KENの超・闘病法からの N e w s 〜過 去 記 事

- [7] (98.9.01〜)-
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98.11.12 ◇◇連載 患者の視点からの日米医療比較(9)◇◇

規制緩和が急務な日本の骨髄バンク

▲51歳の患者は米国では移植が受けられるが、日本ではできない。米国からは日米同時コーディネートができるが、日本からはできない。どうしてだろう?
▲中央で規制するのではなく、患者と主治医が主体的に治療法を選択するようにならなければ、結局、不公平感はぬぐえない。
▲ようやく移植適応条件の規制緩和が動きはじめた。迅速に適正に作業をすすめてもらいたいものだ。

 患者と主治医が治療法やドナーを主体的に決める米国。日本では骨髄バンクで、厳しめのルールが維持されてきた。患者の救命のため、時代の流れに合わせて、それを緩和する努力が十分になされてこなかったといえる。国際的な骨髄のやり取りが積極的に行われる時代になって、旧来のルールと運用方法がますます現実にそぐわなくなってきている。
 いくつかの例題で考えてみよう。 ○ケース1 51歳の患者
 51歳の白血病患者が骨髄バンクを通して骨髄移植を希望したとしよう。状態が良好なら、米国では移植が受けられる。移植センターごとに年齢基準は違うが、「56歳以下」としているところが少なくない。ところが日本では「原則45歳以下、全身状態が良いときは50歳まで可」となっている。この患者さんは日本のバンクを使えないし、移植もできない。
 では、この患者さんは米国のバンクから提供を受けられるだろうか。どうやら難しそうだ。日本のバンクは米国バンクと提携しているが、日本のバンクに登録している患者さんしか米国への照会を取り次がないからだ。この制限は、通常のコーディネートマニュアルにも、日米提携契約文書にも規定はなく、ただ「国際コーディネートマニュアル」で明記されているようだ。
 本来、日本のバンクは、日本のバンクを通した移植を日本の認定病院でやるときのことを規定するだけのはず。だが、日本の年齢制限に合わせて米国への照会を制限しているわけだ。
 日本のバンクを通しては米国からはもらえない。でも、直接ならどうか。日本のバンクの幹部は「直接、交渉すれば応じてもらえるかも知れません」と言う。ところが、個別病院が米国に照会して駄目だった例もある。このあたりが明確にされていくことが大切だろう。
 年齢制限の線引きは難しい。もちろん、善意の提供者から骨髄を受け取るのだから、相応の期待治癒率も必要だ。だが、移植に耐えられるかどうかは、年齢差より個人差の方が大きい。米国のように制限は緩やかにして、個別の患者をみて(本人の意志も尊重し)、移植に耐えられるかを判断した方が良いだろう。
 懸案の規制緩和がようやく動き出した。8月の企画管理委員会でも議論された。議事録には「50歳以上の登録希望患者に対する対応等について、今後適応基準の変更等も含め各委員会と協議をし、検討していく必要があるとされた」とある。10月23日の同委員会では、それがかなり明確化されたようだ。
○ケース2 できるだけ早く骨髄提供者をみつけるため、2カ国以上で同時にコーディネートを進めたい
 私の妻は米国で発病して米国で骨髄移植を受けた。日米の骨髄バンクで同時にコーディネートしていただいた。この体験から、国際的な同時平行コーディネートは当たり前に思える。だが、日本のバンクはそれを禁じてきた。「国内で適切なドナーが見いだせない患者」だけに、海外への登録を限定してきたのだ。
 だが、米国からの日本への登録には、米国内にドナー候補がいるいないにかかわらず応じてきた。日米不公平状態が生じていたわけだ。また、日本にいても日米同時登録の状態になることがあった。それは、日本でドナーが見つからず、米国にも登録したあとで、日本にも候補が現れたような場合だ。つまり、ルールが実態にそぐわない状態が続いていた。この制限も、国際コーディネートマニュアルだけで規定されていたようだ。
 日本で一人しか候補がみつからないような場合、その候補がコーディネート中止になってから米国で登録するようでは、時間がかかりすぎる。結局、選択の幅を広げて自主性で選ぶスタンスの方が救命に役立つし、すっきりする。
 同時登録についても規制緩和が動きだした。10月10日のコーディネート委員会で、同時登録ができるようにすることについての合意がなされた。国際委員会からの申し入れに応じたものだ。10月23日の企画管理委員会でも、その推進が決まった。今後、年齢制限、国際同時平行登録・コーディネート、移植適応条件の緩和一般などが、骨髄バンクとしてどう正式決定されて、公表と周知がなされていくのか注目される。
 米国では、国内、海外、臍帯血などを同時に検索しながら、もっとも適切な方法を選択することが望ましいと考え、それを実行している病院が多い。複数の選択肢から最高の方法を選択する−−日本の医師もこうした発想に転換していくことが必要だ。

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(KENが考える骨髄バンクの理念を改訂しました)
 骨髄バンク事業は
 骨髄移植を必要とする患者の救命のため
 善意の提供者の安全に万全を期しつつ
 提供者をはじめとする国民の協力を得て
 国の支援のもとに
 公平性と迅速性のある事業として
 公共性と透明性の高い組織によって行う



98.10.7 ◇◇連載8 病院の実績を比較する◇◇

東京の会 会報への連載から

連載 患者の視点からの日米医療比較 (8)
移植病院の実績を比較する

▲患者は成績が良い病院を選ぶ権利がある。そのためには病院の実績が公開されなければならない。
▲日本では病院の骨髄移植実績が十分に公開されていない。本来、骨髄バンクが病院から集約して提供すべき情報だ。
▲そうなるまでは、われわれで情報を集めて共有していくことが重要だ。やれることは少なくない。

 骨髄移植は病院によってかなり成績に差がある。患者の立場からすれば、できるだけ成績が良い病院で移植を受けたいものだ。患者は良い病院を選ぶ権利がある。そのためには病院の成績に関する情報が不可欠だ。
 米国では病院ごとの移植成績がかなり入手できる。個別の病院で聞けば、病気・疾病別の移植例数や生存率を教えてくれることが多いし、まとまった資料もある。それは「移植センター連絡ガイド」(Transplant Center Access Directory)と呼ばれるもの。米国骨髄バンクの患者擁護部に連絡すれば郵送してくれる。米国のすべての認定病院の移植実績が載っている、197ページの堂々たる資料だ。
 この資料をみながら、候補の病院に電話をしてさらに質問する。また、白血病協会や自分がもっている医療保険に電話をして評判を聞く。そうしていくと自分の疾病や状況にとってどの病院がいいか、判断できるようになってくる。
 日本では骨髄バンク(骨髄移植推進財団)に患者擁護部がなく、こうした資料を集計する動きさえない。そこには、「お上が認定した移植病院はすべて同等の(少なくともある水準以上の)移植成績をもっているはずで、差があってはならないし、比較してはならない」という思想が横たわっている。
 「移植センター連絡ガイド」から、フレッド・ハッチンソンがん研究センターの項をみてみよう。
 疾病と病期別に、症例数と移植100日後・3年後の生存率が明記してある。「全国平均より高い成績です」とも、うたってある。また、クライテリア(移植適応条件)としては、1座不一致も行うと説明。米国では移植病院が主体となって適応条件を決めるのだ。
 病院によっては移植成績をここまで細分化して出していないところもある。病院によって情報の公開の仕方が違う。だが、よく眺めているといろいろと違いと特色が見えてくる。要するに、米国では「情報の公開と、患者の自主的な病院の選択」という考えが基礎にあるのだ。健全な競争原理と自己責任がある。
 日本でも遅ればせながら、こうした動きの萌芽がある。海外留学経験がある医師、若手の俊英の医師、意識が高い医師などから、積極的に成績を開示していこうという機運が出てきた。たとえば、大阪大学、東京大学、東海大学などだ。
 大阪大学第3内科がインターネットで公開している情報にはおおよそ次のように書かれている。
 「1983年から 1998年8月までに、計187例の造血幹細胞移植を施行しました。その内訳は次の通りです。同種移植 76例。[以下、内訳]同胞間骨髄移植 45例、同胞間末梢血幹細胞移植 10例、非血縁間(日本骨髄バンク)移植 18例、非血縁間(米国骨髄バンク)移植 2例、非血縁間臍帯血移植 1例。自家移植 111例。[以下、内訳]自家末梢血幹細胞移植 84例、自家骨髄移植 27例」
 「白血病に対しては、同種移植を中心に治療をしていますが、standard risk例(急性白血病の第1寛解期、慢性骨髄性白血病の慢性期)では、血縁者間79.6%、非血縁者間83.3%の無病長期生存率(治癒率)を得ています。進行期でも、血縁間27.6%、非血縁者間66.3%の無病長期生存率を得ています。また、1983 年以来、悪性リンパ腫 98例(自家移植 44例を含む)を治療し、70%の長期無病生存率を得ています」
 東大病院無菌治療部では次のように説明する。
 「1995年6月の開設以降、1998年3月までに34人の成人の患者さんに同種骨髄移植を行いました。疾患の内訳は以下の通りです。急性骨髄性白血病 6人、急性リンパ性白血病 9人、慢性骨髄性白血病 13人、再生不良性貧血 1人、骨髄異形成症候群 4人、悪性リンパ腫 1人。この34人の患者さんの内、29名は再発することなくすごしていらっしゃいます。非常に厳しい状態(high risk)、すなわち急性白血病の非寛解期や慢性骨髄性白血病の急性転化期に移植を受けられた12名の方のうち、残念ながら4名が強力な治療による副作用や再発のためにお亡くなりになりました。急性白血病の第一寛解期や慢性骨髄性白血病の第一慢性期などに移植を受けられた方(standard risk)20名のうち19名(1名が再発)は順調に経過しており、そのほとんどの方は復学、復職など社会復帰に成功しています」
 東海大学でも年内に成績を公開し、インターネットにも掲載する予定だ。これが注目される理由は、骨髄バンクの医療委員会委員長の加藤俊一医師がいる病院であることだ。医療委員長が自らここまで情報を公開するということは、全国の移植病院に対して大きなメッセージを発しているといえる。
骨髄バンクが病院別移植実績の集計・公開をしようとしないなら、ボランティアでそれをやればいい。全移植病院にアンケートを実施するのだ。当初の回答率は低くていい。回答する病院は必ずある。回答しない病院はその病院名を公開する。全国病院アンケート、いっしょにやりませんか!


98.9.19 ◇◇KENの単行本いよいよ発売◇◇

本日はちょっと宣伝にまいりました。

9月25日にいよいよ(やっと)KENの書いた本が単行本で出ます。
みなさん、お読みくださいね。

書名:「インターネットを使ってガンと闘おう」
著者:埴岡(はにおか) 健一 (KENの本名なのだ)
出版社:中央公論社
定価:1800円プラス消費税

■オビの宣伝文句から
・情報が病気と闘う武器になる
・ みずからの介護体験、日米医療事情の比較を通じ、パソコンを駆使した新・闘病法を提唱、患者、家族、医療関係者、ガンに挑むすべての人におくる、21世紀のメルクマール
・役に立つ情報を見つけるためのインターネット「リンク集」収録
・パソコンを駆使した 新・闘病法
・闘病をしながら「情報」の重要性を痛感した。インターネットでガンや白血病、骨髄移植などに関するホームページを渡り歩き、医療情報を集めた。
 インターネットを使えば、医師が治療方針判断に使うようなデータを、患者がすぐに読める。告知やカルテの開示と相まれば、医師の「情報の独占」が自然と崩れていく。これが日本の医療の「開国」を迫っていくだろう。患者の闘病態度も変わるだろう。
 さあ、パソコンを入院病棟に持ち込もう。医療情報を集め、コミュニケーションし、仲間を作ろう。              (本文より)
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■お願い
・読んでね
・買ってね
・人に奨めてね
・会報などに載せてね
・地元の知ってるマスコミの人に売り込んでね
・近くの図書館で注文してね
・地元の書店で取り寄せ注文してね


98.9.2 ◇◇患者家族からの寄稿◇◇

☆必要な情報を患者さんに届けよう☆
   栗尾 勝 (33才)

 患者さんと、そのご家族にとって治療に関する情報は必要不可欠です。血液疾患の患者さんであれば骨髄バンク関連の情報も欠かせません。

 先日亡くなった長男(2才)の急性骨髄性白血病発症を聞いた当初、これらの情報は主治医から伺ったものが殆ど全てでした。我が家の場合、その後に、「NIFTY 骨髄バンクフォーラム・らくだのオアシス」、「インターネット上に公開された患者さん本人、ボランティアの方々、医療機関等のHP(ホームページ)」、また「そこで知り合った方々」を介して色々と情報を得ることが出来ました。これらの情報の有り無しでは、患者の治療への関わり方も随分変わってきます。実際、情報を得てからは、患者側から主治医にBMDWの検索や、全国の臍帯血バンクへの登録など積極的に働きかけて、治療の選択肢を広げることができましたし、主治医と対等に(臆せずに)お話しすることも出来るようになりました。

 ところが、患者さんや、そのご家族の中には、パソコンに疎い方も多くいらっしゃり、インターネットやパソコン通信といった手段を全ての方が利用できるわけではありません。ですから、こういう方々にも、治療法の選択・理解のために参考となる最新の治療事情、骨髄バンク情報等をどうにかして届けたいと感じていました。

 それで、長男が亡くなる少し前に、
 (1)日本骨髄バンクニュース  (Vol.12以降)
 (2)全国協議会ニュース    (1997年以降)
 (3)東京の会通信       (1997年以降)
 (4)情報誌 骨髄バンク     (No.1以降)
を1冊にファイリングして、お世話になった病院の乳児病棟と、小児病棟のそれぞれのプレイルームに設置させてもらいました。今も最新号が来る度に送付して、継続的にファイリングをしてもらっています。

 (1)は半年に1度発行される日本骨髄バンクの公式情報です。大ざっぱですが移植成績なども紹介されています。
 (2)(3)はボランティア団体の会報で月刊です。
 (1)の半年に1回という発行サイクルは、ドナーの方にはよいかもしれませんが、患者さん、特に急性期の患者さんにとっては長過ぎます。最近は、
 ・公的な臍帯血バンクの発足
 ・骨髄バンク利用料の保険適応
 ・1座不一致非血縁間骨髄移植
 ・DLT(ドナーリンパ球輸注)
等、近々動きが有りそうな(有って欲しい)話題が目白押しですから、これらの移植の可否にも関わるような情報を少しでも早く患者さんに届けるという意味で、月刊であることはとても価値があると思います。
 (4)は全国協議会が年に1、2回出している情報誌で、国内のバンク事情にとどまらず、外国の移植事情や最新の治療情報につぃても比較的平易に書かれており参考になります。

 患者さんはこれらの資料の存在すら知らないことが多く、こういった情報をスムーズに患者さんへと届けるためには、
 ・主な治療施設に、少なくとも移植認定病院だけにでも何部かずつ送って、患者さんが見やすいところに設置する。
 ・発病時など、節目節目で医師からその存在をアピールしてもらう。
というような手段が有効かつ現実的かなと思います。

 上に書いた各情報源は、最近発行されたものについては、(1)を除いてインターネット上で公開されています。みなさんも一度ごらんになり、取り寄せて病院に置いてみませんか。
(1)財団法人骨髄移植推進財団(日本骨髄バンク)
   http://www.jmdp.or.jp/index.html
(2)(3)全国骨髄バンク推進連絡協議会
   http://www.marrow.or.jp/
(4)公的骨髄バンクを支援する 東京の会
   http://member.nifty.ne.jp/samdrt/menu.html
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98.9.2 ◇◇東京臍帯血バンク、提供開始◇◇

 東京臍帯血バンクが臍帯血の提供を開始した。第1例は成人患者向けだった。
(1)8月27日、第1例提供。患者は27歳の成人(T.Sさん)。体重46キロ。日本医科大学から東京大学医科学研究所に転院。
(2)8月28日、第2例提供。患者は4歳の小児(T.Hさん)。体重13キロ。清瀬小児病院。
 移植を受けた患者さんの経過が順調に進むことを祈ります。
 このほか、東京臍帯血バンクの予備検索では20例が一致している。



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