第16章
患児のきょうだいへの対応
原典: Helping Brothers & Sisters Cope
原題: きょうだいへの対処 (訳者注: 兄弟や姉妹とはせずに、ひらがなで"きょうだい"と表現します)
URL: http://www.collmed.psu.edu/pedsonco/Chapter16.OL.html
訳者: Grandpa Tony@Dinosaur
email: [email protected]
問題を理解する
ガンを患ったお子さんの兄弟・姉妹(以後は"きょうだい"と称する)は、きょうだいの一人がガンと診断され、治療、入院そして退院をする間に、彼ら自身が大きく適応することを迫られます。
患児がとても取り乱している時期と、きょうだいにとって最も取り乱す時期とは重ならないこともあります。たとえば、診断が下った当初の数日は患児にとってとても大変なときです。多種多様な検査を行なわなければならず、中には痛みを伴うものや恐いものもあり、色々と新しい場所に行き多くの見知らぬ人々に会います。反対に、きょうだいのほうは患児の病気のために適応を迫られるに連れて、時間と共に問題が悪化していくことがあります。こうしたことが起こってくる理由は以下のようなものがあげられます。
家庭の中が以前と違ったリズムで回り、かつてのように(病気とは縁のなかった頃の)普通の状態には戻りそうにもないからです。
誰もが(親も親戚も友だちも先生も)ガンの子どもに関心の焦点を当てます。その結果、親は家にいるほかの子どもに費やす時間が少なくなります。
きょうだいたちは両親がこれまで見たこともないほど当惑し、悲しそうで、恐怖におののいたり、混乱しているのをみることになるのです。
時には「自分たちもガンになるのでは」と不安に思うこともあります。
病状が良くなると、親御さんは家庭内の状況も良くなることを願うものです。しかしながら、きょうだいたちの行為や行動は改善されないこともあります。彼らは親の関心を自分たちに戻すようにことをおこし、自分たちの感情を表現し、あるいは自分たちが小さかった時にしていたような振る舞いを始めます。親はこうした変化に不意打ちを食わされます。
きょうだいの一人がガンのような大変な病気を患った時の子どもたちの一般的な反応
- ⇒小さい時の行動にもどる:
- きょうだいたちは今までより退行した幼い行動をとることがあります。多くの子どもが、特に3歳から6歳くらいまでの子どもの場合には、自分たちの感情などを言葉に出して言うのではなく、彼らの行動で示すようになります.。子どもたちの行動が変わることもあると知っておくと良いでしょう。子ども用便器で訓練をして問題がなかったのに、また"おもらし"をするようになることもあります。また今までよりも動き回ったり、跳ね回るようになります。非協力的になり、言うことを聞かなくなることもあります。
- ⇒問題行動:
- 行動の変化がすべて、きょうだいの一人がガンの治療を受けることになったために起きるわけではないですが、やはり喧嘩や叫び声が多くなり、あるいは家族や友達から離れるようになります。このような問題はたとえば学校や教会など家庭の外部で起こることもあります。又、物を壊すようになる、今までの活動・スポーツ・趣味をやめてしまう、家に帰るのが遅くなる、家の雑用の手伝いを拒否する、などの変化もあるかもしれません。このような行動は病気のお子さんが病院に入院している時に起こりやすいようです。
- ⇒感情:
- これまでには経験のない当惑する感情があらわれることもあります。 病気ではないきょうだいたちは今までよりも彼らに対する関心が薄れ、普通の日常行動が邪魔され、普通の家族や友達とのつながりが変わることで、これまでにもあった嫉妬や怒りのような感情も以前より強く、あるいは頻度も増して現われることになります。敵意もよく現れるものです。親たちの関心は病気のお子さんに、より多く注がれるようになります。たとえば学校では、級友や遊び友達や先生たちは常に病気のきょうだいが今はどうしているかと尋ねても、自分がどうしているかを聞かれることがありません。このようになると、彼らが置き去りにされていると感じたり、敵意に満ちてくるのは全く自然なことです。別の反応には悲しみがあります。きょうだいたちは悲しみや落ち込みを感じ、家族、友人や今まで楽しんでいたような活動から離れるようになります。
- ⇒体調の不調を訴える:
- 子どもたち(きょうだい)が身体の調子が悪いと訴えはしても、親にはどこが本当に悪いのか見つけ出すことができないこともあります。熱を計り、喉が赤くはれていないか、あるいは鼻水が出ていないかを調べてみても病気の徴候は見つからず、子どもたちはただ気分が悪いと言うばかりです。そのような日は学校に行きたくなかったり、あなたに病院や診療所へ行って欲しくないのかもしれません。一般的な病状の訴えとしては、頭痛、腹痛、眠れない、食欲がないなどです。過去にもこんなことが良くあった場合は、その訴えが増えることになるか、程度が強くなるでしょう。自分が病気だと訴えるのは子どもたちが親や保護者の注意を引き付ける一つの手段です。
- ⇒自責:
- きょうだいたちは時にはガンの問題で自分たちを責め、罪悪感を感じます。子どもたちは離婚や別居というような家庭問題で自分たちを責めることがありますが、病気についても同じことが言えます。きょうだいたちは自分たちのしたことが原因でガンになったと考えるようなこともあるでしょう。ガンになった子どものことを嫌いだと思ったことで、自分を責めることもあるでしょう。
- ⇒新たな恐怖:
- 子どもたちは自分たちもガンに侵されるのではと考え、新たな恐怖心をもつこともあります。事実、そんなことがまれに起こることもあります。が、そのようなことはないとはっきりと安心させてあげると同時に、彼らが寝られない、頭痛、体調が悪いなどの症状が現れたら、どんなことでも隠さずに言うようにと言い聞かせます。そうすれば、必要があるときには、力になれるのです。
- ⇒大人のように振る舞おうとする:
- 時に子どもたちは親が大いなるストレスを受けているのを見ると、自分たちのことは心配しなくても済むようにと思い、大人のように振る舞おうとすることがあります。もしこのようなことが長く続くと幼児期に体験すべき大切な部分を失うことになります。
これらの問題に対しなぜ子どもたちがそのような態度を取るかを理解していれば、こうした問題にもよりよく対処できるでしょう。
あなたの目標は:
- 患児以外のお子さんに関する問題について情報と手助けを求める
- 専門家の助力をいつ求めるべきか見極める
- 問題行動、気分・感情の変動、身体不調の訴えなどに対処するため、心の準備をしておく
専門家の助力をもとめるのはいつか
下に述べるような兆候や問題行動の何れかが認められる時には、ストレスを受けている子どもや家族を支えるために、経験ある専門家の支援を求めるべきです。
- ⇒きょうだいの行動が自己破壊的な行動を含めて顕著に変わった場合
- 子どもはよく意気消沈した時にはそのことを話すよりも態度に示すものです。自己破壊的な行動も一つの表現方法であり、その行動により「悲しくて、落ち込んでいて、もうどうでもいいの」と言っているのです。とても危ないことをして自分を傷つけたり、学校でひどい問題を起こしたり、あるいは一日中ベッドにいて自分のするべきことすべてを忘れてしまうなどは自分を投げやりにしている徴候です。
- ⇒きょうだいの誰かが別の誰かをいじめ始める
- 子どもは自分への注意を引くために誰かをいじめ、あるいは注意をそらすために他の人をいじめることがあります。例をあげると、ガンを患っているきょうだいに対して敵意をもち攻撃的になったり、あるいは家族のペットにあたることもあります。相手にとっては(ペットも)傷付けられる危険があり、助けを求めることは大変に重要です。
- ⇒子どもたちがとても破壊的になる
- 子どもたちが混乱や恐怖を感じた時に若干のかんしゃくを起こすことは予想できますが、何かを壊し続けたり、火を付けたりするような極度の破壊行為を取ることがあり、それは専門家の助力を求めるべきであることを示しています。
- ⇒吐き気、嘔吐、あるいは発熱などひどい身体症状がある
- このような身体上の問題については直ちに医師の処置を受けてください。
- ⇒子ども自身が専門家の助けが必要だと訴える
- もしお子さんが"自分と二人だけで誰かと話しをしたい"、あるいは"もう我慢できない"、または"いつ自分に特別な関心を寄せてもらえるの?"などと言うなら、個人的な助けを必要としているのでしょう。まずお子さんとあなたが二人だけで話しをすることで専門家の簡単な支援を得ることが彼らにとって利益があるのかを知る第一歩となるでしょう。
- ⇒子どもたちが自殺について話しをしたり、あるいは死にたいという
- 自殺を考えることは常に専門家の意見が必要な大変に重要な問題です。心理学者、ソーシャル・ワーカーと子供生活相談の専門家は子供に重いうつ病があるかどうか自殺の危険があるかどうかについて見極める訓練を受けております。
- この家庭看護計画にある提案や過去に効果があった方策をすべて実行したにもかかわらず、途方にくれて、これらの家族の問題に対処できる希望がもてないとき。それでもあなたは家族に関してはエキスパートなのです。あなたにできる限りの沢山の役立つ提言に従ってみたといえるのも、子どもの理性がきかない(情緒が手におえなくなった)とわかるのもあなただけなのです。
専門家の支援をうけるには
⇒専門家の支援を求める。
- 家族の問題で専門家の手助けを得ることは身体上の問題で支援を受けるのと同じようなことです。ある親御さんはお子さんたちの精神的な問題で専門家の支援を求めることに躊躇(ちゅうちょ)される方がおります。心理学者、精神科医、あるいはソーシャル・ワーカーに会うと言うのは自分たちが弱い、変わり者あるいは親として失格であるという風に考えることもあります。大病を抱え込んで混乱が起きることは当然のことです。これらの問題を解消するために助けを求めることも又当然なことです。ソーシャル・ワーカー、看護カウンセラー、聖職者、心理学者、精神科医、や子供の人生相談員のような専門家は精神的なストレスだらけの状況を処理できるような支援についての技術や経験を積まれた方々で、あなたの方のホーム・ドクターに身体上の問題で支援を求めるのと変わりはありません。
- 小児ガン専門チームにいるソーシャル・ワーカーのような病気のストレスに悩む家族問題を熟知している専門家に依頼するほかに、小児心理学者や精神科医やソーシャル・ワーカーも家族問題に精通しております。あるいは学校のカウンセラーもいいでしょう。これらの人々は多くの問題を解決してきており、それが参考になるかもしれません。あるいは、あなたにとって最も気楽に相談をもちかけることのできる相手は(お子さんが入院している病棟の)ソーシャル・ワーカーか看護婦ではないでしょうか。
- 子どもがストレスだらけの気持ちを乗り越えられるように支えるのには時間がかかるものです。通常は、問題が良い方向に向かってきたと感じるまでに、カウンセラーや治療士による数回の診療が必要です。きょうだいが怖さや、怒り、敵意などについて話しはじめると、問題がより悪くなっているように思え、心配する人があります。問題点を吐き出すことが解決に向かう第一歩であることを忘れてはなりません。
あなたにできることは何か
- 他の子どもさんを理解するための手助けを求める
- 行動、精神的不安や身体の不調の訴えを予期する
- きょうだいたちの問題が深刻にならないようにする
- きょうだいが自分の思いを処理できるように手助けをする
他の子どもさんを理解するための手助けを求める
⇒子供の人生相談員、ソーシャル・ワーカー、あるいは小児心理学者と、他の子どもたちの行為や感情を理解する方法について話をする。
- お子さんが治療を受けている病院や診療所にいる他の医療専門家のことを知ることです。何か問題が起きてきて、彼らにあってみないかとの助言が主治医や看護婦からくるのを待っていてはいけません。自分から助けを求めていくことです。
- 小児ガンを専門とする、ソーシャル・ワーカー・看護婦・子供の人生相談員は、きょうだいたちの行為を理解するために力になってくれます。たとえば、ある若い父親は幸せであったはずの日々に家族全体があることで困惑したときのことを次のように話してくれました。
-
- ―彼の7歳の息子がガンを患い、退院して家に戻った。しかし数分後にその息子の12歳になる姉が、尋ねてきた親せきの人たちとの夕食のテーブルを用意することを拒否したのであった。今までは従順で愛想の良い彼女が豹変したのであった。一人忘れ去られた感じがして、敵意をむき出しにし、怒り散らした。両親は弟の写真を玄関で撮ったが、彼女の写真は撮らなかった。仲の良い隣人が弟とボールで遊んだが、彼女とは話しもせずに無視した。娘に猫に餌をやり、テーブルセットの手伝いを頼んだときも彼女は拒否した。両親は怒り、彼女を自分の部屋に戻るようにと叱りつけた。ソーシャル・ワーカーとこの話をした父親は、ソーシャル・ワーカーの説明で多くのきょうだいでこのようなことが起こるのだとわかり、落ち着いたのであった―
- ⇒病院や診療所でガンを患ったきょうだいのための特別なプログラムがあるかを尋ねてみること
- 概ね小児ガン患児は特別な小児ガン治療センターにおいて治療を受けます。多くのこれらガン患者のきょうだいは、話してほっとする存在の治療を受けた施設の医療専門家に、それぞれの秘密を話すようです。このようなセンターのスタッフは家族の問題を理解し、またこうした時期がきょうだいにとって特に難しいことを承知しており、大抵の施設で特別のグループミーティングを姉妹と兄弟のために開いています。一つの例としては、まる一日のワークショップで、ガン、ガンの治療、抱える問題について学ぶようなものもあります。参加者たちはそれぞれの家族の経験を話し、家族の変化にいかに対応するかなどの考えを分かちあっています。このようなプログラムはきょうだいの孤独な感情を和らげたり、変化に対処するアイデアを得たり、また今後の問題に対処するときに頼っていける病院のスタッフと知り合ったりするのに役立ちます。
⇒患児以外の子どもを持つ他の親に会い、話しをすること
⇒地方のコミュニティーや郡などで、慢性疾患を患った子どもたちの親に支援を差し伸べているグループに会い、話しをすること
- これらの支援グループは一般的に月例の会合を行なっており、都会から離れた地方都市にもこれらのグループがあります。都会に住んでいる場合、サポートグループはガンを患った子どもの親だけの集まりがあります。地方都市になると、多くの種類の病気、たとえば嚢胞性線維症、呼吸器疾患、難聴、失明、糖尿病
など、色々な病気の子どもさんを持つ親御さんのグループになります。これらのグループは本当に助けになります。
地域の交通費助成についての情報、自宅介護をする上での役立つアイデア、あるいは財政支援などについての情報が提供されます。これらのグループは家族問題、きょうだい問題への対処などにも取り組みます。
患者家族教育だけでなく、親どうしが社会的つながりを持ち、共に過ごす時間を持つのはとても支えになります。このようなグループから生涯にわたる友人関係を得る人も沢山あります。
- たまには、親御さんのなかでこれらのグループは役に立たないと言う人もあります。親御さんがグループ内で建設的にならなければ何の役にも立たないものもあります。誰がグループをリードしているか、また集まる人々の目的が何なのかで決まってくるものです。どのような支援が役立つかはあなた自身が一番わかっているのです。あるグループの親たちに会い、話しをすることでこのグループは他の方法では得られない支援と情報を提供できるかを確かめることです。あなたの家庭と同じような年齢の子どもを持つ親たちも集まっているでしょうから、そういう子どもたちを一緒にさせてやると、子どももこうしたことが大きな助けとなって乗り越えやすくなるでしょう。
問題行動、精神的不安や体調不調の訴えに備える
- ⇒どんな問題についても、親族や学校の先生にどのように対処して欲しいかを短く書いておくこと
- 多くの親族や友人は、病気の子どもには当然注意を払います。そのような場合に、きょうだいとの問題であなたが当面している事柄や、問題行動や、激しい感情を認めた場合に、どう対応して欲しいかを参考になるよう書き留めておくといいでしょう。このようにすれば親族や友人に会うたびに繰り返し説明しなくても済むし、起こした問題に対して同じ方法で注意や対処ができるからです。
- ⇒家族会議を開いて皆がどのように感じているかを話しあう雰囲気を作り出すこと
- 病状についてはどうなっており、治療はどのように進んでいるかを説明し、家族全員が家庭内での心配事や不満を話すような機会を作ることです。ただし、この会議での基本ルールを設定し、会議の時には罰することはなく、全員が平等な時間を得て話しをするように決めることです。
きょうだいたちの問題が一層ひどくならないようにする
- ⇒ガンを患っているお子さんにおもちゃや頂いたものを他のきょうだいと分け合うよう促し、また親御さんはきょうだいと時間を費やすことをができるようにする
- ガンを患ったお子さんは他のきょうだいと同様に家族の一員であり、そのことを本人が感ずる必要があります。この子に持ち物やでき事や親との時間を共有することを言い聞かせ、家族の一員に戻った状態にしましょう。このようなことで、ガンを患ったお子さんにも以前と同様に家族のルールが適用されるものであることをわからせます。
- ⇒病気ではない他の子どもさんに、あなたがなぜ多くの時間をついやすことができないのかを説明すること
- 子どもたちには正直に付き合い、彼らにこの先数日間(あるいは数週間)はガンの子どもがつらいときを乗り越えられるよう、家を離れることになるのできょうだいもつらいだろうということを伝えます。子どもは、自分たちの生活の流れが予期できると安堵感を持てるため、あなたがいつ戻るのか、いつ生活がもっと普通になるかも知りたがるでしょう。
- ⇒他の子どもたちと何か楽しむ行事などの特別な予定をカレンダーに書き入れる。
- 子どもたちのためにカレンダーを用意して、一緒に何か行なうことを決め、マークを付け日時を明らかにしておきましょう。もし、地域の特別なショーや公共の行事で彼らが行きたいものがあればあなたも一緒に行くか、あるいは彼らと親しい親族が一緒に行くようにします。彼らとの約束は、家や病院の近くでできることに変更しなければならなくなったとしても、とにかく守ることです。寂しさや置き去りにされた気持ちを感じている子どもは、破られた約束すべてについて忘れません。
- ⇒家には誰がいるのか、他人が家にいるのはいつか、問題がおきたら誰に電話をするのか、おなかが空いたら何をおやつに食べるのかを説明し、またメモを書いておくこと
- このようなリストがあればきょうだいたちは次週の予定について安心できます。分からない時にはメモを見ることができます。このようなメモは冷蔵庫か台所のキャビネットに貼り付けるのが一番よい場所でしょう。ティーン・エージャーや成人したような年上の子どもといえども、これらのガイドラインは必要です。なぜなら、あなたが話をしたことを全部記憶しているわけではないし、あなたが家を離れている間に家事の全ての責任を負うことを彼らは嫌うからです。
- ⇒以前のように、行動に制限を設ける
- お子さんがガンを患ったことで、あなたは「申し訳ない」と考え込むことでしょう。「もし、私が何か違うようにしていたら、あの子は病気にはならなかった・・。」このような考えや感情を持つことは自然なことですが、そのようなことは他の子どもたちに十分なことをしてやれないと感じることで余計に強まるでしょう。その穴埋めとして今までの家でのルールを変えることになります。あなたが子どもたちに厳しくしてきたならば、もっと優しくなります。また、今まではあまり厳しくなかったと思うときには、2倍のルールを決めることもあります。このような場合、基本となるルールのバランスを考え、就眠時間、食事時間、宿題や遊びの時間を決めることです。あなたがずっと一貫してルールを適用していればそれを子どもたちは認めるでしょう。
- ⇒子どもたちを病院や診療所に連れて行けば、病気のことがわかり、ガンになるというのがどのようなものかを学ぶことになります
- 病院や診療所に出向くことで入院しているきょうだいが診察や検査をうける様子を見ることができます。また、彼らはガンを患うことは楽しくもなくゲームでもないことがわかります。彼らが病院で診察、検査を見たり、おいしゃさんごっこを小児相談スタッフとしたことで、病気の子が直面している問題が良く分かり、病気になったことで皆がその子に関心を示すことへのやきもちなどの問題が少なくなるかもしれません。また、彼らにとって病院の内部、医師の診察室や待合室を見れば、これからどうなるかについてより良く質問ができるようになることもあるでしょう。
- ⇒祖父母や家族あるいは友人に対して他の子どもたちのことを忘れないようにお願いをする。
- 親戚の人たちは会話の焦点や贈り物を病気の子どもだけに集中させるでしょう。他の子どもたちがこのような光景に接することがいかにつらいものか、また、この子たちにも話や、カードあるいは小さな贈り物などで気に懸けてあげなければならないかを親戚の人たちに思い起こして頂くようにしてはいかがでしょう。
- ⇒学校の看護婦や先生たちの助けを求める。
- 学校のスタッフに、いま家で何が起きているかを説明することです。そうすれば学校の看護婦は頭痛やその他のことでしばしば診療室へ来ることに対し理解ができます。あなたが看護婦や教師にも知ってもらいたいと考えていることが分かれば、教師は子どもさんの観察を行なうようになるでしょう。
きょうだいたちの思いに手をさしのべる
- ⇒きょうだいたちがガンを患っているお子さんよりも年少である場合は、彼らの感情や気持ちをあなたに伝える工作を作らせるとよい
- そのような工作は「感情バッグ」と呼ぶもので、紙袋の外側に雑誌などの絵や写真を貼り付けて飾り、他の人に見せている自分の側面を全部表現します。中に入れる絵や写真はあなたが手伝ってあげてもいいのです。バックの中には自分の内面に抑えている気持ちをあらわしているものをいれます。このような簡単なことでお子さんが自分の感情を表現でき理解できることがよくあります。
- ⇒子どもさんたちの良い行ないを見落とさず、良いことをしたりつらい気持ちや状況を上手に処理したら、ほめてあげること
- 子どもがいいことをしたらごほうびをあげるようにすれば、子どもたちの良い面がみつかり、彼らの肯定できる面に焦点が合うようになります。すべてに叱ったり批判をするのではなく、褒めることを探してみてください。たとえば、食事の終わった食器を流しのシンクに運んだ、あるいは大人の会話に邪魔することなく部屋に入ったなどです。このような見方をもつことで彼ら自身も気持ちよくなり、あなたとの関係もよくなるのです。否定的な悪い面のみを追いますと皆が失望感を持ち、あなたも新たな変化に対処する必要がでてきます。
⇒十分な年齢に達している子どもさんたちには病気の挑戦に対して必要な方法を教えること
- 子どもたちは大人が行なうと同じようにストレスへの管理方法を学ぶことができます。もし彼らが何か重圧を感ずる時には深呼吸をしてリラックスしなさいと教えることです。また、子どもたちに外で運動をすることを促し、あるいはあなたも一緒に行なうことです。子どもたちに基本的な問題の解決方法を教えることが彼ら自身で問題に対処するために役立ちます:結論に飛びつくか諦らめる前に事実を集め、問題に対して何をすることが良いのかを考え(計画し)、別な方法で問題の解決を試すのです。そしてこれらの行動がどの程度に効果があったかを確かめます。親御さんはお子さんと一緒になって、刻々と変化する問題行為についての計画を作ることができるでしょう。
考えられる問題点
きょうだいの問題で、ここで示されたアイデアに従う際に妨げとなる態度や考えについて考えてみてください。
- 「とてもじゃないが、他の子どもたちに対処できそうにもない」
- アドバイス:当惑するべきではありません。なぜなら家族全員がストレスを受けているからで、他のお子さんたちの問題の全部が全部、あなたの落ち度なわけではないのです。すべての人たちがそのことを十分に理解してくれることに気づくでしょう。
- ガンを患っているお子さんを抱えるほかの親御さんに話されることもプラスになるでしょう。話を聞けば、他の患者家族も子どもの人生相談員、ソーシャル・ワーカー、教師、学校の看護婦や親族などに支援を求めたことがあったし、そのようなことが効果的であったことがわかるでしょう。
- 「ガンは本当に恐ろしい病気で、私の子どもは死ぬかもしれません。
この子のために私の全エネルギーを費やさないと・・。」
- アドバイス:主治医や看護婦はあなたの病気のお子さんに必要な全ての医療的な支援を惜しまず、ガンと闘っているのです。病気の経過如何では治る子も治らない子もあります。しかし絶対に忘れてはいけないことは、何があろうとあなたには家族がいるのです。病気でないお子さんたちからあなたが離れることは、すでに緊張状態にあることをより困難な状態にするものです。
あなたの考えを実行、調整するために
あなたの計画の実行
- 起こり得る問題に先立って計画を立てる
- 病状は家族の他の子どもたちに影響するものであることに油断なく気を配る
- 子どもたちの感情や行動を子どもたちの立場に自分を置いて見つめ、どうしてそうなるのかを考える。
- この在宅介護計画の支援に関するアイデアを再検討する。
- また他の親御さんたちのに意見や提言を求める。過去に起こった似たような問題を振り返り何が効果があったかを思い出してみる。
- あなたの期待や願望を現実的にする。病気に対処するために問題があることはお子さんや親御さんにとって当然のことです。問題をなくしてしまおうなどと期待しないことです。しかし、早く気づくことはできます。早い時機にこそ問題を対処するのが容易なのです。また、問題の改善はゆっくりとしているでしょうから、忍耐が必要です。問題が継続するとしても、あなたの努力は問題の悪化を防いでいるでしょう。
- もし計画が機能しないときは:
- もし、万策尽きたと思えたり、あるいは問題が大きすぎて対処できないと思われる時には、ほかの人たちの助けを求めることです。
小児ガン患者との経験を積んだソーシャル・ワーカー、子ども人生相談員、あるいは看護婦や患者家族などはアイデアや手引きを得る良い源泉なのです。精神衛生の専門家、たとえば心理学者や家族と子ども問題に精通したソーシャル・ワーカーなども役に立つことでしょう。聖職者、教師あるいは学校のカウンセラーなどもストレスの多い家族問題に経験が豊かで、指針を得るのに大変役に立つでしょう。
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