原題 : Phil the Pill
著者 : ニック・マーティン
訳者 : 撫子なんちゃん
おことわり(免責条項)
1.なるべく言葉や意味を正確に翻訳することを心がけていますが、内容については保証するものではありません。海外と日本では治療法や使用される薬が異なるばかりで
はなく、社会的環境も異なります。あなたの主治医と話し合ったり、各種団体の相談窓口を利用するなどして、ご自身あるいはご家族に対してここにあげた情報がどのように適用できるかご判断ください。
2.原典の各発行元には、日本語への翻訳に関して了解を得ていますが、各発行元が日本語に翻訳された情報の保証をするものではありません。
3.訳者、編集者、監修者などはこの翻訳内容と、それによって引き起こされたことに対して、いかなる責任も負いません。
4.小児患者のご両親へ:
お子さんと病気の事を話す時は、ここにあげた情報だけでなく、その子の性格、親子の関係をふまえ、主治医、精神科医、ソーシャルワーカ、各種相談窓口、他の患者さんのご両親などできるだけ多くの人と話し合って、どのように対応するのが良いかご判断ください。
むかしむかし、あるところにフィルというおとこのこがいたんだって。
フィルはいつもいつでもしあわせだったよ。
木のぼりだいすき、なかまとサッカーだいすき。
学校いくのも大すき、これはたまに…だったけどさ。。
あるとき、フィルがおもーいびょうきにかかったんだ。
学校にもいけないし、サッカーだってできない。
おまけにおいしゃさんがよいはタップリコン。
ママはフィルが、ガンというびょうきになったといったんだ。
フィルがまたげんきになるまではびょういんになんどもなんども
いかなければならないよ…ってね。
びょういんでは、けんさをするちをとるためにゆびにはりをさした。
チクッとはしたけど、気になんかしなかったさ。
(にほんでは、ゆびからちをとることはあまりないよ。)
ほかにもけんさをするためにフィルはねむらされた。
だけどフィルは気になんかしなかったさ。
はきけがしてもどしてしまうようなおくすりをフィルにあたえ
かみの毛までもぬけてしまったよ。
だけどフィルは気になんかしなかったさ。まあ、ちょっとは気になったけどね。
かみの毛がぜーんぶなくなったら、なんてパパそっくりになったこと!
だけど、おやまあ、つぶのくすり、ピルだけは
フィルはどうにもだめだった。
あさにはみどりのつぶ3つ、白いでっかいのひとつ。
ごごには赤に黄色にまたべつの白いやつ。
よるになれば、またまたもっとあったのさ。。
ママがなんとかのまそうとしたけど
フィルはどうにもいやだった。
こんなののみこめるもんか…
のどにつまっちゃうよー。
まいにちまいにちくすりのじかんになるとないちゃったのさ。
ときには、わめいたよ。
またあるときなんて、ベッドの下にかくれちゃった。
そんでも、フィルはのまなきゃなんない。
つぶのくすり、ピルなんてだ〜〜いっきら〜〜い。
パパがなんとかしようとしたけど
どうにもフィルは、さけんじゃう。
おばさんもたすけにやってきたけど
どうにもフィルは、なきだしちゃう。
かんごふさんもやってきたけど
やっぱりフィルは、なきさけんじゃう。
まいにち、おくすりタイムがくるとフィルはこうしておおさわぎ。
だから、ママがフィルをこうよんだ。「フィル!ピル!」
ある日、フィルはびょういんで、あたらしいともだちができた。
そのこのなまえはエイミーちゃん。
フィルとエイミーはあるあさ、あそびのへやでぬりえをしていたのさ。
かんごふさんがやってきて、エイミーにくすりを4つぶわたしたよ。
エイミーはそれをくちにいれると水といっしょにごくっとのみこんだんだ。
「おりこうちゃん」とかんごふさん。「おくすりをのめばよくなれるからね」
「いやだよー!」とフィル。「ぼくはピルのやつらをのむのはだいっきらい」
「とてもじゃないけどのみこめないよ」
「でもここでくれるおくすりはおともだちだよ」とエイミー。
「だってわたしをまたげんきしてくれるんだもん」
「それに、たのしいことをおもいださせてくれるのよ」
「どういうこと?」とフィルがきいた。
「それはね、みどりのくすりはクリスマスでしょ。
黄色いのは、はるのお花でしょ」とエイミー。
「じゃあ白いのは?」とフィルがきく。
「ぼくは白いのが一ばんきらいなんだよ」
「大きすぎて、のみこめないんだもん」
「白いのは私のお気に入りよ」とエイミーがいった。
「あるときはね、わたしののどは白いゆきでおおわれた高いお山だとおもいこむの。
そしてその白いつぶがゆきだるまさんでね、
そのゆきだるまさんをぽんぽんを下にしてねんねさせて
お水をたっぷりのむとね、
ヒューッとはいっていくよ」
「ほかにはね、そのつぶを、はね橋の下をとおっていこうとする白い
大きなおふねだとおもうのよ。
わたしが水をのむと、はね橋は上がるの。
そうするとおふねはちゃんととおっていくの」
「ぼくにもそんなことができたらなあ」とフィルがいった。
「できるわ。フィルがこんどおくすりをのむとき、たすけてあげる」
その日のごご、かんごふさんが赤と黄色と白の大きいピルのつぶをもってくると
フィルはそれをエイミーのへやでのんでもいいかときいたんだ。
フィルは赤と黄色のピルのつぶをサッカーのゴールにころがりこむ
色あざやかなボールだとおもって
とてもかんたんにのみこんだよ。
それから、白の大きいやつのことをおもって、ちょっとなきじゃくりはじめちゃった。
「こわがらないで」とエイミーがいった。
「らくにしてゆきだるまさんをお山の上におくのよ」
フィルはらくにしてピルのつぶをのどのおくのほうにおいたんだ。
エイミーはおみずのはいったグラスをわたしたよ。
「ほうら、お山をころがるのよ」とエイミー。
フィルは目をとじてごくりと大きくのみこんだ。
ゆきだるまは、お山のてっぺんでほんの一しゅん、とまったようにおもえたが
つぎはブーンところがりおちていった。
フィルはびっくり。「か〜んたん!」とフィル。
「でしょう?」「いつでもしたいときにできるよ」
「こんやはママをびっくりさせられるね」とエイミー。
その日のごごはずっと、フィルのママがどんなかおしておどろくか、かんがえては、
ふたりはクスリ、クスクス、クスリンチョ、ゲラゲラ、アハハとわらいっぱなし。
そのよる、かんごふさんがフィルのくすりをもってくると
ママは「ああ、もう、またはじまるんだわ」とおもったよ。
フィルはエイミーがおしえてくれたとおり、のどをらくーにした。
赤と黄色のピルのつぶをしたのおくのほうにのせて、いま、まさにスタートしようとし
ている
きれいな色のレーシングカーをかんがえた。
水をたっぷりのみこんで、スタートのハタがふられると車はゴォーっととんでった。
これにはフィルのママはびっくりしたみたい。
ママがなんにもいわないうちに、フィルは白いピルのつぶを口にほうりこみ
つめたいゆきの山をおもいながら、水をごくりとのみこんだ。
それで、すっと、いっちゃった。
ママはびっくりぎょうてん。
「まるでまほうだわ」とママ。
「ちがうよママ、ただのスッテンコロリンゆきだるまなのさ」
とフィルはわらっていったとさ。
おしまい。
ついしん:おともだちへ
ここすうねん、ぼくはコンピューターゲームをしたり、てじなをしたり、トランプあそびをしたり、
ガンにかかった小さい子どもたちやHIV(エイズってもいうね)にかんせんしたかんじゃさんたち
とただはなしたりしてながいじかんをすごしてきました。たくさんの人となかよしになりました。
このおさないともだちはつぶのくすりをのんだり、あじのひどいくすりをのんだりすることをふく
めて、ふゆかいなことにまいにちむかいあわなければならないのです。このおはなしはおくすりを
のむのがだいきらいだったエイミーというほんとうにいる小さな女の子にヒントをえておもいつき
ました。ぼくがこれをかいたのは山ほどくすりをのまなくてはならない小さな子どもになんとかこ
のもんだいをのりこえられるようやくにたちたかったからです。すくなくともこれをよんですこし
でもわらってくれたら・・とおもいます。きみのやくにたちますように。きみのまわりのともだち
でくすりをのむのがきらいな人がいたらこのはなしをつたえていってね。みんなにもやくにたつと
おもうから。かきたかったら、つたえていくときにさしえをつけてくれてもいいよ。よかったら、
フィルくんのえやきみがくすりをのむところのえをぼくにおくってね。これからかくはなしにつけ
てみんなにとどけるよ。
ぼくのじゅうしょは
Nick Martin
National Cancer Institute
NIH, Bldg. 82, Rm. 219
Bethesda, Maryland 20892-2650
インターネットだったらアドレスは
[email protected]
じゃ、うまくやってね!
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Martin: Phil the Pill