KENの超・闘病法からの N e w s 〜過 去 記 事

- [3] (98.4.6〜4.30)-
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98.4.30 ◇◇臍帯血バンクの瀬戸際(ロビイング・キット)◇◇

 みなさん。現在、臍帯血移植検討会で公的臍帯血バンクのあり方が討議されています。私たちは患者やドナーにとって使いやすい、独立性が高い臍帯血バンクを望んでいます。それが骨髄バンクが発展する近道でもあります。こうした考えを多くの委員、国民、マスコミが支持しているのにもかかわらず、厚生省は、現在の骨髄バンク(骨髄移植推進財団)の中に、臍帯血バンクを入れて、統合拡大する意向です。現在の骨髄バンクは、不良債権(未収金)、運営能力、患者サービスレベルなどで、大きな問題をもっています。臍帯血バンクを骨髄バンクといっしょに運営すると、臍帯血バンクの可能性を十分に発揮できません。また、骨髄バンクが大きな改革をする動機づけもなくなってしまいます。厚生省は患者やドナーにとってのメリットは後回しにし、自分の監督機関を拡大し、現在の骨髄バンクが抱えている問題を隠ぺいすることばかり考えているかのようです。あと一カ月で臍帯血バンクの形が決まってしまいます。最初にしっかりした姿の臍帯血バンクをつくっておかないと、後々に禍根を残すことになります。是非いま、あなたの声を厚生省に届けて下さい。
 
 あなたの声を届けるのは簡単です。次のようなファクスを、臍帯血バンク構想を担当している厚生省の臓器移植対策室(Fax03−3593−6223)まで送って下さい。いまが正念場です。あなたの小さな行動が臍帯血バンクと骨髄バンクをより良いものにするのです。是非、一通のファクスを送って下さるようにお願いします。

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厚生省             厚生大臣   小泉 純一郎さま
                保健医療局長    小林 さま
                エイズ疾病対策課長 中谷 さま
                臓器移植対策室長  朝浦 さま
               Fax 03−3593−6223


「要望書」              98年○月○日

 私は公的臍帯血バンクの設立を願うものです。次のような点が実行されることを望みます。

1 できるだけ早く公的臍帯血バンクを設立すること。
2 臍帯血バンクは現在の骨髄移植推進財団とは独立した組織にすること。
3 厚生省と日本赤十字社の関与を必要最低限とし、機動的な組織にすること。
4 患者やドナーの利害が強く反映される組織とすること。
5 臍帯血バンクの利用費は医療保険でまかない、患者負担金をなくすこと。

    名前 (署名)

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98.4.26 ◇◇臍帯血移植検討会。厚生省発言を検討する◇◇

 骨髄バンクを利用するときの過大な患者負担金を無くすにはどうすればいいのか、臍帯血バンク利用料も無くすにはどうすればいいのか。当然、医療保険が全額カバーすべきだとKENは考える。骨髄バンク利用料を保険カバーにすべき論理は以前、このコーナーで書いたとおりである。問題はそれが方法論的にできないという説があること。そして、それが本当かどうかが、明確でないことだ。
 KENは保険で全額カバーすべきであるし、それは輸血用の血液のように、「丸め」(包括方式=事業にかかる総費用を、保険点数に乗せる)で可能ではないかという仮説をもっている。そして、それを指摘する人は厚生省内でも少なくない。だが、それを骨髄バンクを監督し、臍帯血バンクにも意欲を示している臓器移植対策室は困難と説明する。次の引用は、第2回臍帯血移植検討会の公開議事録からのものだ(公開議事録なので引用は許されると判断した)。同室の論理が典型的にあらわれている。だが、これは本当に妥当で中立的な説明なのだろうか。是非、みなさんに検討、吟味していただきたい。

−−−−−−(厚生省臓器移植対策室重藤さんの事務局としての発言)−−
次のページです。臍帯血移植を骨髄移植と同様と位置づけたときにどういう利点
と欠点があるのか。それから血液製剤と同等に位置づけたときに、どういう利点と
問題点があるのかというものを簡単にお示しをした表でございます。
 (1)骨髄移植と同様の位置づけをした場合です。利点は採取・保存・使用につ
きましては、医療行為の一環として行うことができ、現在行われている各地での取
り組みを中断させる必要はないということです。供給体制の整備は各地での取り組
みを活用しさらに発展させることができる。法令等による規制では医療行為として
行うことができ、関係者合意の実施のための指針を作成し、それに従い実施するこ
とができるということです。
 問題点につきましては、採取・保存・使用につきましては安全性等の確保のため
の指針を遵守することが必要であり、そのための組織を整備しなければならない。
供給体制の整備ですが、各地域で行われている採取保存体制の評価見直しと、そこ
で既に保存されている臍帯血の品質審査が必要になる。情報ネットワークの整備が
不可欠である。法令等による規制は、法体系における指針の位置づけについて検討
が必要になるということでございます。
 (2)血液製剤と同等と位置づけにした場合です。利点として薬事法に基づく各
規制をかけることで、医薬品としての安全性を確保できる。開発段階、GLP:医
薬品の安全性に関する非臨床試験に関する基準、GCP:医薬品の臨床試験実施に
関する基準。製造段階、製造業の許可、GMP:医薬品の製造管理・品質管理に関
する基準。国家検定。流通段階につきましては、卸売り販売の許可、取扱い・広告
に関する規制。使用段階は副作用情報の収集評価等、GPMSP:医薬品の市販後
調査に関する研究、再審査、再評価、副作用の報告義務。というようにかく段階で
の規制がかけることができるという利点がございます。
 問題点としては採取・保存・使用につきましては、現時点では薬事法上の規制を
かけることが困難かつ現実的ではない。臍帯血を血液製剤と同様に扱うことにより、
臍帯血移植の推進にとって障害となる可能性がある。例えば必要とされる手続きに
つきましては承認申請に向けた試験研究段階でGCP(医薬品の臨床試験の実施に
関する基準)に則った臨床試験の実施が必要となる。各採取・保存機関が製造承認、
製造業の許可を取得することが必要となる。製造方法・規格・試験方法等を定め、
各種試験によりその妥当性を証明することが必要となる。GCP(医薬品の臨床試
験の実施に関する基準)に則った臨床試験により人に対する有効性を証明すること
が必要となる。
 供給体制の整備についてでございます。製造承認申請以前に試験的に採取した臍
帯血については、製造承認の対象外となることからこれを移植に用いることはでき
なくなります。今の現在の各地域での取り組みが生かせないということになります。
製造業者間の情報ネットワークの整備が不可欠となるということです。
 次の紙の薬事法体系参考資料でございます。先程申しました各団体の規制という
のが、それぞれ開発段階、製造段階、流通段階、使用段階についてどういう規制が
かかるのかという模式図でございます。これは参考までにご覧いただければと思い
ます。
以上簡単にそれぞれ骨髄液、臍帯血、血液製剤の違いから、骨髄移植と同じ
ような枠組みで捕らえるとどういう利点と欠点があるのか、血液製剤と捕らえる時
にどういう利点と欠点があるのかということでまとめ説明させていただきました。−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


98.4.26 ◇◇日本赤十字社、野口課長。業務改善を約束◇◇

BMDWへのデータ送付が締め切りに間に合わなかったことについて、日赤事業局の野口課長は 4月21日、次のように弁明した(20日午後の回答のはずが、21日昼ごろに延びた)。今後の改善について、力強い約束があった。
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 KEN「どんなことが分かりましたか」
 野口さん「KENさんが草刈に電話されたのが、4月7日、火曜日。それで急きょ翌日に厚生省、財団、日赤の3者が集まって、どういう方向に進めるかを緊急協議した。そして日赤は10日にデータを財団に渡した。財団は13日にBMDWへのデータ送付を行ったそうだ。だが、提出期限は3月末だったとのことだ。BMDWについては、海外からは日本が検索されなくても、日本からの世界の検索は可能だ」
 KEN「私が草刈さんに電話で催促してからでなく、もっと前から説明して下さい」
 野口さん「そもそもBMDWについては、12月に進めるにあたっての打ち合わせが行われ、1月下旬には財団の理事会で書面審議ということで意志決定が行われた。そして3月30日の理事会でBMDWに加入するという事業計画が承認された。BMDWへの準備は進めてきたが、そこに新たにHLA照合サービス(国内向け予備検索)の話が加わってきて、平行して3者で検討してきたが、結果的にデータ送付が4月13日になったということだ。この間、時間がかかったことについて、日赤に一番大きな責任があるということはない。それについては調べていただければ分かるだろう。たとえば、財団から日赤へのデータ提出の要望がいつあったのかとか・・・。そうした経緯を明確にして、日赤のせいであるというのなら、分かるが・・・。財団がいつ日赤に正式にデータ送付要請をしたのかは、財団に問い合わせて下さい。厚生書から日赤への、BMDW参加にあたっての文書はようやく昨日(4月20日)に着いた。日付は、理事会が行われた3月30日にさかのぼっている。厚生省としては行政が年度内に行われなければならないということで、日付がさかのぼっているということもある。とにかく担当者レベルではずっと進めてきた。どこに責任があるかを良く見ていただきたい。いずれにしてもこれからは、今回のことも踏まえて、3者でしっかりやっていきたい」
 KEN「これからのことということであれば、やっていただきたいことはいっぱいある」
 野口さん「BMDWと予備検索で、もう日赤としては問題はなくなったのではないか」
 KEN「そんなことはありません。本検索になってからもずいぶんロスがあります。改善していただきたいところは多いです」
 野口さん「それほど問題はないと思うが」
 KEN「端的な例では、財団と日赤の間で、患者からの検索依頼を書留郵便でやり取りしているようなことです」
 野口さん「毎月一回、日赤、厚生省、財団の3者協議会の場をもっている。そうした問題についても、解決していきたいので、今後ともよろしくご指導下さるようお願いします」
 KEN「よろしくお願いします。期待しています」


98.4.23 ◇◇ロビイングキット再び(草稿)◇◇

              FAX03−3355−5090
骨髄移植推進財団             野田事務局長
                     小寺企画管理委員長
                     ○○医療委員長
                     ○○コーディネート委員長
厚生省     臓器移植対策室      朝浦室長

「要望書」
 BMDW検索サービスにおいて、財団が一方的に検索内容を限定していたことに、抗議すると同時に、即刻の正常化を求めます。
 また、財団の移植適応クライテリアを早急にゆるめることを要望します。

名前 (署名)


98.4.23 ◇◇財団のBMDW検索は偽物◇◇

☆「BMDWスクリーニング事件」
【ニュース】 日本骨髄バンク(骨髄移植推進財団)が行っていたBMDW検索サービスは本物ではなかった。BMDWの検索では骨髄ドナー候補については1ローカスミスマッチ(6分の5適合)、臍帯血については2ローカスミスマチまで出せるが、財団は問い合わせに対し完全一致(6分の6適合)の分だけを回答していたのだ。財団は勝手にBMDW検索の内容を歪め、編集していたわけだ。主治医や患者を欺き、混乱させる行為であり、すぐに正常化が望まれる。 
 財団は主治医や患者の意向を聞かずに、完全一致のデータだけ送り返してきた。患者や医師はミスマッチでも前向きに検討する気だったのかも知れない。「BMDWでも見つからなかった」と諦める可能性もある。財団が何ら権限もないスクリーニングをすることで、患者のチャンスを奪ったかも知れないのだ。この問題は未収金どころではない。カネの問題ではなく、骨髄バンクの根幹に関わる問題だ。患者のチャンスや命にかかわって来る問題だ。これでは羊頭狗肉だ。検索情報の検閲であり改ざんだ。操作だ。編集だ。BMDWの冒とくだ。財団のHLAデータの重要性への認識度の低さが明らかになった。
【要望と提言】
1、正常化。4月23日から、あらたなBMDW検索については完全な検索をしてデータをすべて主治医に送付する。
2、リカバリー。4月13日から22日までにすでに行ったBMDW検索については、再度、検索をやりなおし、完全な情報を説明とお詫びとともに送付する。
3、抜本問題の解決。すぐに日本の移植適応条件(疾病、病期=再発など、年齢など)を国際標準に合わせ、幅を広げる。ゆるやかなガイドラインとし、あとは主治医や患者の判断にゆだねる。(日米不公平問題では、抜本解決として国内予備検索の実施などをお願いした。実現はしたが、時間はかかり過ぎた。しかもBMDWはこのように不完全だった。今回は、この抜本策を2週間以内に実施することを求める。それができないのなら、日米不公平問題の検証にも着手する、また、このBMDW検索スクリーニング事件について、新たな材料も加えていろいろ質問させていただくことになる)
4、第3者のオンブスマンを派遣して、検索が正常に行われているかチェックする。過去のJMDP内の検索、国際協力の検索についても正常に行われていたかどうか全数検査する。
【経緯】
 4月22日の夜、KENは財団を訪問。担当者にBMDWでの検索の実際をデモ画面をコピーした紙で説明してもらった。大きな問題点が分かったので、野田事務局長にも急きょ同席をお願いした。問題点を指摘し対処をお願いした。野田事務局長は23日の朝一番に小寺企画管理委員長と協議して対策を打つことを約束した。KENは22日の深夜、小寺先生の自宅に電話、説明した。23日にBMDWスクリーニング問題についてはさっそく対応し、日本の移植適用クライテリアについても早急に緩和の結論を出すようにする、との約束を得た。
【ポイント】
・担当者はBMDW検索を熟知しておらず、危うさがあった。BMDWの検索方法について、しっかりとマニュアルを読み、練習をする必要がある。
・BMDW検索を完全一致しか返答しないのは、組織として決定したのではない。「組織としてはまだ何も決めていない」(野田さん)。これまで完全一致しか返答してこなかったのは、担当者の一存だった。だが、野田事務局長にも、完全一致だけで当然という考えがあった。
・野田さんは現場が実際にどうやっているのか把握していなかった。JMDPで検索して見つからなかった人だけが、BMDW検索できると誤解していた節もある。実際は、JMDPとBMDWは最初から同時に検索依頼できる。
・行われてきたBMDWへのスクリーニング行為を指摘しても、その問題をすぐには理解してもらえなかった。「財団の頭と感覚には、移植と言えば、完全一致ということだ、というのがあった」(野田さん)。だが、JMDPの移植適用条件は、JMDPが認定した移植病院で行われるJMDPを介したドナーからの移植についてだけ、当てはまるのだ。BMDWの検索は、それをJMDPが検索代行サービスをやっているだけで、自分の価値観でその情報を操作したり、編集することはできない。BMDWで出る情報すべてを主治医・患者に流すのは当然のことなのだ。
・根本的な問題は、JMDPの移植適用クライテリアが世界標準や趨勢からずれていること。だが、「JMDPの移植適応条件を直さないとBMDWの検索結果を丸ごと出せない」(小寺先生や野田さんは当初そう考えていた)というのも、まったく本質を見誤っている。BMDWの検索内容はJMDPの監督の範囲を超えたものなのだ。BMDWのデータベースの性質を改ざんしたのは、前代未聞だろう。冒とく行為だろう。BMDWに報告して、BMDWから正式な警告を出してもらった方がいいのだろうか。いずれにしても、日本の移植適応条件が狭いことが根本的な問題だ。そもそも、日本の移植界には第一戦略とサルベージ戦略という区分けも明確でない。「遅い、小さい、高い」骨髄バンクで患者の移植のチャンスをせばめ、予後が相対的に低い患者には移植を受けることを許さず、それで「移植成績が国際的に遜色がない」と言っているのだ。これは数字の脚色であって、「どれだけ助けられる患者を助けているのか」という観点からは点数が低い。数字を作るために患者さんを犠牲にしている面もあるのだ。
・とくに臍帯血についてはまだ日本には移植適応条件が確立していない。それを財団が勝手に完全一致しか答えなかったのは、犯罪的行為だ。臍帯血移植は4月から保険適用になった(臍帯血液などは除く)。認定病院制度もない。主治医と患者の意向で、移植するかどうか決められる。それを財団は結果としてコントロールしていたのだ。これでは骨髄移植界から臍帯血移植界への妨害行為と言われかねない。
☆財団の事務管理能力のなさ、検索業務への意識の低さなどがまた露呈した。財団が問題を起こしているのは、たまたまではない。構造的に問題を発生させてしまう仕組みになっており、問題を解決できない体質になっているのだ。そこに手をつけないのはだれの責任だろうか。
*担当者、野田事務局長、小寺先生の発言については追って掲載する。
 


98.4.21 ◇◇保険への道をふさぐのは誰か?「保険適用辞退問題」◇◇

 骨髄バンクにかかわる費用の保険適用の問題について、4月16日の朝、厚生省臓器移植対策室の重藤補佐に聞いた。いろいろと重要な問題点が出てきた。ここにその内容を紹介する。
【KENの重要点整理】
●保険適用へのプロセスが分かった。やり方やタイミングなどについて、業界の掟がいろいろある。業界の掟を知らないとうまく行かない。業界の掟は聞かなければ教えてくれない。業界の掟を知ることがはじまりだ。業界の掟に沿わなければできない。
 そんなことはない。業界の掟は、それはそれで知る必要があるが、われわれインターネットワーカーや患者の声は、そんなことに囚われることはない。業界の掟がすべてではない。業界の掟はそもそも人間の便宜のために形成されたものだ。業界の掟が人間のニーズに合わせて変わっていくのだ。僕たちが歴史をつくるのだ。ニヒリズムに陥ることも諦めることもなく、最短距離での保険適用を求めて運動を継続しよう。
●重藤補佐は「臍帯血液への保険適用はできていたが、私がやめるように申し出た」という。保険適用の辞退! こんな大事なことを一官僚の一存、あるいは少数の人間の意向で決めていいのだろうか。われわれにとっては大きなチャンスを逃したことになる。「98年4月からの臍帯血液への保険適用→骨髄液への保険適用同時開始」という好機をだ。われわれからみると、重藤補佐の論理は納得できない。つまり言ってみれば「臍帯血バンクを骨髄バンクの中に作って全体を造血幹細胞バンクとして拡大する。こうして補助金や天下りを増やし、臓器移植対策室の版図を拡大する」ということではないのか。骨髄バンクへのカネが補助金から保険になることは、同室にとっては財団へのコントロールを失うことを意味するというわけだ。そんな官僚の発想のために、臍帯血液への保険適用のチャンスを犠牲にしたと言われても仕方ない。こうした経緯を、臍帯血バンクの運動をしているボランティアたちや、臍帯血移植検討会のメンバーもほとんど知らないだろう。臍帯血バンクについては、国民の運動があって、国民の代弁者である国会議員が国会質問して、厚生大臣の答弁があって推進されているものである。行政官はそれを進めれば良いだけである。ところが、「省益あって国益なし」としばしば言われるが、これでは「臓器移植対策室の利益あって国益(国民益)なし」だ。官僚の方にお願いしておくが、井戸の中から見える光景だけで全体の戦略を決めないでほしい。縄張りや既得権益の保持のために、ものごとを歪めないでほしい。特定の勢力だけの意見に左右されないでほしい。大臣の答弁、保険局長の意向、保険担当者レベルの準備と、臍帯血への保険適用の機は熟していたのではないだろうか。臓器移植対策室の担当者の視野の広さは十分なのか。
 「日本骨髄バンクの権力構造」がこうしてまたひとつ明らかになった。
●次の臍帯血移植検討会(4月27日)で、「臍帯血液への保険適用を辞退したことの是非」を主要議題とすべきである。臍帯血に保険点数がつくか、骨髄液に保険点数がつくか、は臍帯血バンクの形を決めるときのもっとも重要な論点のひとつである。この点に戦略とシナリオがなく、ごく一部の人間が規定してしまっていいのだろうか。それとも、臍帯血移植検討会は官僚や一部の医師のアリバイ作りのための儀式でしかないのだろうか。もしそうだとしたら、検討会のメンバーたちにはご苦労さんなことだ。
●いずれにしても、なかなか保険の方法論は難解だ。正直言ってまだ全貌を理解できない。だが、恐ろしいのは、全貌を理解している人がとても少ないようであることだ。それが、一部の人にとっては好ましいということになりかねない。この際、一般市民でも分かるように勉強していって、その成果とプロセスを公開していきたいと思う。

【重藤さんの発言】(4月16日)
 「患者負担金を解消するように要望されていることは結構なことだ。だが、薬価と保険点数の改定はやったばかり。次は2年後になる。今からずっと要望されているのはそれで構わないが、時期的にいかがなものか。2年間ずっとやり続けられるのか。半年ぐらい前というのがタイミング的には言えるのではないか」
 「保険適用への要望というのは保健医療局の各課が団体や学会などから出てきた要望を集めて出すことになっている。98年春の改定のためのこの作業は、97年の秋にあった。財団からもどこからも要望がなかったから取り上げなかった。要望があったら上げていただろう。上げていただくタイミングはまあ10月から12月のあたりだ(KEN注=だれがそんなこと決めたのか。そのルールは明示的に一般に知らされているのか)」
 「次は2000年の春に改定があるのでその半年前ぐらいということになる。診療報酬の改定は2年に一度。その間の年にあることもあるが、それはよほど大きなテーマが出てきたときだけ。99年春にあるかどうかは分からないが、骨髄バンクの患者負担金のようなものが対象になるわけはない。臍帯血液への保険適用も2000年春になる」
 「(骨髄バンクや臍帯血バンクの患者負担金について)保険適用の要望が上がることは、患者負担が楽になることで、推進担当部門としては望ましいことであり、やっていくべきだと考えている。そして保険適用については元課(?)が上げることになる。現在の法体系で骨髄バンクの負担金をみることがなじむのかどうかは検討の必要がある」
 「元課からの話を保険局が受けたとしても、診療報酬の改定は中医協で決まる。付く付かないはここ次第。総枠が厳しくなっているので簡単ではない。今回はうちから10本出して、2本しか通らなかった。さぼっているのではなく、通らなかったときのリスクも考えなければならない。通っても大幅に額を削られるかも知れない。そうすると要望しなかった方が良かったということになりかねない」
(KEN注=元課の情報収集力、情勢判断力は十分なのか。保険局、大臣、政治家、利害団体などの動きや意向がすべて計算に入っているのだろうか)
 「骨髄バンクの患者負担金の保険適用については、保険になじまないところがあって、やり方が難しい。医療行為ひとつひとつの積算の考えからいうと、算定しても大した額にならない。これで一般会計から出ている補助金を削ると言われれば、かえって損になることもありえる。今の考え方は、技術の積み上げ方式でやっているが、コーディネート料への保険を付けるといいうのもひとつの考え方だ。骨髄バンクコストの全部を算定して、それに対して保険を求める、いわゆる“まるめ”の考え方で保険適用をとる考えもありえる。だがこうした包括方式が、果たして個別に取るより多くなるのかどうか。“まるめ”で狙って、思ったほど取れなくて、補助金は廃止しなければならないとなったとき、どうなるのか」
 「骨髄液を血液とみて保険点数をつける考えもあるが、そんなことをしたらまずいことになる。PL(製造物責任)がかかって、治験をしなければならなくなり、認可や許可が必要になる。移植が5年ストップすることになってしまう」
(KEN注=これは本当か。輸血のときの血液のような考えでできるのでは? 血液は血液事業の管理コストや廃棄になる血液のコストも総合計算して、点数がついているのではないだろうか)
「臍帯血移植術には保険点数がこの4月から付いたが、臍帯血液への保険適用はわざとつけなかった。臍帯血液につけてくれることになっていたが、中途半端な点数がいったんついてしまうと、あとで2倍に増やすのは大変。せいぜい物価上昇率しか上がらないということになる。臍帯血バンクはデッドストックが発生するので単価が高くなるだろう。だから、私が頼んで保険適用をストップしてもらった」
 「臓器移植対策室としてはさぼっていたのではない。骨髄バンクの患者負担金へのカネが総額として減らないように、安全パイを引いてきたのだ(KEN注=結果として正しかったのか、患者の犠牲を計算に入れて、検証されるべきだ)。補助金で負担されていない第3次検査の費用の保険適用を個別に求めていくといった方が賢明かも知れない」
(4月20日の追加ヒアリング)
 「(臍帯血への保険点数を見送ってもらったのは)、臍帯血移植への保険をどうしようかと、保険局に話をもっていったときのことだ。保険適用というのは1から10まで、その治療の一連が保険になっていなければならない。そうなっていないのをいわゆる“2階建て”と呼ぶのだが、こうした例外は高度先進医療でしかみられない。臍帯血移植についても、モノに保険を付けざるをえないわけで、それを技術料としてやるか材料としてやるかは別として、普通、臍帯血にも保険が付くことになる。うちとしては、2万円、3万円といった保険がいったんつくと、先になって60万円にしようと思っても無理だと考えた。検討会をやっているところなので、高額をつけるのは無理だろうと考えた。そこで臍帯血に少ない点数がついてしまったら大変なので、臍帯血移植術の点数に臍帯血液が含まれているということにして、うちの方から頼んでそれを保険局に通知文書で出してもらい明確にした。また、“臍帯血液の値段については議論して将来考える”という念書も保険局から取った。これは私が指摘してこうなったわけだが、もちろん一介の技官が決められることではなく、保健医療局として、それがより良い格好だということで、そうなったのだ」
(KEN注=ではなぜ骨髄液に今まで保険点数がついていないかという点についてはまだよく理解できない。それにしてもこの論理はお役所業界の外には通用しないのではあるまいか。まったく不透明だ)


98.4.21 ◇◇証拠を捨ててしまった厚生省◇◇

 厚生省臓器移植対策室の「資料改ざん疑惑??」について続報。同室の鳴瀬さんから、同資料の提出要求者であった有田さんのところに20日、電話があった。「届いた元のファクスは捨ててしまった」とのこと。重藤さんはKENに「元の資料は取っておいて今度見せる」と言っていた。また有田さんにも「次に上京したときにどんな状態でファクスが届いたか見せる」としていた。それが数日してから、「その紙は捨ててしまっていた」と言うのである。見せると言ったときには、もう捨ててしまっていたのか。それならなぜ見せると言ったのか。それとも、その後に捨てたのか。いずれにしても、厚生省はその嫌疑を晴らす機会を永遠に失ったのである。KEN個人としては、もし「ちょっとタイトルがえげつなかったんで、うっかり切ってしまいました」ということであれば、笑ってすませようと思っていたが、釈然としないものが残った。朝浦室長は「悪気はなかったと思う」と言っている。有田さんは次回の検討会で資料を再提出することを求めている。KENは先のニュースで書いたような「お詫び」を添えてほしいと思う。


98.4.19 ◇◇臍帯血移植検討会(5)◇◇

 4月13日、臍帯血移植検討会が行われた。遅くなったが、ポイントを整理しておく。次回は27日の2時から法曹会館で。
☆KENの著作が有田委員から正式参考資料として提出された。ありがとうございました。だが、そこで先にこのニュースのコーナーで紹介した「資料改ざん疑惑」が発生してしまった。これについては続報する。
☆陽田委員が発言の中で、KENの「超・闘病法」から、長い引用をして下さった。日米骨髄バンクの精神を比較した本質論の部分である。これでKENの見解(=患者サイドの声)が議事録に載り、公文書に正式に残ることになる。ありがとうございました。
☆現在の骨髄バンク=骨髄移植推進財団(以下、財団)の問題点について長時間議論が行われた。なぜ、臍帯血バンクの検討に骨髄バンクの現状がこれだけ時間を割かれるのか。臍帯血バンクの形態を現在の財団のような形にしてよいかとの議論の一環である。臍帯血バンクを今の骨髄バンクが引き受け、造血幹細胞バンクとして統合される案があるからだ。「骨髄バンクの失敗から学ぶ」「臍帯血バンクを今の骨髄バンクと引っ付けてしまえば、発展が阻害されるのではないか」「臍帯血バンクと引っ付ける前に、骨髄バンクを再建することができるだろうか」「骨髄バンクは7年前の状況と政治的理由から今の形になった。臍帯血バンクは現在の状況でベストな形態にすれば良いのであって、骨髄バンクに引きずられることはないのでないか」「臍帯血バンクを現状でベストな形で立ち上げ、それに刺激されて骨髄バンクが改善されていくようにすべきではないか」。――すべてが明示的に議論されているわけではないが、こうした論点が含まれているのだ。
☆座長の斉藤委員の強引な司会が目立つ。日本の移植成績の限界を指摘する発言のあとに、「日本の移植成績は良い」とまとめたり、加藤案と浅野案を「ほぼ同様」とまとめたり。また「米国の骨髄バンクは、日本の骨髄バンクの6倍もコストがかかっている」という発言は間違いである。この金額は骨髄バンクが請求している額。日本では保険適用でないので、患者が払う。米国では保険に加入している人に対し、かなりの場合、保険が骨髄バンク利用費用を支払うので、これにかかるコストはほぼゼロと考えていい。まったく不適切な発言で、次回に発言の訂正をすべきだろうし、議事録には注記を入れるべきだ。斉藤座長の発言には、不勉強なところ、医師の発言とは思えない非科学的なところが多い。難役でありこれだけ多様な意見を収拾するのが、難しいことは承知しているが、今後、注意していただきたいし、その力量に期待している。
☆財団の田中常務理事が参考人として出席した。未収金問題について説明したが、またもや言い訳に終始し、その内容たるや噴飯ものだった。多くのメンバーが骨髄バンクに不信感を抱いたであろうし、これが議事録に公式文書に残るとはなさけない。骨髄バンクのサポーターとして、骨髄バンクの信頼を落とすこの行為に抗議したい。
☆加藤委員。注目すべき発言があった。「骨髄バンクの設立時の経緯を少し申し上げると、本来は(財団と日赤というのでなく)一元的な体制が好ましかったが、いろいろな経緯の中で、普及啓発を日赤ができないということで現在のような形になった。米国バンクと比べると、日本のバンクは脆弱であり、未収金問題などの事務的不完全さも、そこから出てきていると言える。コーディネーターがいないこともあり、現在分かってきた問題は生まれるべくして生まれた問題。反省すべきところは反省して、臍帯血バンクをつくっていくべきで、ただ臍帯血バンクができさえすれば良いというのではない」「日本の非血縁骨髄移植の成績については、日本人のHLAの均一性が移植成績に有利に働いており、必ずしも治療技術の高さを示すものではない。もっと良い成績を上げられる可能性がある。移植を受けられなかった人がいるという問題もあり、もっとこうした人にも提供ができるようにしていくことも必要だ」。加藤委員が抱く臍帯血バンクのイメージはもっとも臓器移植対策室のハラに近いものだ。だが、加藤委員の発言にはこのところ、「骨髄バンクの反省は必要」という意識がみられるようになった。この点は歓迎であり評価できる。この発言を受けて、骨髄バンクの仕事でも改革派の立場を鮮明にされることと期待している。。
☆臓器移植対策室主導。この検討会には、骨髄バンクと臓器移植を管轄する臓器移植対策室と、血液事業を管轄する○○?課が関与してきた。だが、このところ見えるのは臓器移植対策室の存在だけである。実質的に臓器移植対策室の管轄という位置づけに厚生省内部でなった模様だ。これは、同時に、両バンクの合併と一括管理を厚生省が考えているという推測にも結びつく。
☆小林局長発言。局長が出席し最後に挨拶をした。
☆事務局=重藤補佐の強引な誘導が目立つ。提出資料の中での、各委員の案のまとめ方にもバイアスがかかっていると、委員から抗議があった。
☆臍帯血液および臍帯血バンクの利用料への保険適用について、ちゃんとした議論を行うべきであろう。決めるべきことは「臍帯血バンク費用の全額を医療保険でまかなうことを、臍帯血移植検討委員会として要望、推薦する」ということなのだ。
☆議事録全文は追って公開され、インターネット上でも見れるようになるはずだ。



98.4.19 ◇◇KENが財団理事に就任◇◇

 ある財団の幹部から「KENさん、財団の理事になったら」と言われた。冗談だろうが、まんざら本音かも知れない。私は今は自称、「影の内閣」の企画管理委員長であり、財団企画管理委員長の小寺委員長をゾーンディフェンスしている立場である。だから、企画管理委員会への政策提言も今回やり、同委員会の結果にも関心をもっている次第である。今は野党であるが、いつでも与党になれるように建設的な態度でいることを心がけている。というわけで理事へのお誘いはありがたい。条件が整えば、お受けする用意はある。だが、今の単なる理事では面白くない。滅多に理事会はない。財団の再建には効果が薄い。企画管理委員会メンバーの兼務ではどうか。いや、一歩先に進めよう。常務理事、事務局長、患者擁護部(新設する)の部長――いずれかの常勤職なら、1年間の期間限定でKENはお受けする。1年以内に骨髄バンクを再建・再構築し、世界トップレベルにもっていくことをここに公約する。
(えっ、真剣に読んじゃった?? この項は、冗談でした。ちょっと息抜き)
 米国骨髄バンクでは、患者サイドの立場の人が理事に入っています。今回、骨髄移植経験者のジョン・ルーフさんが理事になりました。また、彼女は他に2つの委員会のメンバーでもあり、一方は委員長です。これは見習うべきでしょうね。われわれとしては、患者擁護部の設立と患者サイドの人間を財団中核に入れることを要望して行きましょう。
(この部分は真剣)


98.4.18 ◇◇幻のBMDW。大失態の経緯◇◇

●KENの考え。
▽日本骨髄バンクの厚生省、財団、日赤という3者が介在しているシステムの弊害が典型的に表れた。こうした弊害を元から絶つには、(1)財団で業務の中核と意志決定が完結する(2)財団の中に患者からのチェックシステムを組み込む――をするしかない。
▽骨髄バンクの問題の事例として、この間の3者のやりとりを詳細に振り返って記述し、記録に残すべきだ。臍帯血バンクの形態論にも影響を及ぼすだろう。
▽責任分析
○日赤の罪。3者合意ができていた昨年末から作業を進めなかった。なかでも3月20日ごろから4月7日ごろまでの怠慢が響いた。草刈技監からの指示もあり、ゴーサインが出ているのに、現場作業が進まなかった。また、厚生省からの文書が出ていないことを言い訳にするのも許せない。文書なしでもどうせ前に訴求してやるのだから、文書が着いているかどうかは問題ではない。そもそも、財団にデータを渡すのに、厚生省からの文書を求めるのがおかしい。ドナー候補のHLAデータは日赤の所有物ではない。ドナーから財団に提供され、それをたまたま日赤に管理を委託しただけである。日赤は財団からの指示によっていつでもデータを渡さなければならない。
○厚生省の罪。現状で3者合意が必要なことは、厚生省がリーダーシップを示さなければできない部分があるが、十分なリーダーシップと采配力がなかった。事務作業も停滞し、日赤への文書の発送が遅れた。
○財団の罪。今回の変更によって利益を受ける者として、その利害を代表してしっかりした行動をとらなかった。なかでも最終的なデータ提出締め切りが近づいてきたときに適切な行動を取らなかった。締め切りが3月末でそれが困難になっていることを明らかにすれば、やれることはあったのだ。たとえばKENが4月1日にもう一本、草刈技監に電話を入れれば間にあったのだ。
●大まかな経緯(1部推定)
・昨年11月の公開フォーラムのあと、BMDW参加について財団、日赤、厚生省の3社合意がなされた。
・3月19日の企画管理委員会で予備検索の実施(日赤から財団へデータを提供してもらうこと)決定。
・その後、3者で予備検索に正式合意
・3月23日,BMDWから「3月31日がデータ提出の締め切り」とのメール。
・3月30日、財団がBMDWに「31日までに提出できない」と返事。
・4月7日、手続きが進んでいないことにKENが気づき、草刈さんに電話。草刈さんが即刻、指示を出す。事態が前進はじめる。
・4月10日、データが財団に渡る。
・4月13日。財団が予備検索とBMDW参加を発表。
・4月14日ごろ。データが財団からBMDWに発送される。
・4月15日ごろ。BMDWに財団からのデータが着く。BMDWから到着した旨のメールが出される。
●各当事者の発言
☆日赤事業局・野口さんの話
KEN「4月6日のデータ提出締め切りに間に合いませんでした。どうしてそんなに時間がかかったのですか」
 野口さん「締め切りに間に合わなかったことは今初めて聞いた。ただ、その件に関しては、日赤はただ財団にデータを渡す立場にあっただけで、データをBMDWに提供する当事者は財団であるので、なぜそのようになったのか、どこに齟齬があったのかは、財団に聞いていただきたい」
 KEN「日赤の作業が遅れたのではないですか。日赤がいつどのように作業を進め、最終的にいつデータを提出したのか、教えて下さい」
 野口さん「こっちに問題があったのかどうか、分からない。いつ渡したのかなど細かな経緯は分からない。BMDWに参加することは、やるということで、このところ準備して進めてきたので、締め切りに間に合わなかったという結果は今はじめて掌握した。とにかく、こっちより財団に聞いて下さい」
 KEN「日赤がどのように対処したか、具体的な作業の経緯を教えて下さい」
 野口さん「調べて確認しないといけない。ただ、HLAデータの提供に関しては、財団から要請が厚生省に流れ、厚生省から日赤に届くということになっており、日赤が事務処理をして、データを送付するということでやってきた。実際にBMDWのデータベースへの反映が6月1日になるということはいま初めて聞いた」
 野口さん「それに実は、厚生省から送ってもらうことになっている文書“BMDWへの加入にあたっての通知”がまだ届いていない。厚生省からの平成3年に出た通知で日赤はデータを預かっている。今回それを外に提供するのであり、それについては12月に決まり財団の理事会でもそうなって、厚生省を通して、日赤に通知が来ることになった。この文書が過日送付になっているが、まだ届いていない。日付は4月1日になり、受け取ってから過去にさかのぼって訴求されることになるのではないか」
 野口さん「結果的に締め切りに間に合わなかったのであれば、どこでズレが出たのかを、内部を含めて調査する」
 KEN「では月曜日に電話します」
 野口さん「それは午前中でしょうか」
 KEN「それでは少し調査のための時間的猶予をということで、午後にいたします」
☆財団・野田さんの話
野田さん「問題はほとんど起こらないでしょう。日本の患者さんがBMDWを見ることはできるのだから。やはりこれは前進と言っていいのではないでしょうか。実際のところ、ここまで来たのがやっとなんです。頭の中には患者救済のためにというのがあって、やりたいことのスケジュールも頭の中にあるが、それが水面下にいろんなことがあって進まない。そもそも日赤がHLAデータを独占することがおかしいんですがね」
☆厚生省臓器移植対策室・重藤さんの話
 KEN「BMDWの締め切りに間に合いませんでした」
 重藤さん「そんなこと何で問題視するのか。これはBMDWに参加したが、ただたまたま更新期のタイミングで、その時期にデータが反映されないというだけじゃないか。締め切りがどうだったとか、監督官庁として、そんな細かなことまで調べてやってられますか。そんなことは財団がきちっとやればいいことでしょう」
 KEN「日赤にこの件についての文書をいつ送付されましたか」
 重藤さん「私はね、技官(医師)であって、事務方じゃないんでそんなこと知りませんよ」
 KEN「お偉い方に、お忙しいところに、些末なことをお尋ねして申し訳ありません」
 重藤さん「まあ、そんなこと言っているわけじゃないんだが、組織が小さければ、こんなことでもすぐできるかも知れないが、何事にもちゃんと手続きっていうもんがある。ちゃんとやってきているし、今回もちゃんとやって4月にできているじゃないか。組織というのは、組織としての意志決定が必要なんで、ひとつの立場や部署で言い出せば、すぐ決まるってなわけとは違うんだ」
 KEN「私は、対応が遅すぎたと思いますし、経緯を詳しく知りたいのです」
 重藤さん「組織決定というのは、そんなもの、こうやってきて、手続きして議論してきてこうなったんで、無能だと言われればそうかも知れないが、うちとしてはきっちりやってきて、こうなってるんだ」
 KEN「では文書についての経緯をご存じの事務方の方に代わって下さい」
(重藤さんが鳴瀬さんに、電話を取り継ごうとしている。重藤さんがいろいろ説明しているのが聞こえる。でも鳴瀬さんは出ない。かなり長いやりとり)
 重藤さん「鳴瀬はいま電話に出れません」
 KEN「日赤はまだ文書が着いていないと言っています」
 重藤さん「それは送ったと言っている。いつかは分からない。ここ2、3日中だったかも知れない」
 KEN「では財団が発表した13日の後ですね」


98.4.17 ◇◇厚生省の資料改ざん疑惑??◇◇

 厚生省がKENの著作を改ざんした疑いが出ている。経緯を明らかにして欲しい。
 4月13日の第5回臍帯血移植検討会でKENの書いた文書「日本骨髄バンクの権力構造」が、公式の参考資料として出た。東京の会通信の4月1日号に掲載していただいたものだ。委員の一人、有田美智世さん(日本臍帯血バンク支援ボランティアの会代表。骨髄バンク創世期の功労者でもある)が提出資料として下さったのである。
 ところが、である。タイトルが消されているのだ。どうなったのだろう。
 厚生省臓器移植対策室の重藤補佐に聞いてみた。
 KEN「参考資料にあった私の書いたものについてお尋ねですが、タイトルが消えて・・・」
 重藤さん「あっ、私出かけなければなりません。ちょっと他のものに電話を代わります」
 鳴瀬さん?「代わりました」
 KEN「どうしてタイトルが消えているのでしょうか」
 鳴瀬さん「私は重藤から添付しろと言われたものを、そのままコピーしました。不備があるなら、次回にでも再提出します」
 有田さんに聞いてみた。
 KEN「有田さんはタイトルを消してファクスされましたか」
 有田さん「いいえ。元のままを、ファクスで厚生省臓器移植対策室に朝浦室長と真鍋?さん宛てに送りました。私もタイトルが消えているので不思議に思っていたのです」
 鳴瀬さんに渡るまでのわずかな間にどこかでタイトルが消えたのだ。どうしてだろう。まさか、厚生省が削除するはずがない。
 でも、ひょっとしたら削除したのかもしれないなあ。「日本骨髄バンクの権力構造」という言葉のどこがまずいのかな。構造分析をしただけなのに。やっぱりやましいところがあるのかな。官僚にとっての「放送コード」に触れるところがあったのかな。それで「ピー」という音で削除というわけか。
 万が一、厚生省が削除したのならそれは許されないことだ。官僚のせめてもの抵抗だったのかも知れない。でも改ざんというのは、この文書を提出しないように働きかけることより悪いことなのは、言うまでもありません。詳しい経緯を教えて下さい。
 そして、次の検討委で再度添付して下さい。こんな注記もつけてほしい。
 −−前回の参考資料で不備がありました。「日本骨髄バンクの権力構造」において、タイトルの「日本骨髄バンクの権力構造」の部分が脱落していました。「日本骨髄バンクの権力構造」の筆者および、みなさまにお詫びします。ここに「日本骨髄バンクの権力構造」を「日本骨髄バンクの権力構造」というタイトルとともに、再度添付します−−
 こんなことが起こるなんて、それこそ「日本骨髄バンクの権力構造の謎」である。


98.4.17 ◇◇またまた日本骨髄バンクの大失態。幻のBMDW◇◇

☆オランダのBMDW(世界骨髄バンクドナーデータ集計システム)に電話をして質問したところ、大変な問題が発覚した。
☆日本骨髄バンク(財団)は13日にBMDWに参加したと発表した。だが実は、BMDWに日本のデータが反映されるのは6月からだ。BMDWのデータ更新が2カ月に一度しか行われないからだ。
 日赤と財団の事務手続きのもたつきが、この大きな遅れを招いた。海外の患者が財団のデータを見れるのは、6月からになる。日本の患者がBMDWを通して日本のデータを見れるようになるのも6月からだ。つまり日本の「1ローカスミスマッチ」などは、それまで分からないのだ。
 これをBMDWに「参加した」と発表し、しかも財団の幹部はその実態も知らずに、すぐにでもBMDWで日本のデータが見れると思っているのだから、あきれる。
 はっきり言う。日赤の野口さん、草刈さん、財団の町田さん、野田さん、あなたたちのおかげで、また国際提携が遅れた。すなわち世界と日本の患者さんの犠牲がまた増えているのだ。厚生省の重藤さん、朝浦さん、この実態をご存じなくていいのでしょうか。
☆「やること」。
1 あらゆるルートを通じ、今回だけは特別にデータ更新を臨時追加して、日本のデータをBMDWのデータにすぐに加えるようにBMDWにお願いする。大口寄付でもして多少は貢献でもしたらどうか。これを2、3日以内に解決する必要がある。もう13日から「参加した」と言ってしまったのだから。
2 過渡的措置、かつリカバリー措置として、財団の予備検索「HLA照合サービス」は「1ローカスミスマッチ」なども含めた国際基準で主治医に返答をすること。
3 英語と日本語で緊急声明を出すこと。実状の説明とおわび。
4 財団、日赤、厚生省の体制を変えること。日本骨髄バンクの仕組みと経営の方法を抜本的に変えること。今の体制では、どんな小さな問題でも遂行能力がないことが明らかなのだから。
☆「オランダへの電話」
○4月16日の午前1時40分にBMDWに電話した。オランダ時間で15日の午後5時40分である。
KEN「JMDP(日本骨髄バンク)が13日にBMDWに参加したと発表しました。いつからBMDWで日本のデータが見れますか」
BMDW「はい日本もBMDWに参加することになりました。ちょうど4月13日にデータベースの改訂を行い、第39版になりました。この改訂へのデータ提出の締め切りは4月6日でした。いま画面を見る限り、日本は入っていません。私は担当者でないので断言できませんが、たぶん入っていないでしょう。次の40版の締め切りは5月27日で6月初旬から見れるようになります。確実なことは担当のヤン・テオ・バッカーに聞いて下さい。かれは今日はもうオフィスを出て戻りません」
○4月16日の午後11時に再度電話した。ヤン・テオ・バッカー氏がいた。
KEN「JMDPのデータは届きましたか」
バッカーさん「うん。届いているよ。届いたばかりだ。そしてミスター町田に手紙を返したところだ。統合データベースに載せる前に少しテストをしなければならないが、僕が見た限りではちゃんとしたデータで正しい方式になっている。そのあたりを町田さんに伝えたところだ」
KEN「いつからJMDPのデータがBMDWで見れますか」
バッカーさん「とても良い質問だ。実はそれにはちょっと時間がかかる。とても残念だが、今回の最終締め切りに2、3日間に合わなかった。次の改訂の締め切りは5月27日で、それが反映されるのはうまくいって6月1日かな。つまりJMDPがBMDWから見れるようになるのには、あと6週間ほど待たなければならない」


98.4.16 ◇◇企画管理委員会◇◇

 本日,夕刻から日本骨髄バンクの企画管理委員会が開催される。懸案が山積みだ。これまでのようなペースでは処理仕切れない。同委員会が意識改革をして,問題点の改善と懸案の迅速な処理を行うことができるか注目される。
 懸案のなかでも注目したいのは次のような点−−。
1 患者に日米同時コーディネート進行を許すか。
(許すべき)
1 移植適応クライテリアを国際標準に合わせるか。
(合わせるべき)
1 コーディネート日程の短縮。
(予備検索はただの一歩。本検索になったときの書き留めを廃止するなど、業務のフローチャートを見直すだけで2カ月程度の短縮ができるはず)
1 保険適用要望の決定
(今日中に決定すべき。今日、議題にあげて次回に決定というのでは許されない。KENのニュースをしっかり読んで、骨髄バンク費用が保険でカバーされて当然だという思想と理念をしっかりつかんでいただきたい)
1 財団の帳簿をみる
(幹部が財団の事務所に集まるのだから、ちょいと財団の帳簿と集計表を覗かれることをお勧めする。患者のせいかどうかをとくとご覧いただきたい。田中常務理事の臍帯血検討委員会での説明の仕方は、患者を愚弄している。一面的な説明をするのでなく、データをみせて,ちゃんと因数分解をした話をしてほしい。もう問題が明らかなのに、いつまで弁明をやっているのだろう)
1 移植医への啓蒙
(BMDW参加、予備検索の実施で治療方針決定やドナー選定に関する戦略が根本的に変化する。認定病院や専門医に早急に啓蒙活動をしないと、現場で大変な混乱がおこる。当然,予想される事態に対処しないとは、また不作為の罪を重ねることになる。これからは最初にBMDWのことや、世界同時検索、世界同時コーディネート進行の可能性を事前に説明せずに訴訟される医師が出てくるだろう)
1 傍聴できるか。討議内容が公開されるか。
(傍聴を認めるべき)


98.4.16 ◇◇厚生省キャリアの話。「保険適用は当然」◇◇

(4月14日記)
☆☆厚生省の有力キャリアに保険適用について話をうかがった。厚生省の本流でも保険適用論が有力なのだ。骨髄バンク設立後2、3年で保険がついていてもおかしくなかった。失われたチャンスを早く挽回しよう。99年4月に決定してもらうには、ここ2カ月が勝負だ。集中力を!
 以下、話の内容・・・(知らない分野の話が多くて、よく咀嚼できていないところや未確認の数字などがあります。分かり次第、改訂しますのでご了承下さい=KEN)
 ――医療保険というのは技術料と薬剤費が両方ついてはじめて完結するものだ。骨髄移植術に保険がついて骨髄液につかないのでは完結していない。骨髄バンク関連費用の出所は社会保険費の「特会」(特別会計)であるべきだ。保健衛生費は一般会計だが、特別会計だと病院にカネが出て、供給主体に薬剤費として回っていく。医療保険費約30兆円、うち薬剤費年間9兆円?のうち、血液関係費は2400億円程度。全体からすれば小さな数字。そのうち骨髄バンクにかかる費用はたかだか5〜10億といった程度のオーダー。ゴミのような数字だ。全体の配分、他のものの上げ下げを考えればすぐにできる話だ。
 実際に血液製剤では必要なものは点数をつけたり上げたりし、意味の薄れたものは下げた。費用総額は同じで、メーカーにとってはコストが下がりメリットがあった部分もあった。骨髄に薬価をつけると言うと、すぐ、臓器につけられるわけがない、と言う。だが、すでに血液にはついているではないか。角膜や腎臓にもついている。薬価表をみてみなさい。
 骨髄液に保険点数がつかないようでは、日本の保険の破たんだ。治療費とは別にさらに患者に負担させるというのは言語道断だ。日本の医療保険制度の根幹思想は、国民皆保険であり、重い病気ほど手厚くみるのが保険の理念だ。予算が足りないなら、軽微なものや食費のようなものを削るべきだ。また、国家の経済が発展するにつれ、国民はより良い治療を受けられるはずだ。国民が保険に入っているのは、イザというときにみてほしいからだ。骨髄バンクの費用が保険でまかなわれないようでは、これは「移植を受けるな」と言っているようなものだ。
 骨髄移植はたくさんの数行われており、実績もある標準的治療だ。どこが実験医療なのか。骨髄バンクのような事業は薬価をつけて保険適用にしないとうまく回っていかないものだ。骨髄液に点数をつけるという考えで良い。また、血縁、非血縁、海外からの提供、すべてを含めて同じ点数をつければどうか。すべてを骨髄バンクを経由させる。骨髄バンクの事業費や経費などの総費用を年間想定提供数で割って、単価を出して保険点数を決める。これですべてをまかなう。原価でなく、平均価格で薬価をつけるわけだが、この考えはすでに血液事業で例があり、何の法改正もいらない。血液事業法の中にいれれば良い。血液と考えれば良い。PLの対象になってもかまわない。その損害賠償保険料を事業コストに上乗せすれば良いだけだ。
 保険点数は変わらない、やってもらえるわけがないという先入観がおかしい。やればできるだろう。やらなければできないだろう」

●KENの傍白。まったくもって頼もしい話だ。厚生省の中核にこうした思想があることを、財団、財団に関係している医師たち、臓器移植対策室はどれほどご存じなのか。
保険適用の理論としては、「保険の基本理念=難病救済、平等主義」「根治治療」「標準的治療」という3箇条が上位に来ることになろう。技術論的なひとつの解としては、血液事業と同様にみなせば良いということだ。具体的には骨髄液に20万点程度の点数をつければ良い。移植成立のときだけの「成功報酬」、「加重平均コスト」という考えが入ってくることになる。
もし、「臓器」移植対策室として、骨髄を血液と考えるのに抵抗があるとしたら、これこそお役所の病気である。


98.4.14 ◇◇保険適用について再論◇◇

4月13日記
☆☆骨髄バンク利用費用についての保険適用について:厚生省臓器移植対策室幹部は4月中旬、「保険はハード(臓器)につけるより、ソフト(検査、コーディネート)につける方がやりやすい」という見解であったが、果たしてそうであろうか。たしかに心臓など、保険点数がついていない臓器もある。だが、保険点数がついている臓器類もある。腎臓、角膜、弁、筋膜などだ。あるいは骨髄液は移植ではあるがモノとしては血液に近い。血液にだって保険点数がついている。ソフトに保険点数をつけようとすると、法律改正が議題に上がってきて、やっかいであるし時間がかかる。骨髄液への保険点数付加というのがシンプルで近道ではないか。臓器移植対策室はようやくこのあたりの研究をはじめたばかりのようである。先ごろの国会答弁に答えたときには、まだ一通りの研究も終わってなかった。保険局医療課の今田課長の発言に「法改正が必要ならそれも検討し」という下りがあったのも、この辺りを反映しているのではないか。タテ割り社会で、他の治療との比較や国際比較について十分な情報が集められていない。また保険についての技術的問題についてもまだ研究が不十分なようだ。
☆☆保険適用の理論武装。骨髄移植推進財団は次の企画管理委員会で「保険適用の厚生省への要望」を議決するものと思われる。ある関係者(医師)によると、その理論武装は次のようになると言う。「白血病といった骨髄移植適応の疾病は、肺ガン、胃ガン、肝臓ガンなどとは違う性格がある。すなわち、喫煙、暴飲暴食などといった生活習慣とは関連が薄く、突然、だれを襲うかも知れないものだ。突発的な難病という面があり、患者救済のために国民負担で保険適用にするのになじむものだ」。一口で言うと、「不可知的難病の救済」ということか。これを理論武装に加えるのは良い。だが、一面的である印象は否めない。KENが前にあげた6項目を思い出してほしい。そして、先ごろ、今田課長が下さった「根治治療である」(7)というヒントと、この医師の言う「不可知的難病の救済」(8)、さらに「他の臓器などで保険点数がついている例がある」(9)を加えて9つだ。
【保険適用が適切であるという6つの理由。再録】
(1)標準的治療:非血縁間の骨髄移植は、すでに実績と定評がある医療技術です。骨髄移植はもはや実験的治療ではなく、標準的治療です。骨髄移植が適応の患者にとっては、ごく標準的な治療である。
(2)一貫性:骨髄移植術と骨髄採取術には医療保険点数がついている。骨髄移植とは、検索・検査・コーディネート、採取、移植全体を合わせてこそ成り立つものであり、この一連の流れ全体が骨髄移植である。検索・検査・コーディネートの部分だけ保険除外しているのはおかしい。
(3)救命性:検索・検査・コーディネートを保険適用としていないことで、ドナーコーディネートに時間がかかっている。患者が入金しないと、コーディネートが先に進まない仕組みだからだ。だが、患者の元に請求書がすぐに届かないことがある。こうした時間ロスによって時間がかかることで、みすみす移植のチャンスを失う患者がいるのは、残酷であり、制度の欠陥と言わざるを得ない。医療保険適応にすれば、患者が登録してから骨髄移植を受けるまでの期間が確実に削減できる(この期間は日本で7カ月、米国で3カ月半)
(4)骨髄バンクの財政的健全性:コーディネート費用を患者から徴収するのは技術的に簡単でなく(骨髄バンク→主治医→患者→骨髄バンクというルートになっている。とくに主治医→患者の間で連絡が難しい)、骨髄バンクに患者負担金の未収金が大量に発生する背景となっている。医療保険の適用とすることで、骨髄バンクの財政的基盤をしっかりしたものにしてやる必要がある。
(5)臍帯血移植との水準合わせ:臍帯血バンクが間もなく設立されようとしている。臍帯血移植では、臍帯血の検索、輸送、臍帯血自体のすべてに保険が適応となる見込みである。骨髄移植と臍帯血移植は、競争・競合する治療法であり、患者からみたコストレベリング(同一化)をしておく必要がある。同等にするには、骨髄バンクでの検索・検査・コーディネート費用をすぐにでも保険適用にしておく必要がある。
(6)世界で標準的な患者サービスを提供する:日本は先進国であり、日本の患者は世界で先進的な治療を受けられることを目指すべきであり、日本にはそれを実現するだけの資源と技術がある。ドナー検索・検査・コーディネートの費用を保険がカバーするのは世界の主流であり、過半数になっている。医療先進国の日本がそうなっていないのは、国際的尺度でみても適切ではない。

* 9項目では多すぎる。3つぐらいに整理して上げることが必要だ。(5)はまだ決まっていないから表に出すのは早すぎる。(4)も財団が反省していない以上、持ち出すのは許されない。結局、(1)、(7)、(8)などを全面に出し、その他の項目は補助的状況説明として出すのが美しい形だろう。早急に、財団と厚生省の臓器移植対策室でつめて欲しい。厚生省がこの宿題に何日で答えを出せるか、みものである。もたもとしているようでは、国民がそこだけはまだ信頼している専門能力と行政事務能力にも疑問符がつく。最短距離を最高速度で進んでいただきたい。

☆☆「やればできる」
 本日(4月13日)の臍帯血移植検討委員会で、臍帯血バンク運動推進の最大の功労者、有田委員から骨髄バンクの利用料金への保険適用について、次のような発言があった。「厚生省の人からは、やろうと思ったらできる、やろうとしないからできん、と言われた」。その通りだと思う。やろうと思わなければできない。財団、厚生省の臓器移植対策室、造血幹細胞移植医、患者、ボランティアが結集するときだ。

☆☆小林医療保健局長の発言
 臍帯血移植検討委員会の終わりに小林局長の発言があった。「厚生大臣の国会答弁を受けて、(公的臍帯血バンクができるように)やるように言われてやっているわけだ。この検討委員会で話をまとめてもらわないと、診療報酬上の点数化のスタートにも立てないわけで、多くの多様なメンバーが集まっている場だが、議論がまとまることが大切だということを認識していただきたい」。臍帯血については、臍帯血に保険点数がつき、それに合わせて骨髄にも保険点数をつけるというハラであるとKENは読む。この機会を活かさねば。また、患者負担金は基本的にゼロでいい。保険料をすでに十分支払っているのだから。

☆☆全国協議会が国会誓願書
 全国協議会が4月14日、国会に請願書を提出します。ボランティアの声はどんどん上がっていきます。合流しましょう。

☆☆☆読者のみなさんへ。
 保険適用への要望書を送付し続けて下さい。重要度から言うと、現在の局面では1、臓器移植対策室朝浦室長 2、小林局長 3、今田課長、4、厚生大臣(小泉大臣) 5、財団 の順でしょう。


98.4.10 ◇◇国内向け予備検索スタート◇◇

 骨髄移植推進財団は4月13日(月)から、国内向けの予備検索とBMDWへの参加を開始する。4月13日に発表する見込み。野田事務局長は「13日にスタートしたい。どんなに遅くとも15日までには実現させる」と語った。
 財団は登録ドナーの有無について、「照合作業」を始める。いわゆる予備検索と呼ばれるものに内容は同じ。無料、24時間以内のサービスである。またBMDWにも参加したので、BMDWでの国際検索サービスも提供する。
 ようやく懸案が実現する。2、3年前に出来ていても良かった内容ではあるが、このところのボランティアからの強い働きかけがなければもっと遅くなるところであった。日米不公平問題からの建設的産物ということにもなった。4月からのスタートとしておりながら、ずれ込みかかっていたが、ここ2日ばかりでコトがようやく進展した。
 これからは主治医、患者が新しいサービス内容をよく理解する必要がある。希望患者へのサービスが迅速化するが、医師や患者のドナー検索戦略策定のレベルをあげる必要がある。財団、企画管理委員会、造血幹細胞移植界はこのあたりを早急に勉強し、普及啓蒙活動を行うべきである。



98.4.10 ◇◇臍帯血移植検討会日程◇◇

 臍帯血バンクの設立を検討する委員会(第5回)が4月13日(月)に開催される。公開である。骨髄バンクにも大きな関係がある。必見。



98.4.10 ◇◇臍帯血バンク案◇◇

☆大変、遅くなりましたが、臍帯血バンクのイメージについて加藤氏、西平氏の両案を掲載します。
☆加藤案についてのKENのコメント。「臍帯血バンク構築の過程で、現在の『骨髄パンク』についても根本的に見直し、改めるべきものは大胆に改めるぺきものと考える」とある。どこを骨髄バンクの欠点と考えていらっしゃるのだろう。欠点があるものをなぜ、活用しなければならないのだろう。そんな疑問がわく。
☆西平案(神奈川臍帯血バンクの現状システム)に対する、ある臍帯血移植希望者家族からの意見を以下に紹介する。患者家族がみると、ユーザーに便利になっていないのが分かる。
▽まず思うのは、かなりの数の書類があり、郵送ベースで行うそのやり取りには随分時間がかかりそうだなということです。気がついた点を以下に書いてみます
・(郵送と並行して)FAXやEmailを利用して効率化につとめるべき。
・基本的に検索開始審査はいらない。よって、以下の書類は不要。
  Aドナー検索開始許可願
  Bドナー検索開始通知書 (すぐに結果を返せばよい)
  Cドナー検索保留通知書
  E初回ドナー検索結果報告書 (D臍帯血検索結果報告書に統合)
・ドナー検索に1週間はかかりすぎ。
・適応審査は作成したガイドラインをもとに、バンク側の担当医師が判断できるよう
にする。
 よって以下の書類は不要。
  Gコーデイネイト開始依頼受理通知書 (すぐに結果を返せばよい)
記録を残すのは必要なことだと思いますが、臍帯血バンクの利点の一つである「迅速
性」を損なわない形で運用していく必要がある。
(意見おわり)

◆以下、両案を掲載する−−
◇わが国における臍帯血バンクの在り方
東海大学  加藤俊一

1.全体的な位置づけ
 「骨髄バンク」や「臍帯血バンク」を単独あるいは対立して論じるのではなく、骨
髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植などの造血幹細胞移植全体を包括した「造血
幹細胞バンク」の中に位置づけた論議を行いたい。臍帯血バンク構築の過程で、現在
の「骨髄パンク」についても根本的に見直し、改めるべきものは大胆に改めるぺきも
のと考える。

2.地域(ローカル)臍帯血バンクから公的(ナショナル)臍帯血パンクへ
 臍帯血移植および臍帯血パンクはまだ試験的医療の段階にあることを認識し、まず
「地域臍帯血バンク」での試行を経て、その評価の上で統一的な「公的臍帯血バンク
」へと移行すぺきものと考える。その際、地域膀帯血バンクと公的臍帯血バンクとが
ある時期並存しながら、おおよそ3年後(遅くとも5年後)には全面的に公的臍帯血
バンクへの移行を完了することを当初から計画しておくべきである。

3.試験的地域膀帯血バンクの在り方
 現在策定されている「ガイドライン」の基準に合致した本格的な地域臍帯血バンク
を数カ所(血液センターを含める)選定し、研究事業として補助を行なう。補助の内
容としては、独立した保存場所の補助、採取から臍帯血幹細胞の分離・保存までに必
要な備品と消耗品の補助、採取担当者・保存担当者・データ管理者などの人的補助、
その他運営に必要な経費への補助など多岐に亘る。
 数カ所の地域臍帯血バンクが協調しつつ効率よく機能するため、ネットワ−クを形
成する。各バンクが独自に行う業務と、共有する業務とを明確にする。ドナーに関す
る業務、すなわち臍帯血の採取から保存までは各地域臍帯血バンクの独自の業務とす
る。一方、レシピエントに関する業務、すなわち患者登録とHLA検索は共通のシス
テムを構簗する。さらに、移植の実施は各地域バンクと移植病院との間で個別に進め
ることになる。
 試験的地域臍帯血バンクでの保存件数は5000件程度(500〜1000件×4
〜5カ所)、移植件数は約200件、試行期間は3年とする。

4.将来の公的臍帯血パンクの在り方
 初期の地域臍帯血バンクでの試行結果を評価しつつ、恒久的な公的臍帯血バンクに
移行する。恒久的な組織とするためには、この事業が個人レベルの努力に依存するの
ではなく、既存あるいは新設の組織として担うことが不可欠の条件である。そのよう
な観点から、保存施設としては日赤血液センターが最適であり、運営組織としては骨
髄バンクと合併した新しい「造血幹細胞バンク(仮称)」を設立し、さらに採取施設
はこのバンクが認定した施設として業務委託する。
 公的臍帯血バンクの規模としては、保存件数5万件(5年で到達、以後維持)、年
間移植件数500件程度を想定するが、将来の技術の進歩によっては1000〜20
00件程度に増加することもありうる。

5.予算規模
┌────────┬───────────┬───────────┐
│        │   地域バンク   │   公的バンク   │
├────────┼───────────┼───────────┤
│保存件数(合計)│  5,000    │ 50,000    │
├────────┼───────────┼───────────┤
│移植件数(年間)│  50〜100   │ 500〜2,000 │
├────────┼───────────┼───────────┤
│設備投資(初期)│  1〜2億円 *  │ 3〜4億円 **  │
├────────┼───────────┼───────────┤
│運営費用(年間)│  2億円   *  │ 10億円  *** │
└────────┴───────────┴───────────┘
*   国が全額を負担
**  国、都道府県、事業者それぞれ3分の1
*** 国2億円、都道府県2億円、移植患者6億円(120万×500)


6.公的造血幹細胞バンクの機構図

            ┌────────┐
            │造血幹細胞バンク│
            └────────┘

      ┌────────────────────┐
      │       運営委員会        │
      │(国・日赤・自治体・医療・ボランティア)│
      └─────────┬──────────┘
                │
      ┌─────────┴───┬──────────┐
      │             │          │
┌─────┴──────┐┌─────┴─────┐┌───┴──┐
│  造血幹細胞バンク  ││コーディネートセンター││保存センター│
│(骨髄・臍帯血・末梢血)││  (骨髄・末梢血)  ││ (臍帯血) │
└─────┬────┬─┘└──┬────┬───┘└┬───┬─┘
      │    │     │    │     │   │
      │    │    ┌┴─┐ ┌┴─┐  ┌┴─┐┌┴─┐
      │    │    │採取│ │採取│  │採取││採取│
      │    │    │施設│ │施設│  │施設││施設│
      │    │    └─┬┘ └─┬┘  └─┬┘└─┬┘
      │    │      │    │     │   │
      │    └────┐ │    │     │   │
      │         │ │    │     │   │
┌─────┴──────┐ ┌┴─┴────┴─┐ ┌─┴───┴┐
│  患者・一般病院   │ │骨髄・末梢血ドナー│ │臍帯血ドナー│
└────────────┘ └─────────┘ └──────┘
      ↓
┌────────────┐
│    移植病院    │
└────────────┘


7.公的造血幹細胞バンクの機構図(概略)
┌──────────────────┐
│@患者・主治医からバンク事務局へ登録│
└──────────────────┘
     ↓
┌──────────┐
│A事務局がHLA検索│
└──────────┘
     ↓
┌─────────────────────────────────┐
│B事務局から患者・主治医へドナー情報(骨髄・末梢血・臍帯血)を提供│
└─────────────────────────────────┘
     ↓
┌──────────────┐
│C患者・主治医がドナーを選択│
└──────────────┘
     ↓
┌───────────────────────┐
│D−1 骨髄・末梢血の場合はコーディネート開始│
└───────────────────────┘
     ↓
┌────────────────────────────────┐
│D−2 臍帯血の場合は、保存センターと移植施設間で調整し移植準備│
└────────────────────────────────┘
     ↓
┌────────┐
│E移植施設で移植│
└────────┘

◇厚生省 臍帯血移植検討会  会議資料
平成10年3月12日
西平浩一(神奈県立こども医療センター)

神奈川臍帯血バンクの非血縁者間臍帯血移植の
申請、実施等に関する書類

1 非血縁臍帯血ドナー検索依頼書
2 ドナー検索開始許可願
3 ドナー検索開始通知書
4 ドナー検索保留通知書
5 臍帯血ドナー検索結果報告書
6 初回ドナー検索結果報告書
7 非血縁臍帯血幹細胞移植希望確認書
8 コーデイネイト開始依頼受理通知書
9 コーデイネイト開始保留申請書
10 保留期間通知書
11 造血幹細胞移植移植審議委員会審議の結果報告書
12 ドナー臍帯血の移植前検査依頼と検査報告書
13 神奈川臍帯血バンクを利用した臍帯血幹細胞移植の確認書
14 非血縁臍帯血幹細胞移植検体搬送実施計画書
15 非血縁臍帯血幹細胞移植実施計画書〈1)
16 非血縁臍帯血幹細胞移植実施計画書(2〉
17 ドナー臍帯血引き渡し依頼書
18 非血縁臍帯血幹細胞移植症例報告書
18 登録取消届
19 患者冶療歴の追加
20 忠者情報等変更届
21 保留の継続等に関する問い今わせ



神奈川臍帯血バンクを利用した臍帯血幹細胞移植
−申請から実施までの手順の概要−

         KCBBで検索することの
         インフォームドコンセント
              │
1)非血縁臍帯血     ─→│←─検索依頼
 ドナー検索依頼書     │
              ↓
            検索開始審査
              │
(2)ドナー検索開始許可願 ─→│
              ↓
              検索 ←─────────┐
              │           │
              ├───────┐   │
(3)ドナー検索開始通知書 ─→│       │   │
(4)ドナー検索保留通知書 ─→│       │   │
              ↓       ↓   │
            ドナーあり   ドナーなし │
              │       │   │
(5)臍帯血ドナー検索   ─→│       └───┘
  結果報告         │    (6)初回ドナー検索結果報告
              │
              ↓         (10)保留期間通知
        コーディネート開始希望確認←────┐
              │           │
              ├───────┐   │
(7)非血縁臍帯血幹細胞  ─→│       ↓   │
  移植希望の確認      │      検索保留 │
              ↓       │   │
           コーディネート開始  └───┴→登録抹消
              │      (9)コーディネート
(8)コーディネート    ─→│        開始保留申請書
  開始依頼受理通知     │
              ↓
           幹細胞移植審議会
              │
              │←─(11)造血幹細胞移植移植審議
              │    委員会審議の結果報告書
    ┌─────────┴──┐
    ↓            ↓
  移植適応あり       移植適応なし
    │
    │     ┌────────────────────┐
    │     │(12)ドナー臍帯血の移植前検査依頼と検査 │
    │←────┤  報告書               │
    │     │(13)神奈川臍帯血バンクを利用した臍帯血 │
    ↓     │  幹細胞移植の確認書         │
  移植の日程調整 │(14)非血縁臍帯血幹細胞移植検体搬送実施 │
    │     │  計画書               │
    │     │(15)非血縁臍帯血幹細胞移植実施計画書(1)│
    │←────┤(16)非血縁臍帯血幹細胞移植実施計画書(2)│
    │     │(17)ドナー臍帯血引き渡し依頼書     │
    │     └────────────────────┘
    ↓
  移植結果報告←─Q非血縁臍帯血幹細胞移植症例報告書



全国臍帯血バンクネットワークによる
臍帯血HLA検索・移植実施手順の予想図

    ┌─────────────────────┐
    │     全国HLA登録センター     │
    └──────────┬──────────┘
               │
    ┌──────────┼──────────┐
    │          │          │
┌───┴────┐ ┌───┴────┐ ┌───┴────┐
│地域臍帯血バンク├─┤地域臍帯血バンク├─┤地域臍帯血バンク│
│事務局     │ │事務局     │ │事務局     │
└───┬────┘ └───┬────┘ └───┬────┘
    │          │          │
┌───┴────┐ ┌───┴────┐ ┌───┴────┐
│地域臍帯血バンク│ │地域臍帯血バンク│ │地域臍帯血バンク│
│事務局     │ │事務局     │ │事務局     │
└────────┘ └────────┘ └────────┘

1.地域臍帯血バンク事務局の設置(全国で7−9カ所)
  移植審議委員会、済帯血のQualityの審査委員会等各種委員会の設置
2.臍帯血提供基準の設定
3.移植実施施設の条件の設定
4.移植結果報告の義務


臍帯血バンク全国ネットワーク構想
JANETCORD(JAPAN NETWARK OF CORD BLOOD BANK)

          ┌─────┐
          │ 北海道 │
   ┌──────┤ (2,000) ├──────┐
   │      └──┬──┘      │
┌──┴──┐      │      ┌──┴──┐
│東北・北陸├─┐    │    ┌─┤中国・四国│
│ (2,000) │ │    │    │ │ (2,000) │
└──┬──┘ │    │    │ └──┬──┘
   │    │ ┌──┴──┐ │    │
   │    └─┤関東・甲信├─┘    │
   │    ┌─┤ (6,000) ├─┐    │
   │    │ └──┬──┘ │    │
┌──┴──┐ │    │    │ ┌──┴──┐
│  東海  ├─┘    │    └─┤  近畿  │
│ (3,000) │      │      │ (4,000) │
└──┬──┘      │      └──┬──┘
   │      ┌──┴──┐      │
   └──────┤九州・沖縄├──────┘
          │ (2,000) │
          └─────┘

( )内は各地区の目標件数



98.4.8 ◇◇ロビイング資料◇◇

 われわれインターネットワーカーとしては、新しいスタイルのロビイングを開発し、実行することに本意があります。しかし、効果があるものは何でもという良い意味での現実的さも必要です。そこで今日は議員にスポットをあてます。
1 われわれ一人一人の要望書を関係各所にファクスすることをもっと盛り上げましょう。こうした声が一番、強力です。効きます。効いています。他の手段と相まると、さらに強力です。KENのロビイングキットをご参考にして下さい。患者本人の手紙、とくに手書きが強く訴えます。
2 国会議員(とくに与党)、厚生大臣、政務次官、医療保健局長、保険局長にもファクスしましょう。
3 国会議員にもっと国会質問をお願いしましょう。地元議員の地元事務所、東京事務所(会期中)に要望、陳情をしましょう。手始めに国会議員による資料請求でもいいです。
4 国会開催中に請願書を届けましょう。

☆国会議員としては、次のような議員が効果があると思います(敬称略)。
1厚生委員会委員
柳沢 伯夫(委員長、自民)、佐藤 剛男(理事、自民)、長勢 甚遠(理事、自民)、根本 匠(理事、自民)、船田 元(理事、自民)、金田 誠一(理事、民友連)、山本 孝史(理事、民有連)、福島 豊(理事、和)、久保 哲司(理事、自由)、安倍 晋三(自民)、稲垣 実男(自民)、江渡 聡徳(自民)、衛藤 ●一(自民)、大村 秀章(自民)、桜井 郁三(自民)、鈴木 俊一(自民)、田中 昭一(自民)、田村 憲久(自民)、戸井田 徹(自民)、能勢 和子(自民)、原田 義昭(自民)、桧田 仁(自民)、堀之内 久男(自民)、松本 純(自民)、山下 徳夫(自民)、家西 悟(民友連)、石毛 ●子(民友連)、城島 正光(民有連)、土肥 隆一(民有連)、畑 英次郎(民有連)、松崎 公昭(民有連)、青山 二三(和)、旭道山 和泰(和)、武山 百合子(自由)、藤井 裕久(自由)、吉田 幸弘(自由)、児玉 健次(共産)、瀬古 由紀子(共産)、中川 智子(社民)、笹木 竜三(無会)
2国民福祉委員会
山本 正和(委員長、社民)、尾辻 秀久(理事、自民)、南野 智恵子(理事、自民)、水島 裕(理事、民友)、渡辺 孝男(公明)、清水 澄子(社民)、阿部 正俊(自民)、石井 道子(自民)、佐藤 泰三(自民)、田浦 直(自民)、常田 享詳(自民)、中島 眞人(自民)、中原 爽(自民)、宮崎 秀樹(自民)、今井 澄(民友)、針宮 磐(民友)、直嶋 正行(民友)、浜四津 敏子(公明)、西山 登紀子(共産)、小暮 山人(自由)、西川 きよし(二院)


98.4.8 ◇◇本日の動き。保険に大きな一歩(4月7日)◇◇

☆歴史的な日。保険適用に大きな一歩。ここで力を抜かず、さらに進めよう。

☆保険局医療課 今田課長の話
KEN「骨髄バンクの患者負担金の保険カバーについての認識は」
今田さん「そういう要望が来ているのは認識している。だがこれについては骨髄バンクと窓口である臓器移植対策室がまず、議論すべきだ。要望に来られるのはけっこうだが、個別にこられても、こちらとしては対応しにくい。国がみている全体の負担のなかで、どう保険適用を考えていくかだ。骨髄バンクのコストがどうか、保険を適用すべきかどうかといっても、そもそもそうした給付となじむものかなど、いろいろ考える必要がある。骨髄バンクが良い悪いではなく、保険をどう考えるか、骨髄バンクを今後どっちにもっていくかの議論が必要だ。苦しいから保険適用してくれと言われても困る。臍帯血バンクへの適用についても、臍帯血検討会の検討動向を待って考えていくが、やや中途半端なところがある。とにかく要望していただくのは結構だが、臓器移植対策室で議論を整理してもってきてもらわないと、こちらとしては対処できない。保険適用になって当たり前ということでなく、あり方論をきっちり整理していただき、それが上がってきて、進めるということが明確になれば、中医協に諮ることになる。また全部を保険でみない、全部をみるということではない。いくらかの負担はしかるべきということになろう。ただ、骨髄移植は根治術であるので(患者が社会復帰できることも多く)、社会的費用としては説得性がある部分もある。また、補助金と保険適用のどっちももらうというわけにはいかない。2重取りになる。そのあたりも明確にしていただくことが必要だ」
KEN「分かりました。もっと臓器移植対策室にお願いしてみます。ただ、保険適用についての要望についての認識はいただいているのですね。また、元課から上がってくれば、すべからく対応していただけるのですね」
今田さん「そういうことだ」
●KENの傍白。臓器移植対策室は、すぐ理論武装と整理を行って保険局にあげてほしい。KENが前にあげた6箇条の上に、根治治療であるというヒントもいただいた。医療保険全体の大きなカネに比べればわずかのカネ。保険担当としてはいちいち構ってられないというところはある。元の担当課がしっかりした話をもってきて、機運が高まれば話は進めるということだろう。課長のコメントとしてはこれが精一杯というところもある。粘り強くお願いしていこう。

☆骨髄バンク 田中常務理事の話
KEN「先日話したとおり、機は熟している。環境は整っているのに、当の財団が要望をしていないのはおかしい。どのように保険適用を要望していくのでしょうか」
田中さん「手続きを経て進めることが必要だ。次の企画管理委員会で私から口頭で話をしたい。そして保険適用の要望を出すことを企画管理委員会の案としていいかの了承をとる。そしてその次の企画管理委員会で了解を取りたい」
KEN「理事会、評議員会の議事録はいつ出るのですか」
(注:KENとしてはKENの傍聴に誰が賛成し、誰が反対したか。傍聴の可否の手続きがきっちりと行われたかにも関心がある)
田中さん「いま例(ドナー事故のことを指しているようす)のこともあって忙しくて、事務方は忙しくて遅れ気味になりそうだ」
KEN「次の理事会、評議員会が傍聴可能かどうかは、その場で決めるのではなく、事前に書類による投票などで決めておいてほしい」
田中さん「そうですね。そうしたことも考えます」
KEN「傍聴に関して理事会の議決は全員一致が必要ですか、それとも過半数ですか」
田中さん「過半数だ」
KEN「未収金については何の追加説明もしないのですか」
田中さん「理事長にはかってから、次の理事会でご説明したい」
KEN「それまでは何の説明もしないつもりですか」
田中さん「そうだ」
●KENの傍白。保険適用の要望を出すのになぜ会議2回もかかるの。事前に案を出しておいて一回で決めればいいのに。国会だって終わってしまう。未収金についてこれでは放ったらかしだ。これでは保険も相手にしてもらえなくなるよ。まず、未収金問題にケリとつけて下さい。保険問題が大きく前進しないようなら、KENは未収金問題やその他の問題をさらに深く追求する用意があります。

☆国会国民福祉委員会での西山登紀子議員の質問とそれへの答弁(要旨)
(傍聴されたEさんからの情報です)
西山議員「骨髄バンクの目標は」
小林局長「まず20万人を当面の目標にする。中期的には30万人」
西山議員「保険適用については?」
高木局長「現行の法制度の下でなじむものか、それとも法律改正が必要になるのか、研究していく」
●KENの傍白。歴史的瞬間。国会での骨髄バンク関連質問は数年ぶり(なぜこれまでもっとやらなかったのだろうとは思うが、まあこれからどんどんやってもらいたい)。保険適用についての発言は初だろう。「研究していく」というのは前向きな発言。ただ冷静に考えると、「検討していく」という良くある答弁より、「研究していく」は弱いと思う。「検討していく」という発言を引き出せるように、さらに波状運動が必要です。また法的問題という宿題が出てしまったのは若干やっかい。でも、これも通らなければならない道。大きく言って、潮目はわれわれに分がある。

☆日赤の草刈技監
KEN「草刈さんにお約束いただいたBMDW参加と国内予備検索実施ですが、まだ4月になってもいっこうに前進していません。どうなっているのですか」
草刈さん「えっ! なに、まだ動いていない。ホント? そうか。 分かった。すぐやらせる。すぐやらせるから」
KEN「お願いします」
草刈さん「いっしょにやろうよ。良くして行こうよ。現場の人の声が一番なんだからね」
KEN「ありがとうございます」
草刈さん「こないだの理事会にも来ていたんだね。入れなくてごめんね」
KEN「ご理解ありがとうございます」
草刈さん「こないだは、鷲尾さんが入ってもらえばいいじゃないか、と大分やったんだ。鷲尾はすごい、いい男だよ。僕もちょっと言ったけど、鷲尾さんの尻馬に乗っただけだから」
●KENの傍白。草刈さんは本当にすぐにでも指示を出して下さりそうな感じだった。期待がもてる。

☆骨髄移植推進財団 企画管理委員会 小寺委員長
KEN「こんにちわ」
小寺さん「こんにちわ。本当はもっとインターネットやメーリングリストを頻繁に見たいのだが、なかなかそうは行かなくて。でも、ときどきコピーしてもらったのを読んでいます」
KEN「ご意見、訂正、ご批判などがあれば、いつでもお聞かせ下さい。率直に対応してまいります」
小寺さん「KENさんたちと、目指している目的・方向はほとんど同じだと思っている。ただ、進め方については違いがあるし、立場も違う。私は財団のなかの人間なので、その立場のやり方がある。内部の関係者として責任ある行動をしなければならない。ボランティアの方は骨髄バンクの世界の外にいるとも内にいるとも言えるが、立場が違う。できれば、インターネットのような媒体でなく、公開フォーラムのような顔が見える場所で対話していきたいと思う」
KEN「では、公開フォーラムを半年に一回は開いて下さい。また企画管理委員会を公開にしたり、あとで会見を開くようにして下さい。あるいは理事会、評議会も公開にして下さい」
小寺さん「確かに、そう言われてしまうかも知れないが・・・。先日、理事会の公開を要望されていたが、私の立場としては、理事会は最高意志決定機関であり、そう簡単に全面公開とはいかない。ただ、世間一般の流れをみると、理事会のようなものを公開していく変革の時機でもある。それが公的な組織のやるべき方向ということもある。どういう形がいいかは勉強していくが、部分公開とか、あとで詳しく内容を説明するなどの方法もあり得る」
小寺さん「未収金についても、現場の善意、互助会的なやさしい骨髄バンクという伝統があって、そういう部分が大きかった。管理が不十分だった点はあるが、悪いことばかりではない。主治医として患者さんをみていると、実際、患者さんのなかにはいくら請求しても払わない人がいる。そうしたことまで含めて考えていかないと」
KEN「先生は、財団の帳簿や集計表をご覧になって言ってらっしゃるのですか」
小寺さん「いいえ」
KEN「私も見たわけではありませんが、収集した情報によると、再登録料をある時点まで請求することにさえなってなかったなど、そもそも請求自体がろくに行われていなかったのですよ。こうした事実を踏まえてから、そうしたことはおっしゃっていただきたい」
小寺さん「まあ、そう言われるとそうかも知れない」
KEN「保険適用について、今日、国会で議員の質問があり、前進回答がありました」
小寺さん「そうですか」
KEN「保険適用について機運が盛り上がりながら、当の骨髄バンクだけが流れに後れており、何もしていません。理事会の後に田中常務理事にお願いしました。田中常務理事は次回の企画管理委員会で説明し、その次の企画管理委員会で議題にしたいとおっしゃっています。これでは悠長すぎます。すぐ、案を作り、紙を事前に回覧し、次の企画管理委員会で決定してしまうようにお願いします。厚生省にはたくさんの要望書が届いており、認識はしていただいています。このチャンスをぜひ活かして下さい」
小寺さん「そういうことになっているのであれば、私としても次の企画管理委員会に議題として出す」
KEN「BWDWや国内予備検索ももたもたしていますが、先ほど草刈さんには電話してお願いしておきました」
小寺さん「いまもう一方の問題が大変で、いろいろ手が回らないが、ありがとう」
KEN「よろしくお願いします。ありがとうございました」
●KENの傍白。小寺さんの辛い立場は痛いように分かる。でも、そうとばかりは言ってられない。今の状況では、患者が払わないというのを財団の人間が言うのはまずいと思う。払わない患者もいれば、患者に請求書を渡さない医師もいる。財団からの追跡調査に患者のようすを答えない医師もたくさんいる。でも、それはそれ。こうしたことが何%か起こるのは当たり前。これはこれで医師、患者の責任は別に議論する機会をつくろう。だけど、今、財団の人がこれを言ってはいけない。小寺さんも信じられない、信じたくないような処理をやって未収金を大量につくったのだから。患者のせいにした瞬間、保険適用の話は流れる。財団はただ請求をちゃんとやり、払えない人には減免申請書を送る。それをまず100%やるしかない。100%やった自信が出たら、次の話に移ろう。


98.4.6 ◇◇連載3:骨髄バンクの権力構造◇◇

「公的骨髄バンクを支援する東京の会」の会報から
●患者の視点からの日米医療比較3
○日本骨髄バンクの権力構造
▼今回は急きょ予定を変更して、日本骨髄バンクという組織の特殊性について分析を試みる。
▼「改善ができない」「主体性がない」「責任がとれない」「権力の空洞性」「官僚と専門家の支配」。残念ながら、こうした性格が強い組織になっている。
▼「患者のために世界レベルのバンクに」。そう目標を掲げて、変えて行こう。
 日本の骨髄バンク(骨髄移植推進財団。以下、財団)が抱えている問題が次々と明らかになってきた。
 米国向けだけに予備検索を実施していた「日米不公平問題」、患者への請求・督促を怠り大量の回収不能金をつくった「未収金問題」などだ。財団の管理能力、業務改善能力の欠如が露呈してしまった。これが「米国3カ月半、日本7カ月」という、検索依頼から移植までの平均所要時間の差となって現れている。
 財団自体と財団をとりまく組織が、「患者の救命」という目的にそぐわないものになっている。骨髄バンクは厚生省が監督するから、何かを変えるには厚生省の同意がいる。もっとも重要なデータであるドナー登録者のデータは日赤が押さえている。厚生省、財団、日赤のがんじがらめの三角関係がある。
 こうして「誰が問題の当事者であり責任者であるのか」を巧妙に隠ぺいする、あまりに日本的な仕組みが形成されている。責任者であるのに被害者であるかのように装う「ぬえ現象」、当事者であるのに責任と権力を放棄する「空洞化」、運営目的を忘れて三者間の都合だけで物事が決まる「なれ合い」が見られる。外部からのチェックは皆無に近い。
 具体的に各当事者をみていこう。
 厚生省の担当官は2年程度で交替していく。熱心さは人によるが、なかには露骨に「自分の任期中は波風を立てずに」といった態度の人もいる。実際にこうした形で大きく骨髄バンク行政が停滞した時期があった。財団の箸の上げ下ろしまで口を出しながら、肝心の業務改善については指導しない。典型的な「コトなかれ主義」が支配している。
 構図をややこしくしているのは、財団の中に厚生省が入り込んでいることだ。財団の常務理事は厚生省からの天下りであり、財団の最高ポジションである理事長は厚生省の元局長だ。彼らはどちらの利害を代表しているのか分からない。「未収金問題」についても、厚生省出身の常務理事が「自ら問題点を指摘し処分を申し出た」という。厚生省の組織防衛ともとれる。
 財団には当事者意識が希薄だ。事務局長は自ら「雇われマダム」と言う。本来、実務の全体を統括し、組織を引っ張っていくべき最高責任者が、これだ。多くの問題について「知らなかった」「私の担当でない」と繰り返すこと自体、自ら役割失格を告白している。
 副理事長は医師だ。医学界では「ドン」と呼ばれることもある「大物」だ。「口に出さずとも、身ぶりだけで周りが動く」ほどだそうだ。事務局長を連れてくるなど、財団の人事権を握っている。また移植治療に使われる薬品の、ある特定のメーカーと強い利害関係をもっている。1年前まで、企画管理委員会の委員長だった。同委員会は事実上、財団の方針決定機関になっていた。事務局長などの財団職員は空洞化し、ほぼ医師の思うとおりに運営されてきた。だが、同委員会は財団の改革に積極的であったり改革実績をあげたわけではない。副理事長にとって財団は業界政治における重要な「シマ(勢力範囲)」であっても、「水準が高い骨髄バンクにする」、「世界に貢献するバンクに」といった動機が働くはずもなかった。
 財団の理事会・評議会には多くのメンバーがいる。各界の著名人に「名前を連ねてもらっている」という感じ。財団の基本財産を出した経済界からも大手金融機関や大企業のトップの名がならんでいる。彼らは出席することはほとんどない。自分がそうした職にあることすら忘れている人もいるのではないか。
 日赤の硬直性が骨髄バンクの改善を遅らせたのは間違いない。日赤は「やりたくない業務を依頼されて仕方なしにやっている」というスタンスを取ると同時に、「ドナー検索は日赤の専管事項」として囲い込んできた。こうして日赤は、その他の業務において厚生省から予算や条件を引き出すため、骨髄バンク業務を交渉用カードに使ってきた。
 こうして骨髄バンクは厚生省、日赤、医師らのおもちゃにされ、翻弄され、改善が進まなかった。彼らは意識的に骨髄バンクを食い物にしたわけではないかも知れない。ただ、こうした状態にしておくのが彼らにとって都合が良かったのは間違いなく、罪が減るわけでもない。彼らがやるべきことをやっていれば、もっと多くの患者さんの命が助けられた。
 ではどうすれば良いのか。まず、責任逃れの三角形を崩すことが必要だ。やるべきことのいくつかを箇条書きにすれば、次のようになるだろう。
1 厚生省から財団への天下りを禁止。厚生省の監督責任の明確化
1 財団に運営の権限を実質的に与える。事務局長をCEO(最高経営責任者)型にして権限と責任を集中。理事会、評議会のメンバーは骨髄バンクに関心がありかつ出席できる人に絞って大幅減員する
1 日赤が骨髄バンクのネックとならないようにする。日赤から財団にデータを移管する。検査などは日赤以外にも発注
1 骨髄バンク・オンブスマンを設置する。情報公開を徹底する
1 財団の企画管理委員長は医師以外から選ぶ

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