスメートとの接触を続ける調整が行なわれるようにする

病院のソーシャル・ワーカーは、特に学校教育と子どもの治療スケージュルとの調整に訓練を受けており調整役になってくれます。ソーシャル・ワーカーは、まだ全授業時間に復帰できなくても、子どもが自分の学校へ友人たちとの交わりをもとめて訪ねていくことができるように手配をしてくれます。さらに、ソーシャル・ワーカーは先生や学校管理者のみならず生徒たちにもお子さんの状態について話をし、これから患児にどんなことがおこり、どのような手助けが必要かなどの説明をし、お子さんと学校の間に懸け橋を築いてくれます。このような仕事のなかにはお子さんのクラスからお見舞いカードを送る手配をしたり、ビデオ撮りしたテープによる個人へのメッセージを送ったり(また、お子さんからクラスの友だちへのビデオメッセージの手配)、あるいは時には担任の先生が病院にお見舞いに来るための手配なども含まれるものです。特に、お子さんが丸一年も入院していて教室に出られない状態の時には、関係を維持するのは大切なことです。
もし学校の規則などに関わる問題で医療スタッフの支援が必要なときには、尋ねること
ある学区によっては慢性疾患以外の事態について書面化した規則があり、規則に融通性を求めるのに支援が必要となることもあります。たとえば、ある学区では学童が家庭教師や訪問教育を受けるためには学校欠席日数が連続2週間を経過していないと認められないことがあります。治療過程にあるこどもでは連続2週間欠席はしていなくても、ここで2日、あそこで4日と休み、一学年を通してみればはるかに2週間を超えることもあります。病院あるいは診療所のスタッフはこのようなことを学校の管理者に対して説明するのをお手伝いすることができ、彼らも普通は理解を示し、柔軟に対処されます。お子さんが学校の欠席出席の繰り返しがある場合には、地区によっては学習の中断がある期間を通して、学校内で補習を行なうようにしているところもあります。


家庭内の問題を避ける

学校へ戻ることについての主治医の忠告に傾注してください。
たいていは、家庭でお子さんがガンを患っていると慎重になり、子どもに過保護になりがちです。主治医が「お子さんは学校に戻っていい」というのは、行きたかったら行ってもいいという選択肢を与えたのではなく、お子さんの教育面での成長と精神的な充足感を考えて、学校に戻るべきだということを通常は意味しているのです。
あなたが仕事を持っており、お子さんの治療のために時間を使っていたのであれば、仕事に戻るべきです。
それがたとえパートタイムの仕事であっても、仕事に戻るということはお子さんに対しても家庭生活が通常に戻ったことを示すことにもなります。あなたが家庭内に居て、お子さんが学校へ戻れる状態にあるにもかかわらず、お子さんを家に留めることは、親子双方にとっても精神的に不健康なことです。

学校に通っているきょうだい(兄弟-姉妹)についても彼らのニーズに敏感であってください。

別のお子さんたちの先生にも、ガンを患ったお子さんに何が起こっているのかを知らせましょう。というのは、彼らの教室での成績や情緒面に影響するからです。たとえば、お子さんが治療でつらい思いをしたり、手術を受けたり、病気のぶり返しなどがあった時には、きょうだいの先生たちにも知らせるべきです。又、同じ学校に通っているきょうだいは、決して自分のことではなく、いつも病気のきょうだいのことを他の生徒から続けざまに聞かれることで疲れが募ることもあります。彼らは置かれている状況を常に思い出させられることで苛立たしくもなります。きょうだいは同時に先生が本や宿題の搬送をいつも依頼するするようになると、自分たちの存在感が失われたように感じたりもします。こうしたことを改善させる一つの方法は、彼らの協力を褒め、感謝を表わし、ガンを患った兄弟(姉妹)を助けるために重要な役割を果たしてくれていることに気づかせることです。
ガンを患った兄弟あるいは姉妹の病気と治療に関して科学のレポートやその他の報告書にして自分の考えや感情を表現してみたいと言った子どももありました。このようなことを患児のきょうだいに提案するのもいいですが、その際は(強制にならない様)優しくそして多くの代替案を付けることを考慮しましょう。 より詳しい内容については本ガイドブックの第16章に述べる「患児のきょうだいに対処する」の章を参照してください。

学校に戻るにあたって学校から実際的な援助を得る

お子さんと学校の管理者と、学校に戻るにあたって現実的な面での準備を行なう。

もしお子さんが学校側からのちょっとした医療的な支援を必要としているとき(たとえば、薬剤の服用やカテーテルが留置されているなどで)、学校の看護婦あるいは学校の責任者と会い、そのような問題に対処できる人が学校にいて支援してもらえるのかを尋ねます。また、学校側には、ガンを患っていると一般的な水ぼうそうなどの小児の病気に感染しやすいことに気を配って頂かなくてはなりません。今までのように容易に動いたり歩いたりすることができないために、次の授業で教室を移る場合には時間に間に合うよう、授業の終わる5分前に教室を離れてもよいかなどと確かめることです。あるいは、お子さんが疲れやすいのであれば看護室で休息のために横になってもよいことを子どもが分かっているか確かめましょう。それとは反対に、お子さんが疲れてもいないのに授業に出なかったり作業をサボったりするような特権乱用をさせないように学校側に確認して下さい。同様に、学校側の責任者が不安になり過敏になって、たとえば37.2℃くらいの微熱が出たくらいのことですぐに家に帰さなければならないなどと思うべきではありません。学校では、患者ではなく、他の生徒と同じにように普 通に生徒として扱ってもらうように努めて下さい。
青年には特に学習を継続できるよう留意して下さい。
子どもがいずれの年齢であろうと、邪魔をされないで学んでこそ利益が得られるものですが、実際の面では高学年(高年齢)のこどもは低年齢のこどもに比べて欠席や宿題を行なわなかったことによる損失が多くなっています。青春期で不充分な教育しか受けなかった11年生と12年生(訳者注:米国では日本の高一を10グレードと呼ぶことから、ここで言うのは高二と高三を意味する)は大学進学しにくくなり、また社会で働くにしても良い仕事が見つけ難くなります。こどもが学校に復帰しやすくなるよう、学校教育者の助けを求めるときには、こうしたことを忘れないで欲しいと頼みましょう。


学校へ戻るにあたっての心の準備を行なう

お子さんが学校に戻った時に他の子どもたちの反応に対してどのような準備が必要かを教える。

お子さんが学校に戻った時に、状況はかつてと同じではなく、治療や外科手術がもたらした身体的変化に他人から不愉快な態度を取られることを理解することも必要でしょう。生徒、あるいは先生や学校関係者でさえ何も言わずにジロジロ見ることもあるでしょう。その他の反応しては、指を差してみたり、くすくす笑いをする人もあるでしょう。このようなことは一つや二つは起こり得ることをお子さんに話すべきです。お子さんが自分の変化について話すことを気に掛けないのであれば、変化の理由を説明することができるでしょう。最初の切り出しとして考えられる方法は、「わたしの髪の毛がなくなったことに不思議に思っているでしょう?」とか「なぜ髪の毛が一本もないのかと考えているの?」などのような会話からです。次の言葉は簡単に、「わたしガンを患ったの、だから薬を飲んだら、薬のせいで髪の毛がなくなってしまったの。 だけど、薬の治療が終われば髪の毛は元どおりになるの」と答えるなどです。反対に、お子さんが話したがらないとき、たとえば見知らぬ人が歩み寄ってきて「なぜ頭髪がないのか」と聞くようなときがあるかもしれませんが、お子さんは簡単に「話したくないの」と答えれば良いでしょう。上記のどちらにせよ、「あんたに関係ないでしょう」や「うるさいわよ」というような乱暴な言い方よりは良いでしょう。
身体の変化にはガン治療の副作用として最も良く知られている脱毛だけに限ったものではなく、ステロイドを使っているための丸顔、体重の増減、打ち身あざ、傷痕、切断跡、びっこを引いて歩く、あるいは体力の低下などがあります。このような変化があることで、お子さんは体育の授業、あるいはスポーツや屋外での活動に制限が加わった状態で生きていかなければならないときもあります。もし、あなたがまだお子さんへの説明を行なっていないのであれば、病院のソーシャル・ワーカーに頼んでこのような変化について他の生徒たちに分かるように説明する方法をお子さんに指導してもらうことです。
お子さんが病気を売り物にして、楽をして怠けることや、力いっぱい頑張らないことの口実にしないよう確かめること
子どもたちのなかにはガンを患ったことを、楽をすることや、力いっぱい努力をしない、あるいは学校に行かずに家にとどまることの盾にするようになる子もいます。親として判断の一つの糸口となることは、ガンの診断や治療を受ける以前にもこのような態度を取っていたかどうかということです。ときには子どもたちは特に痛みや問題がなくとも体調が良くないという理由で学校に行かずに家にいたいということもあります。親として学校に電話をかけないといけませんが、お子さんはどこも悪くないことは認識して下さい。また先に話したような外見的な問題や他の生徒たちの反応への恐怖心が理由で学校に行くのをためらっているのかもしれないことを認識して下さい。もし、そのような場合には、病院のソーシャル・ワーカーに、学校に赴いて病気のことや治療とその作用について説明してくれるように頼むことを考えてみましょう。


考えられる問題点


子どもを失いそうでとても恐いので、学校には戻らせたくありません。私が親として一番すべきことは、家にいて子どもの面倒をみることです」
アドバイス:もし、主治医がお子さんには学校に戻るに当たって十分な体力であると言われたなら、その言葉や指示に従うことです。精神的にも、教育面からも、お子さんにとって最も健康的なのは友だちと一緒に学ぶことです。
学校のカフェテリアの従業員が、『ガンは接触感染をするのだから他の生徒と一緒に食事をしてはいけない』と言うのです
アドバイス:間違えた情報やうわさは、お子さんがうまく学校に復帰するのを妨げます。一度程度であれば大きな問題はありませんが、このようなことが続き、お子さんに影響を及ぼすようであれば、病院のスタッフを学校に行かせるよう手配を試みてください。
「学校の子どもたちが、うちの子の坊主頭をからかうのです」
アドバイス: "学校へ戻るにあたっての心の準備を行なう"の項を再度お子さんと一緒に読んでみてください。また、答え方や柔らかな態度で話しをすることへのお子さんの理解を確かめることです。



計画の実行・調整


・結果を点検する
置かれた状況の下で、お子さんの教育は予想したようにうまく進んでいるでしょうか?病院から学校への移り変わりができるだけスムーズに行くようあなたは学校職員や病院職員とうまくことを進められていますか?お子さんは喜んで学校に戻ろうとしていますか?あるいは抵抗を示していますか? お子さんは教室での勉強や宿題がちゃんとできていますか? お子さんは診断や治療を受ける前と同じような成績ですか? もしそうでないとしたら、単に欠席のためでしょうか、あるいはお子さんに気力がないためでしょうか?

・あなたの計画がうまくいかないとき
"専門家の助力を求めるのはいつか"の項を再度検討し、何か見逃しているものはないかを確かめてください。そうでなければ、病院のソーシャル・ワーカーを尋ね、実行したことを説明し、思うように効果がないのはなぜか相談してみてください。

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