第17章
医療費の支払い(この章は日本の患者さんには無関係な内容も多いのですが、患者が外国での状況を知り要望を声に出したり、ボランティア団体や、医療機関、福祉行政などの方が今後の日本での支援体制を考慮していく上で比較したり参考にできることもあると思いますので、省略せずにそのまま掲載いたします。日本の患者さん向けの情報は骨髄移植の基礎知識付録Bを参考にして下さい。−電子化作業担当者より)
原典: Problems Paying Expenses
URL: http://www.collmed.psu.edu/pedsonco/Chapter17.OL.html
訳者: Grandpa Tony@Dinosaur
email: [email protected]
(問題の解決には冷静で、肯定的な態度で臨んでください。あなたが大変当惑し落胆しているなら、友人、近所の人たちや家族に話しをして助けをお願いしましょう)
問題を理解する
闘病者・家族にとって、財政的な問題は少なからぬ心配事であり、病気に加えてさらに重荷となります。財政的な問題があると、世間体が気になり当惑することも多く、必要な支援を求めずにいたり、財政的にどうにもならなくなるまで支援を求めない人があります。それが問題解決をより一層難しいものにしています。
ガンの治療は大変高額です。特に保険の保障内容に限度があると、医療費負担が大きな出費になるのは良くあることです。しかし、このような問題には重要な解決の選択肢があります。ひどい状態になるまで待っていてはいけません。お子さんはハーシー医療センターでの小児ガン患者であることを忘れてはいけないのです。そこには医療処置のための特別基金制度があります。他の多くの家族がそうであったように、あなたもその対象としての資格があるかもしれません。
あなたの目標は:
- この病気に関連する費用を支払うため、必要な援助は何であれ、受けること
支援を受けるために何ができるのか
資金的な問題には、危機的な状態になる以前の早い時期に取り組むことが大切です。先送りにしてはいけません。早い時期に行動を起こして対処した方が問題を解決することが容易になります。金銭的な危機に陥る前に借金をする相手(訳者注:この場合は医療機関)に相談を持ちかければ、彼らはあなたと一緒になって資金援助の作業を行なってくれるのが普通です。
問題解決のために、あなたにできることは次のようなものです。
- フォアダイモンズ基金に申請を行なう。
- フォアダイモンズ基金はハーシー医療センター発生したガンを患った若年者の家族に対し彼らの入院および治療に関わる費用の支払いの援助を行なっております。若年者は彼らの年齢が21歳以前に診断を受け、また家族の一員であることが必要です。ここで対象となった人には25歳になるまで資金処置に有資格となります。申請書を完成させると、財務担当カンセラーが内容を検討し、もし当該資金計画で資金を受領する資格があるならば決定されることになります。
- フォアダイモンズ基金に申請書を提出することに関してソーシャル・ワーカーに話すことです。ソーシャル・ワーカーは医療費の援助を得るための情報源として最適の相談相手です。ソーシャル・ワーカーは必要な申請用紙を渡してくれますし、その計画についても説明をしてくれます。
- 家族財政参加(Family Financial Participation = FFP)と呼ばれるものがあり、その意味はあなたが十分な医療費と入院経費を賄い得る収入と資産を所持していると言うことです。もしあなたがFFPの有資格者として認定された場合、あなたはフォアダイモンズ基金が必要部分の支払いを行なう以前に支払う必要があり、基金は残金について支払いを行ないます。
- あなたがFFPの資格を持たないと評価された時、保険で支払われなかった部分についてフォアダイモンズ基金が支払うことになります。
- 病院からの請求書は自動的に患者会計部門からフォアダイモンズ基金に提出されます。もしあなたが医療保険の大きな保証をうける証券を持っている時には、医師よりの請求書を自分で保険会社より支払いを受けるために提出することになります。
- 保険請求用紙記入に力を借りる。保険請求用紙の記入を完了させるのはややこしくまた難しいものです。このような用紙類を側に置いておくことは大変にストレスを招きます。以下にこうした重要書類を書き上げるのに役立つ提案を挙げます。
- 病院の財務担当カンセラーに会って話をすると、支払書類に関してのあなたの質問に答えてくれますし、あるいは、あなたが保有される医療費と入院費に関わる保険証書でどの部分が補てんされるかを説明してもらえます。病院の財務担当カンセラーにフォアダイモンズ基金の申請書と給料明細書を渡してください。そうしますと30日以内に書面にてあなたがフォアダイモンズ基金に適格であるかどうかを説明した連絡が入ります。
- 友人や家族で医療費請求や会計計算に強い人に支払いの担当者になってくれないか
尋ねてみてください。
- 医療支援の申請
- お子さんがハーシー医療センターに入院しているのであれば医療費支援を申請するために助けとなる同センターの保険確認部にお話しください。保険確認部は同センター一階のギフトショップの近くにあります。先に予約を行なうか、あるいは直接訪問してもかまいません。
- もし、お子さんが同センターに入院していない場合は、医療支援を申請するためには郡の支援機関に連絡を取ってみてください。すべての郡には支援機関(Board
of Assistance)があり、事務所は週五日開いております。電話帳のブルーページで郡政府の項に同事務所の電話番号が出ております。もし、この事務所に向かわれるための交通手段に問題があるときには、事務所に連絡をして乗り物手配を依頼することです。
- あなたの社会保障手当が支給されるかどうかを確かめてください。トール・フリー(日本ではフリー・ダイアル)電話1-800-772-1213の社会保障事務所に問い合わせ、あなたが有資格であるかを確認し、その後月例支払いの申請を追加社会保険(Supplemental
Social Insurance = SSI)基金に申請することになります。
- 資金的な支援がえられる手段には、どのようなものが地域内にあるかを調べて見ましょう。下の一覧はあなたが当たってみるべき支援機関です。各基金には基金を支給される資格に該当するかどうかを決める指針があります。
- 米国ガン協会は乗り物と走行距離によるガソリン代支出の払い戻しを行なう支援を行なっております。米国ガン協会(ACS)から交通費と薬品代金の援助は短期間ですが時々行われます。最寄りのACSの事務所に電話で問い合わせてみてください。電話番号はホワイトまたはブルーページで調べてください。また、事務所によってはボランティアーの運転手を出すプログラムを提供する場合もあり、この計画によりガソリン代の肩代わりと運転による疲労を解消する助けになります。その他に、少ない金額ですが走行距離とガソリン代への資金援助策もあります。
- 米国白血病協会にガソリンの走行距離による支出還元プランがあるので尋ねてみてください。白血病協会は特別の財政援助プログラムを行なっています。病院のソーシャル・ワーカーが協会の支援計画用紙をくれ、また提出も手伝ってくれます。
- 緊急時の資金援助や家庭の暖房費と電気代のような支払に関して米国赤十字の地区事務所に尋ねてみることです。赤十字は多くの色々な危機や財政問題に直面した家族のために行なう援助プログラムを用意しております。電話番号は電話帳で調べることができます。
- 電話帳のブルー・ページに人材ガイドと言う項があり、地域交通プログラムあるいは郡支援機関の項があります。この人材ガイドの項を良く調べると交通サービスと言う部分がありますので、それらの組識はあなたやあなたの家族が適格であれば、治療のための運転費用、バス料金、タクシー、鉄道料金あるいは航空運賃の支援を受けることができます。これらのサービスはあなたが今までは知らなかった交通サービスを行なう機関なのです。あなたの地域の郡支援機関は、あなたが食品スタンプ、医療支援カードあるいは現金支援などの援助プログラムにの適格であるかを教えてくれます。
- ソーシャル・ワーカー、親族や家族、友人に病気に関しての財政支援を行なう地域団体や教会について尋ねてみることです。ある地域団体は会員のための基金を持っていることがあり、他に宗教的なグループは誰にでも支援を行なうための基金を用意しております。地域組識の会員の方にあなたの必要性を話すか、あるいは友人や家族を通してこれらの会員の方に話しをし、それらの組識がどのような援助をできるかを聞いてみることです。
- ソーシャル・ワーカーに薬品や必需品などの必要経費内容の検討をお願いしてみることです。もし自宅でケアマーク社のIV(中心静脈輸液治療)消耗品など使用しており、支払いに問題があるときには、財政検討プログラムの問いあわせを行なうことです。
- 家庭生活に関わる未払い請求書などを集め緊急の財政手段が必要なものについては、それらを上述した団体のソーシャル・ワーカーあるいはケース・ワーカーに見せることです。また、家計の未払い請求書集め(整えて)簡易な財政表を作成して上で述べた組識に報告をすることです。これらの請求書には電話料、電気代、家賃や水道・ガスなどを含むものです。それぞれ組識によって若干は異なる援助を提供するもので、特にお子さんがガンを患って冬季間に室内を暖かく保つ必要があるときに暖房費が認められないことを打ち明ける賢い方法となります。
- 速やかに必要な家計のための経費についてソーシャル・ワーカーに会う。ソーシャル・ワーカーは未払いの電気代や電話賃であなたが必要な早急な資金援助をどのようにするかの方策を理解しています。多くの場合、彼らはあなたのお子さんの医療治療のために暖房や電気が必要であることを理解した上で再開を求めることができるからです。
- すべての債権者と金融契約の内容を再調整するための話し合いを回収通知が発送される前に行なうことです。
- 雇用主との勤務時間の交渉をしましょう
- ソーシャル・ワーカーに雇用主と話してもらうようお願いする。恐らく、あなたは多くの時間を(欠席や遅刻・早退で)勤務時間中に抜けないといけない状態になることでしょう。このような問題は家族全体に起こり得ることです。特にあなたがたが共働きの場合です。多くの雇用者はこのような時、大変に理解を示し、仕事から離れることへの調整を行なう支援をしてくださいます。ソーシャル・ワーカーは、あなたがこのような勤務時間の調整の交渉で面倒に直面している時には、あなたに代わって現在の状況が如何に大変であるかを説明し話し合ってくれます。
- 勤務時間を変える選択についての良否を計る。多くの親御さんや家族は、ガンを患ったお子さんと自宅あるいは病院で一緒に過ごすために、あの手この手を使い、それでもまだ勤務時間を工面する必要があります。あなたが選択できる手段を表にし、良否を相互に分けて評価を行ない、その上で家族全体についての最善の選択を決めることです。(訳者注:欧米人、特に米国では一般的に行なわれる手法。簡単な縦3行の表を作り最初の1行目は選択内容、2行目はPros(プロズ=良)で利点を列記し、3行目はCons(コンズ=否)で弱点を列記し、良否の重さを比較する手法。)たとえば、パートタイムで働くべきかどうか、あるいは一定期間休暇を取るかの判断と取り組まなければならないでしょう。
- 勤務時間と従業員の福利★(有給など)援助の申し出を別の従業員からうける。家族や仕事の同僚の支援する気持ちを少なく見てはいけません。他の人たちはあなたが仕事に関するジレンマを色々な面から理解しており、手助けする気持ちを持っています。たとえば、同僚たちが自分たちの有給休暇を寄付し、あなたは勤務せずとも給料の支払いを受け続けることができます。(訳者注:
訳者は工場作業者や事務職などでこのような状態を少なからず見ており、相互援助の精神で当然のこととして自分の有給休暇を提供している。)
考えられる問題点
あなたが治療費、入院費あるいは生計費などの支援を受けるのを妨げる態度あるいは思考について考えてみましょう。
- "自分当ての請求書に支払いができないことは肩身が狭くまた自尊心が傷付く思いである"
- アドバイス:多くの人たちがあなたと同じような状況に置かれてきました。生活費もまた上昇し、あなたも例外ではありません。今日の医療費は大変に多額になり、多くの人にとって支払い上の問題は共通の悩みなのです。このような問題に直面したことはあなたの落ち度ではなく恥じることではありません。大方の人たちがこの種の問題に大変に理解を持っているのがわかるでしょう。
- 子どもがガンを患っている他の親御さんに話してみることも役に立つでしょう。彼らも又、助けを求めてきたこと、人生のこのような苦しいときに経済的援助を必要とすることに対する恥じらいや罪悪感、躊躇はすべて克服してきたことに気づくでしょう。
- "家計のことは他のものがやっており、自分は扱ったことがないので、何をすれば良いのか分からない。"
- アドバイス:お金を扱うことがあなたにとって初めてのことであれば、誰か予算や支払い、経済的援助をお願いすることに慣れている人の助けを求めます。財政問題を成り行き任せにすると経費の管理は宙におかれ、より大きな財政的危機に直面することになります。
計画の実行と調整
計画の実行
待ってはいけません。速やかに実行することです。もし、あなたが最初にはじめることができないのであれば、どなたかに手伝ってもらうことです。病院のソーシャル・ワーカーや財務担当カウンセラーに話してみることです。彼らはこのような問題で多くの経験を積んでおり、あなたの求める援助策について創造的なアイデアを出せると思います。
もし、保険や医療証明の書式用紙に問題があるような場合は、主治医の事務所のスタッフかあるいは病院のソーシャル・ワーカー、または自宅介護代理人に助けを求めることです。
もし、あなたの計画が機能しない時
ある程度の成果は得たが、自身が期待しているほどではないと思えるなら、とても短期間内に余りに多くの進展を期待しているのではないでしょうか。辛抱強く継続的に試みてください。財政問題の解決は時として時間がかかるものです。
財政問題で疲れ果てたと感じた時には、解決できるよう、どなたかに助けを求めましょう。直接関係していない人だと(視点がかわり)新しい方法で問題に対処できることもあります。
ソーシャル・ワーカーはこれらの問題解決に最も経験を積んだプロです。もしあなたが最初に相談したソーシャル・ワーカーが役に立たないようであれば、別のソーシャル・ワーカーに話してみたいと頼んでみましょう。
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