セカンド・オピニオン(別の医師の意見)
――たずねる理由、たずねる時期、たずねる相手
訳注:セカンド・オピニオンとは、今かかっている医師以外に治療方針などについての意見を聞くこと。
米国などではセカンド・オピニオンは広く普及している。日本でも拡がりはじめた
著者 :
Steve Dunn
(スティーブ・ダン)
原題 :
Second Opinions: Why, When, and Who
URL
:
http://cancerguide.org/second_opinion.html
訳者 : 撫子なんちゃん
おことわり(免責条項)
1.なるべく言葉や意味を正確に翻訳することを心がけていますが、内容については保証するものではありません。海外と日本では治療法や使用される薬が異なるばかりではなく、社会的環境も異なります。あなたの主治医と話し合ったり、各種団体の相談窓口を利用するなどして、ご自身あるいはご家族に対してここにあげた情報がどのように適用できるかご判断ください。
2.原典の各発行元には、日本語への翻訳に関して了解を得ていますが、各発行元が日本語に翻訳された情報の保証をするものではありません。
3.訳者、編集者、監修者などはこの翻訳内容と、それによって引き起こされたことに対して、いかなる責任も負いません。
(セカンド・オピニオンとは、今かかっている医師以外に治療方針などについての意見を聞くこと。米国などではセカンド・オピニオンは広く普及している。日本でも拡がりはじめた)
たずねる理由
セカンドオピニオンを得ることで一番のメリットは、治療法についてこれまでとは違った希望をもてるということです。保守的であったり革新的であったりいろいろな医師がいます。いろいろな可能性をもつことはいいことです。セカンドオピニオンを得ることは、他にも可能性をいくつか聞くことができる良い方法です。
別の医師が、まったく別の、期待できる治療法を思いつくかもしれません。それはあなたの最初の主治医が考えなかったり、知らなかったりしたものなのです。こうしたことが起こりうるのです。どんな医師でも、なにもかも知っているわけではありませんし、いつでも正しい判断を下せるということでもないからです。
セカンドオピニオンはまた、一般的な医療の水準チェックにも使えます。あなたが本当に最新のもっとも効果的な治療法を受けているかどうかを調べることができます。
たずねる時期
以下に、セカンドオピニオンをたずねるべき理由を列挙しました。これはあなたが自分の考えを絞り込む際の手助けとなるでしょうが、どの時期にあなたがセカンドオピニオンを必要とするのかについての、決まった解答はありません。ですから、あなたは自分の状態を考慮して、セカンドオピニオンによって自分が利益を得られるかどうかを判断してください。
・あなたに治癒の希望がまったくない場合
もはや治る希望がなく、さらに治療を続けても意味がないと伝えられるガン患者が多くいます。この場合、セカンドオピニオンを得ることから失うことはなにもありません。逆に、どんなに低い確率であれ、、とても大きな利益を得る可能性があるのです。というのは、あなたの主治医が間違っていれば、セカンドオピニオンによってあなたの命が救われるかもしれないからです。ある外科医にはもはや手術することができないと思われた腫瘍が、別の外科医にとっては手術できるものである場合があります。ていねいに診察することによって、ガンの種類が治療できる別のタイプであると診断される場合もあります。ときには、最初の主治医は知らなかったけれども、別の医師が期待できる治療法を知っているということもあります。こうしたことはすべて実際に起きたことなのです。調べるまではどうなるかはわからないのです。
・あなたの症状が「境界線」にある場合
あなたの腫瘍が手術できそうであるものの、それが明確ではない場合、あるいは逆に手術できそうにないけれどもそれが明確ではない場合、セカンドオピニオンを聞きたくなるかもしれません。これによって不必要な手術を避けられるかもしれませんし、生命が助かるかもしれないのです。同様に,あなたの腫瘍が補助的な化学療法を必要とするかどうかの境界にある場合にもセカンドオピニオンを聞きたくなるかもしれません。
・あなたが地方に住んでいる場合
あなたが地方に住んでいて、小さな病院で治療を受けている場合、大病院の診察を受けることで良い結果がもたらされるかもしれません。地方の小さな病院では良質の治療を受けることができないと言っているわけではありません。しかし私は実際に起こった恐ろしい話を聞いたことがあるのです。
(以下、斜体の部分は日本では当てはまりませんが、ご参考までに)
・あなたが
HMO
の会員である場合
HMO
は多くのケースで正しいケアを提供することができますし、そうなってはいますが、
HMO
とその会員のあいだでは根本的に利害が一致していません。
HMO
があなたにお金を使えば使うほど、彼らは儲かりません。したがって、より安価なケアをしたり、
HMO
の外のネットワークを紹介しない傾向があります。その結果、
HMO
の会員は臨床治験やその他の希望が持てる新しい治療法について知らされない可能性があります。また、成功する可能性が小さいといっても実際の可能性があるのに、高価につく治療を試みることも、
HMO
は会員に勧めることをしません。
実際には,事態はもっと悪いのです。
HMO
を通じては行なうことのできない治療法について彼らの患者に伝えることを、
HMO
の多くは組織に属する医師に禁じているのです。オンコロジータイムスの1996年5月号22頁に掲載された記事によれば、「事実上すべての」
HMO
は、傘下の医師との契約事項のなかに、「内密の規則」をもうけており、それは「患者が支払う部分に含まれない治療方法を十分に患者に伝えること」をなるべく行なわないというものです。
AMA
(アメリカ医師会)は、このやり方を「非倫理的だ」と呼んでいますが、確かにそのとおりです。
HMO
とその医師とのあいだの契約文は公的な文書ではないので、あなたが治療を受けている
HMO
傘下の医師がこの内密規則にしたがっているかどうかを知ることは簡単ではありません。
このような状況であるため、
HMO
会員である患者の中には、最高の治療を受けたり、すべての可能な治療法を知らされている人は誰もいないでしょう。したがって、
HMO
の会員はみな
HMO
以外のガン専門医に治療計画をチェックしてもらうべきだと思います。別の医師の意見を得るためにはあなた自身がお金を払わなければならないでしょうが、それは十分価値のあることです。大きなガンセンターか大学病院で別の医師の意見をもらうことを勧めます。
{訳注}
HMO
とは,Health Maintenance Organization 「健康維持協会」の略称であり、米国での新しい医療保険の方式を行なっている組織のひとつ。この文章の著者が指摘するような問題点がたしかにHMOに存在するようです。以下は,HMOをとりあげた
TIME
誌の
WWW
サイトです:
http://cgi.pathfinder.com/time/magazine/1998/dom/980713/cover1.html
・あなたの主治医に臨床治験を受けてほしいと頼まれた場合
あなたの主治医が研究者として参加している臨床治験を受けるようにあなたに勧めた場合、承諾の署名をする前に、セカンドオピニオンを得るべきだと思います。医者にとって臨床治験をする際の最大の難関のひとつが、その治験に参加してくれる患者を見つけ出すことなのです。それで医者は、あなたに最高の治療を受けさせるということよりも、臨床治験を承諾する署名をさせることを重要視します。ときには、患者を獲得するために金銭上の誘惑があったり、他の圧力があったりします。勘違いしないでください。私は、臨床治験についての署名を求める医者のすべてがひとりでも多くの被験者を得ようとしていると言っているわけではありません。ほとんどとは言わないまでも、大部分の医者は臨床治験によって利益を受けると期待される患者に声をかけています。
たいていの臨床治験は「多施設共同研究」です。つまり、同時期に国内の多くの病院で行なわれます。あなたが頼まれた臨床治験がこの種類のものならば、おそらく、治験はもともとはあなたの主治医の発案ではないでしょう。しかし、それがあなたの主治医自身が考えた治療法なら、その臨床治験にわくわくするのは当然なことです。ですから、客観的なセカンドオピニオンが当然必要となるのです!
臨床治験がもたらしうるものはさまざまです。たまたまあなたの主治医がそれに参加しているという理由だけのために、事実上ランダムに選ばれる臨床治験は、あなたにとってもっとも期待のもてるものではない可能性が高いでしょう。この理由から、臨床治験に関してすべての可能性を調べてみるべきであり、主治医がたまたま提供しようとしている治験を盲目的に承諾すべきではありません。このガンガイド情報のなかの、
「臨床治験を見つける」
http://cancerguide.org/cis.html
と
「臨床治験のしくみを理解する」
http://cancerguide.org/clinical_trials.html
を参照してください。
・あなたのガンがまれなものである場合
あなたのガンがまれなものである場合、セカンドオピニオンを求めるのは文句なく価値があります。あなたに本当に必要なのは、そのまれなガンの専門医を見つけ出すことです。専門医があなたの住んでいる地域にいるのなら、主治医をそちらに変えるべきですし、ありがちなことですが専門医が遠隔地にいるのならば、あなたの主治医は電話での診察を通じてその専門医と協力することができるでしょう。あなたが運よくすでに専門医のもとで治療を受けているのならば、もちろん専門医の助言を受けるためにセカンドオピニオンを得る必要はありません。
あなたのガンがそれほどまれなものではなくても、その種類のガンに特別な興味をもっている研究者を見出すことで、なんらかの利益を引き出すことができるかもしれません。私のガンは腎臓ガンでしたが、それほどまれなものではありませんでした。しかしよくあるというものでもありません。私の経験では、この種のガンをもっている患者の多くが、最新で最高の治療を受けているわけではありませんでした。真の専門医を見つけるのは決して悪い考えではありませんよ!
・あなたのガンの原発部位が不明である場合
場合によっては、医者は患者がどのような種類のガンであるのかがわからないことがあります。この場合、転移性の腫瘍が発見されますが、細胞を調べてもどの種類か不明のままで、原発腫瘍もみつかりません。あるいは、どこが原発部位であるのかがはっきりしません。ガンの治療はガンの種類によって大きく異なりますから、診断が確定すればはるかに効果的な治療を受けることができるかもしれないのです。この場合、すべての適切な検査が行なわれたのかどうかをはっきりさせるために、セカンドオピニオンを求めることは意味があります。この状況では、病理学のセカンドオピニオンも考慮すべきでしょう。
・病理学のセカンドオピニオン
たいていの人は、診断が下されたもととなった病理学報告書についてセカンドオピニオンを得る可能性など考えてもみないでしょう。しかし、ガン治療の計画全体が、あなたがどのような種類のガンをもっており、どの程度広がったのかに基づいています。これらの両方がふつうは、生検(バイオプシー=組織を少しだけ穿刺して取り、検査すること)や外科手術で得られた標本を病理学者が解釈した結果に全体ないしその一部分を負っているのです。病理学的見解が変化すれば、治療と診断が劇的に変化します。
同時に、たいていの患者は病理学のセカンドオピニオンは必要としないでしょう。セカンドオピニオンを求めることが意味があるかどうかについては、一連の常識があります。あなたのガンが本当にまれな種類であれば、必ず病理学のセカンドオピニオンを求めることをお勧めします。その特定の種類のガンについて、あなたのガンを調べた病理医は経験がほとんどなくて、間違いを生じている可能性が高いからです。
あなたのガンの病理学報告が決定的な診断を下していなければ、おそらくセカンドオピニオンを求めるべきです。同時に、病理報告書になにか異常なことが記述してあったり、あなたの病気の知識に照らしてそれが普通ではないと思ったら、なんらかの誤りがある可能性が普通のときよりもずっと高いでしょう。私は、腎臓ガンの手術を終わったばかりの患者と会ったことがあります。彼は私に腫瘍は「十分に分化していたよ」と語りましたが、その状態はありえないことではないものの、腎臓ガンの細胞では普通とはとても言えないものでした。彼はまた、病理報告に腫瘍が「非定型性の腎ガン細胞」とあったと語ってくれました。彼は病理学のセカンドオピニオンを取り、その結果、彼はまったく別の、「腎ガン様体」と呼ばれる非常にまれなガンであったことがわかりました。これによって彼の将来の治療法だけでなく、術後追跡調査のやり方や診断もすべて変わってしまいました。
第一歩として、主治医からあなたの病理学報告のコピーをもらうことです。病理学報告を理解する基礎については、
「エドワード・ユースマン博士の報告」
http://cancerguide.org/pathology.html
を参照して下さい。
病理学で高い評価を得ている場所のひとつに、軍病理学研究所
(AFIP)
があります。
AFIP
のウェブサイト(
http://www.afip.mil/
)を見ればほかの情報を知ることができます。
たずねる相手
・まったく別の医師
あなたは現在の見解とは<独立な>セカンドオピニオンを望んでいるはずです。ですから、あなたの主治医と密接な関係をもってはいない医者を選ぶべきです。一緒に仕事をしている医者だと、似たような考えをしますし,仲間の見解に同意するかもしれません。あなたに必要なのは、これまでとは違う新鮮な観点です。私はこれまで、別の病院で治療している医師を見つけることを勧めてきました。セカンドオピニオンを得るには、研究を主に行なっている病院や主要なガンセンターが普通はよいでしょう。こうした場所には最新の治療と診断の情報があるはずだからです。
「先端医学研究所」(
http://www.iasm.net/
は<無料で>きわめて独立性の高いセカンドオピニオンをするサービスを行なっています。これは、あなたが、
HMO
(注)のように外部のセカンドオピニオンにはお金を出さない医療保険の会員であったり、もともと医療保険に入っていない場合に特に役に立ちます。
・腫瘍委員会(院内腫瘍治療検討会)
かかっている病院と独立してはいないのですが、特別な種類のセカンドオピニオンが得られるところがあり、これは検討に値します。なぜなら、一度に広い範囲の意見を得ることができるからです。これは「腫瘍委員会」あるいは「腫瘍治療検討会」と呼ばれるものです。たいていの病院には、医師団の定期的な会合である腫瘍委員会があり、委員によって示されたそれぞれのケースについて最高の治療法は何かを考えます。典型的な例では外科学(外科)、腫瘍放射線照射学(放射線科)、腫瘍薬物治療学(内科)といった分野の専門医が集まります。あなたの主治医が明確な治療方針をもっていないならば、主治医から腫瘍委員会にあなたのケースを報告してもらえないか頼むという方法があります。
・別の専門医
多くの種類のガンをいろいろな分野の専門医が治療しています。たとえば、前立腺ガンを治療するのは、泌尿器科専門の外科医だったり、腫瘍放射線照射学の専門医だったり、腫瘍薬物治療学の専門医だったりします。あなたのガンがどんな種類かについて基礎的な検査が済むと、おそらくどんな専門医が治療することになるかを知るでしょう。セカンドオピニオンを得るために、ほかの専門医のひとりに会ってみるというのは十分に価値があります。たとえば、外科医は「この患者にはもうできるだけの治療をした」と確信して、もはやそれ以上の治療は必要ないと判断するかもしれません。ところが同じときに、腫瘍学の専門医なら化学療法や放射線照射のような補助的な治療法を行なうことで快方に向かうことを示した研究について、もっと詳しい知識をもっているかもしれません。逆に、腫瘍が手術可能かどうかについては、外科医の方が腫瘍学の専門医よりもよい考えをもっているかもしれません。専門医は別の専門医による診察を頼むことがよくありますから、このようなセカンドオピニオンを得るのになにもしなくてもよいこともあるでしょう。しかし、必要とされた診察を受けることがなかったために、ひょっとしたら命を救えたか
もしれない治療を受けられなかったという患者を私は何人か知っています。
・その分野の世界的権威
場合によっては,あなたの必要とするのは世界的権威です。それはたいていの外科医が行わない特殊な手術を行なう外科医であったり、あなたの症状にあてはまる新しく希望がもてる領域での最先端の研究を行なっている腫瘍学の専門医だったり、あるいはまれなガンの専門家だったりします。
多くの場合,専門分野はきわめて狭いものです。たとえばX博士はある特定の脳腫瘍を切除するのに優れており、Y博士は黒色腫(メラノーマ)の生物学的治療法の権威、という具合です。あなたにふさわしい専門家を見つけることは、優れた医師としての名声を得ている医者を探すようには簡単にはいきません。私はこれについては簡単な方法を知りません(あなたが知っていたら、ぜひ私に教えて下さい!) あなたの主治医は誰が専門家なのか、知っていることもありますし、診察の紹介状を書いてくれるかもしれません。医学関係の文献を調べて、誰の発表した論文があなたのもつ特定の問題に関係しているかを見いだすことができる可能性があります。この方法はかなり有効です。
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