骨髄移植の基礎知識 Bone Marrow Transplants: a Book of Basics For Patients
chapter9
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訳者:撫子なんちゃん
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移植片対宿主病(Graft versus host Disease=GVHD)(以下GVHDと記す)
GVHDは同種骨髄移植を受けたときの合併症として頻度の高いものです。GVHDでは、ドナーの骨髄が患者の器官や組織を攻撃し、その機能を損ね、患者は感染症に罹りやすくなります。
HLAが適合している血縁のドナーから同種骨髄移植を受ける患者の約半数がGVHDを発症します。幸い、大半の症例は程度の緩やかなものです。GVHDは自家骨髄移植では現れません。
GVHDはしばしば単一の病気かのように思われていますが、実際には2種類の疾患があるのです。それは急性GVHDと慢性GVHDです。どちらか一つ、あるいは両方とも発現する患者もあれば、どちらも出ない患者もあります。急性と慢性のGVHDでは、その症状も臨床症状?も発現の時期も、違います。(臨床症状というのは診察、レントゲン撮影、鑑識テストなど、疾病の存在とその程度を確定するために行う検査などの結果のことを言います。)GVHDは一時的な厄介なものであったり、重症で命を脅かす病気であったりします。年齢が高い患者ほど若年の患者よりGVHDを発症する傾向があります。また、ドナーが非血縁あるいは完全一致でない場合には、GVHDの発症率は高く、その程度も重くなっています。
GVHDの症状は様々でたくさんあり、その一覧を見ればまず閉口するでしょう。しかし、血縁の適合ドナーから同種骨髄移植を受ける患者の大部分は軽いか中程度のGVHDしか現れず、全く出ない人もいることを忘れないでください。確かにGVHDは命を脅かすものでもあり、致命的になることもあり得ますが、多くの患者が、身体に長期間に及んで損傷の残る副作用(後遺症?)が出ることもなく、治癒しています。
T細胞
T細胞は白血球の一種で、体内の異物を認識するものです。T細胞は細菌・ウイルス・その他の異物に対する攻撃を指揮します。またT細胞は、ある身体に属する「自己」の細胞と属さない「非自己」の細胞を見分けます。
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人体の色々な細胞の表面には、HLA(ヒト白血球抗原)と呼ばれる遺伝子マーカーのan
inherited set があります。指紋がそうであるように、全く同じHLA型の人は二人とありません。(一卵性双生児を除く)T細胞はこうしたHLAマーカーを「自己」と「非自己」の区別に使います。「非自己」の人の細胞と身体の中で出会うと、T細胞は非自己の細胞を破壊するために素早く免疫系を活性化します。身体のHLAマーカーや組織型が別の人の細胞のものと違いが大きいほど、攻撃は急速にそしてより激しく起こります。(詳しくは第4章のHLAについてを参照)
免疫系T細胞の自己と非自己を見分ける力が、同種骨髄移植後に深刻な問題をもたらします。ドナーが一卵性双生児でない限り、ドナーの組織型(HLAマーカーや遺伝子fingerprints)は患者のものとは違っています。患者のT細胞がドナーの骨髄細胞を非自己として認識し、移植された骨髄を攻撃します。これが(移植片)拒絶反応と言うものです。拒絶反応を予防するために、ガン細胞を殺す目的と患者の免疫系を抑制する目的で、放射線全身照射(TBI)やシクロフォスファマイド(エンドキサン)などの薬剤が、単独あるいは併用で用いられます。放射線照射や薬剤はT細胞が移植された骨髄を「非自己」として認識する能力と免疫系の攻撃開始をする能力を崩壊させます。自家骨髄移植では、患者に輸注される骨髄が患者自身のものであるために、こうした免疫系の抑制は必要ありません。
GVHD
ドナーの骨髄にもT細胞が含まれています。患者に移植されると、ドナーのT細胞は患者の細胞表面にあるHLAマーカーを見て、患者の細胞を「非自己」として認識し、患者の組織や器官を攻撃し始めます。患者自身の免疫系が移植に先立って抑制されているために、反撃を開始することができません。この状態がGVHD(移植片対宿主病)と言われるものです。「移植片」とは提供される骨髄のことで、宿主とは移植を受ける患者、すなわち骨髄の受領者(レシピエント)のことです。
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急性GVHDの段階
ステージ 1 (軽度): 身体の表面(25%以下)発疹が見られる。
ステージ 2 (中等度): 25%以上の身体表面に発疹が見られ、軽度の肝機能・消化管機能障害を伴う。
ステージ 3 (重度): 皮膚が重症の火傷のように赤くなり、中等度の肝機能・消化管機能障害を伴う。
ステージ 4 (危険?): 水ぶくれになり、皮膚がむけ、重度の肝機能・消化管機能障害を伴う。
急性GVHD
急性のGVHDは通常、同種骨髄移植後の初めの3ヵ月間までに起きてきます。移植時にドナーの骨髄の中にあるT細胞が移植患者を「非自己」として認識し、患者の皮膚、肝臓、胃、腸などのいずれかあるいは全てに攻撃をかけます。GVHDの徴候が一番早く現れるのは発疹で、通常は、まず患者の手や足に現れてきます。発疹は次第に身体の他の部分に広がり、日焼けをしたように全身が赤くなってきて、皮がむけたり、水ぶくれができたりすることがあります。痙攣や、吐気、水様下痢便、血の混ざった下痢便などは消化管(胃、腸)にGVHDが起きている印です。黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)が出ているのは、急性のGVHDが肝臓に起きていることを示しています。
医師はGVHDの激しさの程度を症状が現れている器官の数とどの程度までその器官が侵されているかをもとに判断します。急性GVHDは軽度、中等度、重度と危険域の4つに分けています(ボックスを参照)
拒絶反応とGVHDの起こる危険性を最小限にとどめるために、同種骨髄移植患者は移植の前後に免疫系を抑制するようなGVHD予防薬を与えられます。しかし、こうしたくすりの使用が感染の危険を高めます。この期間中、患者を有害な細菌・ウイルス・真菌(カビ)などにさらすのを制限するために取られる用心策として、患者の病室に取り付けられる特殊なエアーフィルター装置、見舞い客の手洗い励行、マスクの使用、手袋やガウンの使用(患者、見舞い客の一方または双方)、有害な細菌の温床となりうる新鮮果実・生花・生野菜などを患者の周囲環境から除外することなどが挙げられます。30歳を超している患者では若年の患者に比べて急性GVHDを起こす可能性が高くなっています。二人以上の子どもを出産した女性がドナーとなった患者も、急性GVHD発症の可能性が高くなっています。
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急性GVHDの軽減と治療
GVHDは未だ、予防することはできませんが、その影響と重度を減らすためにできることはあります。
免疫抑制剤であるシクロスポリン(CYAサンディミュン)を単独あるいは副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)と併用でもちいたり、メトトレキセート(MTXメソトレキセート)などを移植前に投与しておくと、GVHDの影響の及ぶ範囲やその程度を減らすことに有効であることがわかりました。そうした薬は、特に急性GVHDがステージ2まで進行したときや、慢性GVHDが発現している患者の場合に、移植後数ヵ月にわたって投薬されます。
シクロスポリンも、ステロイドも、メトレキセートも、ドナーのT細胞が患者の器官や組織を攻撃開始する力を弱めます。しかし、これらの薬は副作用を起こす可能性があります。シクロスポリンは腎毒性がとても強くでることがあり、又特に女性の顔のうぶげなど体毛が増えてきます。さらに、まれな例では発作、錯乱、不安、思考過程の変化など神経症状がおこることもあります。メトレキセートは口内、鼻腔、咽頭領域の炎症をおこします。ステロイドの副作用には、体重増加、体液貯流?、過血糖、精神(気分)変調、思考混乱などがあります。これらの副作用は一時的なもので、薬の使用が中止されれば消失していきます。
T細胞除去
急性GVHDを軽減するために用いられる他の方法に「Tセル除去」というものがあります。T細胞は体内の異質な抗原を認識することから、研究者たちが次のような仮説を出しました。ドナーの骨髄からT細胞を除外しておけば、GVHDが軽減されるであろうというものです。そして、それが的中し、白血病患者の急性GVHDは50%程度あったものが15%にまで引き下げられました。
残念なことに、ドナーのT細胞は骨髄が患者の身体の中でうまく生着するための大切な役割を果たしてもいるようです。このように、T細胞除去により白血病患者のGVHD発症が劇的に減ったものの、他方では生着拒絶の発現率が、T細胞除去をしていない骨髄を移植した患者ではほとんどゼロに等しかったものがT細胞除去した骨髄を移植した患者では10〜30%にまで増加してしまい、長期生存率という点においては何ら改善が見られない結果になりました。
さらに、軽度あるいは中等度の慢性GVHDが出ている症例では、患者に抗白血病細胞効果が得られる様です。このように、実際は、白血病患者にごく軽度のGVHDが起こることが望ましいようです。ドナーの骨髄から完全にT細胞を除去してしまうとGVHDの発現率を減少させるだけでなく、白血病の再発率が増加してしまうことになり、一部の白血病患者で治験した結果、65%が再発する結果となりました。
骨髄移植センターではこのジレンマにいくつかの方法で対処してきました。あるセンターでは輸注する前にドナーの骨髄を100%より少なめに、除去しておきます。この方法により、通常ならT細胞完全除去によっておこる生着拒絶を軽減することができ、軽いGVHDから得られる多少の抗白血病効果(移植片対白血病効果?)を維持しておくことができます。
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また、現在治験中の別のT細胞除去法は期待が持てそうです。HLAの適合した兄弟ドナーの骨髄で移植を受けた、慢性骨髄性白血病(CML)の患者45名を対象にした治験では、CD8と呼ばれるT細胞を選択的にドナーの骨髄からパージングしておきました。この方法を用いると、急性GVHDの発現率は(パージング処理してない骨髄を用いたときには50%だったものが)20%にまで減り、T細胞完全除去した骨髄を移植された白血病患者間で見られた高率の再発は、ここでは見られませんでした。生着拒絶はT細胞完全除去した骨髄の移植では10〜30%見られたのに対し、この方法では10%でした。
慢性GVHD
慢性GVHDは通常、移植後3ヵ月を過ぎてから現れてきます。科学者はこれをドナーの骨髄が患者に生着した後に造られたT細胞が起こすものだろうと考えています。
慢性GVHDの出ている患者の大部分は皮膚障害を経験します。乾燥性のかゆい発疹、肌の色の変色、肌のひきつれた感じ、などがおこります。部分的に脱毛したり、若年性の白髪などもみられることがあります。
慢性のGVHDが出ている患者では肝臓の異常がみられます。この異常は普通は黄疸や肝機能検査結果の異常とから判明します。
又、慢性GVHDは唾液やその他の潤滑効果のある粘液分泌腺を侵します。慢性GVHDが出ている患者は通常、涙腺に損傷を受けるため、ドライアイや目の刺激感が現れます。
口中の唾液腺は慢性GVHDで侵されることが多く、それより頻度は少なくなりますが、食道の潤滑効果も失われると飲み込んだり食べたりするのが困難になります。慢性GVHDが出ている患者では、歯磨き粉を使ったり酸味のある食べ物を食べたときなどに、口の中に焼けるような感覚を経験することがよくあります。感染の危険を最小限に抑えるためには、口中の衛生を保つことが欠かせません。
慢性GVHDは胃粘膜や腸の粘液分泌腺も侵し、適切な栄養吸収力も妨げられます。胸焼け、胃痛、腹痛、体重減少などのいずれかあるいはいくつかが起こってきます。
時おり、慢性GVHDの出ている患者では色々と腱の萎縮がおこり、腕や脚の曲げ伸ばしが困難になることがあります。慢性GVHDはまた、肺を侵し、喘鳴音が聞こえたり、気管支炎、肺炎などを起こすこともあります。
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急性GVHDのときと同様に、年齢が高い患者ほど若年の患者に比べて慢性GVHDが発現する傾向にあります。慢性GVHDが出た患者の70〜80%は以前に急性GVHDが出ています。また、慢性GVHDは非血縁や完全一致でないドナーからの移植患者によく起こります。
慢性GVHDの治療
通常、慢性GVHDは、プレドニゾンなどのステロイド剤やアザチオプリン・シクロスポリンなどの患者の免疫系を抑制する薬で治療できます。慢性GVHDを治療期間中は、感染の危険性を減らすためにバクトリム(バクタ)やペニシリンなどの抗菌剤が単独あるいは併用で用いられるのが普通です。さらに、周りに人がいたり、人込みに出かけたりするときにはマスクをつけるようにし、植物や生鮮果実、野菜などは患者から遠ざけることが求められます。慢性GVHDのある患者は、完全にGVHD症状が消え、免疫抑制剤の使用が終わるまでは、風疹・破傷風・ポリオなど生きたウイルスを含む生ワクチンは通常受けないようにしてください。慢性GVHDを管理する際、通常の治療では効かない患者に対する他剤の使用効果が研究されてきています。近年の研究ではサリドマイドが危険域にある慢性GVHD患者(命に危険がある重度のGVHDを発症することが予想される患者)に有効であり、副作用も最小(眠気)であることがわかりました。
慢性GVHDの一般的症状、副作用
皮膚の発疹、かゆみ、全身発赤
色の濃いしみ? 皮膚の突っ張り、引きつれ
黄疸(皮膚、白目が黄色くなる、肝機能検査異常)
ドライアイ、目の痛み?
口中の乾燥・痛み
酸味のあるものを飲食したときの焼けるような感じ
細菌感染
頻度の低い症状、副作用
皮膚に瘢痕が残る?
部分的な脱毛、早期白髪
重症肝疾患
視力障害 視野狭窄?
胸焼け、胃痛腹痛
嚥下困難
体重減少
腱萎縮
呼吸困難
気管支炎、肺炎
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長期的問題
大部分の患者がGVHDから快復しますが、病気が完全に治った後も残る症状がいくつかあります。GVHDが出た患者は普通長期にわたって皮膚が過敏になり、身体のどの部位であれ、強力な日焼け止めを使っても、日光に長時間さらすことは避けなければなりません。皮膚に傷痕が残ることもあります。
目の刺激感も長期に及ぶことが時々あり、普通は目薬で管理します。慢性の下痢や胃が活動せず栄養が適切に吸収できない状態も、GVHDの全臨床症状が消えた後も続きます。患者の中には肝臓障害が続いたり、さらに頻度は低くなりますが、肺障害や萎縮??などが出たりする患者もあります。
GVHDはとても不快で時には致命的にもなる同種骨髄移植の合併症ですが、多くの患者が長期に及ぶ損傷が残ることなしに乗り越えています。画期的なGVHDの予防法やより良い治療法が将来見つけられるよう研究が進められています。
GVHDによるストレスと取り組む
同種骨髄移植を受けた患者の多くが何らかのGVHDを体験しますから、医師は決まって移植前にGVHDについて患者と詳しく話をします。この話に打ちのめされたり、恐くなったりする患者はたくさんいます。特に、GVHDの危険性が、ある種の遠近的見方でとらえられない場合はそうです。GVHDの出方は軽いものも中等度のものも重いものもあるということや、死や、外見が損ねられること、永久に障害が残ることなどは普通おこらないことを、患者が理解しないケースが良くあります。
GVHDの診断により患者の感情面や心理面での健康状態が影響を受けることがよくあります。骨髄移植の合併症に疲れ果てて、患者がGVHDを自分の快復を遅らすまた別の邪魔が入ったと思い、腹が立ったりがっかりしたりするのは良くあることです。
GVHDを治療する薬の副作用が、既にデリケートになっている精神状態に更に追い討ちをかけることもあります。うつ状態、混乱、不安、ローラーコースター並みの気分のアップダウン、誇張された感情(怒り、興奮、寂しさなど)、状況不適応、などはよく見られ、患者や家族にとってGVHDの回復期は極めてつらいものです。こうした副作用は一時的なものであることを忘れないことです。これが、この治療期間を乗り越えるためにみんな(患者、家族、友人)のためになるでしょう。まれな例ですが、気分を安定させ、不安を軽減するのに、薬が処方されることもあります。
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回復期に支援体制を築くことで、GVHDからくるストレスや、その他の移植後の合併症や複雑な問題などに取り組み易くなると言う患者さんがたくさんおられます。実際には数通りのやり方があります。
自分が信頼して助けを求められる友人や親戚のネットワークを広げる患者さんもあります。これは患者にとってプラスになるだけでなく、主にあなたの世話をしてくれる人の休息も得られます。家族や友人はあなたの力になりたくても、どうしたらいいのかわからないことも多いのです。患者自身を理解して欲しかったり、聞いて欲しいことがあるときの連絡リストに、喜んで自分の名前を加えて欲しいという人はたくさんいるでしょう。
かかっている病院を通して組織化された支援団体を見つける患者もあり、米国ガン協会や類似した団体が役に立ちます。こうした大変な時期には、同じ経験をしてきた人と話しをすると患者のための独特の支援がえられます。いくつかの病院や宗教団体でも、重病からの回復期にある患者のために1対1の支援サービスを利用できるようにしているところがあります。普通は移植医が様々な支援団体や支援サービスと患者をつなげることのできるソーシャルワーカーを患者に勧めます。
患者の中には専門のセラピストがとても効果的だと言う人があります。セラピストは患者の怒りや憤懣を表現できる安全な環境を提供し、患者が自分のストレスをうまく処理できるよう創造的な提案をしてくれるでしょう。普通は移植医が骨髄移植の合併症状を取り扱うのに熟達したセラピストに患者を紹介します。
GVHDの治療を受けた患者の多くが、GVHDの治療に使われた薬や病気そのものの影響で容姿が一時的に変化するのを体験します。体重が過度に増えたり、まん丸に顔が膨れたり(ムーンフェース満月様顔貌)、黄疸(目や肌が黄色くなる)、多毛症(特に顔と背中の体毛が濃くなる)、皮膚の刺激感(軽度から重度の日焼けに似た感じ)などは、すべて患者の自尊心を傷付けます。
容姿が以前と違って見えることにも取り組まねばなりません。身体的な変化は一時的なものであることの覚えとして、病気になる前に写した自分の写真を持ち歩いたのが良かったと言う人もあります。また、変わった自分の容姿も一緒に思い出させるから嫌だと言う人もあります。
GVHDの回復期には患者の免疫系が抑制されていますから、患者の社会参加活動は制限されます。思いきって外に出かけるときはマスクをつけることが必要ですし、人込み・病気に罹っている人・病気をしていた人は避けるなど特別な注意が払われるべきです。
しかし、患者は自分の家で囚人のように感じる必要はありません。日中で入場者が少なそうなときに、映画を見たり、閑散としているときに買い物をしたり、混んでいる夕食時間の7〜8時を避けて夕方5時にレストランで食事をしたりすれば、患者は回復期中でも、感染の危険を過度に増やすことなく、社会参加を楽しみ続けることができます。
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GVHDとの闘いは苦しく鬱憤のたまる経験です。しかし、大部分の患者にとって、その闘いは一時的なものであり、無事克服できるものなのです。
スーザンの体験
再生不良性貧血で骨髄移植を受けたスーザン・ミシェルは自分のGVHD経験を次のようにまとめています。
「時々、何度も繰り返す感染症と闘っては、鏡に映った自分をみると、自分の苦痛に終わりが来るときはないだろうと思ったものです。でも、今ではこうしたこと全てがハッピーエンドだったことがわかりました。毎日が以前より明るく素敵ですよ。わたしのGVHDはすっかり消えて、肝臓も正常に戻ったし、肌の色も元どおりになり、もうかゆくもありません、10キロマラソンはまだ挑戦していませんが、今のところは歩きが合っているみたいです。
わたしはまだ仕事に復帰していませんが、近くの病院でボランティアの仕事をみつけ、ハート・オブ・アメリカthe
Heart of America(骨髄バンク)の仕事はとてもやりがいがあります。わたしは一日一日を大切に生きていますし、神がわたしに愛する温かい家族や友人をくださったことに感謝しています。わたしは人生を決してあきらめなかったし、前向きな態度で生きてきました。骨髄移植に直面した人みんながわたしが力強く決してあきらめなかったのと同じように、強さを見い出してくださるよう願っています。」
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