原題 : Talking With Your Child About Cancer
訳者 : 撫子なんちゃん
おことわり(免責条項)
1.なるべく言葉や意味を正確に翻訳することを心がけていますが、内容については保証するものではありません。海外と日本では治療法や使用される薬が異なるばかりで
はなく、社会的環境も異なります。あなたの主治医と話し合ったり、各種団体の相談窓口を利用するなどして、ご自身あるいはご家族に対してここにあげた情報がどのように適用できるかご判断ください。
2.原典の各発行元には、日本語への翻訳に関して了解を得ていますが、各発行元が日本語に翻訳された情報の保証をするものではありません。
3.訳者、編集者、監修者などはこの翻訳内容と、それによって引き起こされたことに対して、いかなる責任も負いません。
4.小児患者のご両親へ:
お子さんと病気の事を話す時は、ここにあげた情報だけでなく、その子の性格、親子の関係をふまえ、主治医、精神科医、ソーシャルワーカ、各種相談窓口、他の患者さんのご両親などできるだけ多くの人と話し合って、どのように対応するのが良いかご判断ください。
自分の子どもがガンにかかっていると知ることは、これまでに直面しなければならなかったことのなかで最もつらい知らせだったことでしょう。親として、子どもになんと言って伝えるべきか、今が決心のときです。
多くの親が聞きたい質問は「誰がわが子に話すべきか?」「いつ子どもに話すべきか?」「なにを話してやるべきか?」というものです。この冊子はこれらの問いに答えを見つけられるように書かれたものです。
おそらく、ここまで読んでみて、そもそも子どもにガンについて話す必要などないのではないかと思っている人もあるでしょう。かつては小児患者はその診断結果を知らされないことがよくありました。しかし、両親や医療ワーカーがそれを隠そうとしても、たいていの子どもは自分が深刻な病気にかかっていることをわかっているということが調査で明らかになっています。
たぶん子どもさんはなにか変だとうすうす感づいています。気分はよくないし、ひんぱんに医者に通うし、不快でこわい検査もいろいろしました。(簡略のために、子ども達をその性差にかかわらず彼と統一します。)それだけでなく、家族や親しい友だちの不安や恐怖心を感じ取っているかもしれません。
もし誰も彼の病気について話さなかったとすると、子どもさんは自分の想像力と恐怖心にまかせて自分の症状を理解します。ガンを抱えた子どもは、自分の病気がかつて何か間違ったことをしたことへの懲罰だと信じこむこともよくあり、不必要な不安と罪の意識を感じるかもしれません。一般的に健康管理の専門家たちは子どもの病気について真実を伝えることが子どもの不安を軽くし、罪の意識にとらわれるのを防ぐと考えています。さらに、真実を知ることで、子どもはよりいっそう治療に協力的になります。
誰が子どもに話すのか?
この問いへの答えは個人個人によって違います。親と子どもとの関係にもよりますし、あなた自身の感情や態度にもよります。自分が話したいと思う人もあれば、子どもの主治医に病気について説明するのに力を貸して欲しいと思う人もあるでしょう。どんな方法であれ、あなたか、子どもにとって親密な存在の誰かが、子どもを支え、励まし、愛情を注ぐためについていてあげなければなりません。
あなたが自分で話すとしたら、子どもにどう言うかを決めるときには他の人に相談するとよいでしょう。主治医、看護婦、ソーシャルワーカーなどの専門家がアイデアを提供してくれるでしょう。ガンを抱える他の子どもの親と話をしてみてください。支援グループのメンバーに連絡をとってください。
(訳注――日本では、ガンの子どもを守る会、全国骨髄バンク推進連絡協議会、などが相談にのってくれます。また、メイクアウィッシュ、夏目雅子ひまわり基金、ファミリーハウスなどの他、さまざまな支援活動をする支援ボランティア団体があります。問い合わせは全国骨髄バンク推進連絡協議会(相談は0120-81-5929毎週土曜日10時〜16時)、骨髄移植推進財団(相談窓口03-3355-6888
平日13時〜17時)
なにを子どもに伝えたいのかを考えて、そのことを他の関係者である大人たちと話し合い、どなたか心を許せる人に練習台になってもらうと、気持ちが楽になります。
いつ、子どもに伝えるべきか
親であるあなたは子どもの人格や気分を判断するのに最適な立場の人なのですから、いつ子どもに病気について話してやるべきかを決めるのもあなたが一番ふさわしいでしょう。子どもに実はガンであることを伝えるのにぴったりの時などないのです。あなたと子どもが2人きりになれる静かな時と場所を選んでください。落ち着いて話せて、元気づけられる雰囲気を築くことができます。診断のすぐあとに話してあげるのが一番いいでしょう。
何日も、また何週間も待てば、子どもにとっては、後々なかなか追いやることが出来ないほどの恐怖感を、想像力豊かに募らせてしまう時間が増えるだけです。
子どもにガンだと話す前に、親は子どもがかかっているガンのタイプやこれから受ける治療を理解しておく必要があります。こうすることで子どもからの質問に答える用意ができるのです。正確な情報を与えてやることができれば子どもはもっと安心するでしょう。
(挿し絵)JP8歳半
子どもになにを話すべきか
与えるべき情報の量とそれを話す手段は子どもの年齢と知的成熟度によって異なります。一般的には、優しく、隠し立てせず、誠実に話しかけることが最良です。以下に、一般的な子どもの発達時期と、各時期に子どもが深刻な病気についてなにを理解する傾向があるかについて説明します。ただ、これはただの一般的な指針にすぎないことを心にとどめておいてください。こうした分類はあなたの子どもさんに当てはまることもあればまったく当てはまらないこともあるでしょうから。
新生児から2歳まで
こんな幼い時期の子どもはガンという病気など理解できません。ガンというものを見ることも触ることもできないのですから。もっぱら自分になにが起きているのかが気ががりです。親から引き離されることが第一の心配事です。1歳以上の子どもは、ものごとがどんな感じがすることなのか、どうやって周りのものを自分の意にそわせるかにとても関心があります。幼い子どもたちは医療処置や検査をとてもこわがります。ほとんどが泣いたり逃げ出したり、これから起ころうとすることを何とか止めさせようと、もがきます。
生後1歳6カ月をすぎると、自分のまわりに起きていることについて考え出しはじめます。正直に話しかけるのが好ましいというのはそのためです。子どもを実際は病院につれて行くのに、そうではないといってごまかすようなことはあってはなりません。さらに、処置が本当は痛いのに、「痛くないよ」とごまかしてもいけません。「針が刺さるときにはちょっとの間、痛いけれど泣いてもかまわないよ」と話してあげて下さい。「あなたの気持ちはわかるよ」と言ってあげて下さい。子どもはあなたの誠実な態度によって、あなたを信用するのです。
ガンを抱える子どもはこども自身の治療の妨げになったり、健康に害を及ぼしたりしないかぎり、ある程度の選択をあたえられるべきです。たとえば、もし薬が飲み薬の場合は、子どもがアップルジュースと混ぜてのむのがいいか、ぶどうジュースがいいか、アップルソースがいいかと聞いてあげるといいでしょう。
ぼくは注射は痛いからきらいだ。針が刺さるのがいやなんだ(挿し絵)デイビッド12歳
2〜7歳
2歳から7歳の子どもは病気についてもう少しよく理解できます。彼らはものごとを自分なりの一面からしか見ない傾向があり、世界が自分を中心にまわると信じているのです。彼らはいくつかのものごとをひとつのことに関連させて考えます。たとえば、病気といえば、ベッドに寝ていたり、チキンスープを飲んだりという特別なものごとに結び付けます。この時期の子どもはなにか特別な行動をしたために病気になったと考えることが多いのです。ですから、病気は自然に治るか、一連のルールに従えば治るとおもっているのです。
この時期の患児には病気を招くようなことを自分がしたから病気になったのではないということを話してあげる必要があります。病気もその治療も彼が間違ったことをしたことへの懲罰ではないのです。
医療処置を誠実に現実的に説明してあげる必要もあります。すべての検査も治療も病気をよくするために受けるのだということを分からせてあげて下さい。
子どもの病気について、簡単に説明してあげることもとても大事です。診断結果を説明するのに、ガンを身近な知識と関連づけて、たとえて話してやるとよいでしょう。こうした比喩は子どもの個々のガンのタイプに合わせて下さい。例えば2〜7歳の子どもは、善と悪を理解できます。子どもの病気を良い細胞と悪い細胞の闘いとして説明してみてください。薬を飲むことが良い細胞を強くして悪い細胞をやっつけるのに役立つのだと話してあげて下さい。
7〜12歳
7〜12歳の子どもというのはまだ、自分たちだけの経験に狭く限られてはいるものの、いくつかの事象の関係を理解しはじめます。彼らは自分の病気を一連の症状としてみなします。自分たちがなにか間違ったことをしたから病気になったのだと思い込む可能性は低くなります。よくなるためには薬を飲んで医師の言う通りにしていればよいと考えています。この時期の子どもは治療に協力的になれます。
(挿し絵)ステフ8歳
この時期の子へのガンの説明はより詳細に話してもよいのですが、やはりまだ、身近な場面を含んで話してやるべきです。この時期の子どもにも、比喩はガンを説明するのに有効です。「身体の中にはさまざまな種類の細胞があって、それぞれ別々の役割を担っているんだ。人間と同じように、それぞれの仕事を果たすためには力を合わせて働かないといけないんだよ。ガン細胞はよい細胞の仕事をじゃまするトラブルメーカーみたいなものだよ。治療は他のよい細胞がまた力を合わせて仕事ができるように、そのトラブルメーカーを追っ払うのに役だつんだよ」というように話してあげることもいいでしょう。
(挿し絵)ロリ11歳
12歳以上
12歳を越えた子どもは物事の込み入った関係を理解できます。ここまでになると、子どもは自分自身が経験したことがないことについても考えることができます。10代の子どもでも、身体のだるさなどの特有の症状や、日々の生活のなかで身体に悪いからやってはいけないことなどがあってこそ病気だと理解します。しかし、また、それらの症状が起きる原因も理解できるのです。ですから、子どもには「ガンは身体の中の細胞の一部が暴れ狂っているような病気だよ。この異常が起きた細胞が、普通の細胞を押しのけて急に成長していき、身体の色々なところに侵略してきて正常な身体の機能を壊していく。治療の最終目的はこの狂った細胞を殺すことだよ。そうすれば身体の機能はもとのように正常になって、症状は消えていくんだよ」――と、そんな具合に話しましょう。(訳注―寛解状態の患児では、あまり病気という実感がなくなり、治療の必要性がわかりにくいことがあるので、こういう話題にふれているのでしょう。)
対話をオープンに
治療の間とその後のフォローアップ期間を通して、子どもとは隠しだてなく話しあうべきです。子どもはこれらの期間中に、たくさん複雑な質問をするでしょう。早いうちに隠しだてのない対話様式を築くことで、子どもさんをいま支えるだけでなく、これから先、何年も親子関係をよりきずなの深いものにすることになるのです。
(挿し絵)メリッサ7歳
時には子どもといっしょにいるときに激しい感情を感じることもあるでしょう。親の恐怖感や怒りやさみしさで子どもに精神的負担をかけたくないと思うこともあるでしょう。でも子どもたちはあなたがどのように感じているかを意外と知っています。事実、子どもは親に心配をかけまいとして自分の感情を隠すことがあります。親の思いが親子関係に障害になると感じるなら、子どもと共に語り合いたいと思うこともあるでしょう。なぜ、さみしく感じるのかを子どもに話してやれば、親が子どもに怒りを感じているのではないことを子どもは確信しますし、子ども自身も自分の感情を表現できるようになります。
治療の間、親も子どもも医療チームも仲間だということを忘れてはなりません。それがチームであり自分はその一員である、と子どもが本当に感じることができると、もっと協力的になれて治療を受けいれやすいのです。親は、子どもにこれから起きうることを理解させ、子ども自身が治療についての簡単で安全な決断ができるように支えてください。
(挿し絵)ロビー15歳
あるところでは、子ども自身が小児科の同意書にサインをするように言われることもあります。これには、これから受ける治療がきちんと説明されています。この同意書にサインをすることで、子どもは自分の治療を理解し、協力することに同意し、どんなことでも質問をするという誓いを立てるのです。
(挿し絵)
時間がたつに連れて、どんどん慣れていったわ ステーシ16歳
あなたの子どもが聞きそうな質問
子どもは自然と知りたがり、自分の病気や治療法について沢山の質問をしてくるでしょう。子どもはあなたをよくわかっており信じていますから、たいていの質問には答えてもらえると期待しています。すぐに聞いてくる子どももいるでしょうし、ずっと後になって聞いてくる子どももいるでしょう。次に子どもが聞いてきそうな質問に答えるときに役立ちそうなことを挙げましょう。
どうしてわたしが?
大人と同様に子どもも、どうして自分がガンにかかったのだろうと考えます。自分がしたことが原因だと考えることもあります。ガンを抱えた子どもには、「どうしてガンにかかったのかは誰にも、専門家にさえも、わからないことなんだ」と正直に話してあげてください。それは何かをその子がやったからでもなく、誰か他の人からうつったのでもないのです。
私は元気になれるの?
子どもはガンで死んでいった家族や友人たちを知っていることがしばしばあります。その結果、自分がよくなるのかどうかを聞くことを怖がります。よくならないという返事がくるのを恐れているのです。子どもさんに、重い病気にはかかっているけれど、薬や放射線や場合によっては手術によってガンは退治できることを話してあげてください。また、主治医、看護婦、家族みんなが子どもの病気を治そうとベストを尽くしていることを話してあげてください。こうすることで、子どもは誠実な希望のもてる答を得られるのです。たくさんの人が自分の治療にかかわってくれていることを知って、安心するでしょう。
私になにがおきるの?
子どもが初めてガンだと診断されたときは、たくさんの未知の恐ろしいことが子どもに降りかかってきます。医者のオフィスでも、診療所でも、病院でも、ガンにかかって気分が悪そうで、頭は丸坊主で、ときには身体の一部を切断された子どもに出会います。子どもは恐くて質問もできず、これから自分になにが起きるのかについて非現実的な恐怖をふくらませてしまいます。ですから、子どもには治療、起こりうる副作用、副作用が出たときにどうするべきかについて、前もって説明をするべきです。さらに子どもは、ガンといってもたくさんの種類があって、ある子どもに起きることが必ずしも自分に起きる訳ではないことも知っておくべきです。
(挿し絵)
化学療法を受けた時は何にもしたいとおもわないから寝るのが大好きです。
エイメル12歳
子どもだって自分の治療計画やそのどんな変更についても、知らされるべきです。診察にいく日、治療がある日、検査のある日などを書き示すカレンダーをもたせることが、こうしたことへの心の準備をするのに役立ちます。
(挿し絵)何か悪いことが起きようとしているときは、悪いことについては考えないんだ。
いいことだけを考えるんだよ。 ジャンヌ18歳
どうして何ともないのにお薬を飲まなくちゃいけないの?
薬を飲むのは気分が悪いからだと結びつける人がほとんどです。自分が何ともないのに薬を飲むことは混乱をきたします。この問題の解決のためにはその子のガンについてのもともとの説明にさかのぼって考えるとよいでしょう。たとえば、「気分もよく病気の兆候 も何もなくても、悪者細胞が潜んでいるんだよ」と話してやることもできます。「悪者を見つけ出し、そいつが戻ってこないようにしばらくの間薬を飲まなくてはならないよ」と説明しましょう。
学校で友だちになんて言えばいいの?
ガンを抱える子どもは友だちや同窓生たちがどんな風な反応を示すかが気になるものです。学校を欠席することが多かったり、体重増加、脱毛などの明らかな身体的変化をともなって学校に復帰するときには特にそうです。仲良しの友だちや同級生たちと連絡を取り合うよう、励ましてあげてください。学校を休んでいるときになにが起こっているのかを、友だちが知りたがるでしょう。お友だちに自分の病気や受けなくてはならない治療について正直に話すようにさせましょう。お友だちにガンがうつることはないことをしっかり伝えるように話してあげてください。
(挿し絵)匿名
親は子ども自身がもっているのと同じだけ、周囲の人達がガンについて知識をもっているのではないことを理解させてやるべきです。みんなは彼に対してさまざまな反応を示し病気についての誤った情報を提供してくることもあるでしょう。そういう人と話した時は、あなたが築いてきた信頼関係にもかかわらず、子どもが疑いや恐怖を抱くこともあります。よその人と子どもの会話についてたずね、まちがいがあれば正せるようにしましょう。
あなたの子どもは人が自分の病気に対してどのような態度をとるかということで、二つの大きな教訓を学ぶでしょう。まず、話された内容にかかわらず、ガンについてあまりよく知らないためにさまざまに反応する人がいるということです。さらにその病気についてもっと知ることが怖いと思う人もあります。二つ目は本当によい友だちはそんなことに関係なくよい友だちでいられるということです。よい友達はこれまでと同じようにその子が彼らにとって大切な友だちだとわかっているのだと話してあげましょう。
ガンにかかる前にやっていたことをまたできる日がくるの?
この質問への答えはまちまちで、子どものガンのタイプと治療法によって違います。一般的には、治療の時期によりいくらかの制限が必要になります。医師や看護婦が子どもの活動制限をあなたに伝える時、なぜそうしないといけないのか、どのぐらいの間かをたずねましょう。また、禁止された活動の代わりになる活動ができるようにしてあげましょう。たとえば、出血傾向があるのでケガをするといけないといって自転車に乗るのを禁じられるのなら、お友だちに家に遊びに来てもらって絵を描いたり色をぬったりしようと誘う提案をしてあげてください。
子どもを支える
あなたと同様に、子どももときどき不安や恐怖を感じることでしょう。でも、あなたとちがって、自分の恐怖感について口に出せないかもしれません。だから、そんな恐怖感を、不快な態度(当たり散らし、威張る)を取ったりあるいはいつもよりおとなしくしてふさぎこむことで表現することもあります。親ですから、子どもがいつもはどういう風に振る舞うか分かっていますし、もしいつもと様子が違うのならば、一番早く気づくのはおそらくあなたでしょう。子どもにとって遊びは恐怖や不安を表現し軽減させるための一つの手段ですから、そうするようにうながしてあげるべきです。絵を描いたり指人形で遊んだり医療用具で遊ぶことさえも、子どもが「自分に起きていることがわからない」とか「もっと安心させてほしい、愛されたい」という思いをあなたに伝える手段でありうるのです。
(挿し絵)
なかには、自分の感情を表現しにくい子もいます。こんな子たちは悪夢にうなされたり食習慣や行動に問題がおきたりすることがあります。あるいはまた、学校では家庭でとは違った振る舞いをすることもあります。すでになくなっていた幼い頃の振る舞い(おねしょや親指しゃぶり)などに逆行する子どももいます。こういうときには主治医や看護婦、ソーシャルワーカー、学校のカウンセラーなどと話をしなければなりません。
長年の間にあなたがたが親として子どものことについては第六感が働くようになっていることを忘れないでください。子どもの振る舞い一つ一つに問題探しをする必要はありません。もし問題があるとすれば、あなたの目には明らかにうつるでしょう。また、子どもの主治医、看護婦、ソーシャルワーカー、教師、学校カウンセラーがあなたのおかれた状況と同じ様なケースに経験があり、喜んで力になってくれるということを忘れないでください。
(挿し絵)
ガンの診断と治療の期間中に、子どもを安心させるためのアイデア
1. 子どもに、あなたが間違ったことをしたからガンになったのではないと気づかせましょう。病気も治療も懲罰ではないことを伝えてください。
2. 処置や治療について説明するときは正直に現実的に話してください。治療が変わるときにはどんな変化も、子どもに知らせてください。
3. あなたが何でも知っているとは誰一人、もちろんあなたの子どもさえも思っていません。「わからない」「知らない」ということを恐れないでください。
4. 子どもに質問するのを恐れないでください。なにを考えなにを感じているのかを子どもに聞くことで、あらたな恐怖心が芽生えることはありません。そうすることで、すでに抱えている恐怖心を表現する機会が子どもには与えられるのです。
5. 悲しいと思ったり泣いたりしてもいいんだよ、と話してあげてください。子どもに感情のはけ口が与えられます。
6. ある程度、制限を置いてください。闘病の期間中は、子どもは、子どものために決めた規則をなくすように反抗してくるでしょう。病気の子どもを甘やかして規則を破らせてしまうのは自然な成り行きですが、そうすると子どもが余計に不安に感じるのも事実です。実際以上に悪い事態になっていると思い込むのです。
7. 子どもの健康を害したり治療の妨げとならないかぎり、子どもにがまんすることを教えてください。色々な制限を余儀なくされるなかでも子どもは成長します。
8. 不安を軽減するような活動をうながしてください。絵を描く、医療用具や指人形で遊んだり、役割遊び(ロールプレイングゲーム)をすることで、子どもの感情が表現されやすくなります。
9. 子どもの感じていることを話すようにしむけてください。家族が十分に話し合いをすることが子どもの不安を軽減するのに役立ちます。話し合いをもつことで家族全体がこの病気に一丸となって取り組めるのです。
10. 大人同様に、子どもにも気分がいい日も悪い日もあることを認識しましょう。
11. 質問に答えたり、あなたや家族を支えるために、医療チームがあることを忘れないでください。
(挿し絵)私の家族は幸せです。入院している時は、家族に会いたいです。
メレナ、7さい
12. 特に5歳未満の子どもは両親からはなされることが心配です。親が離れなくてはいけないときも「あなたを愛しているし、できるだけ早く戻ってくる」と安心させてあげてください。
13. 学校を休んでいるときには子どもが友だち、家族、同窓生と連絡を取りつづけられるよう助けてあげましょう。また、宿題をして、できるだけ早く学校に戻られるように励ましてあげましょう。こうすることによって、自分はいまでも友だちがいて、興味関心もあり、責任もある普通の子どもであることを理解させることができます。
14. いま起きているすべてのことにもかかわらず、あなたの子どもはこれまでもそうであったように同じく素晴らしい人間なのです。成長していく健康な他の子どもと同様に感情的な面での欲求もあります。いつもどおり、毎日、お互いに愛し合い喜び合う時をもってください。
子どもとガンについて話をするのは簡単なことではありません。私たちがここに書いたことが役立つよう願っています。病気の子どもの兄弟姉妹、お友だちと話をするときにも役だててください。
ガンと闘病していく上で、きっと、いろんな質問が出てくることと思います。国立ガン研究所(NCI)では、フリーダイヤルでガン情報サービス(CIS)を提供しています。1-800-4-CANCER (1-800-422-6237)にダイヤルすれば、(CIS)事務局につながり、訓練を受けたメンバーがあなたの質問に答えたり相談にのったりします。スペイン語を話すスタッフも控えております。
謝辞
この冊子を書くに当たり、メリーランド州ベセスダの国立衛生研究所、ワレン・グラント・マグナソンクリニカルセンターの小児ガン患者さんに、挿し絵とコメントをいただきましたことを深く感謝いたします。