原典:Bone Marrow Transplants: a Book of Basics For Patients 4章
URL:http://www.bmtnews.org/bmt/bmt.book/toc.html
訳者:撫子なんちゃん

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第4章 同種骨髄移植




同種骨髄移植の主たる適応症

再生不良性貧血
ホジキン病
白血病
骨髄異形成症候群
ノンホジキンリンパ腫
多発性骨髄腫
大理石病
重症複合型免疫不全症候群 (SCIDS)
地中海貧血
ウィスコット‐アルドリッヒ症候群



1981〜1990年の間に、全世界で一年間に同種骨髄移植が実施された数は6倍にもなり、1981年には875例だったものが1990年には5529例に増えました。1992年には最低でも2000例は増えるものと見られます。(現在1999年では???)同種骨髄移植は主に白血病や再生不良性貧血、免疫不全症の患者さんを治療する時に実施されています。自家骨髄移植との違いは骨髄の提供者と患者が二人の別々の人間であることです。
年間に骨髄移植が実施される数はどんどん増えているにもかかわらず、同種骨髄移植が必要な患者の60〜70%は適切な骨髄提供者が見つからないために受けることができません。兄弟姉妹が通常ドナーになることが好ましいのですが、すべての患者さんが型のあった骨髄を持った兄弟姉妹がいるわけではありません。このことから、非血縁者の骨髄ドナーやミスマッチ(HLAの型が6座ともあってはいない)の骨髄ドナーからの移植がしばしば行われています
アメリカでは、骨髄移植を必要とする患者さんがより多くこの治療を受けられるように、ボランティアで(無償で)骨髄を提供する人(ドナー)の国際的登録拡大のために努力しており、その主要なものに全米骨髄ドナープログラム(NMDP)があります。1992年6月現在、NMDPに登録しているドナーは60万人以上おり、非血縁者ドナーからの骨髄移植は毎月50例を超します。NMDPより小さな組織のものでアメリカ骨髄ドナー登録American Bone Marrow Donor Registryというバンクにも骨髄を必要とする患者が自分で検索できる数千名??の登録者数データがあります。
(数値が古いので全部、監修注が必要)

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適合ドナーを見つけることの難しさは、移植を成功させるためにドナーと患者の組織型がうまくぴったりとあっていないといけないという点にあります。白血球の表面にある遺伝子マーカーはHLA抗原といわれるもので、人の組織の型を決めるものです。こうした遺伝子マーカーは遺伝により引き継がれるものですから、兄弟姉妹は非血縁の人よりも似通ったHLA抗原を持っている可能性が高いのです。
患者の兄弟姉妹に適合ドナーが見つかる確率は30〜35%あります。ドナーを一般市民から探し出さなければならないとなると、適合ドナーの見つかる確率は千人に1人から数百万人に1人までとさまざまで、患者の組織の型がどの程度の頻度で一般人に現れるかによって変わってきます。

HLA



人は皆親から遺伝によって引き継いだ身体的特徴を持っています。目や髪の色のようなものは肉眼でも容易に見ることができますが、指紋や血液型のようなものを判別するには更に高度な技術が必要になります。
白血球にはその表面にHLA型−ヒト白血球抗原型といわれる特徴的な「指紋」を持っています。(Leukocyteとは白血球のことです)この抗体は、細菌やウイルスその他の異物などの有機体の侵略から身体を守る際に重要な役割を果たしているタンパク質です。

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誕生のときに、T細胞といわれるある種の白血球は、ある人の身体の中にあるすべての抗原を認識できるよう、胸腺によってプログラミングされています。異質な抗原が入ってくると、(例えば、侵略してきた細菌・ウイルスなどの細胞表面にある抗原など)T細胞が、免疫系のさまざまな成分を招集し、その侵略してきた有機体を攻撃し破壊します。
同様に、骨髄がドナーから骨髄移植患者に移植されると、患者のT細胞は移植された骨髄の細胞にある抗体を調べ、その抗原が「非自己」だと認識すると免疫系に攻撃を始めさせます。患者の免疫系が移植された骨髄を破壊すると、移植片拒絶(生着拒否反応)が起こり骨髄移植は失敗に終わります。



また、代わりに(そして、こちらの方が良くあることですが)ドナーの骨髄の中にあるT細胞が患者のT細胞を凌いでしまうことがあります。ドナーの骨髄のT細胞が患者の身体を「非自己」として認識し、免疫系に患者の器官を攻撃させてしまいます。これが移植片対宿主病(GVHD)と言われるものです。(移植片とは提供された骨髄を指し、宿主とは患者を指します)通常GVHDが命を脅かすようなことはありませんが、GVHDは同種骨髄移植に伴うとても不快な副作用であり、重症な例では命に危険が及ぶこともあります。(詳細は9章のGVHDを参照)
白血球のHLA型はいくつかの座の一対の抗原から成り立っています。白血球にある座の抗原は両親から遺伝的に引き継いだものです。こうしたうちの3座すなわちHLAのA・B・DR座の抗原は生着拒絶が起こるかどうか、GVHDが重症になるかどうかを判断する際に重要な役割を果たします。白血球にはほかの座の抗原も何対かあることが確認されています(HLAのC・E・DP・DQ座)しかし、骨髄移植におけるその重要性は未だ十分に解明されていません。

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今日、HLAのA座には24種類、B座では52種類、DR座では20種類の抗原が確認されています。人は皆それぞれの座に2つの抗原を持っていますから、理論上は、HLA抗原は6億通り以上の組み合わせが世の中に存在するということになります。幸運なことに、A・B・DR座は通常ハプロタイプという1セットとして片方の親または両親から引き継ぎますから、ある種のタイプはまとまって発現され、実際に起こる可能な組み合わせの数は減ります。
上の図表にあるように、例えば、母親のハプロタイプの一つがA1・B8・DR3 でもう一つが A2・B7・DR7だとします。子#1、#4は母親の一つ目のハプロタイプを引き継ぎ、子#2、#3は母親の二つ目のハプロタイプを引き継いだとします。子#1、#2、#4、が父親の一つ目のハプロタイプを引き継ぎ、子#3が父親の二つ目のハプロタイプを引き継いだとします。

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HLA適合
生着拒絶やGVHDの危険性を最小限にするには患者のHLAと適合したHLAのドナーがベストです。最良のドナーは一卵性双生児であることは良くあります。双子の兄弟がその両親から主たる座(HLAのA・B・DR座)が全く患者と同じ抗原を引き継いでいるだけでなく、HLA以外の組織抗原(判定するのも更に困難で、移植にて果たす役割も明確にはなっていないが)も適合しているからです。一卵性双生児ドナーからの骨髄を用いた移植では生着拒絶も重症のGVHDも起こりません。(でもGVLは??)
それ以外では、最適の骨髄ドナーは、一卵性双生児ではないがHLAのA座B座DR座各座の抗原が患者のものとあっている兄弟ドナーでしょう。例えば、36ページの図表には子#1、#4はHLA完全一致で、それぞれ父親から引き継いだ同じハプロタイプと母親から引き継いだ同じハプロタイプを持っています。しかし、HLAの6座ほど重要でなくても、あるいはまだ十分わかっていない非HLA座(それにより軽重さまざまなGVHDが移植後に起きてくる)ではある程度ミスマッチかもしれません。移植に適合した兄弟ドナーを用いた場合、重症のGVHDを起こす危険性は約20%で生着拒絶の危険性は通常1%以下です。
一方、子#2、#3では母親からはそれぞれが同じハプロタイプを引き継いでいますが、父親からは別々のハプロタイプを引き継いでいます。子#2か子#3が骨髄移植の必要が出たとすると、HLAのA・B・DR座が一致している非血縁ドナーを見つけるか、兄弟からミスマッチの骨髄で移植を受けるかを考えなければなりません。

HLAタイピングテスト
患者とドナーのHLA型があっているかどうかをみるのに、最低二つの検査がされます。
一つは血液検査で、HLAのA・B・DR座の抗原を調べるものです。二つ目は、リンパ球混合培養mixed lymphocyte culture (MLC)で、患者とドナーの骨髄が反発しないか拒絶反応を調べるために使われます。
DNAタイピングのように新しいテストでは、将来HLAタイピングを更に正確なものにできるでしょう。DNA検査ではかつては同じとみなされていた抗原が実際は10種類ものバリエーションがあったことが既にわかっており、マイクロバリアントと呼ばれています。こうした変形タイプの持つ意味はまだわかっていませんが、GVHDの頻度増大や重症化、ミスマッチや非血縁のドナーを用いた骨髄移植での拒絶反応が起こることの説明がつくのではないかと考えられています。

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血縁者適合ドナー
世界骨髄移植登録International Bone Marrow Transplant Registryがまとめたデータによると、1988〜1990年の間に適合血縁ドナーを用いた約12,000の同種骨髄移植が全世界で行われました。47%は急性白血病、27%は慢性白血病、10%がリンパ腫とその他のガン、9%が再生不良性貧血、残りは地中海貧血、免疫不全症、遺伝子異常・代謝異常疾患です。

急性骨髄性白血病(AML)

急性骨髄性白血病(急性非リンパ性白血病ANLLともいう)は白血病の一つの型で、さらに急性骨髄芽球性白血病(M1)、急性骨髄球性白血病(M2急性顆粒球性白血病ともいう)急性前骨髄球性白血病(M3)急性骨髄単球性白血病(M4)急性単球性白血病(M5)急性赤白血病(M6)急性巨核芽球性白血病(M7)に分けられます。急性骨髄性白血病の患者で同種骨髄移植を受ける人の多くが一次寛解中に移植を受けます。
まず診断がおりると、AMLの患者は寛解(顕微鏡でみても骨髄の中に白血病細胞が認められない状態)を得るために導入療法という化学療法を1サイクル受けます。しかし、潜伏している白血病細胞は導入療法後も通常は生き残っており、それ以上の治療をしなければ患者の80%は最終的に再発してしまいます。
治癒率を向上させるために、導入療法の後には地固め療法と言われる次の化学療法を行うか同種骨髄移植を行うのが普通です。地固め療法での治癒率は成人では約30%、子どもでは40〜50%です。一次寛解期に同種骨髄移植を受けた患者の治癒率は大人では50%(ある一つの医療機関では治癒率が65%程度と報告しています)、子どもでは60〜80%となっています。
もし、導入療法で寛解に入らなかったり、地固め療法後に再発(白血病が戻って来ること)したら、その時点で同種骨髄移植を受けることも可能です。こうした条件下での、長期生存率は10〜30%です。移植を受けなければ長期生存率は0〜5%です。
AMLの患者でHLA適合ドナーのいない場合で、同種骨髄移植を受けられないときは、自家骨髄移植を、パージングした骨髄で実施します。(自家骨髄移植と骨髄のパージングについての詳細は第3章を参照)

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急性リンパ性白血病Acute Lymphoctic Leukemia (ALL)
急性リンパ性白血病(ALL)は、子どもの白血病では一番良くあるもので、通常の化学療法で治癒する確率が高いものです。骨髄移植は、寛解が得られなかった患者か、再発した患者に対しての適用になるのが普通です。
ALL患者で2次寛解期に同種骨髄移植を受けた人の約30〜40%が病気が治っています。移植を受けなかったなら、こうした再発した患者や、一次寛解を達成できなかった患者の長期生存は0〜5%でしょう。
一次寛解中に同種骨髄移植を受けることがある種のハイリスクALL患者(年齢や白血球数が高いなど、標準の化学療法では再発の危険性が高いと見られるもの)での治癒率向上につながるかどうかを決める研究が行われてきました。予備試験結果によれば、こうしたハイリスク患者で、標準の化学療法では治癒率が30%であるのに対し、50〜70%の治癒率が得られそうであるとのことです。こうした希望の持てる結果を立証するための研究がさらに進められています。

慢性骨髄性白血病 (CML)
慢性骨髄性白血病 (慢性顆粒球性白血病ともいう)は白血病の一つの型でAMLやALLよりもずっとゆっくり進行していきます。ハイドロキシウレアやインターフェロンで何年もコントロールできることが多いですが、最終的にはCMLは急性期に近づき、急性期になる(急性転化)と病気は急速に進行し、強力な治療を受けなければ、死に至ります。
この病気の過程の早期に(診断から一年が最良と見られる)同種骨髄移植を受けた患者では治癒率は50〜80%です。移植の実施を白血病が急性期になるまで待っている患者の治癒率は10〜30%です。

ホジキン、ノンホジキンリンパ腫
ホジキン病とノン・ホジキンリンパ腫の患者で、通常の化学療法では治らないものは同種骨髄移植ではなく自家骨髄移植を受けます。(第3章参照)しかし、病気が骨髄にまで転移すると、同種骨髄移植は最適かつ治癒が望める唯一の手段となります。骨髄転移を起こしている患者では、標準の化学療法での長期生存率は0〜5%となっているのに対し、同種骨髄移植を受けた後の長期生存率は20%となっています。

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再生不良性貧血
再生不良性貧血の患者は骨髄がうまく作動せず、白血球・赤血球・血小板の数値が減少しています。ですから、再生不良性貧血の患者は非常に感染し易く、出血傾向にあります。
HLA適合のドナーがいる若年の患者では同種骨髄移植をするのが好ましい治療法です。同種骨髄移植により50〜70%の患者が正常な血球数を得られるようになります。
年配の患者や適当なドナーが見つからない患者では。抗胸腺グロブリン(ATG)を、単独投与かあるいはステロイドとシクロスポリンと併用で用いることによって、約50%の患者を効果的に治療しています。抗胸腺グロブリン(ATG)は、ある患者には再生不良性貧血を起こす原因となっているT細胞を、破壊するために用います。この治療がうまくいかないときは、同種骨髄移植が選択肢として残されています。

ミスマッチの骨髄移植
患者の兄弟姉妹間でドナーを見つけられる確率は30〜35%程度のみですから(現在の家庭が平均2.7人の子どもを産むと仮定して)(もっと少ないね )部分一致、言いかえるとミスマッチの血縁ドナーがうまく移植に使えるかどうかを判断する治験が進められています。(現状 )今日までで判っていることは、一座ミスマッチの兄弟ドナーはA・B・DR座のどれが一つ合わなくても(6座の内5座一致)骨髄ドナーとして適切であることが多いらしいということです。
一座不一致の血縁ドナーを用いて移植をするときは、重症のGVHDが出る危険性は(血縁の完全適合ドナーを用いたときに20%であるのに対し)約30%です。生着拒絶反応の出る危険性はおおよそ10%です。一座不一致の血縁ドナー移植では重症のGVHDが出る危険が高いにも関わらず、長期生存率は完全一致の血縁ドナーを用いた移植で得られる結果とほとんど同じです。( )
提供された骨髄が2座以上不一致であると、重症のGVHDが出る危険性は50〜70%で、長期生存率はほとんどのタイプの患者で著しく下がります。
SCIDs (重症複合型免疫不全症候群)などのような免疫不全症に不一致の血縁ドナーを移植に使うのは可能です。3座不一致の両親(6座の内3座一致)がこうした患者のドナーになることは良くあります。免疫不全の患者には免疫機能が働かないことから、提供された骨髄に免疫系が攻撃をかけることができないのが普通で、このことから生着拒絶反応が起こる確率はとても低くなっています。

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ドナーの骨髄からT細胞(GVHDを起こす原因はそこにあると考えられる細胞)を除去する新しい技術により、この種の患者におけるGVHDの発症と重症化を下げることができました。
重症の再生不良性貧血がある患者はミスマッチドナーの移植では一番悪い反応でした。40〜50%にも及ぶ生着拒絶が報告されましたが、こうした数字は、移植の前処置に全身照射を組み入れれば、もっと低くなるでしょう。高率の生着拒絶率は、部分的には、移植に先立って再生不良性貧血の患者が輸血を相当数受けていることが原因だと思われます。輸血を繰り返し受けたことで、患者がドナーの骨髄中の細胞表面抗原に、より感受性が高くなっているのです。
白血病の患者では、一座不一致の血縁ドナーからの骨髄を移植することで、GVHD発現率と生着拒絶率は高くなるものの、HLA適合の兄弟ドナーの骨髄を使ったときに得られたのと同様の長期生存率を得ています。しかし、2座以上不一致になると、重症のGVHDが出る率は有意に高くなり、長期生存率も落ちます。T細胞除去法はGVHDの発現を抑えますが、生着にはT細胞が必要なため、生着拒絶が起こる確率も高めてしまうのです。その結果全体として生存率は変わりませんでした。進行した白血病で、移植前に他の患者よりも大量の化学療法や放射線照射を単独あるいは併用して受けなければならない患者は、ミスマッチの血縁ドナーによる移植を受けたときに、命に関わる重症のGVHDが出る危険性は最も高くなります。
一座不一致の血縁ドナーの骨髄を使った移植はうまく行くことが多いものの、大部分の患者にとっては、このことがドナー候補のプール拡大になることはさほどありません。家族の中に一座不一致の人を見つけられる可能性はわずか3〜5%です。ですから、非血縁骨髄ドナー国際登録を拡大する努力が進められています。

非血縁ドナーでの骨髄移植
骨髄バンクは世界30カ国で存在し、750,000人の骨髄ドナー希望登録者があります。現在、米国内の70の病院が非血縁者ドナーからの同種骨髄移植を行っています。(現状− )
一般人から非血縁の適合ドナーが見つかる確率は多くの要因によって左右されます。まず一つ目は、患者のハプロタイプ−両親から引き継ぐ2組のHLA抗原です。一般的なハプロタイプだと適合ドナーが現行の600,000人登録のNMDPで見つかる確率はとても高いのです。ところが、とても稀なタイプのハプロタイプだと、10%以下になるでしょう。
(日本の現状 )

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二つ目の要因は患者の民族性です。あるHLA抗原は「全民族共通」です。つまりほとんどすべての民族に認められるものです。またあるHLA抗原はある特定の民族に高頻度に認められるものがあります。患者の抗原がある特定の1民族に良く見つかりその他の民族では余り見られないものだと、患者の適合ドナーを見つけるのはドナー登録している中でのその特定民族の人数により制限されます。このことからNMDPの登録にドナーの民族多様性を拡大しようとする努力がなされています。(マイノリティーの登録についてー

3つ目の要因としては患者の診断と病期です。非血縁のドナーを探すのには3〜10ヵ月、時には1年以上かかります。適合ドナーを見つけるのに現状では長い時間がかかるために、急速に悪化している病状の患者は非血縁のドナーを探すとき不利な立場にあります。ミスマッチの血縁者ドナーが使われるのは、このことが理由になっていることがときにあります。(現状― コーディネートの短縮 )
非血縁者ドナーからの骨髄移植が始めて試みられたのは1973年のことで、それ以降、非血縁者ドナーを用いた骨髄移植が白血病・再生不良性貧血・免疫不全症候群と診断された患者に有効な治療法であることはいくつかの治験により実証されてきました。しかし、さらに正確に(遺伝子レベルでも?)適合したドナーを見つけるために、そしてGVHDの発症や重症化を最小限に止めるために、さらなる研究がされなければなりません。
骨髄移植でミスマッチの非血縁者ドナーを用いた移植が可能かどうかを調べる研究がある移植センターで行われています。(現状 )予備試験では、一座不一致の(6座の内5座一致)非血縁ドナーを用いた移植はうまくできそうですが、重症のGVHDに苦しむ危険性がかなり高いらしいことが示されています。患者が子どもの場合は大人の患者よりは結果が良いようです。ドナーが1人も見つからないときは、自家骨髄移植が適用になる患者もあるでしょう。(3章参照)

非血縁のドナーを見つける
NMDPは米国で最大のドナー登録者データベースを持っています。1992年6月時点で、NMDPを通してアクセスできるボランティアドナー記録は600,000を越えました。(1999年○月現在、 人です。)
NMDPは認定されたNMDP移植センターの要請があったときのみ、個々の患者に対してドナーの検索を行います。認定センターは過去2年間に1年あたり10例以上、過去5年間に30例以上の同種骨髄移植を実施している医療機関です。

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現行のNMDP認定移植センターの一覧や、患者受け入れの基準はNMDP800 654-1247に電話して下さい。
小規模な骨髄バンク登録機関の、アメリカンレジストリーには1992年6月の時点で40,000人のドナーがファイルされており、数十万の国際間登録もアクセス可能と報告されています。国際間登録のほとんどはNMDPからもアクセスできます。(1999年現在は???)
医師や移植センターならどこでも誰でも、アメリカンレジストリーでドナー検索をすることができます。患者が50歳を越えている場合は、ドナー検索は移植を受け入れる移植センターからの検索でなければなりません。アメリカンレジストリーのドナーデータベースで検索する場合の情報は800 726-2824に電話して下さい。(現状―― )
NMDPやアメリカンレジストリーでの検索料金は、適合ドナー候補者の数や実施しないといけないフォローアップの検査によって変わってきます。ドナー検索、ドナーの血液検査・健康診断、骨髄採取の費用は20,000ドル程度です。全保険プランがこうしたドナー関連費用を支払ってくれる訳ではありません。

ドナーになる
ドナーとして適合したとの連絡を受けると、次に受けなければならない医療処置は骨髄採取です。これは外科的な処置で、必ず病院に一泊しないといけません。処置は一般的に全身麻酔下で行われるので、ドナーは骨髄採取中は不快感はありません。採取後に、ドナーは骨髄を採取したお尻(腰)のあたりに幾らか痛みを感じることがあります。この痛みは経口のタイレノール(アセトアミノフェン)などで和らぐのが普通です。骨髄採取についての詳細は13ページを参照して下さい。
あなたがNMDPやアメリカンレジストリーでドナーになろうと登録しているのなら、骨髄提供に伴う費用は患者の家族によって支払われることになっています。骨髄提供者はおおよそ40時間(累計時間であり、連続ではありません)をさまざまな血液検査や、健康診断、カウンセリング、そして肝心の骨髄採取に費やすことが予想されます。
あなたが血縁のドナーなら、移植後の数週間、患者への血小板献血もできないか頼まれるでしょう。
大部分のドナーにとって、人に(特に愛する家族に)二つ目の命を手にするチャンスを提供することはとても興奮することです。しかし、骨髄移植を受ければ全患者が成功して助かる訳ではないことを忘れてはなりません。移植がうまく行かなかったと知ることは、自分以外の人の命を救おうと、肉体的にも精神的にも相当な投資?(協力?努力?)をし

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てきたドナーにとって、とてもつらいことです。ドナーが唯一保証されているのは、患者さんに「未来」をあげられるだろうということだけです。その「未来」が2ヵ月か、2年か、生涯かは確実に予想することはできません。

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ローラ・ワイズ体験談
イリノイ州グランビューに住む40歳のローラ・ワイズは典型的な母親です。病気の徴候に気づくとすぐに、三人の子どもや夫を医師に行かせます。(私みたい…(^○^))ところが、1990年の春、流感のような症状が彼女に現れたときは、医師を訪ねるのを何ヵ月も延ばしていました。健康診断にいって、医師の言葉に呆然としました。何と彼女は慢性骨髄性白血病にかかっていたのです。通常の化学治療では、余命3〜5年だろうと医師はいいました。
「まるで死の宣告のようだったわ」とローラは思い出します。「でも幸運なことに、私がまさに必要としていたものを、先生が初めからくださいました。それは希望です。先生が骨髄移植をすれば多分治るだろうから、二人の姉妹と弟の誰かがドナーになれないか直ちに検査を始めましょうとおっしゃいました。移植を受ける決心をするのはつらかったですが、いったん決心したあとは、決して後ろは振り返りませんでした。」
「姉妹や弟のHLA検査結果を待っているのはさらに苦しかったです。移植を進めていくというある種の緊急性があったのですが、それでも検査結果がようやく判るまでは、ずいぶん永く感じました。初めはその結果が何を意味するのかが、あんまり判っていませんでした。それを見て『これはなかなかいいわ。みんな二つの抗原しか外れていないじゃないの』と思ったのです。」
良くあることですが、ローラの姉妹も弟も誰一人HLA完全一致ではなかったのです。姉のメアリーがまだ一番あっていて、ワンローカスミスマッチ(一座不適合)だったのです。それで医師はメアリーを移植可能と判断しました。
8月にはローラと夫のボブとメアリーは移植を受けにシアトルに行きました。「子どもを3人置いていくのはつらかったですが、移植の間も子どもたちの生活をできるだけ普通にしておいてやりたかったのです。3人とも(4〜9歳)何が起きているのかを理解していましたし、私たちは子どもに毎日電話しました。」
メアリーの「素晴らしい骨髄」は問題なく生着し、彼女の「活きのいい血小板」はローラが自分の血小板を自分で作り出せるようになるまで彼女を支えました。しかし、退院した後に慢性GVHDが現れました。
「身体には発疹が出るし、口内炎はでるし、目が乾いてかゆく、肝機能テストの数値も上がり、それをコントロールするために、ずっとシクロスポリンを飲んでいました。この前の8月に一年検診で、薬の減量を始めました。ところが6週間後、GVHDが再燃し、またシクロスポリンを飲まなければならなくなりました。あれにはがっかりしました。」
それから、ローラのGVHDは治まりました。「この7月、また検診に行くのです。薬を減らせて、GVHDがすっかり消えてくれることを願っています。」

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「私にとっては、移植は絶対にやって良かったと思います。ほとんど、元の日常生活に戻りました」
次はこれから移植を受ける人へのローラからのアドバイスです。「いつも物事の悲観的な面ではなく希望の持てる面だけを見ていきましょう。そのことと、私が夫や家族からもらった支えがあったから、この体験を乗り越えていく上で、随分と違いました。」

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BMT Newsletter (c) 1992

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(少子化しており兄弟姉妹が少なくなっている日本でも、血縁者間の移植は非血縁者間の移植の3倍ほど実施されております。日本の骨髄バンク登録者の数は10万人を越え、単一民族国家であることから比較的適合ドナーが見つかり易いものの、移植希望患者の約2割5分にはドナーが見つからず、設備や制度の違いもあり、99年1月末現在までで7300人を超すバンク移植希望者があるにもかかわらず移植をうけたひとは1800人程度、今も待っている人が1600人程度おられます。残念にも受ける機会を得ないまま他界された人がたくさんおられます。すべての患者さんにチャンスが届けられるよう30万人の登録を目指している日本の骨髄バンクをどうぞよろしくお願いします。)

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