(原典:Bone Marrow Transplants: a Book of Basics For Patients Chap.12
URL: http://www.bmtnews.org/bmt/bmt.book/toc.html
訳者: 撫子なんちゃん

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第12章 健康保険と骨髄移植(医療費の支払い)


保険会社と病院の間には、骨髄移植患者をロープの真ん中にある印のように挟んで激しい綱引き争いが繰り広げられております。一方では病院は最も効果的な、現在の科学技術の発達水準に応じた医療を患者に施そうと努力します。他方では、保険会社が医療費が膨らむのを抑えようと一生懸命です。患者は、ただ何とか生きようと必死に闘病しているだけです。
1988〜1991年の4年間に、保険会社が骨髄移植の費用をどうしても支払おうとしないために、移植を受けることができなかった人は200人以上おられました。また保険会社に移植費用を払うよう説き伏せたり、自分たちで資金作りして費用を工面するために、移植が遅れた人はさらに多くおられます。状況は改善されつつあるというのが良い知らせで、悪い知らせは保険会社に移植費用の支払いを納得させるには長く大変な闘い ― たいていの移植患者が一人で背負う用意などできていない ― を必要とするということです。
1991年「骨髄移植ニュース」の移植センター調査で、自家骨髄移植(患者自身の骨髄を用いる)は最も保険会社に支払いを拒否される型の移植であることが判りました。特にそれが乳ガンや固形ガンの治療として行われる場合です。また、保険会社が初めに自家骨髄移植を事前承認することを拒絶しても、患者の主治医からその患者の病気に骨髄移植が有効であると示した研究や、その分野における別の専門家のセカンドオピニオンと、さらに医療担当局が移植の実施を是認する証明が書かれた文書があれば、保険会社は骨髄移植費用を賄わないという初回の回答もしばしば覆すことができるということも判りました。雇用主の介入や、法的措置をとることも、支払わせるのに効果的なこともありました。

ミスマッチのドナー(ドナーの骨髄のHLAが患者のものと遺伝子的に完全一致していない)を使った骨髄移植の保険給付支払いも、調査に応じた人から問題例として挙げられています。適切なドナーをみつけるのにかかる費用、ドナーの健康診断実施費用、ドナーの骨髄採取費用も、保険が支払いを拒否するものの例として良くあげられます。最低基準はどこでしょうか。あなたと契約している保険会社が骨髄移植の関連費用を何でもすべて賄ってくれるとは思わないでください。自分の権利を知り、保険証券の契約内容を理解し、雇用主の助力を得て、保険会社にあなたの骨髄移植費用を賄うよう納得させる努力をあなたと共に快く進めてくれる医師がいることが必須です。もし、あなたが何も闘わずとも骨髄移植費用を払う保険会社と契約している人の一人なら、ありがたいことです。そうでないときは、保険会社がノーと言っても、それを回答だとして納得しないことを覚えておいて下さい。あなたの移植費用が保険で確実に賄われるようにするための戦略を読み進めていってください。

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保険にはどんなものがあるのか
今日一般的に利用されている健康保険には4種類あります。民間保険会社のもの、自社運営のもの、健康維持団体health maintenance organizations (HMOs)、政府が行うプログラムの4つです。

民間保険会社
いちばん一般的に利用されているのが民間保険会社のプランです。年間の保険料支払いと引き換えに保険会社が患者が支払う医療費のいくらかを返済します。返済される費用は、保険の契約内容に記載されており、法律によって加入者に渡すよう義務づけられています。民間の保険は個人でも契約できますし、従業員やメンバーのために雇用主や団体が契約するものもあります。

民間保険に加入している人は診療・看護を提供してくれる医師や病院を選択できます。定期健康診断や予防的医療に対しては支払われず、返済されるべき額面がいったん支払われた後にしかお金は出ません。つまり、患者が自分のお金で相当な医療費を払い終わっていると言うことです。保険のプランが補てんする医療費には限度があり、ものによっては完全に補償範囲から除外されています。

一般的には、あなたが個人契約をしているのと団体契約で加入しているのとでは同じ保険会社であっても、後者の方が骨髄移植費用補償が確保できる可能性は高くなります。これは、大企業や団体では、約款に基本的に移植費用の支払いが具体的には明示されていなくても特例の出費を賄うよう民間保険会社に強力な圧力をかけることができるからです。1988年の米国健康保険協会が保険会社の調査を行った結果、27%の保険会社が通例骨髄移植費用は賄わないが、ケースバイケースあるいは、雇用主の請求に応じて支払うことがあると答えています。

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自社保険プラン
2番目の型の保険としては自社保険プランがあります。自社保険プランで補償されている場合は、あなたの雇用主が民間の保険と契約を結ぶのではなく、会社の資産の中からあなたの医療費請求を雇用主が支払うことを意味します。保険の給付内容については加入者には文書で概説したものが渡されています。通常は、民間保険と同様に、個人が医師や病院を選択し、いったん個人が医療費の支払いを完了してから、医療費の還元が行われ、ある限度までしか支払われません。

雇用者によっては別個に会社を雇い入れ(多くは保険会社)従業員の保険請求を処理したり、支払いを管理したりするところもあります。これが時々誤解を招き、保険の管理をするよう雇い入れられた会社が現実にどの医療費が補償されるかを決定する保険業者であるかのように混乱してしまう人があります。もしあなたの雇用主が自社保険制度を持っているなら、保険で賄われるかどうかの決定、補償内容の制限、支払いの程度などは、保険管理会社ではなく雇用主により決定されるのです。

もしあなたが民間保険やHMOなどではなく、勤務先の自社保険に加入している場合は骨髄移植費用支払い拒否に対し異議申したてをするのは一般的に良い結果を得やすいようです。これは、基本的に、雇用主自体が保険会社であり保険給付内容を決めるのに柔軟性が持てるからです。

健康維持団体HMOs (Health Maintenance Organizations)
健康維持団体Health maintenance organizations(HMO)は医師や病院からなるネットワークで、月極の固定料金と引き換えに加入者に医療を提供するものです。これは補償が始まるまで加入者の医療費支払いはなく、民間保険ではよく補償対象から除外される定期検診や投薬治療も通常賄われます。HMO加入者はHMOネットワークの中から医療機関や医師を選択しなければなりません。特別な例外を除いて、ネットワークに入っていない医師や医療機関から受けた医療の費用は返済されません。

HMOについてよく耳にするのは、HMOと提携している病院で受けたすべての医療処置がHMOから賄われるということですが、これは必ずしも本当ではありません。HMOはその組織存続のために、経費抑制をよりどころにしており、例えHMOネットワークの提携病院で移植を受けるにしても、民間保険以上に骨髄移植の種類などについて厳しい制限があることも多いのです。承認されても、移植を受けられる病院はほとんど選択の余地がありません。

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政府の保険制度―メディケアとメディケイド、チップス
メディケアは65歳以上高齢者と障害者に対して米国連邦政府がとりおこなっている医療給付制度です。メディケアで賄われる医療処置内容は連邦登録書によって明示されています。一方、メディケイドは低所得者層に対する州運営の健康保険制度です。メディケイドは連邦政府からの調整補助金を資金源としていますが、州が主に、給付内容を決めます。メディケアや多くのメディケイド制度では全部ではないのですがある種の骨髄移植が補償されます。
包括的健康保険制度(チップスComprehensive Health Insurance Plans (CHIPs))が利用できる州もいくつかあります。チップスは、重症の健康状態が原因で他には適切な健康保険に加入することができない人に健康保険を提供するものです。チップスは保険会社に課せられる税金や州の税収入や、その両方を資金源としています。加入者は年齢と性別に応じて取り決められた年払いの保険料を払います。チップスも全部ではないですがほとんどは、骨髄移植を補償します。

その他の保険制度
ブルークロス・ブルーシールドは民間保険の一種です。「(略して)ブルーズ」は非営利団体で限定区域での医療サービスに対して、医師や病院と料金取り決めを交渉するものです。先に述べた他の民間保険と同様に、年間保険料を支払うと、特定した一連の医療に対して給付が受けられます。保険からの給付が受けらる前に患者は先に医療費を支払います。また、ある種の医療処置は完全に給付対象から除外されています。ある州のブルークロス・ブルーシールドはHMO(民間の保険業者がそうしているように)も同時に運営しているところもあります。

Preferred Provider Organizations (優先保険供給機構 PPOs)はグループ保険に加入している人の代替え的 な低価格保険料の健康保険として提供されるものです。 PROは医師や病院をネットワーク状に彼らを同意の上で集め、交渉により合意した料率で医療を提供するものです。合意料率によって得た節約分は加入者に保険料を下げる形で配当されるか、最低負担額を引き下げることに使われます。

ガン保険証券がいくつかの業者から販売流通されており、表向きはガン患者向けに特別なメリットがあるように唱っていますが、ガン保険証券は往々にして、入院日数90日以下の最低限度給付しかなかったり、ガンやガン治療から生じる他の病気や合併症は対象外だったり、除外項目や待機期間があって、その価値は多いに減ります。保険に詳しい人に言わせれば、高額の保険料金には見合わないようです。

包括的健康保険プラン(チップス)COMPREHENSIVE HEALTH INSURANCE PLANS (CHIPS)
以下にあげたのは保険に加入できない人のためにチップス制度がある州です。○がついている州では、骨髄移植が特に給付対象から除外されていないですが、全骨髄移植症例や全骨髄移植費用が賄われる保証はありません。×がついている州では特に臓器移植は対象外になっています。カリフォルニア .......800-228-7044....... ○
コロラド .......800-423-6174....... ○
コネティカット ......800-628-7734....... ○
フロリダ .......800-766-3242....... ○
イリノイ .......800-962-8384....... ○
インディアナ .......800-552-7921....... ○
アイオワ .......800-877-5156....... ○
ルイジアナ .......504-926-6245....... ○
メーン .......207-582-8707....... ○
ミネソタ .......800-382-2000x1624.. ○
ミシシッピ ......601-362-0799....... ○
ミズーリ .......800-843-6447....... ○
モンタナ .......800-447-7828....... ×
ネブラスカ .......800-356-3485....... ○
ニューメキシコ .......800-432-0750....... ○
ノースダコタ .....800-342-4718....... ×
オレゴン .......800-542-3104....... ○
サウス・カロライナ ...800-868-2503....... ○
テネシー .............800-533-9892....... ○
ユタ .............800-662-3398....... ○
ワシントン .......800-877-5187....... ○
ウィスコンシン ........800-877-1060....... ○
ワイオミング ..........800-442-4333x7401.. ×

あなたの健康保険は適切か
最低でも、あなたの保険証券で、包括的な病院関連費用・外科費用・内科費用などの給付 ― 病院の部屋代・食事代、麻酔費、薬物治療費、看護費、オペ室・回復室使用料、病院ラボ検査料金、外科処置料、医師診察料(オフィス・病院訪問ともに)、診断検査料、チェックアップ(レントゲン撮影・CATスキャンなど)が認められるべきです。

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ブルークロス・ブルーシールドOPEN ENROLLMENT
以下にあげた州のブルークロス・ブルーシールドは既にガンなどに罹っている人が保険に加入する資格を受けられる入会登録期間を設けているそうです。限定条件や待機期間があり、骨髄移植すべての給付対象にはなりません。
アラバマ.............. 800-292-8868
コロンビア区 .... 202-484-9100
メリーランド.......... 202-484-9100
マサチューセッツ ..... 800-822-2700
ミシガン.............. 800-258-8000
ニューハンプシャー ... 603-228-0161
ニュージャージー...... 201-491-2729
ニューヨーク ......... 212-490-4141
ノースカロライナ...... 800-222-4816
ペンシルバニア ....... 215-568-8204
ロードアイランド...... 800-527-7290
ヴァーモント.......... 800-441-4094
ヴァージニア.......... 202-484-9100 (DC 地区) 703-342-7352 (DC地区以外)

外来診療(医師のオフィスでの化学療法実施など)、在宅看護サービス(訪問看護婦など)、処方薬なども重要な給付対象です。あなたの保険証券が医療費の何割かを自費で払うように求めている場合、あなたが支払う医療費には「損失条項」付きか、あるいは支払上限設定なのかを確認して下さい。

保険で賄われる入院日数(骨髄移植には通常28〜56日以上の入院が必要です)、年間やover the life of the policyに支払われる給付金の上限額(骨髄移植には100,000ドル以上かかります)、除外される特例(臓器移植が賄われるかどうか)を確認しましょう。既存の健康状態(例えば保険加入する前からガンと診断が降りているなど)のために、給付から除外されないことや、あなたの健康状態が悪化したり補償を繰り返し要求したときに取り消し規定がないことを確認して下さい。

保険で支払いを拒否されても……
ノーという返事を受け入れないことです。保険業者が移植費用やその他の医療費支払いを拒んでも結構異議を唱えて認められています。それには、忍耐も要しますし、主治医の協力、雇用主の助け、弁護士の力などが必要になりますが、可能なのです。

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うまく行く保証はどこにもありませんが、移植患者であるあなたなら、既に骨の折れる勝負に出るのは慣れっこでしょう!
補償拒否に対して不服申し立ての方法をあなたに文書で知らせる義務がほとんどの保険業者にあると、法律によって決められています。こうした説明を丁寧に読み、送った書類も送られてきた書類も全部コピーを取っておきましょう。
もし、あなたが従業員グループ保険加入をしているなら、問題が生じた時点ですぐに雇用者に助けを求める連絡をしましょう。早めに問題点を知らされていれば、雇用者は保険契約の改善を交渉したり、骨髄移植費用を補償するような追加約款を設ける措置を取ったりすることもできる場合が往々にしてあります。

問題点は何か?
保険業者の移植費用支払い拒否に異議申したてをうまくやるためには、なぜ拒否されたか、その明確な理由を理解するべきです。あなたには拒否理由の説明を文書で受ける権利が法律で保証されています。しかし、それは単に"最小限度あるいは骨子だけかもしれず、完全な詳細を手にするには更に追究する文書を出す必要もあるでしょう。

保険業者が移植の事前承認や支払を拒否するにはさまざまな理由があります。最も一般的な理由には次のようなものがあります。

  1. その治療法が実験的、研究的段階にあること。
  2. その治療法が医学的に必然性がないこと。
  3. 患者に保険給付を受ける資格がないこと。
  4. その治療に要する医療費が通常の慣例的な料金を越えていること。

1.実験的、研究的段階
骨髄移植は保険業者から、その治療法が実験的段階あるいは研究的段階にあるという理由で補償を拒否されることがよくあります。実験的段階あるいは研究的段階という定義は業者によって違います。あなたの保険業者に管理ガイドのコピーを一部要求しましょう。それにはどういう状況下でどの処置が実験的あるいは研究的かが分類されています。
保険会社は骨髄移植を、ある病気に対しては給付対象、別の病気に対しては実験的・研究的段階とみなすようです。実施しようとする移植の種類も、それが実験的・研究的であるかどうかを保険業者が判断する材料になります。
例えば、自家移植は乳ガンに対して実施するときは研究的治療とみなされ、ホジキン病に対して実施するときはそうはなりません。同様に、同種骨髄移植は白血病に対しては慣例的治療とみなされますが、自家骨髄移植は白血病には研究的治療とみなされます。

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保険業者職員が全くゼロあるいはごく限られた医療的知識(判断材料)しかないのにその治療が実験的・研究的治療であると初めに判断されてしまうことはよくあります。彼らは単に、「実験的研究的治療に関する管理ガイド」を自分の権限の及ぶ限り適用しているだけで、不当に給付を拒否してしまうこともあるのです。そんなときは、保険会社の医療指導者に一本電話をして給付拒否の撤回を請求する程度ですむこともあります。
しかし、ことはそう簡単ではないことが多いようです。主治医が保険会社にあなたの病気には骨髄移植が有効な治療法であることを示す全治験結果を提出しなければなりません。例えそれが現在進行中の治験の予備試験結果であってもです。医学界ではその治療がまだ研究段階であっても、保険業者に骨髄移植があなたを治癒させるか命を長らえる最善のあるいは唯一の方法であると納得させるには十分な根拠になり得るのです。1988年の米国健康保険協会が実施した保険調査によると70%の保険業者が実験的研究的と見られる臓器移植を補てんしています。
主治医は保険業者に、骨髄移植が現在の医学界で一般的に認められた治療選択肢であることも判らせるべきです。一般的に受け入れられるというのは、すべての医師があなたの病気の治療法として骨髄移植を選択することに同意するという意味ではありません。そうではなくむしろ、多くの権威ある専門家が効果的治療法であると考え、患者にこの治療法を慣例的に勧める医師が多くいるということです。その治療を現在の医学界で用いられている治療法として引用している医学文献を参照し、それと同時にその治療を採用することを支持する他の専門家のセカンドオピニオンもあれば、あなたのケースを認めてもらうのにも役立つでしょう。
保険会社はメディケア、米国医師連合会、国立衛生研究所、米国科学技術評価局、アメリカ内科医師会、米国立ガン研究所、その他の医療処置の有効性を判断する団体などが出す報告書を信頼することが多く、こうした機関があなたの病気に骨髄移植を適用することを是認したり肯定的発表をしている場合は、その事実を主治医は記すべきです。
雇用主は保険会社にあなたの移植費用を賄うよう説得するのに重要な役割を果たせます。あなたの会社が保険会社と長期間良い関係を築き、上得意先になってきている場合は特にそうです。自社保険を持っている雇用主も骨髄移植費用を賄えるよう給付範囲拡大をする柔軟性をより一層持っています。

2.医学的な必然性がない
たいていの保険証券では医学的に必然性がない処置の保険給付は除外されますが、「医学的に見て必然性がある」というのは会社によって定義が違います。あなたの保険業者に処置が「医学的に必然性がない」と判断する際に基本となる管理ガイドのコピーを一部要求しましょう。

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(Page 131)

保険業者や雇用者は必要性や生産性を評価する企業"Utilization review firm"(UR firm)を使って、処置が医学的に必然的なものかどうかを確かめることがよくあります。このような調査企業を保険会社と混同したり、その企業が「骨髄移植は医学的に必然性がある」と認めたからといってそれが保険業者に支払いを承認されたのだと混同しないでください。調査企業はただ保険会社に推薦をするだけで、その推薦には何の拘束力もありません。
もし、骨髄移植やその他の医療費補てんが「医学的に見て必然性がない」という理由で拒否されたら、主治医に「この症例(あなたの場合)では、なぜその治療に必然性があるのか」を説明する文書を書いてもらわなければなりません。あなたのカルテを見て別の専門医にセカンドオピニオンを書いてもらうのもとても効果的です。主治医が医学ジャーナルや同様の書籍を引用し、あなたにはその治療が医学的必然性があるという主治医の意見を支持する内容の文献を紹介するのも役に立ちます。調査企業が必然性がないと判断したら、調査企業と保険会社の双方に異議申立てを提出します。
雇用主の力を借りて、保険業者に初めの給付拒否を撤回するよう説得してもらいましょう。雇用主があなたに代わって調停してくれると、とても助かります。特に、保険業者があなたの雇用主に機嫌良く上得意客でいて欲しいと思っている場合にはそうです。

3.患者に保険給付を受ける資格がない
あなたが契約している保険会社が、骨髄移植やその他の医療費の補てん(保険証券で補てんされるのが慣例であっても)を受ける資格があなたにはないと決定することがあります。これは補てんが有効になるまでの待機期間があるとき(例えば、補てんがされる以前に6ヵ月は雇用されていないといけない場合など)や、既存の病状がある(すなわち、保険に加入する以前にすでに治療を受けた病気と診断された場合)ために補てんから除外されているなどの場合に起きてきます。また、あなたの保険約款が特に骨髄移植費用の補てんを除外していることもあります。
絶望しないでください。既に述べたようなさまざまな理由から、あなたは雇用者の力を得て、あなたの移植費用の全額あるいは一部を補てんしてもらえることもあるのです。

4.医療費が通常の慣例的な料金を越えている
例え、保険会社が骨髄移植費用の支払いを事前承認していても、後に、その料金が通常の慣例的な金額を越えている場合には請求書の支払いを部分的に拒否してくることがあります。米国健康保険協会はさまざまな医療処置に対して医師から請求された料金を地域コードごとに分けて、データベース化してあります。

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大手の民間保険会社は治療費の全額が同じ地域の医師たちにより同じ治療に課せられた料金の80%台〜90%台におさまる場合は支払います。
医療費請求書の一部がその料金が通常の慣例的な料金を越えているという理由ではねられたときには、問題を主治医に伝えましょう。レセプトが不適確なために部分的に拒否されることが時々あります。例えば、二つの別個の処置が一つの処置としてまとめて記載されていることもあります。あなたの地域でその処置に対する料金比較データと比べると、その料金は法外に高く見えます。レセプトの請求が正しく項目分けできており、請求総額が正しいかどうかを不足額を支払う前に医師に確認してもらって下さい。まちがいがあれば、給付を求める請求書を保険会社に再提出できます。そうでないときは、主治医は自主的に料金を下げるか請求を棄却するでしょう。



「ノー」をそのまま受け入れない
当初保険会社があなたからの請求を拒否してきても骨髄移植費用を保険会社に支払わせることは可能です。弁護士の力が必要になることもよくありますが、できるのです。次はそのためのヒントです。

  1. 保険会社から移植費用支払いの拒否があったら、移植センターの医療チームとすぐに会って話してください。移植センターの多くは、保険業者への移植費用支払いの説得にとても経験豊富ですから、支払拒否の異議申立てをする際にうまく力になってくれます。
  2. 保険の約款にどんな言葉が書いてあろうと、保険会社が一方的に支払いを決める権利があると思わないでください。弁護士に連絡を取り、現実にはあなたに法律上、どのような権利があるのかを明確にしましょう。
  3. 弁護士の力を求めるのを後回しにしないことです。弁護士からの文書一通で、保険会社がその件に関する自分の立場を再考する気になることも良くあります。通常は、この様なケースでは現実に訴訟を起こさなくても、弁護士の介入だけでうまく解決されます。
  4. あなたの近くにこのようなケースで経験がある弁護士がいませんか? そういうときには、「骨髄移植ニュース」708-831-1913に連絡下さい。骨髄移植のケースを扱って成功した弁護士リストをいくつかの州については用意しています。彼らの多くはこうしたケースを初めて扱っている弁護士とも進んで話をしてくれるでしょう。あなたが自分の弁護士がある場合でも、そのリストは役に立つでしょう。

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訴訟を起こす
保険会社の骨髄移植費用支払拒否に挑戦するのは困難かつ時間がかかることです。多くの移植センターにはその過程を助けてくれる経験を積んだスタッフがいますが、移植費用の返済を求めて保険業者を訴えざるをえないこともあるでしょう。

移植費用の返済を求めて保険会社を訴えた患者の訴訟で最近報告されている訴訟結果には勇気づけられます。1990年の15例(ほとんどは乳ガンで自家移植をする例)報告がある中で、9例が、予審や最終決定で移植費用の支払いを保険会社に要求しています。他の4例は訴訟なしに示談で患者の有利な方に解決されています。

移植費用の返済を勝ち取る法的戦略は保険約款に使われている専門用語に左右されるものです。"実験的"、"研究的"とか"医学界では一般的に受け入れられない"という理由で補てんが拒否されているのなら、法廷がまず第一に、保険約款は保険業者に使われる用語を約款中で解釈する独占的権利があるのかどうかを決定します。独占的権利がないのなら、裁判官が保険業者の解釈に従うことはなく、約款を独自に解釈します。約款が、どの医療処置が補てんされるかどうかを決めるのに保険業者だけに一方的な権限を与えるなら、裁判官は保険業者が自社の基準を独断的で気まぐれなやり方で適用していないかどうかを判断します。
どちらの場合も、その患者の疾患に骨髄移植を適用することの有効性に関する医療専門家の証言とその治療が医学界で一般的に受け入れられているかどうかを重要視します。

最近の自家骨髄移植に関する訴訟の詳細は1991年5月発行「腫瘍学関連問題」テッド・ワイズマン著(the Journal of the Association of Community Cancer Centers出版)を参照してください。

骨髄移植ニュース1991年保険調査
28州の63骨髄移植センターが「骨髄移植ニュース1991年保険調査」に回答しました。調査結果の要点は以下のようです。


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ゲイルの体験談
オクラホマ州タルサに住む52歳のゲイル・ピットマンは借り物の時間を走り続けています。多発性骨髄腫と診断され、主治医は自家骨髄移植だけが彼に生き長らえる機会を与えてくれると言います。ブルークロス・ブルーシールドは彼の移植費用支払いを、試験的治療であるという理由で拒否しています。ゲイルは「逆境が襲っても決して諦めないように」と他の人に以下のような激励文を書きました。

「私はランナーですから、治るチャンスがあります。」
医師があなたは多発性骨髄腫というガンを患っていますといいました。8年前にランニングを始めました。徐々に体力をつけ、1週間に数回、一回約10キロは走れるまでになりました。1990年の早春、ランニングするのにいい季節を楽しみにしていたのです。気分も良かったのです。今年はいい年になりそうだと思っていました。それからだんだんと、体力が落ちて行き、背中の下の方に痛みを感じ始めました。何年も走ってきたのですから、私は自分の身体とうまく付き合ってきました。ですから、これは身体が私に何か(異変)を伝えようとしているのだと感じました。

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沢山の血液検査の後、多発性骨髄腫瘍だと診断が確定し、それは骨髄を侵すガンでほとんどが致命的なものであると知りました。主治医は私に余命27ヵ月だと言いました。
けれども、私はランニングをしていましたから、体力はとてもいい状態でした。医学の力を借りることができれば、闘病する体力はあると思いました。自分で、実年齢よりも私の身体は若く、身体の状態がよいということに同意してくれる腫瘍科医をみつけました。医師は検査と治療を進めることに同意したのです。もし私が走っていなかったら、早期に病気の徴候に気づかなかっただろうし、治療を受けるだけの体調になかっただろうという思いは疑う余地のないものでした。
15ヵ月以上も、月ごとの化学療法を受け、何ヵ月も私の免疫系を刺激するためにインターフェロンを注射しました。自分が経験しない限り、化学療法を受けることがどんなものかなんて誰かに説明できる人は誰もいません。
しばらく、私は走るどころか、遠くまで歩くことさえできませんでした。でも走ることが身体の一部のようになっていましたから、川まで行き、道を見つけ続けました。だんだん、ウォーキングからジョギングになり、ジョギングからランニングになっていきました。1990年のタルサ走は参加できませんでしたが、良い友達と一緒に並んで1991年のタルサ走には完走できました。
私は、ガンが自分を襲う前の自分に戻ることは決してできないでしょう。でも、これからも走り続けたいし、お気に入りのレースには参加し続けたいと願っています。
私たちは今も、闘っています。治療ではいつも、私を骨髄移植が受けられる状態までもって行こうという狙いで行われてきました。ようやくここまで到達しました。たった一つ立ちはだかっているのは治療費支払いを拒否する保険会社なのです。過去数ヵ月間から判ったことは、前向きな積極的な心で、友達からの心強い支えがあり、走り続けるたゆまぬ努力をすることは、私にとって、これまで受けてきたすべての医学的治療と同じだけ重要なものであったと言うことです。

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BMT Newsletter (c) 1992

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