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臍帯血移植検討会が山場です。みなさん、注目して下さい。
といっても、まだ報告記事を掲載していないなあ。
さて、この公的バンクを「官製・中央統制型」にするか「自主・民主運営型(独立分散型)」にするかの瀬戸際です。ひいては骨髄バンクの将来もこれで決まります。
前者の場合は、造血幹細胞バンクとして統合されます。
後者の場合は、別個に独自に運営されます。
KENは「自主・民主運営型」に賛成です。委員の中では陽田さんや数人以上の委員が民主運営型に賛成しています。小寺先生、加藤先生などは中央統制型を支持しています。
僕らは20人の委員のうち「多数」が民主運営型に賛成していると思います。
厚生省は少数意見として、付記するだけでお茶を濁そうとしています。
前提として官製案があり、ごく一部に民主型案からつまみ食いしたものを付け足して、逃げ切りを図っています。
厚生省には創造力も構想力も事務能力も不足しているようです。
いずれにしても、臍帯血バンクが骨髄バンクの反省をどれだけ踏まえた形になるかどうかで、骨髄バンクの民主度も決まってきます。
いま作る臍帯血バンクの民主度に骨髄バンクが合わせていくことになるからです。
だから臍帯血バンク問題が、いま骨髄バンク問題を解くカギでもあるのです。
(不謹慎と思わないで。ただふざけているのではなくて、こうした想像力を働かせて、どんあ組織を作れば良いか、考える一助にしたいのです)
ジャジャジャーン。KENが近未来小説に挑戦します。しないかも知れません。期待しないで期待して下さい。ひょっとしたら、マイケル・クライトンとジョン・グリーシャムとデビッド・ハルバースタムと渡辺淳一を足して「4万」で割ったくらいの奇作になる可能性も。
☆超現実フィクション:「デジャビュの夏――2003年、日本造血幹細胞バンク倒産」(予告編)
(この話はフィクションです。登場人物や組織は実在の人・組織と一切関係ありません。また医療についても現実とは必ずしも関係がありません)
「荒っぽいあら筋」
●2003年夏、日本造血幹細胞バンクは危機を迎えていた。米国と国内の患者から大量の訴訟を起こされていたのだ。なかでも米国からの訴訟は外交問題にまで発展していた。
●日本造血幹細胞バンクは混乱をきわめていた。欧米では2座不一致移植が常識化しつつあった。乳ガンへの臍帯血移植も適応になっていた。だが、日本ではまだそれができなかった。こうしたことへの患者からの訴訟が相次いだ。また、バンクの中央審査会が骨髄、臍帯血のどちらから先にコーディネートするかを指示していたが、その指示が適切でなかったとする遺族からの訴訟も発生していた。さらに、米国からは米→日と日→米の造血幹細胞の提供条件が違うことが周知のこととなり、米→日には100例が提供されているのに日→米では3例(うち骨髄はゼロ)しかないことも知られることとなった。米国の患者からも続々と訴訟が起こされた。しかも、中途半端な検索結果を米国に提供していたことが、嘘の情報を渡していたと受け止められ、大問題になった。たまたま元駐日大使の親戚がその被害にあったため、外交問題にも発展しかねない情勢だ。
●その前、臍帯血提供は2001年にブームになった。ある皇族が出産したときに臍帯血バンクへの提供を行ったことから、提供が殺到したのだ。だが、バンクには十分な受け入れ体制が整っていなかったため、このブームを十分に生かすことができず、大量の無駄を出してしまい、国民の不興を買った。またブームが終わりかけたころに、保存施設や輸送体制に無理な自力投資を図ったため、財政的に脆弱になってしまった。
●2002年。臍帯血から、既存のものの10倍の効果があり副作用もほとんどない免疫抑制物質が発見された。日本の学者が最初に理論的に予測し分離にも成功した。だが、日本の臍帯血バンクに貯蔵されたものは、実験には使えないことになっていた。日本造血幹細胞バンクはルールの変更にいつまでも結論を出せなかった。当初の検討会の報告書の文言にこだわったせいだ。そこで米国の学者が大量の実験を重ねるなかで特許取得に成功、米国の製薬メーカーが大々的に発売し世界市場を制覇することになった。日本はノーベル医学賞と大きな利益を逃す。
●日本造血幹細胞バンクは経営が麻痺していた。遅ればせながら、2座不一致移植を認めようとするのだが、それが実行に移せない。ここでも当初作ったルールがネックになっていた。また、日本赤十字は数年先のコンピュータシステム更新まで検索に対応できないと主張している。厚生省は全員のコンセンサスができるまで、待ちの姿勢だ。そのころ、国内外の訴訟で敗訴が相次ぐ。日本造血幹細胞バンクは財政的破たんと社会的地位の失墜に瀕していた。業務にも停滞が目立つようになり、患者さんがスムーズに移植を受けられない場合も出始めた。
●思えば、1998年の臍帯血移植検討会のあと厚生省が八方美人的で中途半端な妥協策を作り上げたこと、それまでの骨髄バンクでの失敗からの教訓を何も学ばなかったこと、国際標準に合わせていなかったこと――がこの失敗の原因となっていた。厚生省はなすすべもなかった。設立当時の担当者はすでに全員、別の部署に移り順調に出世していた・・・
◎ここまで書いて、あまり面白くなりそうにないので、執筆はやめることにしました。申し訳ありません。どなたか代わりに書いていただけませんか。
1 既存の骨髄バンクと新規に行われる臍帯血バンクでは、その業務内容はほとんど重複していない。
2 臍帯血の分離処理・凍結保存業務のうち、長期間に渡る造血細胞の液体窒素保管は、臍帯血バンク自らが責任を持って行う必要性がある。
3 既存の骨髄バンクは、ドナー募集の普及啓発とドナーコーディネート業務を行う組織であり、医療行為に関与しているわけではない。また、血液および骨髄細胞の運搬は一切行っておらず、細胞分離処理や凍結保管等の経験もなく専門スタッフもいない。
4 HLAデータの照合検索事務も、コンピューターネットワーク化により一元的な中央集権的な検索業務も必要がない。
5 現在の骨髄バンク事業の中核である骨髄移植推進財団は、一部の医者と厚生省の官僚によって任命されたメンバーによるおざなりな理事会、評議員会が十分に機能していない。そして実務を担っている事務局や委員会も不明朗な人事が行われている。次々と問題が表面化しているが、反省することも内部改革を自ら行うこともなく、無責任な運営が行われている。
6 日本骨髄バンクは諸外国に比較して、@人口比率からしてドナー登録者数が少ない(小さい)A患者登録から移植までのコーディネート期間が長い(遅い)B標準医療としての骨髄移植でありながら、過重な患者負担金がかかる(高い)−−という実態がある。これらの@とAの問題では、骨髄バンク事業を財団とともに担っている日本赤十字社にも大きな責任がある。両者の連携の悪さ、その両者を調整し主導しなければならない厚生省の無責任さがその背景にある。
7 新しい事業である臍帯血バンク事業においては、上記の反省のうえに効率的な組織形態を構築する必要性がある。冷静に考えれば、臍帯血バンクは既存の骨髄バンクとは独立した組織において運営することが当然であり、少なくとも、現在の問題だらけの骨髄移植推進財団の新規部門とすることは、許されない。
骨髄バンクと臍帯血バンクはこれほど業務が違う。いっしょにやるメリットはほとんどなく、いっしょにするデメリットの方がはるかに大きい。
(骨)=骨髄バンクの業務内容
(臍)=臍帯血バンクの業務内容
●1 ドナー募集方法
骨―パンフレットの送付・申し込み、血液センター等への採血予約
臍―産婦人科病院での説明・申し込み、産科病院での同意書へ署名
●2 ドナー登録の方法、臍帯血採取の方法
骨―各登録センターでドナー登録者の腕の静脈から10cc採血
臍―各産婦人科病院で出産時(後)臍の緒・胎盤から臍帯血採取
●3 血液・臍帯血の運搬
骨―基本的にない
臍―産婦人科病院から保管施設へ24時間以内に運搬が必要
●4 分離処理・冷凍保存
骨―血液の分離処理・保存はない
臍―血液細胞分離・冷凍保存までについて一連の無菌的処理が必要
●5 HLA型検査等
骨―各血液センターでのHLA検査。ドナー登録時の健康検査はない
臍―検査機関・会社へ検査委託する。臍帯血と母親のHLA型、感染症・一般生化学等の検査が必要
●6 HLAデータ検索
骨―中央センターで一元検索
臍―各バンクのネットワーク検索
●7 コーディネート等(登録から移植までの期間)
骨―ドナーの健康状況とHLA型確認検査、家族を含めた提供意志の確認が必要
( 患者登録から6カ月程度必要)
臍―原則必要がない。但し、臍帯血を採取した乳児の健康状況のフォローアップが必要。(登録後、直ちに提供できる)
●8 骨髄採取・入院等
骨―ドナーは3〜5日入院が必要。ドナーの身体的負担が大きい
臍―母親・新生児とも負担はない
●9 採取骨髄の運搬等
骨―最終日に移植病院側が運搬
臍―移植2週間前に専用容器で送付
●10造血幹細胞の処理
骨―移植病院で分離処理を行う
臍―移植病院で解凍処理などを行う
(ロビイングキット用リスト)
この国会議員の方々は骨髄バンク関連に関心がある議員たちです。要望書を届けましょう。地元の人はとくに声を届けましょう。
●骨髄バンクを応援する若手国会議員の会
会員名簿 (敬称略)
氏名 所属 FAX番号
(衆議院)
原口 一博 (新) 03−3508−3238
笹木 竜三 (新) 03−3592−2782
斎藤 鉄夫 (新) 03−3501−5524
新藤 義孝 (自) 03−3508−3317
鳩山 由紀夫 (民) 03−3502−5295
坂井 隆憲 (自) 03−3592−9039
櫻田 義孝 (自) 03−3508−3338
逢沢 一郎 (自) 03−3508−0319
樽床 伸二 (無) 03−3508−3419
中川 正春 (新) 03−3508−3428
武山 百合子 (新) 03−3508−3434
北橋 健治 (無) 03−3508−3511
玄葉 光一郎 (民) 03−3591−2635
河村 たかし (新) 03−3508−3537
岩浅 嘉仁 (新) 03−3593−1506
下地 幹郎 (自) 03−3508−7392
野田 聖子 (自) 03−3591−2143
上田 勇 (新) 03−3508−3734
佐田 玄一郎 (自) 03−3593−7277
浜田 靖一 (自) 03−3508−7644
自見 庄三郎 (自) 03−3502−5004
山口 俊一 (自) 03−3503−2138
藤村 修 (自) 03−3591−2608
山本 孝史 (新) 03−3591−2348
渡辺 周 (民) 03−3508−3767
平野 博文 (無) 03−3508−7080
近藤 昭一 (民) 03−3508−3882
佐藤 勉 (自) 03−3597−2740
船田 元 (自) 03−3500−5612
渡辺 喜美 (自) 03−3508−3906
江渡 聡徳 (自) 03−3597−2751
濱田 健一 (社) 03−3508−3952
石破 茂 (自) 03−3502−5174
菅 義偉 (自) 03−3597−2707
金田 誠一 (民) 03−3508−3252
吉川 貴盛 (自) 03−3597−2727
小此木 八郎 (自) 03−3593−1774
栗原 裕康 (自) 03−3580−7072
山本 公一 (自) 03−3502−5056
山口 泰明 (自) 03−3508−3367
福島 豊 (新) 03−3508−3368
(参議院)
畑 恵 (自) 03−5512−2219
塩崎 恭久 (自) 03−5512−2417
荒木 清寛 (平) 03−3508−8427
馳 浩 (自) 03−5512−2438
栗原 君子 (無) 03−3506−0878
山本 一太 (自) 03−3508−2281
都築 譲 (平) 03−3595−1113
釘宮 磐 (太) 03−3503−7828
渡辺 孝男 (平) 03−5512−2733
直嶋 正行 (平) 03−3503−2669
KENは22日、財団副理事長で骨髄バンク運営・行政・人事に大きな影響力があると言われる高久副理事長と単独会見し、骨髄バンクの改善について要望を行った。
5月20日の「3者事務連絡会議」(財団、厚生省、日赤。厚生省欠席)でわれわれの日赤への要望5カ条のうち1〜4については合意が得られた。22日の企画管理委員会ではこれを受けて、1〜4項目が実施の方向で動くことになった。また同委員会では要望項目5についても議論し、これも早急な実施に向けて動くことになった。われわれファクスロビイング作戦が大きな促進剤になったものだ。またひとつの勝利である。と同時に関係者の尽力に深く感謝したい。もっとも、まだ実行に移されたのではないので、注視する必要があるし、できるだけ早い実施を要望したい。
20日(水)、定例の「骨髄バンク三者事務連絡会」がある。実務上とても重要な会議だ。われわれが日赤に寄せた5項目でも進展があるはずだ。注目しよう。
重藤技官の話――
2年前に1座不一致移植については決まっていたわけではなく、まだ議論が固まっていなかったと認識している。まだコンセンサスがとれていなかったというのが私個人の理解だ。私は96年の7月15日に現職についたので、当時の議論の経過を詳細には承知していない。
厚生省が口頭指導で横槍を入れたというようなことはないと思う。言ったとしても「関係者のコンセンサスはとれていますか。正しい手順を踏みましたか」と尋ねたということだろう。厚生省としては、ドナーに全身麻酔をしていただくので、ある程度以上の治療成績が期待できるものでなければならないと考える。そして1座不一致をやるとしたら、こうしたことを踏まえて合意がどう取られているのかが問題になるのは当然だ。まだ早いと考える人も、最後の手段なら許されるという人も
、いろいろ議論があったのではないか。
「コンセンサスが取れているか。やる以上、きっちりやってもらう。ドナーと患者へのインフォームド・コンセントを徹底する。また、1座不一致の成績についても事後的にきっちり集計する」。厚生省としては、こうした点がきっちり行われているならば、ストップすることは全くない。
日赤が、検索システムの問題と、かつての骨髄移植検討委員会の内容を根拠に、1座不一致移植の実施に反対したのは知らなかった。結局、1座不一致移植についてまだコンセンサスが取れていなかったということか。
――以上、重藤技官の話。談
(KENのコメント)
・96年8月2日の財団企画管理委員会。ここで、HLA1座不一致移植については意志決定が行われた。あとは実施に向けての細部を準備をするのみだった。そしてこの出席者リストには、重藤技官の名前が入っている。
・「コンセンサスが取れていますか」というのは行政の「殺し文句」だ。コンセンサスとは全員一致か。そんなことはあり得ない。企画管理委員会で決まったのだ。それが全員一致である必要はない。多数決だろうが、過半数だろうが、委員会が決めたのなら効力がある。全員一致である必要はない。また、財団が決めたことを実行するには、実質的には厚生省のリーダーシップが必要だったのだ。厚生省は骨髄バンクシステムの全体のコーディネートに責任があるのだから、むしろ財団が決めたことを実行するために日赤を指導しなければならない立場だったのだ。それが日赤が実際上のネックとなっていることさえ知らなかったとはあきれる。日赤の担当技監が疾病対策課長OBだから遠慮があるのだろうか
。
・闇のトライアングル。サルガッソーより恐い。どんな課題もこの難所では遭難してしまう。無責任とことなかれ主義。この闇のトライアングルを消すことが大切だ。臍帯血バンクにはこの闇のトライアングルを持ち込んではならない。
・こんなばかばかしいことで、助かるはずの患者さんの命が奪われている。もうこれからはこんあことは御免だ。みんなで運営プロセスに関心をもって行きましょう。
加藤俊一・医療委員会委員長の話−−−
3年ほど前から議論を重ね、約2年前に、一座不一致を適応にするという方向が決まっておりながら、実施されなかった理由は2つある。まず日赤が、当時のコンピュータのドナーサーチプログラムでは1座不一致検索ができないため無理だと言ったこと。もうひとつが日赤が、かたくなにこだわった点があったからだ。それは、こういうことだ。最初、骨髄バンクをつくる前に、骨髄移植対策専門委員会というのがあった。そこで6分の6をやるということを決めていた。日赤はここを変えない限り無理だと主張した。もう一度、骨髄移植対策専門委員会を開くべきだとした。だが厚生省は、同委員会は休眠状態だったし、委員も改選されておらず、開くことは無理という認識だった。我々は、もう同委員会は解散したに近いのだから、運営のルールは財団理事会で改められると考えた。だが、その議論もつめずに曖昧なままになってしまった。
2点とも日赤が難色を示したということが理由だった。その点については昨年11月の公開フォーラムでも私は説明したつもりだ。またパンフレット「チャンス」にも、「(HLAが)合った人に(あげる)」という記述があり、そこにも日赤がひっかかった。日赤はそうは言っていないと言うかも知れないが、そう言ってきたのは事実だ。
厚生省が口頭で「1座不一致は時期尚早」と言ったことは、私は聞いていない。これは医師が心理的にそう感じていたということではないか。第1義的には先の2つの点の日赤の反対が決定的要因だった。
そうして2年間のあいだ中断していたのだが、ドナー登録者のHLAデータがこの4月から財団に渡ることになったので、最初の日赤のサーチプログラムで検索できないという問題がクリアできるようになったので、1座不一致適用への議論を再開することにした。まもなく実施することになる。22日の企画管理委員会で決定するのではないか。
これまでも1座不一致移植は少数ながら2つの意味で行われていた。まず第一は当初6分の6だと思っていたものが結果的に6分の5だったというものだ。血清学的に登録されたデータで一致するとみても、クロスリアクションでさらに詳細に検査するとB38とB39というように、実は違う型で6分の5であったという例が2〜3例あった。もうひとつはホモ・ヘテロの例だ。たとえば患者さんがA2とA2をもっている(ホモ)としよう。ドナーがA2とA24だとすると、ヘテロからホモへの方向にはGVHDは働かないから、GVHDの観点からすると6分の6に近いということになる。6分の6と6分の5の間ぐらいというべきか。こうした例が12〜13例あった。東海大学も1例やった。
このホモ・ヘテロを許すということについては、中央調整委員会が承認して、企画管理委員会でも承認した。検索は、ただ何でも6分の5を探すというのは大変だが、ホモの場所に当たりをつけて探せるので、手作業で個別に探しても大して手間がかからないということで、中央データセンターに協力していただいた。 このホモ・ヘテロは6分の5よりは一致度が良いはずなのだが、意外と患者や主治医で希望する場合が少ない。この2年でわずか12〜13例しかないのだから。だから、1座不一致が適用になっても、症例が爆発的に増えるとは思えない。
要望書が私のところにもいくつか届いた。土田先生の回答はホームページに出ていた。今の発言で私の回答に代えさせていただく。
――以上。加藤先生。談
(KENのコメント)
・この話が事実だとしたら日赤の罪は深い。結局、国際提携、予備検索、BMDW参加、1座不一致、土日登録。すべての主要問題で日赤がネックになってきたということになるのではないか。
・財団も無責任だった。自分で決めていたことを、日赤に難色を示されただけで放置してしまうとは、何といいかげんなのだろう。日赤の難色の1の理由は言い訳にすぎないのはすぐ分かるではないか。第2の理由は、骨髄移植検討委員会の位置づけを厚生省にきっちり確かめれば良かったのだ。そして理事会で決められるなら決めれば良かったのだ。それになぜ、ホモ・ヘテロなら、中央調整委員会と企画管理委員会で決められるのだろう。1座不一致でも企画管理委員会で決められるのではないか。まったく論理がなっていないし、詰めがない。
・ホモ・ヘテロをどう考えか。これは1座不一致が実施されていたと考えるべきだろう。しかも、認定病院すべてに通知されたとも思えないし、骨髄バンクニュースなどで周知されたとも思えない。結局、一部の医師が自分たちだけでやっていたと受け止められても仕方ないのではないか。どんな周知が行われたのか、どこの病院が何例やったのか、情報公開を求める。
ある財団関係医師から,こんな証言も飛び出した。
――企画管理委員会でゴーサインが出たが、厚生省が口頭で難色を示した。その横槍でストップになったのです。
(KENのコメント)
・文書にも何にも残らない口頭指導が大きな影響を及ぼす。これはおかしい。口頭指導、通達といった不透明な行政指導手法は全廃すべきだ。
行政筋の情報によると、このほど、骨髄バンク関連コンピュータシステムの整備のための補助金が1998年度補正予算によって計上されることがほぼ確実になった。内訳は日赤に2億円、財団に5000万円。6月の国会での補正予算議決によって本決まりになるが、すでに内々では決まっており、まずこのまま通るとみてよさそうだ。
ドナー登録者データベースを管理しているコンピュータはパンク寸前だったが、これで全面的な刷新ができることになる。これまではまだDOSベースのソフトで、かつ「がちがちに固めた使いにくいソフト」(現場の声)だった。この2億5000万円がいかに有効に使われるか注目したい。
なかでもポイントは次のような点だ。
・大半は日赤に配分される。このカネは本当に骨髄バンク関連事業だけに使われるのだろうか。本社のサーバーと68カ所の登録センターのパソコン、そして検索ソフトウエアで2億円もかかるのだろうか。それはともかく、日赤は2億円分の仕事をしてほしい。「骨髄バンク事業を取り引き材料にしている」などと陰口を叩かれないように。
・財団は5000万円をどう使うのだろうか。すでに財団地方事務所へのパソコン予算はついていたのではなかったか。この5000万円はどう使われるのだろう。業務の効率化か。とにかく、宝の持ち腐れでなく、コーディネート期間短縮に結びつけてほしい。
・日赤のソフトをいわゆるプロプラエタリー(独自)ではなく、オープンで標準的なソフトにしておくべきだ。また、ミスマッチ検索などにも対応できる柔軟な思想で設計しておくべきだ。
・日赤と財団をオンラインにすべきだ。財団内事務所間も。
・この際、登録データの財団への全面移管も考慮すべきだ。データの漏洩防止には財団内でファイヤウォールを掛ければよい。
・その他
5月13日付けのコーディネートマニュアル変更についての要望書を送ったボランティアに対し、コーディネート委員会の土田昌宏委員から返事があった。このボランティアの承諾を得てここに掲載させていただく。(土田先生も承諾いただけますよね)
土田先生の返事
「お返事。右記のことは既に昨年から何回も提案し、議論をつづけています。マニュアルは合意の結果、改訂されるものです。◎日赤との合意が先になければ改訂できません。この点を御理解下さい。土田昌宏」
(KENのコメント)
一通の要望書に返事を出された土田先生は偉いと思う。感銘を受ける。ボランティアの声は届くし、それに返事も来る。素晴らしいコミュニケーションが始まっている。
さて、「昨年から何回も提案し、議論をつづけています」とのことだ。どうして始めるのがそんなに遅かったのか。どうしてそんなに時間がかかっているのか。そのあたりを、はっきりしようではないか。日赤はマニュアルを先に変えろと言い、財団は日赤がうんと言うまではマニュアルを変えられないという。おかしいではないか。森島先生、土田先生、草刈技監に話を聞こうか。
そうではないのだ。一昨日から状況が変わったのです。日赤が豹変してゴーサインを出したんです。KENのホームページあるいは、お届けしたはずのファクスはお読みいただいていませんか。いま球は財団のコーディネート委員会の手にあるのですよ。次のコーディネート委員会で議論を始めるような悠長なことはやめて下さい。森嶋先生か土田先生が今日、たった一本、草刈さんに電話を入れればいいのです。そして次のコーディネート委員会(23日?)で一気に決めてしまって下さい。草刈さんのアクションの素早さをここでは見習って下さい。状況変化に追随して下さい。みんなで見守っています。何日かかるかカウントしながら。
お忙しいところ大変だとは思いますが、一気にコーディネートマニュアルの大幅改訂を断行するように心からお願いします。「鉄は熱いうちに打て」。
BMDWはいくつでもパスワードを発行できる。
オランダのBMDW本部に電話して聞いた。
BMDWで検索するにはパスワードが必要だ。日本骨髄バンク(財団)がBMDWからパスワードをもらって認定病院に割り当てすれば、認定病院が自分で検索をすることができるようになる。そもそもBMDWはそういうやり方を想定している。では、BMDWは日本のためのいくつのパスワードを発行できるのだろうか。財団には、「それほどたくさんのパスワードがもらえないのではないか」(野田事務局長)という先入観があるようだ。そこでKENがオランダに国際電話をして尋ねてみた。答えは次のとおり。
「BMDWとしてはJMDPのためにいくつでもパスワードを割り当てられる。パスワードはコンピューターで自動的に生成されるので、日本のために発行できるパスワードの数は文字どおり無制限である」
つまり次のようにすれば良いのである。
○JMDPは認定病院の数だけパスワードをもらう。認定病院に与える。
○認定病院は自分でBMDW検索を行う。
○企画管理委員会は検索マニュアルと検索戦略の参考書をつくる。BMDWがはじまったときに、実際の検索を見もせず、対策も打たなかった財団関連の医師は怠慢だ。移植学会などでも、「ドナー検索戦略の抜本的変化」というテーマでセミナーをやるべきだ。論文が書けないようなことには、医師は熱心でないような気がする。これでも十分論文は書けるのだがなあ。
○ボランティア団体は、全国の医師に患者のために適正な検索が行われるよう要望と啓蒙と監視を行う。たとえば、BMDW検索とJMDP検索の違いへの認識、早期の世界同時検索、キャンセル確率を見込んだ幅広い検索、臍帯血なども視野に入れた第2戦略も早くから立てておく−−などなど。また、患者のために「ドナー検索について医師に聞くべき質問」というパンフレットを作成する。
○財団にとっては、事務軽減になる。だが、BMDWで日本に適合者がいなくても、念のために財団に日本内のHLA照合サービスを依頼すべきだ。BMDWの日本データは2カ月に1度の更新。JMDPは2週間に1度だからだ。このあたりを財団は啓蒙して、気軽に財団にHLA照合サービスが行えるような仕組みと雰囲気づくりに努めるべきだ。
○かくして、日本でも世界同時検索(さらには世界同時コーディネート)が常識化する。また、1座不一致、2座不一致、臍帯血などについても目に入るから、医師が実際の検索を体験するなかで、勉強し戦略眼を高めることができるのだ。もちろん、検索は移植センターのコーディネーターが担当し、戦略は医師が患者と相談して決める、という姿も近い将来には出てくるだろう。
5月13日夜、日赤の草刈技監と電話で話をした。一問一答は次のとおり。
基本的には全面的に理解していただいたようである。草刈技監は毀誉褒貶が激しい人物ではあるが、やるときは素早いではないか。さて、実際にどのような成果が出るか期待しながら見守っていきたい。HLA照合サービスとBMDWのときはここからが長かったから油断はできない。財団と厚生省がこのチャンスを無駄なく活かすことを望む。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
KEN「おととい出した要望書はお読みいただきましたか」
草刈さん「読んだよ。もう手を打ったよ」
KEN「もうですか。速いですね」
草刈さん「KENさんも早いけど、僕も速いんだよ」
KEN「では、さっそく結果に表れると受けとめていいんですね」
草刈さん「もちろんだよ。結果に出てこないとおかしいよ。でもね、登録者の保護の観点から譲れないところだけは守るよ。それだけ守れば、あとは人間なんだから、協力し合ってやって行こうよ。悪かったね」
KEN「いろいろ大変なこともあると思いますが、ぜひよろしくお願いします」
草刈さん「いろんな抵抗はつきものだけど、物事変えるときには、思い切ってやらないと何事もできないもんだよ。とにかくKENさんたちの気持ちは良く分かったからね」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
日赤に対して5月11日に5カ条の要望書を送った。日赤ではさっそく、対応への検討が始まったようだ。11日のうちに草刈技監、野口課長、服部係長が文書を読み、打ち合わせなどがもたれたようだ。
5月12日、服部係長に話がきけた。「昨日受け取ったばかりなので、まだきっちりとした返事ができないからノーコメントだ。あくまで個人的見解だが・・・」という前置きと断りがあった上で、次のような話があった。
(1)バンクニュースの一括送付について
服部さん「私見ではあるが、検討はしている。現状のやり方はコストがかかり、経費節減のためには、一括送付するに越したことはない。現在、一括送付の実施に検討している」
(KENのコメント)(まったく問題なく、今回の送付から実行されそうである)
(2)申し込みハガキの廃止
服部さん「登録ハガキをもってきて登録センターに来ていただいたときから日赤の分担業務が始まる。厳密に言えば、電話で予約申し込みがあったときから。骨髄バンク事業の全体をみて指導しているのが厚生省だから、厚生省が指導して、財団が変更するということであれば、日赤としては何の反対もない。日赤はただ登録・受け付け業務を分担しているだけだ。申し込みハガキの廃止については、そうするということになれば、それでいけると思う」
(KENのコメント)(これもさっそく実行していただけそうだ。財団が日赤にそう伝達すればいいだけだ。また、BMDW参加のときのように、厚生省からの文章が必要だとか、誰宛に出せとか、言葉の間違いがあるとか、まだ文書が届いてないとか、そんなことにならなければいいが・・・)
(3)オンライン化と書留郵便の廃止について
服部さん「要望の主旨については理解はしている。現在、確認しているところだ。財団の方と互いに話し合いが必要だ。日赤だけで完結する問題ではない。たとえば、コーディネートマニュアルには「書留郵便」という言葉が出ている。財団の作った“憲法”にそうした記載があるのだから、うちだけではいかんともしがたい。こうしたことさえ整えば日赤としては反対する理由はない」
(KENのコメント)(これも解決した。財団のコーディネート委員会がマニュアルを変更すれば良い。服部さんは“憲法”と例えられたが、その伝で言えばこれはせいぜい“条例”程度の規則であり、コーディネート委員会で変更できるはずだ)
というわけで、私見とは言いながら、日赤の前向きな態度がうかがえた。3点とも基本的には解決した。すぐ実行に移されるものと理解する。このところの日赤の対応の早さには感銘を受ける(まだ決まったわけでも、これまでの遅さがすべて償えるわけでもないにしても)。
なお、(4)(5)の点については尋ねる時間がなかった。また、次の機会にうかがっておく。
日赤の服部さんの話で分かったのは、コーディネートマニュアルがオンライン化や書留郵便の廃止を阻む要因になっているらしいこと。コーディネートマニュアルを改定すべきだ。これは財団のコーディネート委員会の森島泰雄委員長、土田昌宏委員らが担当する問題だ。お願いをしよう。
KENがざっとコーディネートマニュアルに目をとおしたところでは、書留郵便という言葉はなかった(郵便という言葉はある)。いずれにしても、コーディネートマニュアルが、改善ができない根拠になっているのだから、マニュアルを実状にあったように改定すべきだ。
骨髄移植推進財団
コーディネート委員会 委員長 森島泰雄さま fax052-764-2923
委員 土田昌宏さま fax029-252-4031
企画管理委員会 委員長 小寺良尚さま fax052-483-3647
医療委員会 委員長 加藤俊一さま fax0463-91-6235
要望書
骨髄移植推進財団と日本赤十字社の間をオンライン化し、ドナー検索に関する情報をやりとりすることが、必要になってきています。時代の流れ、コーディネートの時間短縮のため、などが理由です。そのために財団と日赤の間の事務手続きの細則を規定しているコーディネートマニュアルが旧態依然であることがネックとなっています。至急、コーディネートマニュアルを改定して下さい。
KEN 骨髄バンク推進ネットワーク・メンバー
5月12日、財団企画管理委員長の小寺先生に話を聞いた。焦点は1座不一致を適応とすること。実施に向けて動き始めたことが確認された。
「医療委員会の加藤俊一先生のところで議論が行われたはずで、急いでやるという結論になったはずだ。ハードシステム(KEN注:実際のやり方?)をどう運用するかは難しいが、海外では1座不一致が可能であるのに国内では無理ということであれば、バランスに問題があり、このような状態を続けることは不可能なので、近いうちにゴーサインを出す。現在、予算措置を伴うべきものなのか(KEN注:どういうこと? 日赤にコンピューターを買ってやるということ?)を検討していただいている。2、3年前に議論が活発に行われおおよその結論が出ていたのに、なぜそのままになってしまったかは、はっきりと記憶にない。いくつかの要素が絡まっていたのではないか。ひとつは、厚生省の研究班(KEN注:ここには日赤の幹部も入っているぞ)で、適合度が高いほど成績が良いということが出そうだったこと。一方で適合度を高めることをやり、一方で1座不一致ということで、違ったことをいっしょにやるのはいかがなものか、という話もあった(KEN注:まったく性質が違う話で、矛盾する問題ではない。いったい医師の論理性、知性はどうなっているのだろう。臨床ではあれだけ複雑なことをやっているのに、一回にひとつのことしかやれないとは)。また検索システムの問題(KEN注:やればできるの項参照)などもあって、ドナープール拡大に力点を置こうということで、立ち消えになった。だが、一度立ち消えになったからと言って、今やってはいけないことではない。速やかにやることになるだろう」
日赤はHLA適合血小板のドナーについては1座不一致検索もやっている。一致度の高いものから順に出てくるソフトになっている。骨髄についても1座不一致の検索はできる。手作業でやればできるのはもちろん、ソフトを作り直しても、日赤に骨髄バンク事業の名目でついているカネの額からすれば、大したことはない。
6月30日に骨髄移植推進財団の理事会、評議員会が開催される。KENは傍聴希望を出した。財団は各理事、評議員への案内書に、傍聴許可の可否を問うアンケートを同封した。KENは理事、評議員各位に「傍聴を許可」に○をつけて返送することをお願いする。
・骨髄バンク設立の主旨からして、理事会、評議員会は公開で当然だ。
・世の中の流れは、こうした会議をどんどん公開していく趨勢になっている。
なおKENは「傍聴を認めない」とした人にはその理由を教えていただくため、個別にお話を聞くつもりだ。
このほどKENは、過去の理事会、評議会、企画管理委員会、3者(厚生省、財団、日赤)連絡会議の議事録を入手した。これによって、骨髄バンクがどのように運営されていたかかなり明らかになる。こうした議事録を分析して、懸案がいっこうに処理されてこなかったのはなぜか、どこに欠陥があったのか、事実に基づいて指摘していくつもりだ。
日本赤十字社 事業局技監 草刈さま
血液事業部事業課長 野口さま
fax 03−3459−1560
要 望 書
私は骨髄バンクシステムの改善を望む患者(患者家族、遺族、ボランティア・・・)です。次のような点について至急改善していただきたく日本赤十字社にお願いいたします。
(1)骨髄バンクニュースの一括送付
(2)ドナー登録希望申し込みハガキの廃止
(3)財団と日赤データセンターのオンライン化
(4)適合したドナー候補者の個人情報の自動送付
(5)1ローカスミスマッチの検索サービスを開始すること
名前 (署名)
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日赤の草刈技監は「いっしょに良くして行こうよ」とおっしゃって下さった。野口課長は「まだ改善点があれば教えて下さい」とおっしゃった。せっかくのお言葉なので、日赤の業務についてざっと見直しを行ってみた。要望したいことは山ほどある。まず次のような点を要望をさせていただくことにする。KENは財団と日赤が優秀な民間の業務改善の専門家(コンサルタント)を雇って、業務の全体を見直すことを提案する(もっとも、それはコンサルタントなど雇わなくても、KENでも誰にでもできることだが)。
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日本赤十字社 事業局技監 草刈さま
血液事業部事業課長 野口さま
fax 03−3459−1560
要 望 書
私は骨髄バンクシステムの改善を望む患者遺族です。次のような点について至急改善していただきたく日本赤十字社にお願いいたします。
(1)骨髄バンクニュースの一括送付
現在、年2回ドナー登録者に送付されている骨髄バンクニュースは、各地方骨髄データセンター(血液センター)から送付されているそうだ。これを1カ所から一括送付するようにすれば、年間数百万円の郵送費節約になる。もちろん、送付日数も短縮され、各センター担当者の負担軽減にもなる。6月に発送予定の次号から、ぜひとも実行していただきたい。
(2)ドナー登録希望申し込みハガキの廃止
現在の仕組みは次のようになっている――。ドナー登録希望者は、パンフレット「チャンス」を財団に請求し、パンフレットを郵送してもらい、それに添付されている「登録希望申し込みハガキ」を財団に送付する。その後、財団から「登録受け付け場所の案内書」が送られ、どれからドナー登録検査の予約電話をすることになっている。面倒きわまりない。私自身もドナー登録したとき、あまりに手間がかかるのでいらだった。ドナー登録者伸び悩みの大きなネックとなっている。こんな方式でやっている国は世界のどこにもない。大幅な簡素化を図るべきだ。
まず第一段階として、「登録申し込みハガキ」を廃止し、パンフレットに登録場所の一覧を記載する方式に変更して下さい。ここを簡素化すれば、登録者が増えるし、ハガキの往復にかかる費用の大幅な節約になる。このハガキは廃止しても何ら問題はない。
公開フォーラムなどで、ドナー登録を便利にすると「ドナーの質が低下する」と主張する人もいたが、言い訳としか思えない。ドナーの質が低下する証拠は何もない。また、ドナー数が100%増えて、ドナーの質が5%低下しても、救命には大きなプラスになる。さらに、そもそもドナーの質については、日赤が考える問題ではない。日赤はドナー募集もコーディネートも役割ではない。これは財団が考えることだ。日赤はただ厚生省から委託された業務を粛々と行えば良いのである。
また、日赤は受け付け体制の許容量を気にしているが、そのことから制限を加えるのもおかしい。そもそもまだ限界に達しているわけではない。現在、1カ月のドナー登録者数は1000〜1600人程度であり、68カ所のデータセンター数で割ると、平均15〜25人となる。1日当たりでは1人に達しない。たとえドナー登録者が2倍になっても業務は混乱なく行えるはずだ。また受け付け能力が限界に達するほどドナーが集まれば、その手当は厚生省、財団、ボランティアなどで考えれば良いこと。日赤が自分の都合だけで入り口を絞っているのは大問題だ。ドライビング方式の本格導入を控え、日赤は発想を根本的に変えるべきだ。
(3)財団と日赤データセンターのオンライン化
以前からお願いしていることだが、財団からのドナー検索依頼と中央データセンターからの回答方式は、現行の書留郵便から、コンピューター通信方式にするよう早急な改善をお願いする。正式確認を文書によって事後的に行うことで正確性は担保される。これにより、コーディネートは確実に平均1週間程度短縮されよう。
また現在、患者が新規に登録した場合、1週間に一度しか検索・回答を行っていないが、これを毎日にしていただきたい。また、コーディネートが不調になった場合の追加検索もコトの緊急性をかんがみて、検索・回答を毎日実施するようにしてほしい。
こうした策を合わせることで、全体として平均1.5週間ほどのコーディネート期間短縮につながる。
(4)適合したドナー候補者の個人情報の自動送付
コーディネートマニュアルなどによると、現在、登録患者に適合ドナーが見つかった場合は、財団の中央事務局の指示により各地区事務局が中央データセンターからの適合者リストに基づき、各地方骨髄データセンターに適合ドナー候補者の個人情報の開示請求を行い、各データセンター担当者がドナー登録申し込み書をコピーして各事務所に送付している。これらはいずれも書留郵便で行われ、往復に一週間以上の日数がかかっており、コーディネート期間短縮のネックとなっている。どうしてこんなに迂遠な方法を採るのか理解しがたい。
そこで、中央骨髄データセンターは、適合ドナーが見つかった場合、各地方センターに直ちに適合通知を出し、通知を受けた各地方センターが、ドナー候補者の個人情報をコピーして財団の地方事務局に自動的に送付するシステムに改めるように提案する。財団はこれを日赤に早急に申し入れるべきだ。
この改善によって確実に10日程度のコーディネート短縮が実現する。早急な実現を望む。上記の(3)と併せると、約3週間の期間短縮になる。
(5)1ローカスミスマッチの検索サービスを開始すること
一座不一致ドナーの検索を実施しない理由のひとつとして、日赤のコンピューターシステムが対応できないということがあげられている。だが、手作業では一座不一致も検索できる。また、早急にどんな条件でも検索できるソフトに組み替えるべきだ。いずれにしても、日赤としては、財団や主治医からのニーズに合わせて、どんな条件による検索依頼にも対応すべきだ。
【追記】
KENはいずれ、日赤の業務プロセスと日本骨髄バンクのシステムの中で日赤が果たしている役割について詳細な分析を行ったペーパーをまとめるつもりだ。もちろん、患者、患者家族、遺族、患者を支援するボランティア、マスコミ、政治家、行政当局などにも配布する。そのための資料収集と関係各方面への取材を続けている。
資料には、このほど入手した「財団の企画管理委員会の議事録」や「三者(厚生省、財団、日赤)連絡会議議事録」も含まれる。ここでは日赤が同じ問題に対していつまでも「持ち帰って検討する」を繰り返していることが明らかだ。
また、日本骨髄バンク設立当時に詳しい人々に、いろいろと当時の秘話を聞いてもいる。そもそも財団設立直前まで、骨髄バンク事業は日赤が主体となって行うことになっていたが、直前になって覆った。そう働きかけたのは誰だったのか、なぜだったのか。献血事業を営む日赤が骨髄バンク事業を引き受けておれば、ドナー登録数は現在の3倍程度になっていたとする識者は少なくない。
また、日赤が上記の5つの項目に速やかに対処していただけない場合は、骨髄バンクのデータベース管理費用として日赤に流れてきた補助金にも関心をもっていくことになろう。その場合、KENは日赤のドナー登録用コンピューターの見学を要望するつもりだ。
KENのペーパーが発表されたときに、日赤がまだ大幅な改善を実現していないとしたらどんな世論が巻き起こることだろうか。上記5点の早急なる実現を要望すると同時に、お勧めする次第である。
名前 KEN (署名)
大変遅くなりましたが、
まず、現時点のKENの基本認識から――
【情勢判断】
●やっただけの効果は出ている。われわれがやればやるほど、確実に譲歩を獲得できている。これは評価できる。
●でも、結局は大勢には変化がない。討議はアリバイでしかなく、厚生省が事前に考えていた案に落ちつきそうだ。これではあまり良くならない。
●なぜ、臍帯血バンクのことが骨髄バンクボランティアに関係あるのか。
臍帯血バンクが良くなると、骨髄バンクも良くなる。骨髄バンクが良くなると、臍帯血バンクも良くなる。両方がなれあったら、いっしょに堕落する。
●護送船団方式(レベルが低い方に合わせる)、救済合併(不良債権などの問題を隠ぺいする)は良くない。臍帯血バンクが骨髄バンクといっしょになったら、骨髄バンクは抜本的に改革しない。臍帯血バンクは骨髄バンクの体質に引っ張られる。骨髄バンクの問題は、未収金、日米不公平問題、BMDW問題などの卑近な例をみても分かる。低きに合わせるのでなく、高きに合わせるべきだ。臍帯血バンクは骨髄バンクの改善の大きな契機になる可能性をはらんでいる。別々に運営して、刺激を与え合うことが必要だ。
●そこで現時点ではKENは、2つを合わせて「造血幹細胞移植推進財団」とするのには反対する。そしてHPに後に添付するような意見を出した。
●多数派工作。KENと同様の考えの委員は少なくない。19人の委員のうち、陽田さんをはじめ4〜5人が明確に「独立設置派」だ。潜在的にはあと4〜5人いる。合計すれば、上手くすると過半数の10人がとれる。厚生省は「独立設置」の意見は聞き流すだけで、両者を合併して「造血幹細胞バンク」とする意向だ。次回の検討会までに多数派工作をすべきだ。そして、検討会の後で、独立派による記者会見を実施すべきだ。自分たちが正論を主張した証拠を残し、印象づけておかないと、あとあとややこしいことになろう(出来上がった新バンクが失敗したときには連帯責任を負うことになる)。こうした行動の結果の成否はともあれ、さらに大きな譲歩を引き出し、骨髄バンクの改善につながるのは確実だ。
●5月中に検討会はまとめをしなければならない。今国会中に予算をとって、来春からたち上げる予定だからだ。だが、検討会だけでは、設置だけ決めて、予算をとり、組織のあり方については検討を継続するということにできないか。
【検討会のポイント】
●前回、資料に不備のあった「日本骨髄バンク権力構造」は再配布された。
●臍帯血移植の適応疾患について。骨髄移植に準ずることになった。だが、そもそも骨髄移植の適応について、財団が厳しく決めているのがおかしい。また設立当初から適応条件が一向に変更されていないのもおかしい。だが、適応の実態はかなり緩んでおり、「その他、必要と認められる症例」という例外規則が多数使われている。適応を広げることは正しい。だが、例外条項を使うのでなく、本項を拡大すべきだ。1992年につくった適応疾患リストが改定されることなくそのまま使われているのは、財団の硬直性のひとつの証拠だ。
●小寺委員(骨髄バンクの企画管理委員長でもある)から、案が出た。「日本造血細胞バンク」として、骨髄バンクと臍帯血バンクを統合するものだ。厚生省のハラに近い形と思われる。大きな譲歩もみられたことは注目に値する。私たちはこの案には満足しない。ただ、私たちが黙っていたら、このような譲歩さえ出てこなかったのは間違いない。
・内容(全国協議会の遠藤さんのレポートによる)・・・・詳細は省きますが、小寺委員長の私案は「財団が担うべし」を前提にしています。補足説明として小寺委員長は「財団の発展的な改組が必要だろう」と述べました。
残念なことに、「発展的な改組」の中身が詳細には示されませんでした。資料によれば、1)理事会、評議員会は、関係各層、地域の代表とする。2)合同運営委員会(注:私案では理事会の下に新設される)は、理事会の定めた範囲内での諸事項に関し、決定権を有する。3)中央、地域事務局は、理事会、評議員会ならびに各種委員会業務対応の専任事務局員を配置する。・・・とあるだけです。
・ポイント(KEN)財団事務局の位置づけが低く、委員会(専門家、医師)が主導の体制になっている。さすがに最近の問題多発に事務局に愛想をつかしたか。理事などに任期を設けて、アクティブなものにするとの発言があった。合同運営委員会に決定権を移すのは意志決定のスピードを重視するという主旨だろうが、運営委員会へのチェック機能がない。最大の問題は、財団内の改善については少し盛り込んでいるが、厚生省と日赤の関係については全く触れていないこと。これでは全然不合格です。
●その他。
◎◎臍帯血バンクに関する要望書について
☆以下のロビイングキットを臍帯血バンクを支援するある団体が組織的に取り上げていただいた結果(ありがとうございました)、4月28日と30日だけで約40通のファクスが厚生省に届いた。これはKENが厚生省で現物をみて確認した。臓器移植対策室の佐藤氏はこれを受取日別にフォルダに整理しており、「少なくとも室長・課長までは回覧する。また、必要ならば臍帯血移植検討会にも資料提出する」と語った。ちゃんと大きなパワーになっている。次の臍帯血移植検討会までに目標1000通! あなたが友人2人に声を掛ければ達成できる。
☆臍帯血バンクの設立を望む方だけでなく、骨髄バンクを支援する方、骨髄バンクの改善を求める方も参加して下さい。私たちのこうした要望の結果、骨髄バンクの改善案が具体的に臍帯血移植検討会という公式の場で、骨髄バンクサイドの委員から約束されるようになってきたのです。
日本の骨髄バンクの移植適応基準を拡大すべきだ。
なかでも1ローカスミスマッチ(一座不一致)を認めるべきだ。
●理由1 すでにゴーサインが出ていたこと
この度、KENが入手した過去の「企画管理委員会」の議事録によると、すでに財団のなかでは、承認が済んでいた。
1996年8月2日の企画管理委員会の議事録には以下の引用のようにある。財団設立当時から1ローカスミスマッチは課題になっていたのであり、96年でも遅すぎたくらいだ。それが、さらに、なぜ止まってしまったのか。
厚生省が難色を示したことや、財団もこの問題を放置してしまったことがあるのだろう。また、当時、いわゆる「笹月レポート・笹月研究」(A,B座の血清レベル一致とDNAレベル一致の成績の比較)というのがあって、厳密にマッチさせた方が成績が良いという話が出てきた。これでクライテリアの拡大の話は置き去りになってしまった。この研究には厚生省から研究費も出ていたし、厚生省としては着目したのだろう。だが、何と医師や厚生省は単純なんだろう。厳密な一致と成績向上を狙うのは重要だが、あくまで一面に過ぎない。もう一方では、他の治療法がない患者の救済の道が必要なのだ。患者さんの疾病、リスク、病期などによって作戦が違う。一次戦略もあればサルベージ(最後の手段的治療)もある。中央で一元管理するから、単純な誤った判断しかできない。いずれにしても、放置していた問題をすぐに解決すべきだ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−(引用)
承認事項:
4、 HLA1座不一致移植について:
HLA型6座完全一致移植から1座不一致移植の実施は、財団の基本方針の転換となるので、医学的評価、普及広報のあり方等を含め、さらに慎重に検討すべき事項があり、当面次の事項について早急に評価検討を行うこととされた。
(1)国内の血縁者間の1座不一致移植症例データ及び海外の非血縁者間1座不一致移植のデータ(小児・成人)の企画管理委員会への提出
(2)移植対象患者については、ハイリスク患者だけでなく従前のステージの患者も対象とする。
(3)提供希望ドナーへの1座不一致移植導入実施の周知については、11月発行のバンクニュースで行う。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−(引用終わり)
●理由2 1座不一致がそもそも認められていない根拠があいまい。
公開フォーラム、臍帯血移植検討会などで出された資料。KENの手元にあるあらゆる資料をひっくり返してみたが、そもそも「6座一致のみ認める」という条項はどこにもない。どうやらコーディネートマニュアルにあるだけらしい。しかし、コーディネートマニュアルというのは、適応規則を決めるものではない。コーディネートのプロセスを決めるに過ぎない。医療委員会や企画管理委員会が決めたのでない、コーディネートマニュアルの規則のひとつというのでは、拘束力がそもそもないのではないか。
それに血清学的一致度か遺伝子分析的一致度かの定義もない。かつて「6座一致(血清学的)」と思っていたのが、今からみると「1座不一致(遺伝子学的)」だったということも多いわけで(参照:笹月論文)、1座不一致を認めない理由がない。
●理由3 患者の救命という思想から、何が正しいのか(基本理念)
KENがいつも主張しているように、日本の骨髄バンク関係者は、移植の間口を狭くしておいて、移植の成績を上げることに注力している。だが、この数字はおかしい。本来は、「助けられる患者の何割を助けられたか」が尺度になるはずだ。1ローカスミスマッチ移植は、完全一致より治癒率は下がるが、他に治療法がない場合や他の治療法より相対的にましな成績が見込める場合はやるべきだ。当然のことだろう。移植適応条件を制限するのは、たしかに医師が勝手に実験的治療をすることを防ぐという面もある。しかし、インフォームドコンセントさえやればその心配はない。治療チームと患者(家族)が相談して、救命のための最善策ということで治療方針を選択すれば良い。
ちなみに欧米では非血縁の1ローカスミスマッチ移植は当然のように行われている。・・・・・・・・・
KENが講演をすることになりました。近くの方はぜひ聴きにいらして下さい。
日時:5月23日(土) 3時〜4時半
場所:郡山市案積町荒井 サンフレッシュ郡山(TEL0249-45-6466)
主催:福島県骨髄バンク推進連絡協議会(TEL0246-36-8343)
テーマ:こんな医療に満足できるか?(患者からみた日米医療比較)
◇日本の医療や骨髄移植治療は、海外から見るとかなり異様だ。骨髄バンクは、「小さく、遅く、高い」し、患者本位にできていない。骨髄移植の治療方針も、米国で行われているやり方とは、ちょっと違う。そして、日本の患者はちょっとおとなしすぎるゾ!?
「もっと人間らしく。もっと志を高く」、やれないものだろうか。米国での闘病体験を踏まえ、日本の血液疾患治療の問題点とタブーをえぐり出し、あるべき姿を提示する・・・。
◆トピック
・これでいいのか、日本の骨髄バンク(日米骨髄バンク比較)
・カルテはだれのものか(もちろん、患者のもの)
・セカンドオピニオン(いろいろ尋ねて、治療方針決定に自分も参加)
・変えるのはあなた。始めるのは私(こんなことができる)
−−などなど。
◆講師 KEN(ケン) 骨髄バンク推進ネットワーク・メンバー
◆プロフィール: KENという名で、「より良い骨髄バンク」「患者主義の医療体制」を目指して活動する。現在の主な関心は、ドナー・コーディネート期間の短縮、世界同時検索・世界同時コーディネート、移植適応条件の拡大、骨髄バンクの体質改革など。また、理想的な臍帯血バンクのあり方、患者の医療参加、患者の情報武装、新しい姿のロビイングなども提言している。
骨髄バンク行政の問題点をえぐり出す行動は「骨髄バンク界の刑事コロンボ」と呼ばれることも。運営しているインターネット・ホームページは、「骨髄バンク行政にもっとも影響があるジャーナル」だ。どこの組織にも所属しないが、さまざまな団体・個人と連帯しながら、運動を繰り広げている。
この世界に入ることになったきっかけは、妻が急性白血病になったこと(ニューヨークで発病し、ワシントン州シアトルで骨髄移植をしたが、その後、再発で死去)。
東京の会通信に連載している「患者の視点からの日米医療比較」の記事(第4回)を転載する。前回の「日本骨髄バンクの権力構造」は厚生省臍帯血移植検討会の場で参考資料として配布されるなど大きな反響を読んだ。
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患者の視点からの日米医療比較(4)
☆☆「米国骨髄バンクの民主制度」☆☆
(前文)
▽前回は日本骨髄バンクの複雑な統治システムとその問題点をみた。今回は、米国骨髄バンクの民主度に学ぶ。患者の利害が反映される組織になっているのだ。
▽「患者擁護部」と、患者代表から成る「患者サービス委員会」が重要な役割を果たしている。
▽日本の骨髄バンクは、先進的な米国バンクから教訓をくみ取るべきだ。
(本文)
いま東京にジョン・ルーフさんという女性が滞在している。ビジネススクールで国際経営論を学びながら、世界各地に出張したりして忙しい日々を過ごす。彼女の母親は日本人。実はルーフさんは、かつて慢性骨髄性白血病の患者だった。しかも米国骨髄バンクの幹部でもある。彼女の活躍は患者にとって大きな励みだ。また、移植経験者である彼女から聞く米国骨髄バンク(NMDP)の仕組みには、関心させられるところが多い。ルーフさんをガイド役にNMDPの神髄を覗いてみよう。
まずNMDPの概要をみておこう。移植数は日本の4倍以上、登録ドナー数は30倍以上、平均所要コーディネート期間は半分、スタッフ数は約6倍、予算は約10倍。世界の最先端を歩み続けてきた骨髄バンクだ。この実績を支えているポイントは、明確な目的意識と組織の仕組みにある。この辺りをNMDPの内部で活躍しているルーフさんに聞こう。
ルーフさんはNMDPの理事会メンバーの一人だ。これまでも患者家族は入っていたが、「移植経験者本人ははじめて」と言う。日本の骨髄バンク(JMDP)の理事には、患者関係者はいない。またルーフさんは患者サービス委員会(PSC=Patient Service Committee)の委員長でもある。PSCは12人の委員からなり、全員が患者関係者。PSCは患者の視点からNMDPのサービスを向上させることがその役割。PSCはその考えや要望、改善案をNMDPの患者擁護部(PAO=Patient Advocacy Office)に伝える。
JMDPには患者擁護係さえない。NMDPは患者擁護部だけでは満足せずに、それをチェックする役割のPSCを数年前に設立したのだ。これは骨髄バンクに巨額の補助金を出している米海軍省が求めた。「補助金が無駄なく効率良く、患者のために使われているかを監視するため」(ルーフさん)だ。もっとも、NMDPが患者サービスで大問題を抱えていたためでも、未収金問題などが発生していたわけでもない。「患者サービスをさらに良くするための策だった」(同)。
NMDPの患者擁護部は患者のために働くことを使命としており、NMDP内で独立性をもって機能を果たしてきた。PSCが新設されたのは、ルーフさんによると、「患者ニーズをくみ取るのに苦労しているが、いっそのこと患者関係者本人に参加してもらえば良い」という発想だった。「餅は餅屋」というわけだ。PSCメンバーはすべて患者家族や元患者など。それだけではない。多くの人が2〜5人の“現役の”患者さんを世話している。すなわち、患者さんのニーズを常に見失わないような仕組みになっているのだ。
また「ボランティア諮問グループ」というのもある。NMDPの委員会のいわば「影の内閣」で、全委員会に対し監視と提言を行っている。
ルーフさんはNMDPの「少数人種関連事項委員会」の委員でもある。米国では白人より少数人種のドナー発見率が低いため、そこを集中的に増やそうとしている。NMDPにアジア系登録者がすでに約15万人いて、日本から米国に検索したときの適合率が50%を超えているのも、米国でこうした努力が行われているおかげなのだ。
理事会のメンバーを決めるのは、任命委員会だ。任命委員会は理事長や事務局長からは独立している。特定の人物がNMDPで大きな人事権を握ったりはできない仕組みだ。理事の任期は2年。再任はない。理事会はJMDPの理事会より、頻繁に行われているようだ。日本の理事会のようなお飾りではなく、実質的な経営機能・監視機能を果たしていると言えるだろう。また、NMDPでは重要な会議も電話会議を積極的に取り入れて効率的運営を心がけている。
理事など主要メンバーは特定の政治派閥や企業の利害を持ち込むことはできない。就任前にすべてこうした利害は申し出ておくことが義務づけられる。大きな利害関係があるときはポジションを得ることができない。また就任できたとしても、利害が絡みそうな議題については議決に参加することができない。
一口で言えば、NMDPは民主主義の基本をちゃんと盛り込んでいる。NMDPが自己完結的に目的のために邁進できる点は、JMDPに厚生省と日赤という足枷が掛けられているのと大違いだ。株式持ち合い制度に似たJMDPにある「三角関係」。一方、NMDPでは、決定と監視をする理事会、執行をする事務局、参加と監視をする患者という「三権分立」が確立している。どちらが優れているかは実績をみれば明らかだ。
NMDPが実施していることでJMDPが採用できないもの、あるいは実施して副作用があるものはほとんどない。次のような策を取り入れたらどうか。
【提言】
・理事会メンバーに患者関係者代表を入れる。任期は2年限定で再任なしとする
・理事や事務局長と独立し、主要メンバーの人事を決める任命委員会をつくる
・患者擁護部をつくる。患者サービス委員会をつくる
・ボランティア諮問グループをつくる
・JMDPはジョン・ルーフさんを特別顧問にし、JMDPの組織と業務を評価してもらう
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財団のBMDWは偽物だったという私たちの声に、財団、日赤、厚生省は「厳密なことを言えばそうかも知れないが、おおよそはできている」と言う。そんな馬鹿な言い逃れがあるだろうか。日本骨髄バンクには、原理原則もなければ、患者の命を考える意識もなければ、プロフェッショナリズム(専門性)もない。ここに、利用者から生の声が届いたので、掲載する。この声に対する財団の反応を伺いたい。そして、正常化はもう終わったのだろうか。いい加減なことはもうこれ以上、許されない。
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「患者本位の骨髄バンクに」 神奈川県 匿名(会社員 32才)
私は、急性骨髄性白血病で再発中の2歳の子供の父親です。現在、この子の治療法をどう選択していくべきか模索している最中で、海外からの臍帯血移植も視野に入れて検討しています。
先日、主治医を通して、BMDWに加盟している十数カ所の臍帯血バンクに移植可能な臍帯血が存在するかを検索して頂きました。日本骨髄バンクのBMDW加盟に伴い、4月13日から骨髄移植推進財団が始めた「HLA照合サービス」を利用したのです。
結果は「適合する臍帯血なし」。
その時までに、9つある国内の臍帯血バンクの内、既に4つの臍帯血バンクの検索を終えており、移植可能な臍帯血は見つかっていませんでした。残りの臍帯血バンクは、保存を始めて間もなかったり、提供を開始していなかったりで、国内で見つけるのは難しいであろうと考えていた矢先の回答であったため、正直、臍帯血移植の可能性はなくなったと思いました。
検索結果を聞いてしばらくすると、私には一つの疑問がわきました。検索結果はBMDWの検索基準(骨髄:1座不一致まで、臍帯血:2座不一致まで)に準拠したものだろうかと。海外では、非血縁者間の臍帯血移植は2座不一致まで行われており、国内でも、1座不一致までは実施されています。そして、国内の厳しい移植適応基準を、移植先進国並に緩和すべきだとの議論もあります。
検索結果を聞いた翌日、思い切って財団に電話して聞いてみました。回答は、「完全一致のみの検索」、「ミスマッチの検索は希望があれば行なう」とのことでした。
国内の臍帯血バンクでさえ「1座不一致」を認めています。
BMDWでは「2座不一致」の臍帯血まで検索できるシステムになっています。また、多くの方たちが、BMDW加盟により、BMDWの基準に準拠した検索が可能になると期待を表明してもいました。
それなのに、何の説明もないまま「完全一致の検索結果」のみを伝えるとはどういうことでしょう。財団のホームページをはじめ、財団が開示した情報の中には、この事実に関する記述は何もありませんでした。漏れ聞くところによると、財団内部でもさしたる議論はなされていなかったようです。患者にとって、自分に移植の道が残されているかどうかは、最大の関心事であり、文字通り命を賭けた闘いの最終兵器とも言えるものです。そこに、誤った(不十分で誤解を招く)情報を与えることは、患者の生きる権利を著しく侵害することになります。そして、この状態が今なお続いているのならば、それを侵害し続けていると言っていいでしょう。
実際、後日改めて行った検索では「1座不一致」の臍帯血が1件見つかりました。正しい情報が得られなければ、患者はそういった選択肢があることさえ知らずに、限られた選択肢の中で自分の将来を決めて行かねばならないのです。
骨髄バンクは、日々不安を抱えながら闘病している患者のことを最優先で考える組織でなければならないと思います。患者が必要としている情報は、患者が努力などしなくても簡単に手に入れられるようなシステムを作っていかなければならないと思います。そして、財団は現在の日本骨髄バンクの中心的役割を果たしている組織なのです。財団は、直ちに「HLA照合サービスの現状」を広く知らしめて下さい。
財団は、直ちにBMDWの検索基準に準拠した検索に切り替えて下さい。
財団は、患者、医師、そして国民に、素早く、正しく、全ての情報を開示して下さい。
財団は、本当の意味で「患者の利益を最優先する」というフィロソフィーを掲げて下さい。
一患者家族としての、切実な願いです。