KENの超・闘病法からの N e w s 〜過 去 記 事

- [5] (98.6.11〜6.30)-
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98.6.30 ◇◇財団の理事会に傍聴許可◇◇

 本日開催される骨髄移植推進財団の理事会の傍聴が可能になった。このところKENが強力に要請していたことが,実現したものだ。これは画期的なことだ。傍聴希望は財団まで。
 30日(火) 1時から 法曹会館


98.6.30 ◇◇幻の企画管理委員会決定(1座不一致問題の宙づり)◇◇

 6月19日の企画管理委員会で1座不一致移植の実施とDLT(ドナーリンパ球輸注)の実施が決定した。6月30日の理事会に諮られて決定されることと決まった。ところが、土壇場になって6月30日の理事会には諮られないことになった。どうしようもない財団の仕組みと幹部のずぼらさがまた明らかになった。

ポイント
・財団は決めたことが実行できない
・決めたことなのか、決まりかかったことなのか不明確
・企画管理委員会とは何なのか位置づけがはっきりしていない
・1座不一致移植とDLTを通すための、戦略、戦術、作業が欠けている
・1座不一致とDLTをいっしょに通そうとしたのは稚拙
・とにかく、財団組織の迷走ぶりがまたあらわれた
・本日の理事会に注目。理事会メンバーでもこうした内情が分かっている人が果たしてどれだけいるか。もっと勉強して下さい。

各当事者の発言

 財団矢澤部長「1座不一致移植とDLTは理事会の議題としてかからないことになった。明日(30日の理事会で)、やることにはならない。企画管理委員会だけでは決められずに、学会や厚生省の意向もある。造血幹移植学会、輸血学会、血液学会などから望ましいというコメントをもらうことが必要。ただ検索ができるようになったからやるということでは許されない。理事会では説明があっても、議題にはならず、後日、書面評決することになろう」
 小寺企画管理委員長(理事)「理事会で決定すると言っていたが、その後、今回の理事会は決算理事会ということであるし、理事会までの時間がなかったこともあり、すでに理事会の文書などもつくってしまっていることもあり、理事会では議題にせず、持ち回り審議で決めることになる。また、小寺班(厚生省の研究費をもらった造血幹細胞移植についての研究班)の会議でもやはり、コンサバ(コンサーバティブ。保守的)な医師がいて、1座不一致移植やDLTについて、やるべきかどうか、異なった意見もあった。造血幹細胞移植学会でも、1座不一致に踏み切ることにゴーサインを出すことに疑義もあるし、DLTも確かめた方が良いとの意見がある。ただ、私はドクターの世界や学会レベルの医学という科学の話と、骨髄バンクという社会システムの話は別だと思う。レベルの違う問題だ。医師、科学者としてはいろんなことを考えるのは正しい。学会ではいろんな意見があって当たり前。だが、患者の救命という観点からの骨髄バンクという社会システムの観点からみると必要なことであり、こういうことを規制しすぎるべきではないと思うので、了解をとっていきたいと思う。企画管理委員会で決めたことを事務局が抑えているということもなきにしもあらずだが、意見をききながらやっていっている」
 加藤企画管理委員「理事会に1座不一致とDLTのことが出なくなりそうだとは聞いていたが、そう決まったということはいま始めて知った。理事会の議題として決定することをお願いしていたのだが、時間的に間に合わないかもしれないということだった。だが、時間的に間に合わないということなど理由にならない。理事会の議題がすでに決まったあとなので盛り込めないという説明だった。小寺班ではDLTについては異論があったが、1座不一致についてはなかった。理事会では公衆衛生審議会(かつて骨髄移植のあり方について報告書を出した。よい成績が見込める移植を行うという主旨の記述がある。これは現在では休眠中の会)を開くべきだと言う意見が出る恐れがある。あなたに指摘されるまでもなく、企画管理医委員会で決定されたことが、事務局によって実行されなかったりくつがえされるのはおかしなことだ。企画管理委員会の立場もなくなるし、患者サイドからの要望も強いことなのに」
 財団・野田事務局長「急すぎる。理事会でいきなり通そうと思っても、みなさんに納得してもらえない。1座不一致についてどんな成績が見込めるのか、データはどうなんだということになる。厚生省は以前から、1座不一致については、世間に筋を通して説明すれば財団の意思で決めればよいとのスタンスだ。6月19日の企画管理委員会での、1座不一致とDLTの議論は拙速だった。突然、当日、議題に出して、根拠やデータがとくに示されることもなく、口頭での説明で終わらせた。無理して急いでいるという印象だった。早すぎるし、説明できる医学的・統計的な資料を出して議論すべきだったのにそうではなかった。理事会に出したいということは決まったかもしれないが、それが6月30日の理事会ということは決めていない。勝手に6月30日と思っているかもしれないが、とても無理だ。だいたい思い違いがあるのは、企画管理委員会が決めたことが決定だという考えがあることだ。企画管理委員会は事務局長のアドバイザリー・コミッティー(諮問委員会)にすぎない。事務局長が委員会に諮問して、その結果を事務局長が理事会に諮るのだ。企画管理委員会の決定、即ゴーサインというのは思い違いだ。企画管理委員会としての思惑はあるのだろうが、このまま出しても即通るとは思えない。K理事あたりから公衆衛生審議会を開くことが必要だといった異論が出ることが予想される。決死の覚悟で理事会の席上でチャンチャンバラバラやる覚悟だというが、そんな場所ではない。もっと事前に、直接的な数字は無理でも、1座不一致の成績が推定できるような周辺の数字を出すなど準備をするべきで、それを怠っている。これでは勝てないだろう」
 厚生省「公衆衛生審議会の報告書では、好ましい成績が期待できるものを行う、という表現だったと思う。とくに一致度については規定していない。1座不一致移植も現在では一定以上の結果が期待できると考えれば、公衆衛生審議会を開き直す必要はないと考える」


98.6.29 ◇◇ダカーポの「セカンドオピニオン」についての記事◇◇

 7月1日(水)発売のダカーポ(マガジンハウス)を買おう。「セカンドオピニオン」についての特集記事がある。KENも取材を受けて登場しているよ。


98.6.28 ◇◇理事会・評議員会近づく◇◇

 骨髄移植推進財団の理事会・評議員会が30日(火)に開催されます。会社でいえば,株主総会や取締役会に該当する大切な会議です。注目しましょう。


98.6.28 ◇◇財団・企画管理委員会の議事録を一挙掲載◇◇

 骨髄移植推進財団のなかで政策立案にかかわる最も重要な委員会である企画管理委員会の過去の議事録約3年分を一挙掲載しました。
 ホームページから議事録のところをクリックして下さい。
 いかに懸案が進行していないかを読者のみなさんが検証されることをお勧めします。
 財団の内部運営にもっと関心をもち、発言し参加しましょう。それもボランティアの大きな役割です。


98.6.28 ◇◇財団の健忘症(保険適用問題)◇◇

(6月19日発、6月28日掲載)
財団が健忘症で無責任だという例証がまた加わった。
 なんと、保険適用(骨髄バンクの使用料の)についての要望書を、まだ厚生省に提出していない。6月19日の企画管理委員会のあと、委員メンバーに尋ねたところ発覚した。われわれが、保険適用の要望書を厚生省に出すことをお願いしたのは3月ごろ。それで4月の企画管理委員会の議題になり、要望書を作成して提出することが決まった。そのあと即座に要望書はつくられなかったが、ほどなくしてつくられたのをKENは確認した。田中常務理事がとりまとめ清書したのを確認した。そのあと、田中常務理事に何度か確認すると、「要望書はつくった。いま机のなかにある」とのことだった。それで、できるだけ早く提出するようにお願いし続けた。だが、まだ、それが出せていない。4月の企画管理委員会で議題になったあと、5月と6月の企画管理委員会では話題にもなっていない。また、言いっぱなしのほったらかしである。
 KENが話をした企画管理委員会幹部は、保険適用のことが6月19日の企画管理委員会で話題にならなくても、なんの違和感もなかったようだ。検討しているわけでも、作業しているわけでもなく、ただ放置しているというのが実態に近いだろう。

 企画管理委員会の幹部はこう言った。
 「ああ、そうだね。やらんといかんなあ。だが、実は、ネガティブな材料が出てね。ちょっと米国のようすを調べてもらったら、あまり保険ではカバーされていないようなんだ。それで、押さえているわけなんだ。実際のところ、米国ではどんなもんなんだろうか」

 KENはこう思う。
 どんな調査をしてどんな結果が出たのか公表せよ。出せるような内容の調査なのか。医療保険適用のお願いの根拠には、米国でも保険適用だからという項目はないはずだ。だのに米国で100%カバーでないという材料で、日本で少しでも保険でカバーしてもらおうという動きを止める論理は何か。米国で仮に全体で7割カバーされていたら、悪い材料なのか。日本は0割なのだから、推進材料ではないのか。また、その調査の内容の企画管理委員会への報告、あるいは提出を見合わせることの説明・決定を企画管理委員会で行っていないのはなぜか。そして、企画管理委員は誰の利害を代表しているのか。厚生省や国家財政を思いやるのが仕事なのか。厚生省や医師の世界での世間体を気にしているのか。
 財団の理念は次のようなものであることに異議がある人は少ないだろう。
 「骨髄バンク事業は、骨髄移植を必要とする患者の救命のため、国の支援において善意の提供者をはじめとする国民の協力を得て、公平性と迅速性のある事業として、公共性と透明性の高い組織によって行う」
 これが財団の理念であり、企画管理委員会は、この遂行のために、企画力と運営力を発揮することが求められているのだ。それをもう一度、思い出していただきたい。即座に反省し、行動をあらためるべきである。それができないなら、謝罪し、おりるべきである。無給でやっている委員だから、無能であっても許されるというようなことはない。人命にかかわっていることなのだ。

また、別の企画管理委員(医師)はこう言った。
 「保険適用の審議は2年に一度。大きいものなら、毎年ある。ちょうど2年に一度の審議は終わったばかり。いま出しても仕方がないという判断があるのではないか」

 KENはこう思う。
 保険適用の仕組みはKENがかつてニュースで書いたとおりである。たしかに2年に一度が基本である。だが、この論理を企画管理委員が言うのは滑稽である。そのタイミングである去年の10月から今年の春にかけて、保険適用要望を考えもせず、そうした慣行も知らなかった人が今ごろ何を言っているのか。タイミングになるまでは早すぎると言い、タイミングになったら、忘れて何もしないのだろうか。これではいつまでたっても、保険適用は実現するどころか懸案にさえならない。
 企画管理委員会の中枢にいる医師たちは、本当に患者のことを考えているのだろうか。その答えはもちろん、YESだろう。しかし、こんなていたらくが続くようであれば、それを疑われても仕方がない。

 読者のみなさん、KENのニュースコーナーから過去のニュースを開き、もう一度、保険適用についてのロビイングキットをファクスして下さい。


98.6.20 ◇◇企画管理委員会報告◇◇

 6月19日、骨髄移植推進財団で企画管理委員会が開催された。主な議題と内容などは次のとおり。
●1座不一致移植、ドナーリンパ球輸注について実施へ動くことが決まった。30日の理事会で承認され、実施が決まる。
●全国協議会の陽田副委員長が財団の財務委員会副委員長に就任することが決まった。企画管理委員会にオブザーバー参加する資格を得る。KENはこれは、陽田氏の来春の企画管理委員長と理事就任の含みがあると観測する。われわれが訴え続けてきた、「医師でないボランティアやユーザーサイド(患者関係者)の人間を財団の重要職に就ける」ということがようやく受け入れられた。だが、これだけでは不十分だ。KENは複数の理事メンバー、事務局長、企画管理委員、医療委員、コーディネート委員、患者擁護委員(新設委員会)などのポストも明け渡していくべきだと考える。また、世間がこれが一種の取り引きであると受け止めるのはやむを得ないだろう。臍帯血移植検討会の場で、陽田氏は財団中枢メンバーでもある小寺委員、加藤委員、斎藤座長などと対立意見をもっている。財団中枢メンバー側はこの場で、骨髄バンクの大幅改善を約束した。外からみると、その一環ともみえないことはないのである。いずれにしても、この人事は望ましいことだ。さらにこうしたことが進展することを望む。
●対面問題。結論が出ず、継続審議となったもよう。
●コーディネートプロセスの改善について。
●その他
なお、委員会後、3者(厚生省、財団、日赤)によって、北海道でのドライビングにおける実務上の問題点についての打ち合わせが行われたもよう。
また、新コンピュータシステムとコーディネートマニュアルの改訂などについて、コーディネート委員会メンバーと事務局の間での会議が行われた。


98.6.20 ◇◇2億5000万円の使い途◇◇

●骨髄バンクコンピュータシステムの再構築とコーディネート期間の大幅短縮
 (6月19日発)
 昨日の通常国会で補正予算が通った。骨髄バンク関連へのコンピュータ予算も通った。骨髄移植推進財団に5000万円、日本赤十字社に2億円である。これだけの予算がついたのは一種の“焼け太り”と言えよう。財団と日赤がドナー検索でもたつき、われわれからの批判が高まったことで、余計に厚生省が真剣にこの予算枠を確保しようとしたという効果があったかも知れない。厚生省は日本赤十字社につけた2億円という額について、「2億円が高いのか安いのか。わたしはコンピュータのことはよく分からないので判断できない」と言っている。日赤の要望がほぼ完全に通ったもようだ。日赤はこれまで、コンピュータの老朽化をたてに、予備検索、1座不一致検索、ドナーリクルート強化などに難色を示してきたという経緯がある。予備検索はコンピュータを更新する以前にすでに実施できている。コンピュータを半ば言い訳にしてきたのだ。日赤としては2億円をもらって、もう言い訳はできない。
 さて、この2億5000万円というのはかなりの大金だ。有効に使って、一挙に世界最高レベルのシステムにしておくことが大切だ。
 本日、財団では企画管理委員会のあと、新しいコンピュータシステムとコーディネートプロセスの改善についての、ミーティングが開かれていた。ホテルをとって泊まり込み体制の医師もいた。ボランティア医師たちの熱意・善意と財団職員の残業(無給?)で支えられているのである。われわれはこのことを認識しなければならない。ただ、KENはそのとき財団におじゃましていたので、そのようすを自然にかいまみることになったが、印象としては、「たたき台も論点リストもない場当たり的な会議」であるようにうかがえた。会議に参加していたわけではないので、間違っているかも知れないし、失礼な発言かも知れない。だが、システムや業務プロセスの改善に詳しい人も含まれていなかったのは事実だ。人間、自分の脳味噌だけで考えるほど恐いことはない。人類の英知を活用すべきだ。こんなことを言いっぱなしでは失礼なので、KENも汗を書く。ここに、システム改善のためのチェックリストを作らせていただく。大した汗ではない。常識で思いついてから2時間でできる作業である。何らかのお役にたてれば幸いである。
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「骨髄バンクの新システムについて」(第1版)
(随時、改訂する。第1班の完成度が低いことはご容赦願いたい。だが速拙でも意見を述べることは重要であると考える。これをもとに、システムチャート。業務フローチャートなどをつくれば分かりやすい)

★新しいシステムを「新統合システム」と名付けよう。
「新統合システム」は次のように考えていくべきだ。

★目的:平均コーディネート期間を3カ月半とし、米国バンクとならぶ速さにする。サービスレベルをあげる。
★基本方針、設計思想:
・組織を超えていること。統合システムとなっていること。組織を超えたコミュニケーションが柔軟にできるシステムとなっていること。財団(本部、支部)、日赤(中央データセンタ、データセンタ)、移植病院、検査会社などを結ぶ。
・データベース、検索だけでなく、事務の合理化と「自働化」を含んでいること。
・BBR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)=リエンジアリング(業務の抜本的改革)を伴っていること。既存のコーディネートプロセスをOA化するだけでなく、コーディネートプロセスを、コンピュータ化がもっとも有効なように抜本的に改革する。
・システム設計の主体。財団が中心となってシステムを設計すべきだ。日赤は部分的業務の委託を受けているだけだから。財団が主導となった「3者システム設計会議」を設けるべきだ。ここにはユーザーである患者関係者、ドナー関係者、コーディネーター、業務改善コンサルタント、システムコンサルタントなどを参加させるべき。
・システム設計過程を情報公開する。2億5000万円の予算をどう使うかは大きな利権である。また、有効に使われるべきだ。もちろん、このシステムをどう作るかで、今後5年(それ以上)にわたって、骨髄バンクの姿がかなり規定されてしまう。失敗がないようにしなければならない。複数業者参加によるコンペとすること。
・現在のコンピュータシステム、業務プロセスからの反省を十分とりいれること。日赤データセンタでは通称「統一システム」というのが使われている。PC98の古いシステム(ウィンドウズ以前)で、ソフトは桐ベース。作業担当者によると「古いだけでなく、がちがちで使いにくいひどいソフト」だそうだ。

★使用する技術
・通信。ダイヤルアップ。専用回線。高速専用回線。
・電子メール
・インターネット
・イントラネット(組織内インターネット)
・エクストラネット(組織間にわたるイントラネット)
・グループウエア(ロータスノーツなど、業務プロセスを共有できるソフト)
・モバイルコンピューティング

★HLAデータベース部分のスペック
・ミスマッチ検索にも対応
・ドナープール30万人以上に対応
・臍帯血HLAデータ検索の追加も想定(公的臍帯血バンクは現在の骨髄バンクシステムとは独立したものすべきである。だからこれは必要ない。だが、厚生省などは統合するつもりである。だから、一応、これは想定しておかなければならない。規模としては5万件以上、ミスマッチ検索対応。臍帯血バンクのHLAデータベースおよび検索システムは、システムとしては簡単なもの。また、臍帯血移植では、登録・申し込みから提供までの業務は完結であり、事務作業(ビジネスプロセス)も異なる)

★主体別のチェックポイント(作成中)
・患者:
・主治医(認定病院104?カ所。その他の専門医も):
・コーディネーター:
・財団(1カ所):
・財団地区事務局(8カ所?):支部
・日赤中央データセンタ(1カ所):
・日赤基幹センタ(7カ所):
・日赤地方データセンタ(68カ所):
・ドナー候補:
・検査会社:
・その他:
・(教育):新システムと倫理についての再教育。
 
★リエンジニアリング(業務の抜本的改革)について
・事務作業については、「自働」進行、事後チェックシステムの考えを取り入れること。どこかのプロセスで滞留がおこると警告がでる仕組みにする。各プロセスの所要時間の努力目標と最低許容範囲時間を設定。
・事務ステップ数を3分の2ぐらいに削減すること。不要な行程は除く。
・同時並行的に事務が進むようにすること。コンカレント(並行処理化)化。A→B→Cでなく、A→B、C。
・アウトソーシング(業務の外部委託)、テンポラリースタッフ、ボランティアの活用。
・ビジネス会計の導入。経理、請求、出納業務との連動。

★サービスレベルを上げる
・コーディネート進行リストアップドナー数を増やす。あるいは柔軟に追加できるようにする。
・同時コーディネートへの対応(NMDPなど提携バンクとのコーディネートの進行状況も記録できる)
・正式登録を受理したとき、患者本人に正式登録検索結果を連絡する。
・などなど。   
(続く)


98.6.16 ◇◇連載(5) 移植の決断は誰がする? ◇◇


移植の決断はだれがする?

▽日本では移植の適応は中央(骨髄バンク)が決める。米国では主治医と患者が決める。
▽日本では適応条件が厳しく狭い。一方で、抜け道が多く、裁量的な運用が行われている。
▽適応条件を大幅に拡大し、医師と患者がインフォームドコンセントに基づいて自主決定できるよう、抜本的な転換が必要だ。

 「1座不一致移植の適応化」がいま問題になっている。骨髄移植には白血球の型を合わせる必要がある。これまで日本の骨髄バンクは「6分の6完全一致」しか、移植の対象としていなかった。だが、欧米では1座不一致は広く行われている。日本でも3年ほど前から、実施に向けた検討が行われていた。そして2年前には骨髄移植推進財団の企画管理委員会で、1座不一致移植の実施が決定された。だが、その後そのまま宙づりになってしまった。
 その理由の言い分が関係者によって違う。財団の医療委員会の幹部(医師)は「日本赤十字が難色を示した」とする。その日赤は「財団のコーディネートマニュアルの改訂が先に必要だ」と責任を振る。財団のコーディネートマニュアル担当医師は、「改訂は、日赤の同意がないとできない」と応酬する。「厚生省が時期尚早と口頭指導したことが原因」と証言する医師もいる。当の厚生省は「関係者のコンセンサスが取れていなかったのだろう」とはぐらかす。当時の担当官は異動してしまっている。
 連載第3回でみたような日本骨髄バンクにある独特の権力構造がここでも顕著に表れた。骨髄バンク(財団)、厚生省、日赤の3者が互いに足を引っ張り合い、責任を回避しあう構造だ。これを「闇のトライアングル」と呼びたい。ここで1座不一致適応問題は放置されてしまった。少なくとも2年間は実施が遅れた。
 米国ではどうか。米国では適応ルールは広く、制限が緩やか。主治医と患者がインフォームドコンセント(説明の上の同意)に基づいて、相談して決める。1座不一致の場合も同様だ。治癒率やメリット・デメリットなどが患者と家族に説明される。また、コーディネートの過程でドナー候補も患者の状態を知ることができる。最終的に提供するかどうかが自由意志によるのは言うまでもない。また移植センター(病院)は、移植成績を各自で発表している。1座不一致移植の全体も集計され、発表される。ある論文によると、米国バンクでは初期に行われた移植462例のうち、156例が1座不一致だった。登録ドナー数が少ないころほど、不一致移植の役割が大きくなるのは当然だ。
 米国では1次戦略と2次戦略は明確に区別される。たとえば1次戦略である化学療法による治療でうまく行かなかったとき、2次戦略で最後の手段(サルベージ)的な考えで1座不一致移植に踏み切るというように。治癒率がたとえば2割程度としても、他に手段がないのなら許容されるという考えだ。
 日本は「中央統制型」をとる。適応になる疾病、病期、HLA一致度が規定されている。だが、一方で厳しく規定していながら、実は自ら尻抜けにしている。
 まず疾病と病期。骨髄バンク設立当初に作った規定で、「当面」として6つの疾患に限定されている。たとえば、慢性骨髄性白血病では慢性期のみとされている。だが、97年10月1日現在で慢性骨髄性白血病では加速期で39例、急性転化期で23例が行われている。急性骨髄性白血病では非寛解期が58例、急性リンパ性白血病では非寛解期が72例行われている。大まかな推定で2割ぐらいがこの6つの疾患・病期に当てはまらない。7番目の項目である「その他、必要と認められる症例」が広く使われているのだ。
 こうした移植が行われているのが問題なのではない。やって当然の移植だ。「その他」の救済条項の適用が常とう化していることがおかしい。適応疾患・病期を、現実に合わせて拡大すべきなのだ。しかも、この適応基準を臍帯血バンクでも準用するのだから、異常だ。
 1座不一致移植も実は行われている。1座不一致でも「ホモ・ヘテロ」と呼ばれるHLAの適合状態であるときには、移植が許されている。すでに12〜13例程度が行われた模様だ。これは定義上は1座不一致であるが、「完全一致と1座不一致の中間程度の成績が見込める」として、企画管理委員会などでの承認を経て実施に移されていた。全国の移植病院に広く広報されていたとは言いがたい。ここでも、ルールの形骸化が生じている。やればできるはずの抜本ルール改定が行われずに、中途半端で分かりにくい運用になっているのだ。当事者の自主判断なら責任関係がはっきりするが、中央での恣意性が入り込む危険性が高くなっているのは、懸念すべきだろう。
 次のような改善が必要だ。
1 移植適応ルールを大幅に緩和し、主治医と患者の自主判断にゆだねる
1 1座不一致移植を適応とする。臍帯血移植については2座不一致を適応とする
1 疾病と病期に関する適応条件も拡大、緩やかなガイドラインだけにする
1 ドナーへのインフォームを強化する
1 移植病院の成績公開を義務づける。財団はリスク別、HLA一致度別の成績を定期的に発表する



98.6.11 ◇◇臍帯血バンクはこうあるべき◇◇

 明日(金曜日),臍帯血移植検討会が開催される。前回、厚生省が出した報告書たたき台がどこまで修正されるかが焦点。
 有田委員が出した同報告書たたき台への意見を入手したので、了解を得て,ご紹介する。
 この意見は、患者やドナーの立場をよく配慮してあり、社会システムとしての公的臍帯血バンクの姿として、とてもすぐれたものになっていると思う。KENもほぼ全面的に賛成,支持したい。
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「報告書の作成に向けてのたたき台」(H10.5.26)に対する意見

有田 美智世(1998年6月10日)

A 「たたき台」に対する全体の感想など
●1 厚生省の意向と一部委員の案に偏向した、たたき台となっている。検討会での議論を正確に反映しておらず、また私が述べた意見もあまり盛り込まれていない。多数出た意見が無視されたり、あるいは少数意見とされたりしている。一方で、まったく議論されていないことが記述されていたりする。この内容と経緯には、まったく不満であることを表明しておく。このような、不十分で偏った「たたき台」を提出したこと、議事の運営の不手際、大切な議論を行わせなかったこと、議事の無理な誘導、偏った情報の検討会への提出などの責任をとって、座長と事務方は交替すべきであると考える。
●2 上の理由から「たたき台」に基づいてこれを修正するのではなく、あらたに報告書案を全面的に書き下ろすことを求める。
●3 公的臍帯血バンクを設立する意欲が十分に感じられない内容である。公的臍帯血バンクの設立を検討することがこの検討会の重要なテーマであり、検討会での議論が公的バンクを設置することが前提として進んできたのにもかかわらず、それが明確に盛り込まれていない。なぜ、このようなたたき台になったかの説明を求めるとともに、公的臍帯血バンクの設立を明確に記述することを要望する。
●4 臍帯血バンクが既存の骨髄移植推進財団と一本化されるべきだとしているが、それが多数意見であったとは思われない。また、先ごろの国会答弁で小林局長は「組織のあり方はまだ白紙」と述べた。組織のあり方については、検討会のなかで一本化案が趨勢となっておらず、意見が一本化に収れんしたわけではないことを、確認しておきたい。まず、小林局長の発言の内容と意味についての説明を求める。
 以下、さらに詳細に感想と意見を述べる。
○ア 臍帯血移植検討委員会がどういう背景と目的をもって設置されたかが明確にされていない。単なる臍帯血移植体制の整備という視点で書かれており、国民運動として200万人を超える陳情署名で要求されてもいる、「公的な臍帯血バンクの設立」のための検討委員会であるとの認識がされておらず、言葉としても「公的臍帯血バンク」が欠落している。
○イ 臍帯血移植については、「まだ研究途上の医療であり、治療法として確立していない」と断定している。厚生省が有効な治療法としてを認め、本年4月より医療保険を適用した臍帯血移植に対して、厚生省担当課と一部の医師が異議を唱えていることに等しい。
○ウ 公的臍帯血バンク設立についてはまったく言及されておらず、現在、臍帯血を保管している医療機関等の施設のうち、数カ所の施設を保存施設として指定して整備するとしている。また、初期的段階としての3年間で、相当程度の利用可能な臍帯血の保存を目指すとしている。当面の年間保存目標数が明確でなく、将来の保管目標が2万検体となっているが、何年度までに実現するかの明示もされていない。
○エ この報告書たたき台を読むと、試験研究的な臍帯血バンクを作るのが目的であり、実は、本格的な公的臍帯血バンクの設立検討会ではなかったということになってしまう。8年前の骨髄バンク設立の検討委員会でさえ、公的骨髄バンクは移植医療機関からは独立した機関として設立することが強調されたが、今回のたたき台では、国民の財産である善意の臍帯血の保管施設とバンク機能について、移植医療機関等から独立した第3者組織として確立するとの記述もできていない。まさに、医師の利害を強く配慮したものになっている。 
○オ 財政構造のあり方については、あたかも研究的な資金さえ手に入れば良いと言わんばかりに、「骨髄移植を参考とし、・・・・具体的な公的支援・・・や受益者負担のあり方を」という言葉を使用している。これでは、新しい医療はすべて、今後は、受益者として患者負担で行うということになりかねない。厚生省自ら、国民階保険制度を放棄し、自由診療体制に進むことを宣言しているに等しい。絶対に「受益者負担」という記述は削除するべき。
○カ 検討会で一度も論議されなかった末梢血幹細胞移植を、骨髄移植と同様に確立した医療法として同列に記載しているが削除すべきである。末梢血幹細胞移植はまだ治療法として検討評価が十分にされているとは言いがたいのではないか。医療保険の適用にもなっていない。
○キ 運営組織の基本的考え方については、検討会での論議では、臍帯血バンクは各地毎に設立し自主的な運営が確保される方が良いとの意見が多数であったことを明確にすべきである。全国で一つの組織体で運営する場合と各地で独自に運営する場合のメリット・デメリットについて十分時間をかけ、あらゆる角度からの検討をおこなう必要がある。また私は臍帯血バンクの利点を最大限に活かすため、公的臍帯血バンクは他の組織と一体化することなく、独自に運営すべきだと考える。


B 「報告書に盛り込むべき内容」
 次のような点について、次のような意味付けで、明確に報告書に盛り込まれるべきであると考える

●1 目的:臍帯血移植は白血病、血液疾患、固形がんなどの治療の1つの手法として、すでに有効性が認められたり、将来的に大きな可能性を含んだ治療法である。患者の救済・救命に役立てるため、公的臍帯血バンクを整備していく。また、医学の進歩と社会の福祉向上にも資する。
●2 臍帯血は誰のものか:ドナーの善意によって提供を受けたものである。公的臍帯血バンクは、それを患者の救済・救命と、人類の医療と福祉の発展のために使うよう、管理とサービスを委託されたものである。 
●3 組織:公的臍帯血バンクは既存の骨髄移植推進財団とは独立した組織とする。また、各地の臍帯血バンクの連合体組織とし、「日本臍帯血バンク連合会」(仮称。以下、連合会)とする。連合会はできるだけスリムな組織とする。連合会には企画管理委員会、医療委員会、施設・安全、財務、普及広報、患者擁護、国際などの各種委員会が置かれる。公的資金補助は連合会をとおして各地のバンクに行われる。
●4 迅速性:治療は時間との戦いである。迅速性を確保すること。(臍帯血移植はドナーコーディネートが必要でなく、すでに保管してあるものを利用するため、迅速性が自然に確保されると考えるのは危険。現在、既存の臍帯血バンクを使うときには待ち時間問題が起こっている。提供の判定に時間がかかっているときがある。迅速性の確保を明記する)
●5 利用料金:患者にとって利用料金が無料であることを目指す。臍帯血バンクの利用者は白血病や血液疾患などの難病の患者である。治療費全体として高額の自己負担を強いられている。さらに臍帯血バンク利用料金として患者に実費費用負担をしてもらうのは、国民皆保険を理念とする日本で、好ましくない。ましてや、骨髄移植はすでに多数の実例(国内:非血縁者間約1600例。血縁者間多数)があり、標準医療としてほぼ確立している医療である。骨髄移植術、臍帯血移植術についてはすでに医療保険の適用となっている。骨髄バンク利用料についても、医療保険適用が課題になっている。臍帯血バンク利用料については、医療保険でまかなえるようにすることを検討会として提案すべきである。
なお、「受益者負担」という言葉を盛り込んでいるが、これは削除すべきである。
(なお、臍帯血バンク利用料金については、今春にも一部保険適用になる運びだったが、臓器移植対策室の担当官がストップしたとされている。その経緯について説明をしていただきたい。また、同担当官は、私に対し「2000年春には必ず臍帯血バンク利用料に保険適用がつく」と約束した。その約束の根拠と、どの程度の保険適用になることを想定しているのか、検討会の席上で説明することを求める)
●6 利用者へのサービス向上に努めること:上記のような目的で行う公的臍帯血バンクであるから、利用者(すなわち患者、その代理人としての医師など)への質の高いサービスを目指すこと。利用者の意見や満足度をくみ取り、サービスの改善に努めることが義務となることを明記すべきである。利用者にとって、分かりやすく、連絡しやすく、質問しやすい、開かれたバンクとすべきなのは言うまでもない。
●7 患者擁護部門の設置:上記の目的とサービス向上を実現するために、患者擁護部門の設置が有効であり、不可欠であると考える。これを明記すべきである。
●8 透明性:公的であり、ドナーの善意の付託を受けて運営されている公的臍帯血バンクの性格からして、透明性が理念としてうたわれるべきである。基本的にすべての運営、業務、施設、データ、議事などのようすが外部にも見える透明なものでなければならない。情報開示についても、プライバシー情報をのぞく、あらゆる情報について、できるだけ率先して開示し、あるいは求めに応じて提供されなければならない。
●9 外部からのチェック:外部からの監視・チェックが働く仕組みを作っておく。一例としては、オンブズマン制度を採用することを明記する。
●10 独立性と完結性:公的臍帯血バンクが、臍帯血バンクの運営などについて自主的に意思決定をすることができることを明記する。厚生省は監督はするが、明確な根拠を示すことなしには、運営に口出しをできない。そして臍帯血バンクに対して、文書以外の行政指導は行わないことにする。一方で、厚生省は監督責任をもち、公的臍帯血バンクが目的の実現のために努めるよう、監視指導する立場にある。また、日本赤十字社などが、臍帯血バンクの一部業務を担うことになっても、日本赤十字社などはあくまで業務の一部を公的臍帯血バンクから委託を受けただけで、公的臍帯血バンクの業務内容の方向づけに対して、影響を与えることはできないことを明記しておく。また、公的資金は、医療保険か公的臍帯血バンクへの補助金として出されるべきであり、役務の提供者への直接の補助金の配布とするべきではない。なぜなら、公的臍帯血バンクが事業の目的に合わせて役務の提供者を選定するのであって、役務の提供者は固定されたものではないからだ。
●11 任命権:任命委員会をつくる。公的臍帯血バンクの役員、監査役など主要人事の選定は、選定基準を明らかにした上で、任命委員会で行う。主要職は任期を定め、再任はなしとする。透明性を確保し、特定の人間が人事権を握らない仕組みにしておくことが重要である。
●12 データベース検索:公的バンクの理念と性格にかんがみて、公的臍帯血バンク(連合会)に参加する臍帯血バンクは、HLAデータを独占せず、原則的に公共のものとして公開する。また、HLAデータを連合会がつくる統合データベースに提供することを義務づける。この統合データベースは公開され、患者やその代理人たる医師が自主的に予備検索ができるようにする。
 医師による自主検索にともなう錯誤・ドナー選定戦略プロセスの判断ミスを防止し、その過程が残るように、医師が自主検索の結果を記録に残し、患者の求めに応じて情報を提供し説明することが求められる。
 また骨髄と臍帯血の情報内容はちがうことから情報の混乱を防止するため、骨髄と臍帯血のデータベースは2本立とする。ただし、相互の緊密な連絡のもとに、利用者が便利にアクセスできるように体制を整備すべきである。
 なお、現在のようにコンピュータネットワークが発達した時代には、HLAデータを検索するために、臍帯血バンクと骨髄バンクの組織統合が必要でないことを付記しておく。
●13 財源:初期投資については連合会を通して各地のバンクに補助金を出す。1999年春、遅くとも2000年春には、臍帯血バンクの利用料の全額医療保険適用を目指すべきである。
●14 連合会の組織:医療、安全、財務、普及広報、患者擁護、国際などの委員会を必要に応じて設置する。ただし専門家支配が起こらないようにチェック&バランスの仕組みをつくる。たとえばその委員会の主題の専門家、あるいは直接的な利害関係者は、委員には含まれても、委員長には就任しないことが望ましい。
●15 移植病院:登録制とする。臍帯血バンクから臍帯血の供給を受けて移植医療を行おうとする病院は、造血幹細胞移植の実績、成績、移植医療の体制などの情報を定められた様式に基づいて登録する。登録された情報は公開され、患者が移植病院を選定できる仕組みとする。
●16 地域バンクの選定:満たすべき条件を列記し、希望者のなかから広域性と効率を勘案しながら、適切な数を選ぶ。定期的また必要に応じて、地域バンクが公的臍帯血バンクの地域バンクの要件を満たしているかチェックする。
●17 普及啓発について:臍帯血移植の有用性を広報し、臍帯血バンクへの提供が増えるように普及啓発活動を積極的に行う。国、都道府県、自治体および関係医療団体(産科学会、造血幹細胞移植学会、血液学会など)がそのための活動を行う。また、たとえば母子手帳への臍帯血提供の案内の記述など、広く周知徹底する方策を考える。
●18 目標数:すべての利用希望者に対し、かなり一致度が高い臍帯血がみつかる規模を、早期に実現することを目標とする。また、適応の拡大などによって必要件数が拡大することも予想されるので、定期的かつ必要に応じて目標数は見直していくこととする。
●19 適応条件と使用目的:適応条件と使用目的については報告書には記載しない。「設立目的に照らし合わせ、医療環境をみながら、連合会の専門委員会で決める。またその内容については臍帯血提供者や社会に対し、広く周知する」とだけしておく。適応条件や使用目的は、医学の進歩や医療環境の変化によって、変更がありえるもので、この報告書で規定するのは好ましくない。公的臍帯血バンク(連合会)の専門委員会や役員会などで、正式な手続きをへて決定されれば良い。透明性、結果の公開も行われているからチェックは効く。また、決まった内容は、提供者や社会に対する周知徹底が必要だ。それまでにすでに採取・保存が終わっているものについて、適応条件と使用目的を提供者からえた同意の範囲をこえて使用・利用するときには、再度、同意を取り直す必要があるのは言うまでもない。この点においては、骨髄バンクで、たとえば1座不一致移植がなかなか実施に向けて動かない事態が起こったことなどから、教訓をくみ取るべきである。
●20 同時検索、同時登録(コーディネート)の許容:どこからどんな種類の造血幹細胞の提供を受け、移植を行うのかは、患者がインフォームド・コンセントに基づいて医師と相談し、決定することである。臍帯血バンクや何らかの組織が一元的に管理あるいは規定すべきではない。個別の患者さんの病気、病期、状態、ドナー候補の状況などによって一人ひとりドナー選定戦略は異なる。「骨髄ドナーが見つからない場合」といった制限は加えるべきではない。患者と主治医(医師)の判断で、同時検索や同時登録などができるよう、検索や登録についての条件は付けない。
●21 作業部会指針の位置づけ:作業部会がつくった指針がそのまま公的臍帯血バンクに引き継がれるのではない。これを参考に、公的臍帯血バンクがしかるべき手続きを経て、自ら指針を採択するという手続きにすべきだ。そして参加施設がその指針を守ることを義務づける。検討会の作業部会がつくった指針を、そのまま臍帯血バンクの指針に採用する形式をとると、指針の変更にまた検討会や検討会の作業部会を開催しなければならないことになりかねず、臍帯血バンクの将来の硬直性の原因となる恐れがある。
●22 国際性:国や地域の境を越えた臍帯血のやりとりが当然の時代になっている。国際協力において問題を生じないように、連合会の諸規定についてはできるだけ国際標準(世界的に趨勢となっている基準)を尊重して合わせるようにする。また、国際協力はこれを積極的に行うということを、より明確に盛り込む。骨髄バンクにおいて、NMDP(米国骨髄バンク)などの各国・地域との提携が遅れ、また世界的なHLAデータベースであるBMDWへの参加も遅れたこと、の反省と教訓を盛り込むべきだ。公的臍帯血バンクは日本の国民だけでなく、人類への貢献を理念とするものであり、そうあってこそ、海外からの臍帯血の提供も受けられて、日本の国民が利益を享受することができることをうたう。
●23 血液事業法での位置づけ:公的臍帯血バンクで扱われる臍帯血の位置づけを血液事業法(仮称)に求める請願署名が、現在までに220万人以上にのぼっている。地方自治体の同様の主旨の意見書もすでに450の自治体で決議され、厚生大臣に提出されている。このような国民の強い要望を踏まえ、現在検討中の血液新法で、臍帯血を位置づけることを検討すべきである。

以上

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