KENの超・闘病法からの N e w s 〜過 去 記 事

- [2] (98.3.3〜3.31)-
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98.3.31 ◇◇ロビイング・キット◇◇

 骨髄バンクの理事・評議員への要望書を渡した。ご参考に
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骨髄移植推進財団 理事・評議員 様
       98年3月30日
お願い

 私は白血病患者の遺族であり、骨髄バンクのサポーターとして運動をしているボランティアです。あなた様が理事あるいは評議員メンバーになられている骨髄移植推進財団では、さまざまな問題が噴出しております。ここに要望書と資料をお届けします。
 骨髄バンクが多くの方の救命に貢献していることは事実です。ところが、毎年、コーディネートが間に合わなかったり、ドナーが見つからずに亡くなられる患者さんがあとをたちません。昨年11月の公開フォーラムでも明らかになりましたが、骨髄バンクは多くの問題点を抱えています。日本骨髄バンクは国際的にみて「遅い、小さい、高い」という状態になっています。われわれは、日本骨髄バンクが早期に改善を行っていれば、さらに数百人の患者の命が救えたと試算しております。逆に言えば、改善が遅れたことでわれわれは数百人の命を犠牲にしてしまったわけです。これ以上の過ちは許されない状況です。
 日本および世界の患者に貢献できるように。抜本的かつ包括的な改革が不可欠になっています。設立時に決めたことが十年一日のように変えられることなく、骨髄バンクは停滞し、さまざまな弊害が出てきております。
 ここに要望書と資料をお届けします。あなた様は骨髄バンク運営の最高責任者の一人です。骨髄バンクの改善に影響力を与える立場にいらっしゃいます。また、骨髄バンクが患者を助けるチャンスをたくさん失っているのはあなたの責任でもあります。ただちに骨髄バンクの内情を把握され、抜本的な改革に取り掛かるために影響力を行使されますよう、お願い申しあげます。
 骨髄バンクの盛衰、あるいは多くの患者さんの命はあなた様の行動にかかっています。抜本的改革をぜひ実現させていただけますよう、闘病中の患者一同ともどもお願い申しあげます。

☆☆ご存じですか? 日本の骨髄バンクはこんな組織――☆☆
1 米国バンクはドナー登録者約300万人、コーディネート期間約3カ月半。日本では約10万人、約7カ月。日本では骨髄バンクに登録したドナーから提供を受けると、患者負担金が数十万円かかる。米国の患者にはほとんどの場合、医療保険が支払ってくれる。オーストラリアなどでは政府が負担している。「遅い、小さい、高い」――。日本の骨髄バンクは、世界の水準から大きく遅れてしまった組織。
2 コーディネート期間短縮、国際提携、費用の医療保険適用申請、ドナープールの拡大など。やるべきことを早期にやっていれば、あと数百人の命が助かった。多くの患者の生存のチャンスを「不作為の罪」で奪った組織。
3 国際提携がなかなかできない組織。日本の外でも適合者がみつかる可能性は高い。なかでも米国には、日本の骨髄バンクに匹敵する人数の在米日本人の登録者がある(現在の推定約10万人)と、早くから知りながら、提携に難色を示してきた。米国と提携が結ばれ検索がはじまってから、日本でドナーが見つからない人の5割が米国で適合者を見つけている。韓国とは、1割の人が適合すると推定されている。だが、提携は遅れる一方。BMDW(ボーンマロードナーワールドワイド=国際的なドナーデータベース)への登録も2、3年前にやればできたのに、やっとこれからやるところ。国際提携が早期に行われていただけで、あと200人程の命が救えていた。
4 日赤のコンピュータはダウン寸前。ドナー登録データベースと検索の機能を担っているコンピュータに、7年前のマシンをそのまま使っている。いつダウンしてもおかしくない状況。これに対応策が打てない組織。
5 いっこうにコーディネート期間を短縮できない組織。最初に決めた前近代的なやり方を変えられない。たとえば書留郵便で日赤と患者登録のデータをやりとりしているのが、その典型例。
6 日米不公平問題を起こす組織。米国向けだけに予備検索を行って、国内向けにはやっていなかった。患者の命に差をつけた。そして、不公平が生じていることを幹部はまったく知らなかった(と言っている)。
7 大量の未収金を作った組織。ピーク時約3500万円の未収金があった。回収不能は約2000万円に上る見込み。未収金の補足、再請求、督促などがほとんど行われていなかった。誰がこの問題を統括しているかもはっきりとしない組織。
8 監督官庁に虚偽の報告をする組織。未収金問題について厚生省から監査を受けたときの事情聴取に対し、「1年に1度、まとめて督促をしていた」と説明。実際は、一度も組織だった督促作業をしたことはなかった。
9 監督官庁から行政指導を受けた組織。未収金問題と公印管理について不備があると行政指導を受けた。
10 全体的に指導力と責任力が欠如した組織。

 信じられませんか? 信じ難いでしょう。でも次の資料を読んでくださればそれが真実だと分かります。添付するのは私がインターネットのホームページで提供している骨髄バンク関連ニュースです。また、私が1年あまり前に書いた日米骨髄バンク比較と日本の骨髄バンクへの改善提案も添付します。ご参考になさって下さい。1個人の私には調査能力に限界があります。理事、評議員であるあなたの権限を使って、ぜひもっと調べてみて下さい。あなたには知る権利と義務があります。

KEN 骨髄バンク推進ネットワーク・メンバー
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骨髄移植推進財団 理事・評議員 様
         98年3月30日
「要望書」

 骨髄移植推進財団が骨髄バンクのドナー検索、検査、コーディネート費用が保険適用になるよう、厚生省と関係各所に要望されますように、強く要望いたします。

KEN 骨髄バンク推進ネットワーク メンバー
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骨髄移植推進財団 理事・評議員 様

「要望書」
98年3月30日
 私は白血病患者の遺族です。骨髄移植推進財団が患者に世界レベルのサービスを提供するため、以下のような改革を行うよう、強く要望いたします。
 
1 患者負担金への保険適用を早期に実現するよう働きかけて下さい。
2 期間短縮。コーディネート期間短縮(3カ月に)の目標を掲げて下さい。
3 情報公開と外部意見の導入を実施して下さい。具体的には、オンブズマンの設置、情報公開の促進、理事会・評議会と各委員会の公開などをお願いします。
4 組織の責任体制の明確化と組織の刷新。骨髄移植推進財団が指導力と責任体制がとれるよう、組織の刷新をお願いします。また、厚生省の責任と行政指導の明確化、日本赤十字の役割分担と責任の明確化もされるようお願いします。
5 大量の未収金が発生したことについては、あなたにも取締責任や監督責任があります。理事、評議員が応分の金額を支払って下さいますよう、お願いします。
6 理事、評議員の減員。骨髄バンク事業に関心がない方、会議に出席できない方はメンバーから辞退していただくようお願いします。理事会、評議会が機動的に開けないことが改善のネックになっている部分があるからです。

KEN 骨髄バンク推進ネットワーク メンバー
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98.3.31 ◇◇理事会・評議員会レポート◇◇

【重要点】
☆理事会・評議員会の傍聴をお願いした。傍聴はできなかったが、今回の行動の結果、次回からは傍聴が可能になるだろう。
☆未収金問題、不公平問題などについて、事務局から率先して詳しい説明をしたり、陳謝することはなかった。自分から都合の悪い情報は全く出さない。質問がなければ、まったく触れずに済ますつもりだったようだ。呆れるばかりだ。またまた経営能力のなさが露呈した。全く常識がない組織。これでは社会的に通らない。理事・評議員もこれには驚いただろう。
☆予算案は通った。ドナープールを長期的に30万人。当面20万人を目標とすることなどが盛り込まれた事業計画も通った。予算案には反対もあった。赤字が大きく不健全という理由の反対だった。
☆以下、経緯と配布資料を付けます。配布資料はこれにKENのHPのニュースコーナーのコピーなどをつけました。ほとんど会議のあとになってしまいましたが、多くの理事、評議員がこれを読んだと思います。こうして理事・評議員への啓蒙活動をしたことで、6月の決算時の理事会、評議員会からはガラリと変わったものになるでしょう。
☆6月にはズバリ傍聴可能になると思います。事前に要望文書と資料を全員に郵送し、会場でもチラシを配りましょう。そして傍聴しましょう。
☆今回は、事前に資料を配布→議論が紛糾→大改革へ、というわけには行きませんでしたが、確実に成果はありました。
☆田中常務理事に「財団から厚生省にドナー検索、検査、コーディネート費用への保険適用について、正式要望するよう」お願いした。いまがチャンスなのにそれが分かっていなかったよう。いま本当にチャンスなんだけどなあ。
【経緯】
朝9時過ぎに野田さんに傍聴をお願いしようと電話したが留守。昼聞くと、矢澤さんは、そのころなら野田はいたのでは、というのだが。また居留守じゃないでしょうね。
会場に着いたら12時20分ごろ。ほとんどのメンバーはすでに席について弁当を食べている。
KEN「理事会の傍聴をお願いしたいのですが」
矢澤さん「そりゃ。ダメですよ」
KEN「なぜですか」
矢澤さん「前例がない」
KEN「前例がないというのは理由になりませんが、規則はどうなっているのですか。非公開と決まっているわけではないでしょう」
矢澤さん「明確には決まっていないが・・」
KEN「配りたい資料があるのですが、まだ会議が始まってないし、入って配らせてもらえませんか」
矢澤さん「それは無理ですよ。事前に言ってもらえば何とかするのに。理事会の日程なんかずっと前に決まっているのだから。資料についても、事前に早く申し出てもらえば、例えば、配布資料に添付するといったことも考えられる」「とにかくこういうやり方は困る。こういう場ではコトの次第というのがあるから」「議事録はすべて公開されるのだし」「理事会が終わってから出席者に取材して下さい」
KEN「それが正式の答えなのですか」
矢澤さん「野田事務局長が来たら正式に返事します」
日赤の草刈技監がいらっしゃった。僕を見るなり早足で寄ってきて大きな握手。「やあ、ありがとう。あんたのおかげでやりたいと思っていたことがやっとできたよ」。肩をポンポン。「ファクスでお返事しようと思っていたけど、できなかって悪かったね」と言いながら会議室へ。何を指しているかというと、日赤がBMDWへの参加や予備検索の実施のために、データベースの解放をしたことだ。野田さんが駆けつける。挨拶したが、そのまま会議室へ。矢澤さんが傍聴について説明して下さって野田さんが対応して下さると期待するが、そうでもなさそうなので、廊下から「すみません。どうなりましたか」と尋ねる。野田さんが廊下に出てくる。
KEN「傍聴できるかお尋ねしていたのですが、どうなりましたか」
野田さん「では、みなさんが揃われたら、最初に傍聴を認めるか尋ねます。全員賛成ならOKにします。そうでなければ駄目ということに」
(なぜ過半数でなく、全員一致なんだろう=KEN)
KEN「ではそうして下さい。お待ちしております」
野田さんと田中さんが何やら打ち合わせをしている。
そこへ厚生省の朝浦さん(財団を管轄する臓器移植対策室長)がいらっしゃった。「やあKENさん」と廊下で5分ほど話す。矢澤さんが「朝浦さん始まりますのでお入り下さい」。でも朝浦さんは「1時からだろう。まだじゃないか」(このとき53分ぐらい)と話を続ける。
2時ごろ会議始まる。ドアが閉められて中の話は全然聞こえない。さあ、傍聴できるかな?
10分ほどして野田さんが出てくる。
野田さん「傍聴については駄目となりました。後で事務局に取材していただくということにしたらどうか、という意見が多く出たので、そうしていただきたい。今後のことについては検討する」
KEN「傍聴について反対する人がいらっしゃったのですね。議決は何対何でしたか」
(さて何人が具体的に反対の発言をしたのだろうか。そして、それは誰か=KEN)
野田さん「議決は取りませんでしたが、そういう意見が多くて・・・」
KEN「中途半端な処置で、おっしゃっていることが良く分かりません。とにかく理事メンバーに諮って、傍聴が駄目と正式に決まったのですね。それなら、外で待ってますよ。評議会でも傍聴の是非を聞いて下さいね」
 今日は出席者が多かった。KENのカウントによると12人。最高記録に近いのではないか。小池○、高久○、浅野○、岩尾○、氏家×、加藤−、海老沢×、草刈○、倉田−、小池(唯)×、小寺○、斉藤○、竹中○、田中○、土屋×、坪井×、中原×、西村○、平岩×、三浦○、柳田×、吉矢×、鷲尾○、樋口・代理、近藤・代理。(未確認)
2時少し過ぎに終わる。蜘蛛の子を散らすようにみんないなくなる。高久先生はすぐ待たせた車に。野田さんが追っかける。ここで出てくるメンバーにようやく資料を5通ほど配る。
すぐ3階で評議員会がはじまる。2階で理事にも資料を配りたいし話も聞きたい。でも3階の評議員会の前に資料を配らなくては。一人じゃ手が足りん。
3階に行くと、もうほとんどの人が着席すみ。資料を配り損ねる。
遅刻した人など数人だけに配ることに成功。
2時15分スタート。じっと2時45分まで待つ。おかしい。ドアを開けて財団の町田さんを呼ぶ。
KEN「傍聴をお願いしていたのですがいったいどうなったのですか」
町田さん「少々お待ち下さい」
しばらく待っても返事がない。またドアを開けて町田さんを呼ぶと、「今、傍聴について審議されています。もうちょっと待って下さい」と町田さん。
何だ。約束が違う。冒頭に諮っていなかったんだ。これはひどい。
しばらくして町田さんが出てくる。
町田さん「いま、今回の評議会は傍聴を認めないということで決まりました」
KEN「議決をとったのですか」
町田さん「はい。全員一致で今回の評議会は非公開ということに。ただ公開については今後の検討課題ということになりました」
(実際は議決を取らなかったし、全員一致ではなかった=KEN)
これ2時55分ごろのこと。
しばらくして野田さんが出てくる。3時10分ごろ。
野田さん「傍聴については、極論も出たが(KEN注=賛否両論あったということか、賛成が極論だったということか?)、公開すべきという声もあったと同時に、情報公開と傍聴は別のことだという意見もあり、今回は非公開ということになった。ただ、今後の検討課題としては、協議会の公開を考えて検討し、公開するなら公開する、ということでやっていく」
KEN「なぜ最初に諮っていただけなかったのですか」
野田さん「いや、私、最初、あの、その、バタバタしていて、まず事業計画を説明してからということで、傍聴の可否を諮ったわけです。今やったのでなく、少し前に決まったことですが、今お知らせにきたわけです」
(要するに何故だか知らないが、最初に言いだしかねてしまったようだ。一時が万事いいかげんだなあ=KEN)
評議員会終了。ほとんどの人に資料を配ることに成功。さてどんな反応があるだろうか。
野田さんに理事会・評議員会の内容について取材を申し込む。「すぐ次の用事がある。残った誰かに聞いて下さい」と行ってしまう。「傍聴は認めないが、終わってから事務局に取材してくれ」と言ったのに約束が違う。
中に入って田中常務理事に話を聞く。
KEN「未収金問題についてはどのような報告、議論がありましたか」
田中さん「文書で報告することはしませんでした。まだ数字も固まっていないし調査中ということだけ申し上げた。紙を出すべきだったかも知れないが、数字も明確でないことだから、6月の決算についての理事会、評議員会のときは詳細にご説明する」
(未だに田中さんは未収金の実態を把握していないようだ=KEN)
KEN「厚生省から監査指導を受けたことは報告されましたか」
田中さん「いいえ。触れませんでした。理事長、副理事長にはすでに報告していますから。それに予算作成のときには、発生主義でやるということを申し上げたので、発生主義でやると未収金が発生するのは当然ですから、すでにご承知いただいたということになります。未収金については厚生省から指摘されたのではなく、こちらから未収金について監査指導を申し出たということですし」
(言い訳になっていない=KEN)
KEN「予備検索については?」
田中さん「いつスタートかまだ不明です。準備中ということ。私はどこまで詰まっているか、そこまでは知りません。今日も質問がありましたが、事務方は明確な返事はありませんでした」
KEN「日米不公平問題については、何かあったのか」
田中さん「評議員会では陽田さんが取り上げられました。理事会では日赤の草刈さんから、結果的に不公平になっていたのは申し訳なかった、とのお話がありました」
(財団事務局はこんな大事なことを説明しなかったのか?=KEN)
KEN「コーディネートの迅速化については?」
田中さん「特に何もありませんでした」
KEN「その他には?」
田中さん「土日説明会を財団がやることにします。予算を950万円付けました」
KEN「ドナープール拡大については?」
田中さん「年次計画立てろと言われているが、それは難しい。今回、財政の裏付けナシではあるが、長期的に30万人、当面20万人を目標に掲げることにした。
この後、田中常務理事に「財団から厚生省にドナー検索、検査、コーディネート費用への保険適用について、正式要望するよう」お願いした。田中さんは「分かりました。検討します」とメモをとっていた。厚生省は財団から要望書が出ていない以上、動きが取れない。まったく戦略と情報収集能力と、潮目をみる力がないのだから。保険適用に全力を入れないなら、未収金を徹底的にやりますよ。
●追加。97年度は単年度赤字である。ホセカレーラス・チャリティコンサートでの3500万円がなければ、約4500万円の赤字。98年度は9000万円の単年度赤字。ほとんど繰越金を使い果たしてしまう。


98.3.28 ◇◇陽田案へのコメント◇◇

 ネットワーク型の組織イメージ、競争原理を取り入れている――などの点は評価できる。骨髄バンクのように自己改革できない組織にしてはいけない。骨髄バンクでの反省は生かされるべきだ。ただ、財源がはっきりしない。
 事業収入――。臍帯血供給側の1件あたりのコストを100万円として計上、とある。そして、臍帯血の供給によって事業収入を得るとなっている。つまり患者が負担するということか。提案者に尋ねてみたら、そうではなかった。
 陽田氏によると、「臍帯血に保険点数がついて、臍帯血と検索・輸送などの費用すべてがまかなわれることを想定している」とのこと。つまり患者負担はゼロないしそれに近いというわけだ。この点は明確にしておく必要がありそうだ。



98.3.28 ◇◇財団の理事会と評議員会◇◇

3月30日(月)、財団の理事会と評議員会が開かれます。
霞が関1−1−1 法曹会館 
12時 会食
13時 理事会 2階 寿の間
14時15分 評議員会 富士の間
財団の最高決定機関(名目上)で何がどのように決められるか注目。このところの問題がきっちり議論されるのだろうか。それともシャンシャン大会か。


98.3.26 ◇◇重大なドナー事故発生◇◇

(3月24日記)
 このほど骨髄バンクを介した骨髄移植で、重大なドナー事故が発生した。ドナー(20歳代。女性)が骨髄採取のあとC型肝炎による劇症肝炎になったもの。その後、順調に回復しているが、慢性肝炎などが残る可能性がある。原因は注射針などによる、院内感染が有力視されている。これまでの財団経由の移植でのドナー事故としては、小指の痺れの後遺症が残った場合があったが、今回の事故は史上最悪。かつて血縁移植では、都立駒込病院で麻酔事故によるドナー死亡者が出た。
 ドナー提供者になることに小さいながらリスクがあることが顕在化してしまった。もっとも、今回の原因は院内感染の可能性が高く、骨髄採取術に固有のリスクが出たわけではない。まず第一に、その骨髄採取病院の安全管理体制のレベルの問題である。そのせいで、骨髄移植のイメージが大きく傷つけられることになってしまったのは残念だ。原因の徹底究明や、病院名(長野県松本市の信州大学医学部付属病院)の公表など、責任が明確になることを希望したい。当該病院では当面、骨髄移植や骨髄採取は見合わされることになるだろう。


98.3.26 ◇◇取材こぼれ話◇◇

(3月25日記)
☆もっとファクスを☆
○声は届いた。臓器移植対策室は、保険適用要望書は「届いたし、受け取った。要望があることはこれで認識した」とのこと。「これまで財団などから、ドナー検索、検査、コーディネート関連費用の保険適用が要望されたことはあるのか」尋ねてみました。すべての綴りを点検した上で、「そういう要望があった事実はない」とのお答えをいただきました。
 つまり歴史上はじめて、この領域の保険適用の要望が行政に届いたのです。これまでいろいろな方々がこれを要望していたといいます。だけど、それは会議内の1発言であったり、非公式の雑談の中でだけだったとされているのです。何の証拠も残ってない。僕たちの稚拙なファクスが初めての文書となり、ごみ箱には行かずにファイルされる。こんなものでも、動きの契機となるのです。だから、もっと送ってね。
○ドナー事故。残念な事件が起こってしまいましたが、この事態をどう受けとめるかで骨髄バンクの成熟度が問われるのでしょう。財団、厚生省の情報開示や危機管理のやり方に注目です。院内感染の疑いが強いということで、骨髄移植界にとっては「もらい事故」のようなもので残念です。骨髄採取自体のリスクから起こったのでなく、病院の管理体制の問題だからです。その分、採取病院にはきっちりとした対応をしてもらいたい。
 われわれ骨髄バンクサポーターとしては(1)今回の事故を正確に把握して、問われれば誠実に説明する(2)普及啓蒙活動は平常心で行う−−ということを基本となる以外はないのでしょうね。
○臍帯血バンク問題についての国会質問をみた。うらやましい。5月末までに結論を出す、と局長が明言していた。小泉大臣もよく理解し、しっかり答弁していた。うらやましいがフォローの風、この勢いに便乗しよう。
(3月21日記)
☆19日の木曜日の夜のこと。6時?ごろからはじまった、財団の企画管理委員会は延々と続いておりました。KENはときどき財団に電話を入れました。ずっと会議は続いておりました。会議が終わったら、小寺先生(委員長)にKENの携帯に電話をもらうように伝言しました。財団の近くをうろうろしておりました。9時40分ごろ、小寺先生が出てきました。「あっ、小寺先生」と言う間も、追いつく間もなく、先生は表通りに出てタクシーを拾って行ってしまいました。名古屋行きの最終新幹線に間にあったのか心配。誰かのせいで、会議が長引いてしまったからなあ。申し訳ない。東京駅までタクシーで同行して話がききたかったけど、自分のミス。仕方ない。帰ろうっと。とぼとぼ。
 でも、せっかくここまで来たのだから、財団の方に戻ってみよう。そうだ。野田さんに話を聞こう。財団に電話。「野田はもう帰りました」とのこと。やっぱり、だめか。
 そのとき・・・。あっ、加藤先生だ。路上で10分ほど立ち話。不公平問題が発生しているのは加藤先生も知らなかったみたい。2点、クレームを受けた。まず、僕がHPに書いた、「加藤先生が『骨髄バンクの問題点が誇張されすぎている』と発言した」との表現について。「誇張でなく強調と言った。それは議事録でも確認できる」とのこと。小さなことだけど、そこまで僕のHPを熟読していただいているとは感動。訂正を約束した。
 もう一点は、医師がドナー調整費の医療保険認定に積極的でなかったとの表現。加藤先生はずっと提言されてきたそうだ。「その声は、どこで止まってしまったのだろう」とは思うが、これも訂正を約束した。そこでKENは加藤先生に、もう一度、医療保険適用を財団として取り上げていただくよう、お願いした。未収金については、少し前に議題になったので、すでにご存じだったそう。もちろん行政指導は今日までご存じなかった。主に、請求が医師経由であったこと、人道的に厳しい請求に躊躇していたことなどが原因だったとのご意見。「(立場は違うし、細部については異論もあるが)、おやりになっていることには敬意を表します」との、お言葉をいただいた。ファクス、電話で参加したみんな、この言葉ありがたく受け取りましょう。
 財団の前に行く。表口は閉まっている。裏口はどこかな。ひとつ裏の路地側にあった。駐車場の柵の柱の上に腰をおく。お尻が痛い。しばらくすると、どたどたガヤガヤ。裏口が開いて、団体が出てきた。財団の一行だ。
 田中常務理事、矢澤部長、山崎部長、秋山先生、弁護士の鈴木先生。それに帰宅したはずの野田事務局長もいる。野田さん。居留守使わないでよ。「今は手が離せません」でいいんだよ。「帰りました」じゃ、ウソになるよ。お互いフェアプレーしましょう。
 田中さん、矢澤さん、秋山先生、鈴木先生に話を聞く。なかでも、田中さんからいろいろ聞く。率直な意見も言わせてもらった。
☆19日の朝のこと。野田事務局長に未収金問題で電話した。監査指導を受けたことを知らなかった。「文書はまだみていない。日米不公平問題については、けん責以上のグレードの処分が出るだろう」とのこと。未収金について「私は経理のことはそれほど知らない」との発言。いろいろ、要するに仕方がなかったみたいな話。KENが「それじゃ世間は通りませんよ」と言う。「おっしゃる通りかもしれないけど・・」と野田さん。
野田さん「未収金問題は私の担当じゃない。田中常務理事の領域だ。とくに分担を分けているわけじゃないが、お金は田中に任せている。事務局長だから私医の管轄かも知れないけれど、骨髄バンクは急速に大きくなって業務が増えて、とても自分のやらなきゃいけないことも手が回らない状態。経理は任せている。私はここでは異端者ですよ。厚生省文化と、古くからいらっしゃる財団採用職員(プロパー)の間で、私みたいな民間出身者はね・・・。私は言ってみれば“やとわれマダム”ですよ。私はいつでもやりたいことやって、いつでも処分だって受けてもいい。でも、なかなかここではやりたいようにやれない」
 定年問題についても聞いてみた。(97年3月末で野田さんは本来、定年、退職になっているはず。それが、何の決定もなく延長になっている)。
野田さん「規定では定年が切れているが、諸般の事情から延長になっているということだろう」
KEN「どんな機関決定が行われたのですか」
野田さん「(私を引っ張ってきた)高久副理事長がそうすることにして、小池理事長に一言話した。それで了承されたことになった。正式には何もない。私は定年をこえてしばらくするまで、定年規定も知らず、自分が定年をこえていることも知らなかった」
KEN「野田さんのバックについている高久さんは実力者だ。野田さんが改革をやりたいと思っていらっしゃるなら、プッシュしてもらえばいいではないか」
野田さん「高久は医療の分野では実力があり、何も言わなくても、手振りだけで医療界が動くほどの力はある。でも骨髄バンク全体の仕組みについてはそうではない。高久が小池さんに話しても、小池さんは骨髄バンクのことがよく分かっていない。高久が相談しても、高久はあくまで「副」理事長だから。小池さんは元厚生省の事務次官で、元日赤の副社長ですよ。骨髄バンクは、いろいろな関係者がいて魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界です」
☆田中常務理事との話の要旨。未収金問題で失敗をしたのでなく、手柄をあげたと思っていらっしゃる節があるので驚いた。
田中さん「私は何もしなくても良かったんです。任期中、黙り通していれば良かったんです。でもそれでは私の良心が許しません。あえて、2年前?に債権発生主義に経理基準を変えて、未収金の項目をつくりました。前任者がいいかげんなやり方をしていて、ずっとそのままになっていた。私はここに来たときからこれが大きな問題になることが分かっていました。だから、仕掛けたんです。今回も、厚生省が未収金を問題視していたわけではありません。自ら、私が申し出て、説明して、監査処分を出していただいたのです」(さばさばした表情である)
KEN「自分が猫の首に鈴をつけたというわけですか。田中さんのその義憤には敬意を表したいと言いたいところです。でも、外から見たらそれはちょっと違うのではないでしょうか。田中さんが財団にいらっしゃってから3年?ほど経っていますよね。その間に未収金はどんどん増えてきたのです。未収金が見えるようにしたということだけで、済む問題じゃありませんよ。そもそも、狭いオフィスじゃないですか。数メートル歩いて行って、担当者に“再請求、督促もしっかりやってね”と一言かければいいじゃないですか。すぐ直せたはずです」
田中さん「そうは言ってもねえ。古くからいらっしゃる方は、みなさん、自分のやり方があり、プライドをもってやってらっしゃる。それが簡単なことではないんです」
KEN「どうして厚生省から監査指導が出たことを事務局長がすぐにご存じなかったのですか」
田中さん「理事長に報告してから知らせようと思っていた」


98.3.24 ◇◇臍帯血バンクのイメージ(陽田案)◇◇

 3月23日の臍帯血検討委において、臍帯血バンクのイメージ図が3委員から出された。そのうち陽田案を掲載する。加藤先生案,西平先生案も掲載の用意があります。掲載をご希望でしたら、テキストベースで私に電子メール下さい。表、図などは基本的に掲載できません。
                             平成10年3月23日
     臍帯血バンクの組織に関する提案(資料)

                       臍帯血移植検討会
               委員 陽 田 秀 夫
    T  臍帯血バンクの組織づくり方針(案)
      U  臍帯血(非血縁)需要数の予測
      V  臍帯血ストック目標(案)
      W  収支計画(案)
      X  臍帯血バンク組織図(案)
      Y  組織イメージと母体組織の条件(案)
T 臍帯血バンクの組織づくり方針(案)
 1.中央集権的でない組織(ピラミット型ではなくネットワーク型で)
2.意思決定が民主的でかつ速やかにできる組織
 3.患者本位を最優先し、情報公開を積極的に推進できる組織 
 4.効率性を追求し、最小限の経費で運営可能な組織
5.自主性・独立性を高め、行政依存を最小限とする組織
 6.クオリティとサービス面での競争性を導入する組織
U 臍帯血(非血縁)需要数の予測
1.骨髄バンクの患者登録数(直近の1年間)
年 令平成9年2月末平成10年2月末1年間登録数
0〜 5才
6〜15才
525
1,010
661
1,238
136
228
小 計1,535(31.1%)1,899(30.9%)364(30.0%)
16〜25才
26〜35才
36才以上
1,307
1,018
1,071
1,607
1,254
1,386
300
236
351
小 計3,396(68.9%)4,247(69.1%)851(70.0%)
合 計4,9316,1461,215
           (財)骨髄移植推進財団の資料より
 2.需要予測の考え方
 骨髄バンクの患者登録数は1年間で15才以下が364人である。臍帯血移植適応患 
 者の場合、体重と細胞数が関係するので単純な比較はできないが一応の参考となる  
数と考えられる。
  また、海外の需要数は現在予測不能である。将来的には医療の進歩にともない需要 
 数は大きく変動することも考えられる。
しかし、需要数の予測はバンク組織を考える上で極めて重要であり避けて通れない。
とりあえず次頁以下のシュミレーションは300〜400と予測して行っている。
さらには、供給数となると適合率と移植施設全体のキャパシティも関係するので今 
 後の検討においては移植施設の調査内容も加えて思考する必要がある。
V 臍帯血ストック目標(案)
 本検討会の第2回資料−5で提示された年間960件の採取保存をする場合の概算を基 
本とした。(別表−1)
 3年間である程度のストックを目標とし4年目以降は採算を考慮し採取数をペースダ 
ウンしている。
 また有効率は何の根拠もない。専門的な意見を聞きたいところである。(採取数がイコ
 ール保存数とはならない。保存数からさらに利用できないものを減ずるとどのくらい 
を有効数と考えるべきなのか?)供給数は前年度ストック数の5%見込んで100を天井
 と想定した。(地域バンク1ヶ所当たり)  
(別表−1)(略)
W 収支計画(案)
 地域バンク1ヶ所当たりの収支計算を試みた。(別表−2)(略)
 1) 資本 
HLAデーター管理のためのコンピューターシステム及び液体窒素タンクといった
初期投資額については全額補助金によるものと想定した。50,000千円とい
う金額は特に裏付根拠はない。初期投資は3年程度に分割して行うことが考えられ
るが計算上は創立年度一括とした。
補助金依存度を低くするため資本収入の部に借入金200,000千円 を導入している。
借入金も創立年度に一括計上しているが実際には3年間に分割となるであろう。
2) 事業収入
   臍帯血供給側の1件当たりのコストを1,000千円として計上。
供給数が予測数より少なくなる場合はコストアップとなる。
3) 事業外収入
補助金は借入金の利子補給。3年間に限定して計上。
寄付金は毎年10,000千円
づつ計上。地域バンクの努力と創意工夫で寄付金はかなりの増加が見込める。
受取利息は少額のため計上していない。
4) 事業支出
第2回資料−5をそのまま計上。処理保存の部分は液体窒素タンクの分を除いて 
  いる。(資本支出に計上)
一般管理費は人件費を含めた事務費等。連絡協議会の必要経費もここから拠出。
5) 事業外支出
支払い利息は年利3%で計上。
6) 借入金返済
返済は3年据え置き。その後7年間で返済。
創立から10年で返済完了。
7) その他
単年度収支で4年目から黒字となる。
所得税等は考慮していない。
物価スライド分も見込んでいない。
(別表−2)(略)
X 臍帯血バンク組織図(案)
 臍帯血バンク組織は図−1に概念図を示す。地域バンク組織の充実が重要。内部チェ 
ック機能を必ず保有する。
HLAデーターは一元化するのではなく共有化する。またデーターを公開することで患 
者登録窓口は不要。適合する臍帯血がどこに保存されているか解ればコーディネート が
不要なので患者側が直接地域バンクにアクセスすれば良い。但し予約の時点からキ ープ
できる期間を限定する必要がある。
 臍帯血バンク全体の調整はそれぞれの地域バンクから人と予算を出し合って連絡協議 
会を組織する。
 品質、適応、成績の評価等については第三者機関が行う。
 諮問機関を設け定期的に外部の意見を聞くこととする。
 骨髄バンクとの連携については患者相談・国際協力において共同事業化を検討する。
 搬送業務は採取時は地域バンクの業務。供給時は移植医療機関側の責任において行う。

臍帯血バンク組織図(案)(略)
Y 組織イメージと母体組織の条件
 1) 地域バンクのイメージ
  ・予算、人事面で独立性を保つ。特に独立採算は必要条件。
・効率を考慮し業務は集積化した方が望ましいがクオリティとサービス面での競争 
  性を高めるため複数とする。その意味で3ヶ所程度が理想か? 多くても5ヶ所  
 まで。
・標準化された共通のルールによって運営される部分と地域の実情によって、それ 
  ぞれの方法で運営されるものと区分について十分な合意形成が必要。 
・地域バンク内に意思決定機関やチェック機能を保有する。
  ・地方自治体やボランティアが参加協力できる仕組みづくりを考える。
 2) 連絡協議会のイメージ 
  ・各地域バンクが人と予算を出し合って運営する。
  ・内部に委員会等を設け運営面、技術面等について連絡調整する。
  ・各地域バンクに指示命令を与える組織ではなく連絡調整の組織。地域バンクとの 
  関係が本部・支部または本社・支社といった上下の関係にはしない。  
 3) 地域バンクの母体となる組織の条件
  ・非営利、免税、経済行為(借入金等)の可能な組織(法人)
  ・採取、分離、検査、保存等の設備面、人材面で信頼される組織(部分的には委託等
   による協力関係でも可)


98.3.21 ◇◇医療保険適応の要望書(ロビイングキット)◇◇

 みなさん。次の正念場がやってきました。できるだけ多くの方の協力が必要です。あなたの小さな行動が行政を動かします。多くの患者さんを一挙に助けます。
 1週間以内に骨髄バンクを管轄する厚生省臓器移植対策室に300通、医療保険を管轄する厚生省保険局医療課に500通−−。これだけファクスが届けば、ドナー検索・コーディネート料が医療保険でカバーされるようになる可能性がかなり出てきます。
 みなさん、ファクスの送付をお願いします。自分たちの手で、希望を届けていきましょう。この大きな転機に、参加しましょう。
 以下のキットはまだ第1版。これから改訂するかも知れません。とにかく速拙でもスピードがインターネットワーカーの本領。どんどん送り始めましょう。論理、裏付けなどで追加材料を見つけたら、順次、改訂しますので、再送付を行って下さい。
 とにかく送ってみることが大切です。あふれる思いにキリはないでしょうが、作文に時間をかけることはありません。簡潔で行きましょう。とりあえず、送ってみて下さい。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

厚生省保険局医療課 課長 今田 寛睦さま
   電話 03-3503-1711
   ファクス 03-3508-2746

厚生省 臓器移植対策室  朝浦 幸男さま
   ファクス 03-3593-6223

要望書
【文例1】
 私は白血病患者です(元患者です。ドナー登録者です。遺族です。骨髄バンク推進に協力するボランティアです)。骨髄バンクのドナー検索・コーディネート・検査費用などを、医療保険が適用とするよう強く要望します。
名前(署名)

【文例2】
  私は白血病患者です(元患者です。ドナー登録者です。遺族です。骨髄バンク推進に協力するボランティアです)。毎日新聞で次のような記事を読みました。骨髄バンクのドナー検索・コーディネート・検査費用などを、医療保険が適用とするよう強く要望します。
名前(署名)

(添付)
厚生省、骨髄バンクを行政指導
−−患者負担金3千万未収、「保険適用あれば…」の声98/03/20毎日新聞 朝刊
 厚生省は19日までに、日本の公的骨髄バンクである「骨髄移植推進財団」(事務局・東京都新宿区)に、初の行政指導を行った。改善を指摘されたのは、「患者負担金の徴収制度」など財源に関する部分。患者がバンクに払わなければならない負担金のうち約3000万円が未収金で、バンクの財政を圧迫する恐れがあった。バンク側も制度の不備を認めているが、「骨髄移植に保険適用されていれば、こうした問題は起きない」という声も出ている。
 バンクによると、未収金があったのは、1995、96年度と、97年度上半期分。1141件約3000万円の患者負担金が支払われていないという。
 通常、骨髄移植を希望する患者は骨髄バンクに患者登録し、コーディネート、検査などを経て、移植にこぎつける。この間、バンクに対して「登録料3万円」「コーディネート料10万円」「ドナー傷害保険料14万1000円」などを支払う。移植までに50万〜70万円程度かかり、死亡や症状の改善などで途中で打ち切る場合もある。
 これまでの徴収方法は、バンクが直接患者や家族に請求することはなく、主治医を介して請求書を送付してきた。しかし、主治医の中には、死亡や重篤になった患者に請求をしなかったり、請求そのものを失念したりする例もあったという。また、バンク側も請求書の到達や支払いの確認を厳密に行ってなかった。その結果、未収金が多く膨らんだ。
 一方、骨髄移植は保険適用されていないため、患者負担の大きさは以前から指摘されていた。「保険適用されていたら患者の負担金はなく、こうした問題もなかった」という声もある。【宮澤勲、小野博宣】

【文例3】(KENが実際に送付するもの)
 私は白血病患者の遺族です(骨髄バンクのドナー登録者であり、医療保険金の支払い者であり、納税者であり、骨髄バンクのサポーター=寄付人であり、骨髄バンク推進に協力するボランティアでもあります)。骨髄バンクのドナー探しにかかわる費用を、医療保険が適用とするよう強く要望します。

「要望」 骨髄バンクでドナーを探すときの、ドナー検索・検査・コーディネートの費用を医療保険でカバーすること
 「理由」
(1)標準的治療:非血縁間の骨髄移植は、すでに実績と定評がある医療技術です。骨髄移植はもはや実験的治療ではなく、標準的治療です。骨髄移植が適応の患者にとっては、ごく標準的な治療である。
(2)一貫性:骨髄移植術と骨髄採取術には医療保険点数がついている。骨髄移植とは、検索・検査・コーディネート、採取、移植全体を合わせてこそ成り立つものであり、この一連の流れ全体が骨髄移植である。検索・検査・コーディネートの部分だけ保険除外しているのはおかしい。
(3)救命性:検索・検査・コーディネートを保険適用としていないことで、ドナーコーディネートに時間がかかっている。患者が入金しないと、コーディネートが先に進まない仕組みだからだ。だが、患者の元に請求書がすぐに届かないことがある。こうした時間ロスによって時間がかかることで、みすみす移植のチャンスを失う患者がいるのは、遺憾である。医療保険適応にすれば、患者が登録してから骨髄移植を受けるまでの期間が確実に削減できる(この期間は日本で7カ月、米国で3カ月半)
(4)骨髄バンクの財政的健全性:コーディネート費用を患者から徴収するのは技術的に簡単でなく、骨髄バンクに患者負担金の未収金が大量に発生する背景となっている。医療保険の適用とすることで、骨髄バンクの財政的基盤をしっかりしたものにしてやる必要がある。
(5)臍帯血移植との水準合わせ:臍帯血バンクが間もなく設立されようとしている。臍帯血移植では、臍帯血の検索、輸送、臍帯血自体のすべてに保険が適応となる見込みである。骨髄移植と臍帯血移植は、競争・競合する治療法であり、患者からみたコストレベリング(同一化)をしておく必要がある。同等にするには、骨髄バンクでの検索・検査・コーディネート費用をすぐにでも保険適応にしておく必要がある。
(6)世界レベルで標準的な患者サービスを提供する:日本は先進国であり、日本の患者は世界で先進的な治療を受けられることを目指すべきであり、日本にはそれを実現するだけの資源と技術がある。ドナー検索・検査・コーディネートの費用を保険がカバーするのは世界の主流であり、過半数になっている。医療先進国の日本がそうなっていないのは、国際的尺度でみても適切ではない。
(注:私の妻は日米両国の骨髄バンクでドナー探しをしました。そのときの体験を付記します)
 −−日本の患者さんが世間並みのサービスが受けられるようにしなければならない。世間並みのサービスの尺度を、例数がもっとも多い米国に求めてみよう。米国では検索は、患者(主治医)がストップをかけない限りどんどん前に進んでいく。もちろん、その都度、意思は確認されるが、患者はカネのことは一切気にしない。骨髄バンクが医療保険に請求し、事後的に保険がバンクに支払うからだ。だが、日本は違う。患者が銀行振り込みをし、その入金が確認されてから検索やコーディネートが先に進む。これでは一向にスピードが速くならない。両方のバンクを使ってみた実感だ。世界で行われている非血縁骨髄移植のうち、軽く過半数において、コーディネート関連費用が保険認定されているだろう。先進国の日本でそれがなされていないとは驚きである−−
 
KEN 骨髄バンク推進ネットワークメンバー (署名)


98.3.21 ◇◇未収金問題を毎日新聞が報道◇◇

 3月20日、われわれの問題提起を受けて、毎日新聞が「未収金問題」について報道した。「保険適用あれば」というのはまさに正論です。記者さん、ご苦労さんでした。さあ、われわれはこの記事を受けて動きましょう・・・
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
##見出し
厚生省、骨髄バンクを行政指導−−患者負担金3千万未収
「保険適用あれば…」の声(毎日新聞 朝刊)
##本文
 厚生省は19日までに、日本の公的骨髄バンクである「骨髄移植推進財団」(事務局・東京都新宿区)に、初の(KEN注:本当は初ではありません。監査指導は2回目です)行政指導を行った。改善を指摘されたのは、「患者負担金の徴収制度」など財源に関する部分。患者がバンクに払わなければならない負担金のうち約3000万円が未収金で、バンクの財政を圧迫する恐れがあった。バンク側も制度の不備を認めているが、「骨髄移植(KEN注:のドナー検索・コーディネート費用)に保険適用されていれば、こうした問題は起きない」という声も出ている。
 バンクによると、未収金があったのは、1995、96年度と、97年度上半期分。1141件約3000万円の患者負担金が支払われていないという。
 通常、骨髄移植を希望する患者は骨髄バンクに患者登録し、コーディネート、検査などを経て、移植にこぎつける。この間、バンクに対して「登録料3万円」「コーディネート料10万円」「ドナー傷害保険料14万1000円」などを支払う。移植までに50万〜70万円程度かかり、死亡や症状の改善などで途中で打ち切る場合もある。
 これまでの徴収方法は、バンクが直接患者や家族に請求することはなく、主治医を介して請求書を送付してきた。しかし、主治医の中には、死亡や重篤になった患者に請求をしなかったり、請求そのものを失念したりする例もあったという。また、バンク側も請求書の到達や支払いの確認を厳密に行ってなかった。その結果、未収金が多く膨らんだ。
 一方、骨髄移植(KEN注:のドナー検索やコーディネート費用)は保険適用されていないため、患者負担の大きさは以前から指摘されていた。「保険適用されていたら患者の負担金はなく、こうした問題もなかった」という声もある。【宮澤勲、小野博宣】
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98.3.20 ◇◇骨髄バンク、3000万円の未収金(3月19日発)◇◇

●●要約。骨髄バンクには約3000万円の未収金がある。うち2000万円は回収不能に陥りそう。うち1500万円については放漫経営から発生したと言える。骨髄バンクは未収金の督促作業をほとんどやっていなかった。骨髄バンクはピンチであるが、骨髄バンクを大きく改善するためのチャンスでもある。
●●望むこと。昨日のロビイングキットに書いたとおり。そこに「ドナー検索、コーディネート費用を医療保険認定するよう働きかけること」をつけ加えます。
 今日は大量の取材をしたが、重要点は次のとおり。
■ポイント
○野田尚子事務局長は3月12日付けで監査指導が出たことを、3月19日の朝現在、知らなかった。KENから電話で聞いたのが初耳だった。監督官庁からの指導を実務の最高責任者が知らなかった。骨髄バンク内の意思疎通に大きな問題がある。田中常務理事は「理事長に報告してから事務局長に伝えようと考えた」というが、常識では考えられない。組織として、当局の指導を軽くみる態度と言われても仕方がない。また、野田事務局長は「督促作業が行われていないのは知らなかった。やられているものと思っていた。実態的には私の担当ではなかった」と述べた。また、組織としてテイをなしていないことが明らかになった。
○寄付金で立て替えていた
 骨髄バンクから、「未収金は、いずれ入ってくるものとして、寄付金による一時立て替えを行っていた」との発言があった。寄付金という浄財が、放漫経営の穴埋めに使われていた。
○「虚偽の報告疑惑」。厚生省は「財団から、1年に一度の督促は行っていた、と説明を受けている」との認識。骨髄バンクは、いろいろ言い訳をしたが、結局は「死亡、中止に関しては督促をした事実はない。バラバラに個別にごく一部にやったことはあっても、一括して再請求作業をしたことはなかった」と認めた。今年1月に初めて、一括した再請求を開始したのだ。骨髄バンクは、厚生省の監査に対して嘘の説明をしていた可能性が強まった。この点について厚生省は「われわれが受けている説明とは違う。確認する」とのこと。骨髄バンクは「実態を説明した。もし厚生省がそう受けとめていたとしたら、理解してもらっていなかっただけだろう」と言う。真実はひとつしかない。もし、虚偽の報告をしていたとしたら、骨髄バンクの根幹を揺るがす問題になるだろう。われわれに対する説明が不明瞭で変化し、言い訳が先行することからしても、疑惑はかなり濃いと言わざるを得ない。
○通達は間違っている。そして、間違った通達は適用されない。「早急に未収金の徴収を行うとともに、債権発生主義の原則に基づき未収金が生じないような費用徴収制度を整備すること」とある。だが、この後段の「債権発生主義」=「おカネをとってからサービスをする」というのは、政策として間違っている。理由は(1)サービスの後退になる(2)世界のサービスレベルの趨勢から遅れる(3)主治医を介して患者に請求が行っている現状では、振り込みの有無のすべてが患者責任に帰せられない--などだ。これは厚生省の朝浦室長に説明した。理解していただけたと思う。骨髄バンクにも説明した。「サービスを後退することはしないとの基本方針で進める」という感触を得た。出してしまった通達は取り消せないが、この点が実行を求められることはないとみる。未収金を督促してなかったことだけが問題なのだ。
○新請求システム。4月から請求が患者(家族)宛てに行く。
○責任問題。田中常務理事は「不公平問題」と「未収金問題」で、小池理事長からけん責処分を受けた。けん責処分といっても、何のペナルティーもなし。外からみるとなんらの責任をとることになっていない。それに筋論からいけば、社会的にペナルティーを受けるのは小池理事長本人のはずなのだが。

■未収金の実態(推定含む) 要するに「1500万円をドブに捨てた」
 約1500万円が財団の放漫経営によって失われようとしている。1500万円は経営責任を問えることになるだろう。
●未収金
未収金(患者負担金、検査・保険料の)
96年3月末 1958万8000円
97年3月末 2762万6750円
ピーク時    約3500万円(推定)
98年3月末 約3000万円(推定)

●98年1月現在の未収金件数  約2000件(のべ)

●現在の約3000万円の未収金のうち発生時点文責
95年3月以前            約800万円(推定)
95年度(95年4月〜96年3月)  610万5350円
96年度(96年4月〜97年3月) 814万8850円
97年4月以降   約700万円(推定)

●回収不能金額の推定 1500万円〜2000万円(推定)
分析1 3000万円の5割が回収不能とみた場合  1500万円
分析2 95年3月以前発生の10割、95年度発生の8割、96年度発生の6割、それ以降発生の4割が回収不能とすると
 800+480+480+280=約2000万円
分析3 97年3月以前のものを債権放棄するとしたら 約2300万円

●回収不能責任金額 約1500万円
 ちゃんと督促、回収作業を行っていたとしても、回収不能金額は発生したとみられる。督促、回収を怠った結果、「とれるはずのものを取れなかった分」は回収不能金額の8割とすると1200万円から1800万円が責任金額。間をとって約1500万円である。

●債権放棄の仕組み
 回収不能になったら、「もうこれ以上、未払い人の責任を追及しない」という債権放棄を行うことになる。その原則についてはまだ検討が進んでいない。民法上の時効がどれだけの期間で成立するかも不明。請求、再請求、督促などを最後にしてから一定の期間がたつと時効になる。3カ月、1年、5年、10年説が混在。たぶん、1年ではないか。厚生省は専門家に確認すると約束した。時効が成立しているものは、積極的に回収をすることはできないだろう。いずれにしても、公正で妥当な債権放棄の仕組みを作らなければならない。
○責任関係。骨髄バンクは、患者が最初の請求で払わない、医師が患者に請求書を渡さない、などの点を強調する。これは、きっちりとした督促、再請求の仕組みをもっていたときに、はじめて主張できること。やってなかったのだから、骨髄バンク以外を今回の未収金問題で責めることはできない。第1義的に骨髄バンクが悪い。誰に請求書を送るようにするか、これからのやり方の変更などは別問題。これまでの過失を、システムの欠陥論にすり替えるのはおかしい。
■To Do(やること)
○金曜日の毎日新聞の朝刊を読むこと。版によって記事が違うかも。都心版は小さくなっているかも。郊外に住んでいる方、注意して読んでみて。
○骨髄バンクと厚生省にファクスを送って! 助けて! 今日、厚生省に行ったとき、ひとつも他にファクスが届いてなかった。孤独だよ。みんな、昨日のロビイングキットでファクス送ってよ。
○ドナーコーディネート費用の健康保険認定を再度交渉するチャンス
これについてロビイングキットを近く作ります


98.3.19 ◇◇未収金問題のロビイングキット◇◇


財団法人 骨髄移植推進財団
          理事長 小池 欣一さま Fax 03-3355-5090
          副理事長 高久 史麿さま Fax 0285-44-5019
          常務理事 田中 Fax 03-3355-5090
          事務局長 野田 尚子さま Fax 03-3355-5090

(厚生省 保険医療局 疾病対策課臓器移植対策室 
          室長 朝浦 幸男さま Fax 03-3593-6223)

要望書

 私は骨髄バンクのサポーターであり、骨髄バンク普及広報を推進するボランティアです。骨髄バンクに大量の未収金が発生していることは、とても残念です。これにつき、次の7点を要望します。

1 未収金の金額。推移。回収見込み。損失見込み。こうした数字を詳細に国民に公開すること
2 管理者の責任と処分を行うこと。人事を刷新すること
3 未収金から発生する損失を、患者負担金や寄付金から一切補填しないこと
4 患者へのサービスを一切低下させず、むしろ向上させること。債権発生主義でなく事後的な徴収にすること。ただし、徴収・督促などの事務はきっちりと行うこと
5 コーディネート期間短縮とドナー登録者数について目標を定め、推進すること
6 患者、ドナー登録者、寄付者、納税者などに謝罪すること
7 ドナー検索、コーディネート費用が医療保険でカバーされるよう、強く働きかけること

名前(署名)


98.3.19 ◇◇骨髄バンクから数千万円が消えた(未収金問題)◇◇

 このほど、骨髄バンクに巨額の未収金問題が発生していたことが分かった。骨髄バンクが患者さんから徴収すべき患者負担金の徴収作業を怠り、大量の未収金が発生していた。骨髄バンクはサービスを提供しながら、ろくに集金もしない組織だったわけだ。このままでは骨髄バンクの存続に関わりかねない。
 この骨髄バンクで発生した大量の未収金に対して、厚生省が保健医療局長名で監査指導を出した。厚生省は2月23日に監査に入り、3月12日に指導を行った。行政当局がこうした行動に出るのはきわめて異例で、骨髄バンクの管理運営体制がまさに異常であったことを示している。骨髄バンクは監督官庁から落第の烙印を押されたわけだ。
監査指導の内容は次のとおり。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−引用
健医発第378号
平成10年3月12日

財団法人 骨髄移植推進財団
理事長 小池 欣一殿
厚生省保健医療局長

民法第67条第3項及び厚生大臣の所管に属する公益法人の設立及び監督に関する規則第9条に基づく監査の結果について

 平成10年2月23日に貴法人に対し実施した標記検査の結果、下記の事項については、是正改善を図る必要があると認められるので、現地において係官が指示した事項を併せ留意の上、所要の措置を講じられたい。

            記

(1)公印管理規定の整備
 事務処理を円滑に行うため、公印管理規定を早急に整備すること。
(2)未収金の整理
 早急に未収金の徴収を行うとともに、債権発生主義の原則に基づき未収金が生じないような費用徴収制度を整備すること。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−引用終わり

 平成8年度の骨髄バンクの収入・支出状況によると、収入総額5億9826万円のうち、患者負担金は3億0011万円となっている。数千万円の未収金のようだから、支出総額の5〜8%、患者負担金の10%〜10数%に当たる。寄付金は1億3306万円だから、下手をすると寄付金の4分の1とか3分の1が未収金の穴埋めに使われていた計算になる。これだけの未収金が発生していたのだから、骨髄バンクは資金繰りが楽ではなかったはず。普及啓蒙広報活動にも支障を来たしていた可能性がある。そうだとしたら、さらに罪は深い。やるべきこと、前向きのことができない組織だったわけだ。
 昨年の公開フォーラムで骨髄バンクの田中常務理事は次のように発言したことをご記憶の方も多いだろう。「私はケチです。無駄なカネは一切使っておりません。ところが骨髄バンクの収支には危機感をもっております。このままの勢いで支出が増えると、早晩、収入不足をきたします。患者負担金の増加を含めて、みなさんに広く議論、検討していただきたいと思います」。
 これは未収金問題を計算に入れての発言だったのだろうか。無駄がないとは聞いてあきれる。ろくに集金もしていないとは。管理不備で生じた穴を、値上げで埋め合わせようとは何と安易な発想だろう。まず、回収できるものは回収し、無理なモノは損切りし、その損害に対しては、責任問題と責任者による賠償を考えるのが筋ではないか。
 民間企業で大量の不良債権が発生して年間売り上げの5%の損失が出たとしよう。直接の担当者はもちろん、監督責任があるトップも連座するだろう。最近だったら株主の代表訴訟によって、取締役すべてが取締役の監督責任と賠償責任を問われるだろう。不良債権が発生したとたん、株式取引所に自ら情報開示をするのはもちろんだ。骨髄バンクの広報はなぜ、行政指導を受けたことを自ら発表しないのだろうか。
 気をつけなければならないことがある。未収金問題は患者にとっても直接、間接に被害を与えてきたと言えるが、この行政指導の結果、また患者たちが被害をこうむるかも知れないのだ。「債権発生主義の原則に基づき未収金が生じないような費用徴収制度を整備すること」とある。これは「カネを払わないと、コーディネートを先に進めないよ」ということだろう。ちょっと待ってほしい。これこそ本末転倒である。
 骨髄バンクは「患者のために」が第1義であるはずだ。日本の患者さんが世間並みのサービスが受けられるようにしなければならない。世間並みのサービスの尺度を、例数がもっとも多い米国に求めてみよう。米国では検索は、患者(主治医)がストップをかけない限りどんどん前に進んでいく感じだ。もちろん、その都度、意思は確認されるが、患者はカネのことは一切気にしない。骨髄バンクが医療保険に請求し、事後的に保険がバンクに支払うからだ。だが、日本は違う。患者が銀行振り込みをし、その入金が確認されてから検索やコーディネートが先に進む。両方のバンクを使ってみた実感だ。今回、この原則がルーズになっており、未収金が発生していたのだろう。関係者は「ウェットになっていた」と言う。ちょっと待て。これは日米検索不公平問題と同じだ。現場の善意で柔軟に運用していた、というわけだ。本当は、無法地帯(放漫経営)になっていただけだ。
 やるべきことの本筋はこうだ。
1 入金確認のまえにどんどん検索・コーディネートは進める
2 負担金はきっちり徴収作業をする(当たり前のことをするだけ)
3 先進国ではコーディネート費用を医療保険が負担するのが主流であるから、日本でも早急に保険適用を実現する。(抜本策を考える)(専門医がこの推進に熱心でないのには驚く。自分が珍しい治療をやっていると錯覚しているようだ。骨髄移植はもはや実験治療ではない。骨髄移植が適応の患者にとっては、すでに標準的な治療法である。臍帯血移植では保険適用範囲が広くなる。世間の今の常識に合わせるからだ。骨髄移植は、やればすぐにコーディネート費用も保険対象にできるはず)(←注:この点について、お二人の医師から異論がありました。これまでも何回も要望したが、聞き入れられなかったのだと。それが十分だったか、世論をうまく喚起しようとしたかは別として、問題意識はあったそうです。というわけで、今回も再度、医療保険適用について動かれることと推測します。チャンスですから,もう一度やっていただきたい)
 もう一度言う。米国なみの「コーディネート期間3カ月」に追いつくのが目標だ。入金を待っている仕組みにしたのでは後退だ。ルーズな集金管理のとばっちりで、患者が迷惑を被ろうとしている。また、みすみす助かるはずの患者を見捨てるつもりなのだろうか。
 前回の臍帯血移植検討会で加藤先生はおっしゃった。「骨髄バンクはいろいろ批判にさらされているが、欠点が強調されすぎている。おおむねうまく行っている」と。そして臍帯血バンクでも「集中システム」を提言された。だが、いったいどこに、骨髄バンクはうまく運営されているのだろうか。今回、厚生省に「運営がおかしい」と言われたのだよ。
 厚生省の責任も免れない。未収金が発生したのは昨日、今日のことではない。知っていて放置していたのだから罪は深い。会計検査院の監査が3月9日に骨髄バンクに入るのに合わせて、監督官庁として事前に監査をしてみせたわけだ。自分に監督責任があるのに、骨髄バンクに行政指導して、ちゃんと管理していたというアリバイを作っているだけだ。これまでどのような経緯があったのか、詳細に情報を公開すべきだ。骨髄バンクでの処分に対応して、厚生省も責任のけじめをつけるべきだ。


98.3.17 ◇◇朝日新聞の予備検索実施についての報道◇◇

 3月16日、朝日新聞朝刊が“国内向けの予備検索”が4月から実施されることを報じた。今回の「勝利」では、マスコミの方々がわれわれの動きに同調して取材活動をして下さったことが、厚生省、財団、日赤への大きなプレッシャーになりました。この場を借りてお礼申し上げます。  
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  骨髄バンク登録料
  提供者ないと不要
公的骨髄バンクの日本骨髄移植推進財団は、4月から登録料の事前徴収をやめて、骨髄の提供者がいる場合に3万円の登録料を集める方針を決めた。・・・
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98.3.15 ◇◇第一幕、勝利宣言(3月14日記)◇◇

 ちょっと気が早いかも知れませんが、「勝利宣言」などを。
 みんな、やったよ。通じたよ。
 一部マスコミと骨髄バンク企画管理委員長の小寺先生に取材した結果、ほぼ、われわれの希望が通ることになったことが判明しました。厚生省、財団、日赤の3者間の調整が行われ、ドナー検索の大幅改善が内定しました。僕たちの力が本当に伝わったのです。厚生省の朝浦室長、財団の野田事務局長、日赤の草刈技監、ご尽力ありがとうございました。
結論は、国内向けにほぼ予備検索と言っていいサービスが実施されることになるということです。BMDW(国際的なドナー登録データベース)への加盟だけでなく、「国内向け予備検索の実施」となります。スタートは4月。財団設立7年目にして、ようやくほぼ国際レベルのサービスに追いつくことになります。2月24日に「不公平問題」を取りあげてから、3週間で成果が出ました。
 以下は限られた情報をつなぎ合わせたもので、推測も入っています。
 料金:無料
 早さ:24時間以内
 検索データベースの情報更新レベル:2週間に一回。(現在、BMDWでは2カ月に1回。財団(日赤)は2週間に一回)
 方式:(A)BMDWが2週間に一回のデータ更新を認めるなら、財団はBMDWに2週間に一回の頻度でデータを送付。BMDWのパスワードを配布された医師が随時検索。そうでない医師は財団に依頼。財団は24時間以内に返事をする。(B)BMDWが2カ月に1回のデータ更新しか認めない場合、世界検索についてはAと同じ。国内検索については、財団が2週間ごとに更新したデータベースで予備検索を実施。
 19日(水)の定例の企画管理委員会で決定され、多分、4月からの実施になると予想されます。小寺先生は「臨時の企画管理委員会を開いてでもやるべきだったかも知れないが、日程調整が無理だった。時間がかかって申し訳ない」とおっしゃっていました。また「ありがとうございました」とのお言葉もいただきました。財団にとっても、日赤からドナー登録情報を“奪取”できたことは、予想外の大きな成果だったでしょう。小寺先生の言葉は、今回の件に関与されたみんなで共有すべき言葉です。
 これからは運用と移行がスムーズに実施されるか、患者にとって本当にサービスレベルアップになっているかモニターする必要があります。
 この調子で前進を続けましょう。
 追伸:福井県のボランティアのみなさん。県が「ドナーリクルート活動の推進」を約束したようで、成果があったようですね。おめでとうございます。


98.3.12 ◇◇福井県の仲間を応援しよう◇◇

 今日は福井県の応援です。
福井県では「カラ問診」問題が起こっています。ドナー登録推進事業費が流用されていたのです。ドナー登録希望者への応対や普及広報活動に使われるべきカネが、全く他の用途に使われていました。福井県のボランティアが13日(金)に県の医務薬務課に抗議と要望に行きます。他人ごとではありません。援護射撃しましょう。
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文例
福井県知事 栗田 幸雄様
福井県医務薬務課長 市橋 和広様 ファクス番号0776−20−0642
 
 私は骨髄バンクを支援するボランティアです/私は骨髄移植を待っている患者(家族)です。
 福井県では骨髄バンクの推進事業に使われるべき予算が不正に流用されていました。あってはならないことで、強い憤りを感じます。正しく使われていたら、もっとドナー登録者の数が増え、もっと多くの患者さんがドナーを見つけることができたかも知れないからです。
 今回の事実関係が詳細に調査され結果が公表され、適切な処分が行われることを望みます。また、今回の遅れを取り戻すため、福井県がドナー登録推進を特別強化事業として位置づけ、ドナー登録者増加の目標数を設定し、目標達成を追求されることを要望します。
 名前 (署名)
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98.3.11 ◇◇ロビイングキット追加◇◇

 みなさんの中にはドナー登録者やサポーター(寄付をした人)などが多くいらっしゃるでしょう。つまり骨髄バンクの当事者であり利害者であるわけです。以下のようなアプローチが有効だと思います。
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日本赤十字社 事業部 技監 草刈隆さま Fax 03-3459-1560
骨髄移植推進財団 事務局長 野田尚子さま Fax 03-3355-5090
要望書  
 私は骨髄バンクへのドナー登録者です。私のHLAタイピングのデータが、患者さんからできるだけ便利に早く検索できるように希望します。私のHLAタイピングデータは私のものですが、骨髄バンクに登録したことで、私についてのデータ管理は骨髄バンクに委託され、管理検索の実務は日赤が担当していると理解しています。私のHLAデータは日赤の所有物ではありません。データが財団やBMDWに解放され共有され、国内外の患者さんの利便を最優先したシステムを構築されますよう、強く希望します。
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骨髄移植推進財団 事務局長 野田尚子さま Fax 03-3355-5090
要望書
 私は骨髄バンクに寄付をしているサポーターです。私の寄付が、できるだけ迅速で効率的な事務作業と、患者さんへのできるだけ早いドナー候補の調整につながるよう強く希望します。
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日本赤十字社 事業部 技監 草刈隆さま Fax 03-3459-1560
要望書
 私は日赤の社員(寄付者)です。私の寄付が骨髄バンク関連事業に有効に活用されることを希望します。なかでも骨髄移植推進財団と一体となった迅速なドナー検索体制の構築と、ドナー登録窓口の拡大と利便性向上を推進されますよう希望します。
(注:日赤に500円?以上の寄付をすると社員と呼ばれます)
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98.3.9 ◇◇日赤担当者に書簡◇◇

3月7日、日赤の担当者に書簡を送りました(ファクス)。ここに公開いたします。
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日本赤十字社 事業局 技監 草刈隆さま FAX03-3459-1560

 昨日はお話ができる機会がありうれしく思いました。世界と人類に誇れる骨髄バンクになれますように、よろしくお願いします。
 草刈さんは昨日「そう。人が死んでいっているんだ。それを忘れてはいかん。ここに来ている医者もそれを忘れておる」とおっしゃいました。まさに見識であり、大変、感銘を受けました。
 すでに骨髄バンク事業は多くの人を救命したりチャンスを与えています。しかし日本の骨髄バンクはまだまだ国際的に見劣りします。日本人の一人として残念に思います。私はかつて毎日新聞に「国際提携が早く行われていればさらに200人が助かった」と書きました(添付資料参考)。米国バンクはドナーが300万人でコーディネート期間が3カ月半です。日本は10万人で7カ月です。私はみんながやるべきことをやっていれば、日本も「ドナー30万人(150万人とは言いません)、期間3カ月」が早期に達成できていたと思います。私の試算では「さらに1000人の命が救命できた」となります。言い換えると、われわれは1000人をみすみす殺してしまったわけです。これはわれわれすべての「不作為の罪」です。今すぐ変えなければならないと思います。
 草刈さんは昨日、協調が大切だとおっしゃいました。これもまた見識であると感心いたしました。和と協調は日本が世界に誇れる文化だと思います。モノ作りの現場ではそれが具現化し素晴らしい製品を生んでいます。でも、どうでしょう。骨髄バンク事業では和と協調が十分にできてきていたでしょうか。
 日赤は骨髄バンク事業で重要な役割を果たされてきました。しかし、このところは骨髄バンク改善のネックになってきていると言わざるを得ません。もし、「そうではない」とおっしゃるなら、即刻、改善に全面協力され、それを証明していただきたいと思います。われわれの思いは、日本の骨髄バンクが世界に誇れるものになり、日本と世界の患者さんに貢献することです。その目的はみな共有できるものだと思います。われわれはこれからも日赤の動きに関心を持ち続けますし、盛り立てていきたいと思っています。空からも日赤を見守ってくれている人々がいるでしょう。
 今日は若干の資料を添付させていただきます。
・私のインターネットホームページの表紙
・その中のニュースのコーナー(今回の一連の動きがたどれます)
・その中にある闘病記コーナーから、骨髄バンクについて記述したところ。まだ闘病中の97年はじめころに書いたものです。細部は変わっていますが、全体としての提言の主旨はまだ陳腐化していないと思います。
・その中の「骨髄移植ライブ日記」から、米国のドナー・リクルート・ドライブに触れたところ。
 日本の患者さんに「世界標準レベルのサービスを提供する」ということがどういうことか考える際にご参考になれば幸いです。なお、わが家の闘病記はほどなく中央公論社から単行本として出版されます。
 昨日、私の連絡先を申しましたが、本名を言うのを忘れていました。これでは連絡がつきませんね。あらためてここに記しておきます。
名前:○○○○ 勤務先電話○○○○ 自宅ファクス ○○○○
 なお、私は私人としてボランティア活動をやっており、私の活動は勤務先とはまったく関係がございません。フレキシブルタイムの仕事のなか、昼休みと睡眠時間を削って可能な範囲でボランティア活動をしているだけです。ただし連絡先として会社に電話をしていただくことは構いません。
 ひとつおたずねがあります。ドナーデータベースのコンピュータシステムの全面更新についてですが、いくらくらいのカネがかかるのでしょうか。一説には2億円と言われています。パソコンユーザーの私の常識としては200万円ぐらいでも簡易なものはできそうな気がします。仮にセキュリティ、バックアップ、将来の余力などを考えた信頼性の高いものにするとしても、1000万円ぐらいでできそうです。保守要員がひとりかかりきりでも2000万円にしかなりません。草刈さんは「2億円ぐらいじゃ、とってもできないよ」と昨日おっしゃりました。システムの概要を教えていただけますか。なお、システムはプレーンバニラの標準システムにされて味付けはソフトの条件づけでやるという思想で構築した方がいいのではと拝察しますが、どのような設計思想で作られるのでしょうか。もっとも今回は予算問題をほじくるつもりはありません。とにかく患者が実質的にすばやくドナーを見つけられるようにしていただければ良いのです。
 昨日の草刈さんの「うん。やるよ」とおっしゃったときの笑顔に大きな期待を寄せています。
 では、近いうちにゆっくりとお話できる機会があることを願いつつ・・・

KEN(骨髄バンク推進ネットワーク・メンバー)
98年3月7日(妻の一周忌を8日後に控えて)


98.3.9 ◇◇日赤と厚生省に要望◇◇

 金曜日(3月6日)、日赤の草刈技監と厚生省臓器移植対策室の朝浦さんに会いました。草刈技監は木曜日は北海道に出張中だったため、僕のファクスは読んでいませんでしたが、オフィスからの電話でファクスがじゃんじゃん入っていることも聞いていたはず。日赤へのファクスや電話は推定で合計50通は行ったでしょう。日赤ではこの話でもちきりのはずです。みなさん。確実に「声」は届きましたよ。
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KEN「KENです。お願いがあります。骨髄バンク事業がスムーズに行くように日赤に協力していただきたいのです」
草刈「あんたどこでやってるの」
KEN「一人でやっています。これが名刺です(骨髄バンク推進ネットワークメンバーと書いた名刺渡す)」
草刈「そう、偉いねえ。でも、これじゃあ、こっちから電話とかできないな。僕はインターネットできないから」
KEN「では勤務先の電話をお教えします」
草刈「どういうことでやっているの」
KEN「妻が白血病でした。去年の3月に亡くなりました」
草刈「(大きな身ぶりで僕の肩を抱きながら)そうなんだ。白血病は死ぬ病気だと言うことを、ここのいる医者たちも分かっていない。人間みんな死んでいくんだ」
KEN「日赤にいろいろ変えていただかないと、骨髄バンクがうまく回らないところがあるんです。ぜひ改善にご協力下さい。要旨はファクスで送りました」
草刈「うん、やってるよ。頑張るよ。良くしていこうよ」
KEN「コンピュータシステムの更新に2億円もかかると言いますが。どう考えてもそんなには・・・」
草刈「いやいや。それどころか、もっともっとかかるんだ」
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厚生省臓器移植推進対策室 朝浦室長
 座って20分ほど要望とレクチャー。新任で自ら「まだ勉強中」とおっしゃる。「不公平問題」で現場担当者の責任問題にしないことは言明された。また、「BMDWの加盟で全体の改善策に代えようとしているのはおかしい。国内向けには改悪になる恐れさえある」と説明したが、よく理解していただけたかどうか。「一つ一つ改善していく」というスタンスなので、「一気に全体を変えなければ歪む一方」と代案をざっと説明しておいた。「今後ともいろいろ教えて下さい」とのことだった。ぜひそうしたい。朝浦室長は「われわれもKENさんと思いは同じなんだよ」と言われた。では、いっしょにやろうではないか。
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中間まとめ
◇目標とビジョン:患者のために結果を出すこと。それに向けてみんな(厚生省、財団、日赤、ボランティアなどなど)の力が無駄なく使われ、みんなも喜びを感じ、充実感を得られること。
◇状況認識:びほうさくに終わろうとしている。遅ればせながら規定路線のことをやるだけで改善策のふり。ところがこれは改悪になる恐れもある。KENが提案したように、世界標準レベルのサービスを国内患者にも提供すべきだし、実質的に検索を財団に移管するべきだ。19日の企画管理委員会と30日の理事会が大切。責任問題を問うとしたら、現場ではなく、順序は厚生省、財団、日赤でしょう。
◇戦略:もっている材料でプッシュ。不公平問題を材料に大幅改善をもたらす。それが無理なら、不公平問題をいま一度クロースアップするしかない。そしてまだ材料はいくつかある・・・。
◇戦術:言い放しでなく、要望を届け、フィードバックして、モニターし誘導していく。スマート兵器みたいに。
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○言いっぱなしでなく、実践と提言をともなうこと。継続的にやること。アリバイ的処置を見抜くこと。部分的な処理をすることでさらに全体が狂うの愚を防ぐこと。
 振り返れば、これまでの流れは−−。
 不公平問題の発見→協議会を含む情報ソースから取材→厚生省への要望→厚生省の財団への事情聴取→財団が厚生省に報告→「後退としての公平化」と「出る杭を打つ的処分」になりそうなところを知り、厚生省と財団に「求めているのは前向きの解決」と説明→マスコミに説明→マスコミと財団が交渉。前向き解決を急ぐなら、不公平問題は焦点にしないという一種の取り引きが行われた→野田事務局長にインタビュー。その点を確認→全体の改革の方向を提示→財団が日赤との交渉するタイミングになっているので日赤に改善要望→日赤の草刈技監に要望→厚生省・朝浦室長に全体のあるべき方向をレクチャー→マスコミと情報交換
○では、みなさん。頑張りましょう。



98.3.7 ◇◇連載 患者の視点からの日米医療比較2◇◇

「患者の基本的な権利」
(「公的骨髄バンクを支援する東京の会」の会報に連載している記事です)

▲「患者は人間らしく扱われる権利がある」。これは医療の理念として万国で通用する普遍原理だ。
▲日本ではこの点について、基本的な権利・義務意識がまだ未熟。医療現場にも根付いていない。
▲「患者の権利章典」を掲示するだけでは不十分。病院の現場がそれを実行できる仕組みを作り、医療従事者の意識改革を促していく必要がある。

今でもはっきり思い出すことができる。妻が白血病と診断されて、そのままニューヨークのスローン・ケッタリング病院に緊急入院になった日のことだ。
 病棟の部屋に入ると看護婦さんが入ってきた。妻のベッドのわきに腰をかけて、ゆっくりとしゃべる。「どうしてこの私がこんな病気にならなくちゃならないの、という気持ちは当然よ。あなたが怒るのも、泣くのも自然だから、そうしてもいいのよ」。「あなたのためにできるだけのことをしたいから、何でも尋ねて下さいね」。病名告知を受けたばかりで動揺している患者への配慮が感じられた。
●主役の患者に権利を保証●
 妻が発病したとき一人息子はまだ6歳だった。妻と子供は切っても切り離せない関係だった。僕が子供の世話をして妻は病院にお任せになるのか、妻の看病をするために子供はどこかに預けなければならないのか。いったいどうなるのかと思った。いずれにしても、家族が引き裂かれてしまうのでは、という懸念が頭を横切った。でもそれは杞憂だった。病院は妻だけでなく、僕や息子にも居心地が良かった。僕は病室から会社に通っているようなところもあった。息子は病室で長時間過ごした。看護婦さんは子供とすぐ友達になってくれたし、はじめての看護婦さんに当たっても、わが家のおかれた状況をちゃんと把握しているので安心だった。
 「あなたたちはもう十分に苦しんでいる。できるだけ楽にして下さい」。そんなメッセージを感じた。
 入院手続きをするときに数種類の書類を渡されたが、そのなかに「患者の権利章典」というのが入っていた。そして、看護婦さんがそれを読み上げてくれた。
 1、患者は思いやりがあり礼儀正しい治療を受ける権利がある
 1、患者は、患者が理解できるような言葉使いで、医師から自分の病名、治療法や予後についての情報を説明してもらえる権利がある
 1、患者は自分の診察にまつわるすべてのプライバシーに関して万全の配慮を受ける権利がある
 1、患者は、病院が可能な範囲で適切な医療を提供してくれると、期待する権利がある
――などなど。   
 新鮮な驚きだった。さらには「患者擁護係」という人が来て「私は患者さんのために働いています。病院への苦情や、分からないことがあれば、電話して下さいね」と言う。ソーシャルワーカーもやってくる。ソーシャルワーカーは日本では経済的問題などの何らかの特別なトラブルがないとつかない場合が多いが、米国では患者全員につく。
 「僕らは大切にされている」「患者が主役なんだ」。そう感じた。妻は、「アメリカは嫌なところもあるけれど、学校と病院だけは文句なしにすごい。子供のおかげで学校の素晴らしさ教わった。病気になったおかげで病院のことも分かったわ」と言った。
 「権利の章典」という原理原則がしっかりしているだけでなく、その精神が現場にかなり浸透している。僕らはスローンケッタリングにそんな印象をもった。
●権利の裏には義務もある●
日本の病院でも「患者の権利章典」を掲げるところが出始めた。だが、その浸透度はまだ不十分だろう。およそ「権利」という言葉ほど日本になじまないものはないから、やっかいだ。米国では、患者の権利を守らないとどんな処罰が待っているか、医師は知っている。一方で患者は、権利の裏には義務があるという常識ももっている。こうした文化は簡単に輸入できない。
 権利章典の精神を日本に輸入するには工夫が必要だろう。医療スタッフは患者の権利に追い立てられるからでなく、患者第一主義を自らの理念として掲げてほしい。たとえば章典を医療スタッフ向けのミッションステートメント(理念宣言)として読み換え、「患者さんに思いやりがある礼儀正しい医療を提供します」と自ら宣言してみればどうだろう。そうすれば、面会時間の制限ひとつとっても再考する機運が生まれるのではないか。
 また、患者は「思いやりがある礼儀正しい医療を、もっと期待しよう」と発想しよう。また、患者の権利の裏には義務もあることを忘れないでいたいものだ。それは身近な例で言えば、「医師に積極的に質問する」「自分の意思をできるだけはっきり医師に伝える」といった簡単なことからはじまる。
【参考サイト】
・患者の権利法の草案
http://www02.so-net.or.jp/~kenriho/kenriho/draft.html
・医療生協による「患者の権利章典」
http://www01.u-pate.so-net.or.jp/ba2/hirosi/patient.htm


98.3.5 ◇◇日赤に声を届けよう◇◇

(厚生省、骨髄バンク、日赤の方々もこのHPをご覧になっていただいているそうで、ありがとうございます)

 みなさん、お願いです。日本赤十字社に今すぐ声を届けていただけませんか。もし、以下の主旨に賛同していただければ・・・。
 木曜日(3月5日)に厚生省が日赤に骨髄バンク事業への対応を申し入れに行きます。ぜひ援護射撃しましょう。
 KENの観測では内容は、BMDWへの参加協力、国内向け予備検索の実施、検索作業の財団への実質的移管(そこまで広くないかも知れない)−−などだと思われます。公開フォーラムでも分かったように、日赤に協力してもらうことは簡単ではありません。日赤の協力が患者さんの救命率向上には不可欠です。1両日中に日赤に100人の声を届ける――そうしないと厚生省と財団(骨髄バンク)が、やられてしまうかも知れません。またBMDWが遅れるかも知れないし、検索コンピュータはパンクするかも知れないし、予備検索の早期実施も遠のきます。今こそチャンスです。日赤はわれわれの存在を知りません。ここに骨髄バンクが良くなって欲しいと願っている多くの人がいることを認識していません。声を届けたいものです。
  
 送り先は−−
 日本赤十字社 事業局技監 草刈隆さま
 電話 03−3438−1311
 ファクス 03−3459−1560
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文例
 草刈さま。私は○○です。
 日赤が骨髄バンクの改善に全面的に協力されることを望みます。
 ○○(署名)
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98.3.5 ◇◇本日の情勢判断◇◇

 本日(3月4日)は「(嵐の前の)日差し」です。
 米国向け予備検索は中止の方向ではなくなりました。サービスを低きに合わせるのでなく、高きに合わせる方向に少し向きました。
○厚生省「不公平をなくすと同時に、サービスの良いところを下げるのではなくて、良いところに合わせていかなければならないと認識している。また、検索コンピュータが問題なのも分かった。データベースを財団がもつことにするという手があることは多くの方からうかがっている。財団として検索をやった方が問題がないかも知れない。そうした場合のメリットとデメリットを精査する方向にある」「財団に対してはけん責処分ということかは明確ではない。業務の落ち度に対してしっかりやりなさいと申し渡したわけだ。指導に対し、委員会や理事会でどんなけじめがつけられるかを見守っていく」「米国向けの“予備検索”がどう行われていたかと言うと、BMDW用に日本のデータベースのなかにあるHLAタイプが何人いるかというデータが日赤でできている。検索ではなくその抜粋したリスト(照合リスト)で照らし合わせて、適合者がいるかいないかを返事していたのだ。これはBMDW参加後に提供することになるサービスレベルとまったく同じで、提携まで非公式に続けていく」「協議会からは1月に要望書を受け取ってもいる。検索とデータ管理の仕組みを検討しなければならないと考えているところだ」「インターネットを見た患者さんから抗議の電話が来ている」
○財団の野田事務局長「本日、企画管理委員会の小寺委員長と確認した。米国への“予備検索”実施は現場の善意から出たことで、かつ患者さんのためになっていること。これを止めることは後退であり、そうはしない。日本がBMDWに参加することで予備検索的なサービスと実施することで合わせて行きたい」
○また、人を処分するのでなく、システムを改めることに重きを置くという建設的な方向に進みつつあるように見えます。


98.3.4 ◇◇野田事務局長インタビュー雑感◇◇

○率直なご意見を披露いただけて良かった。
○不公平問題を「出る釘を打つ」式の解決にしようとしているのは遺憾だ。何度も言うが、良いサービスに統一することが必要であり、サービスの低下を解決策とするのは誤っている。厚生省と財団の問題解決能力と構想力の欠如を指摘したい。事情、都合、体面などばかりを優先して、またぞろ患者を後回しにしている。
○日赤に対する率直な意見をいただけた。これを日赤、厚生省が放言と受け取るようでは大人げない。多くの真実を含んでいると思う。公開フォーラムでも日赤が大きなネックとなっていることは明らかになった。財団の責任が免責されるわけではないが、日赤は反論するだけでなく、自ら実績でこの汚名をそそぐ必要がある。厚生省は全体をコーディネートする役割にあるのだから、システム全体の調整がうまく行っていないことについて、第一義的には厚生省が責任を負うべきである。財団も全体のシステム改善について、十分なことをやってきたとは思えない。
○細かなことが全体のネックになるということはときどきあるものだ。日赤のドナー検索コンピュータを何とかしよう。これは技術大国・日本の世界への恥です。200万円あれば何とかなるのでは。システムエンジニアの方、ボランティアでシステム設計提案と見積書を出していただけませんか。必要な要件の概要はおおよそ見当がつきます。こんなこと、3日で問題解決できると思う。早く改善しなければ、こっちから設計書と見積書を出しますよ。さも難しい問題で専門的な障壁があるように装っているけど、いまどきの技術からすれば大したシステムじゃない。一歩も前進しないのは、問題を隠しているからだ。「コンピュータがバンクします。何とかして」と言えばいいのに。どうして抱え込もうとするんだろう。「ドナー検索コンピュータを救え」キャンペーンを張れば、200万円ぐらい民間で寄付できるぞ。そんなカネ受け取れないというかも知れないが。
○BMDWを「フルイ」と考えているのは誤りだ。BMDWを予備検索の代替物と考えているなら、間違いもはなはだしい。「貧すれば鈍する」とはこのことだ。これではBMDWに加盟したとたん、国内向けのサービスまで低下することになる。日本国内の主治医はBMDWの画面であたりをつけて、そこに候補がいたら財団に正式検索依頼をしろというわけだ。BMDWのデータは2カ月に1度しか更新されない。それで主治医があきらめてしまう。財団がBMDWを事務軽減策としか考えていないのは恐るべきことだ。まったく患者の命を愚弄している。日本骨髄バンクは全く方向付けを失って迷走している。
○「空鉄砲」や「ダメ元」の検索依頼が増えているというが、検索とはそもそもダメもとなもの。「いるかどうか」調べるんだから。検索が事務負担につながるのは業務の設計が悪いだけ。
○財団に登録ドナーのデータベースをおいて、財団が予備検索をする。それでいいのだ。安価なコンピュータソフトさえ組んでおけば、事務量なんて大したことない。コンピュータにはいろんなクライテリア(条件設定)を変更できるようにしておけば、内外向けに予備検索できるし、将来的なクライテリア変更にも対処できる。コンピュータの世界ではもうとっくに常識だが、プロプラエタリーでなく、オープンなシステムにしておくことが大切だ。検索はセルフサービスでだってできるほど、簡単にすることができる。BMDWはいってみればセルフサービスですからね。
○財団が登録ドナーのデータベースをもつことは問題ない。BMDWに加盟するということは、日赤の外にもデータベースが存在することになる。BMDWには財団が加盟するのだ。つまり財団はデータベースをもっているのだ。日赤が第一義的にデータベースを管理・更新する最終責任をもつが、財団にも日赤の管理の元でデータベースのコピーが存在し、財団が予備検索を行うが事後的に日赤がデータのメンテナンスチェックをするといった運用は可能だ。これを問題解決という。厚生省の腕の見せ所ではないか。
○病院別移植実績数の公開は一応のニュース。僕は公開フォーラムの翌日から公開されるものと思っていたけれど。財団が発表しないなら全病院アンケートをしようと思っていたので、手間がはぶけた。
○財団は改善が遅れたことを人のせいばかりににすることはできない。野田さんは財団の事務局長として、改善を率先することができる立場にあったのだから。立場を放棄するようなことを言われてもとまどってしまう。どのような企画をもち、どのような提案を行い、どのような粘り強い説得を行ってきたのか、もっと詳しく伺いたいものだ。財団の事務局長とはどんな使命を帯びている役割なのか、原点を見つめなおしていただくようにお願い申しあげたい。


98.3.4 ◇◇骨髄バンク、野田尚子事務局長インタビュー◇◇

 3月3日(火)、骨髄移植推進財団(日本骨髄バンク)の野田尚子事務局長に、「ドナー検索不公平問題」についてお話を伺うことができました。ここに内容をご紹介します。野田事務局長のお考えが広くみなさんに伝わることは意義あることだと思います。野田事務局長、お忙しいところありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。
******************
インタビュー本文について、野田事務局長からリライトの要望がありました。野田さんからリライト原稿が届き次第、差し替え掲載いたします。元の原稿に間違いがあったわけではありませんが、野田さんの名前による発言であり、野田さんがチェックする権利はあります。ただし、発言の大幅な入れ替えには応じないつもりです。差し替えということになれば、オリジナルは(談。文責=KEN)という扱いでしたが、差し替え記事は野田さんの文責になります。では、少々お待ち下さい。
**野田さんからのリライト原稿が届きましたが、いま作業する時間がないので、掲載まで少々お待ち下さい。 


98.3.3 ◇◇ロビイングキット◇◇

声を出そう。出してみよう。できることから始めてみよう。
 患者(家族)のみなさん。気持ちや意見を行政や執行機関に伝えことは、基本的な権利です。言い換えると、声を出すのは義務でもあります。「ひどい」と文句を言うことは簡単ですが、それを許してきたのは自分たちでもあります。
 「して欲しいこと」を「やってもらう」ように行政に伝えることをロビイングと言います。ロビイングというと圧力団体、業界団体などを連想します。しかし市民によるロビイングもあるのです。しかも団体でなくても個人でもできるのです。
 厚生省や骨髄移植推進財団の人々は、ほとんど患者や家族に会う機会がありません。ほとんどの時間を内部の人間や医者や学者や業者(医療関連会社)と過ごしているのです。われわれのことが、視野に入らないことがあるのです。国民の福祉と健康の向上という本来の目的を、ともすると忘れがちになるのです。僕たちが「僕たちはここにいるよ」とときどき手を振ってみせることが必要なのです。
 たった5本の電話、たった5通の手紙、たった5通のファクスが行政や傘下の団体に「あっ、そうか」という「気付き」を与えることができるのです。
 こうしたロビイングは組織化されているととても有効です。でも、同時に草の根的で自発的で散発的でゲリラ的な、インターネット時代のロビイングがともなっても悪くありません。力があると思います。あなたの声を直接届けることは、とても有効な手段なのです。
 ここに草の根ネットワーカーのための「ロビイング・キット」をお届けします。ご活用下さい。
◆KENのホームページに掲載された情報のうち、KENに著作権があるものは、自由にロビイング資料として使うことを許可します。承諾は不要です。ダウンロード、コピーして使って下さい。
◆簡単なのは例えばKENの朝日新聞の声の記事をコピーして、「本当ですか。改善して下さい」と付記してファクスするといったやり方があります。HPの情報をそのまま引用して、「こんな情報を見つけましたが、本当ですか。改善を願います」というやり方でもけっこう。また、自分なりに書き直して、自分の意見として伝えるのも良いでしょう。
◆「私は患者です」「私は患者家族です」「私はボランティアです」と名乗るのが有効でしょう。
◆発言テーマとしては次のようなものが考えられます。
 ・日米不公平検索。国内向け予備検索早期実行について
 ・ドナーコーディネートの医療保険認定早期実施について
 ・日本赤十字のドナー登録の土日窓口拡大について(方針は決まりましたが、成果が出るような運用を求める必要があります)
 ・BMDW(ボーンマロードナーワールドワイド)への加盟の早期実施について
 ・韓国骨髄バンクとの国際提携の実現について
 ・ドナーと患者の対面の実施について
 ・病院別移植実績などの情報公開について
 などなど。
 KENはこれからもこうしたテーマを巡って発言を続けます。それをどんどん活用して下さい。
◆地元紙の投稿欄にどんどん投稿しましょう。オリジナリティは必ずしもいりません。自分の立場で「おかしい」「こう思う」「こうしてほしい」と感じることを送りましょう。採用されるかも知れません。採用されたらコピーして、厚生省などにファクスしましょう。
◆送り先例(まだまだ追加します)
▽ 骨髄移植推進財団(日本骨髄バンク) 郵便番号160-0022 東京都新宿区新宿2丁目13番12号 新宿ISビル 
電話03-3355-5041ファクス03-3355-5090 ホームページhttp://www.jmdp.or.jp
ニフティサーブ・骨髄バンクフォーラム(GO FMARROW)の「提言」コーナー
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98.3.3 ◇◇厚生省が回答した◇◇

 (3月2日。3月3日アップ) 
 ドナー検索不公平問題に対する厚生省の回答がありましたので、お知らせします。
厚生省の回答(3月2日)
 5時半頃電話。厚生省「いま財団の方がいらっしゃってます」。KEN「ではあとで掛けなおします」
 7時頃電話。厚生省「ごくろうさまです。今日、財団を呼びました。まだここにいらっしゃいます。お問い合わせの件に対して、一応、財団に調べてもらって今日、回答をもらいました。米国向けにやっていたのは予備検索ではないが、照会されたHLA型が日本にあるかどうかの回答をしていた。この情報提供は日本の患者さん向けにはやっていなかったから不公平の問題を生じていたとは言える。不公平がないようにしてもらうようにする。財団がBMDW(ボーンマロードナーワールドワイド)に加盟する方向である。BMDWに加盟後は国内外からの検索ができるようになり、不公平の問題は解消する。米国向けにこうした回答サービスは、米国と提携した97年4月からやっていた。厚生省としては財団がそのようなやり方をしていることは知らなかった。そういうことを聞いたのは今回が初めてである。BMDWへの加盟は年度内(3月末まで)になる予定だ。開始時期は最終決定していない。小寺企画管理委員長?も記者レクで年度内と説明していた。厚生省としては早急に公正な形に戻すようにしてもらう。そのとき、今の日本のやり方に合わせるのでは後退になるので、米国向けに提供している内容に近づく方向にしていく。予備検索をするのはシステムの問題があるので、それが整備できるまでにはやれない。厚生省としては財団に処分をするつもりはない。財団は公益法人であるが、今回は不正でカネを使い込んだといった話ではないので、今回は財団で対応していただく。すなわち財団の自浄能力に任せ、検討していただきます」
 
KENの解釈
○米国向けに提供していたサービスを予備検索ではないとした。厳密には予備検索ではないからというわけだ。これを準予備検索と呼ぼう。米流の予備検索はフルマッチから1ローカスミスマッチまでのリストを出す。そうではなく、「いる」「いない」を答えるのに近いサービスだったからだ。だが、ようするに予備検索的な便宜を図っていたことには変わりない。ひょっとしたら当初は日本バンクのHLAタイプ頻度表のようなもので回答していたのかも知れない。そうだとしたら逆に犯罪的だ。簡易頻度表で「いない」と回答しても、厳密には日赤に最近登録したドナーが一致しているかも知れないからだ。そうしたことが起こったとしたら「殺人罪」に近い。
○この予備検索的サービス(準予備検索)は4月からはじめていた。12月から増えたのは、日本で準予備検索ができるとの広報が米国で行き渡ったからか。あるいは、「頻度表照合」から「手作業予備検索」的にサービス内容が若干の進化をしたのかも知れない。いずれにしても、ずっと不公平が生じていた。
○厚生省は不公平が生じており、問題があったと認識している。
○厚生省は財団が準予備検索をしていたことを知らないとしている。しかし、野村さんによると知っていたはずという。これは山一証券の飛ばしを大蔵省が知らなかったと言っているのに似ている。いずれにしても、こんな重要なことを知らなかったのは監督責任が生じる。いわんや、財団の幹部がこうした現場の運用を知らなかったようであるのは、お粗末と言われても仕方ない。財団に訪問すれば分かるが、狭いオフィスだ。あの中で行われていることが掌握できないとは、マネジメント能力が問われるだろう。
○BMDWへの加盟をもって解決策とするとは笑止である。予備検索はドナー登録データが1週間?に一度更新される。BMDWでは2カ月に一回である。米国向けに準予備検索が行われ、日本向けにはBMDWによる自主検索ということではサービスレベルが一致しない。BMDW参加は2年ほど前からやっていてもおかしくなかった。98年1月にはやると言っていた。それが遅れている。それを解決策とするとは、厚顔もはなはだしい。
○「日米ともに予備検索実施」。これがなぜできないのだろう。パソコン1台とソフトがあれば簡単にできる。7年前のコンピュータで言うと2世代前のシステムでやっているのだからお寒い限りだ。これが技術大国日本の現実とは。
○一ヶ月に米国向けに125人の予備検索が実施できたのだ。日本の1次検索は月に100人程度だ。今の米国へのサービスのやり方でも十分に事務的にこなせるはずだ。
○不公平という問題があったと認識しているにも関わらず、財団内の処分を行政指導しないのは疑問だ。ボールを投げられた財団の自浄能力がどれほどか注目しよう。
●みなさん。厚生省と財団は結局、「ほとんど何もしない」という道を選ぼうとしています。これでは何の反省も進歩もありません。失望は禁じ得ません。
○この問題にご関心がある方は、ここ1両日中に財団や厚生省に問い合わせをしていただくようにお願いします。「こんな話を耳にはさんだが・・・」「教えて」といった程度でいいのです。もちろん「こうしてほしい」「けしからん」だとなお良いです。とにかく、電話・ファクスすることに意味があるのです。ここ1両日中にすべてが決まってしまいます。声を届けましょう。
全国協議会や各地ボランティア団体の方にも組織的な対応をお願いいたしたいと考えます。
▽ 骨髄移植推進財団(日本骨髄バンク) 郵便番号160-0022 東京都新宿区新宿2丁目13番12号 新宿ISビル 
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98.3.3 ◇◇厚生省が動いた◇◇

 国際ドナー検索問題について。(2月27日。3月3日アップ)
 事態は先に進んでおります。厚生省が動きました。
 私、HPに掲載しております「日本バンクの信用失墜」を金曜日(2月27日)朝に厚生省担当部署に電話のうえファクスでお送りしました。
 昼前に電話したところ、金曜中に財団からヒアリングをするとのことでした。
 夕方に電話すると、財団に事実調査をして報告するよう「命令」(厚生省の使った用語)を下した、とのことでした。
 「命令」とは行政用語で何を意味するのか知りません。行政指導の一種でしょうが、財団の歴史で「命令」を受けたのは初めてではないでしょうか。とにかく強い語気で「命令」と2度繰り返していました。
 いずれにしても、財団は早急に調査報告を行うはずです。
 厚生省の「命令」ということですから、当然、文書による回答になるでしょう。
 厚生省に保管される文書になるということです。文書で提出させるということは、厚生省としても何らかの対処を打つことを想定しているということだと拝察します。
 実際のところ、厚生省の迅速な対応にはとても感銘を受けました。厚生省のこの問題へのセンスの良さを感じました。厚生省が事実確認を終えたわけではないですが、事実だとしたら(僕は事実だと思いますが)財団の根幹を揺るがすという認識は持っていただいたのではないでしょうか。この点、われわれ(私の文書に賛同して下さる方々)は自信を深めて良いと思います。
 薬害エイズを担当した部署ですから、事実隠蔽などがいかに後に深刻な事態を招くかも重々承知していることでしょう。
 財団が厚生省の体温を察知し、着いて行くことができるか、が焦点です。
 僕は厚生省に「月曜日に財団にも質問を行い、夕方までにはかばかしい返事がなければマスコミ各社に同じ文書を送付しようと思っている」と申しました。厚生省は「事実確認が終わるまで待って欲しい」と言いました。僕は月曜から毎日、厚生省に電話することにします。水曜日ごろまでに「国内向けの予備検索の早期実施」が決まらなければ、マスコミの方に説明を行うつもりです。

今後のシナリオとしては、
1 週明け早々にも財団から厚生省に報告書が提出される。それを受けて厚生省が対応策を練る。1週間以内に処分と予備検索即刻実施などを含むコーディネート総合改善案が打ち出される。
2 同上。だが、十分な処分がされない。また予備検索の実施は発表されるが実施はしばらく先になる。
3 厚生省が財団になんらの間違いもなかったとする

 楽観論者のKENの希望的観測(単なる当てずっぽう)としては1が60%、2が35%、3が5%です。
 3が財団壊滅への道であると厚生省は知っているでしょう。
 2は危機管理策としては不十分でしょう。事後的にマスコミによって結局は1まで要求されるとしたら、厚生省としても徳になりません。適切な例えではないかも知れませんが、中途半端に通貨切り下げに抵抗したアジアの国の通貨がどうなったかということです。
 1をとって、世論の批判が高まる前に「国内向け予備検索の実施」と全体的リストらを発表するのが最善の策でしょう。予備検索はどうせ、もうすぐするつもりだったんですから、エイヤで財源などは決めてしまえばいいのです。骨髄バンクのイメージ全体が下がったら大変になることを賢明な厚生省は重々承知しているでしょう。公開フォーラムのときにも「監督責任は厚生省にある」と言明していましたし。

 今後の動きを見守ると同時にやれることをやっていかなければなりません。
○上記の「シナリオ1」を求めていくこと。全体の改善案を、整合性、予算的裏付けをもった形で、早急に厚生省と財団に提言すること。
○一時的に骨髄バンクのイメージが低下する恐れがあるので、前向きなキャンペーンを集中的に実施して、財団をサポートする。マスコミなどへの説明方針を固める。過ちが将来の改善につながるような誘導。
○検索、コーディネートの医療保険認定が行われるまでの経過措置として、予備検索費用捻出のため、募金募集強化を行う。
などなど。


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